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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第四章 動乱編
110/179

隣国の姫~⑤

元山賊の追手達の数を修正しています


10騎→20騎


「先輩!」


「あれは・・・まさか殿下!?」



 山道の出口で待機していたハサンの部下達は、王国側から来る騎馬に気付いて声を上げる。 隊長が眼を細めて確認しようとする間にも猛スピードで近づいてくる騎馬に漸くその馬上の姿を確認する



「ごめん、先に行くよ」


「お前らも付いて来い!!」



 止まる様子も見せないまま駆け抜けていく自らの主君と隊長の様子に事情も判らぬままに慌てて馬に乗りこみ後を追い掛けアトラ爺の息子達もその後に続く。 



「殿下!ここからは私達が先に」


「・・・うん、判った」



 先頭を走っていたアルベルトの乗るラモーヌに並んだハサンが声を掛けて自らの部下と共に先陣を切る。 これから戦闘になるだろう事を考えればハサンの申し出は至極真っ当な物であり、領主として必要な事を学んだアルベルトは心の葛藤を飲み込みそれを了承する



「ヴィク、あとどれくらい?」


「ん・・・すぐ」


「ハサン!」


「判ってます、お前ら準備は良いな!」


「「はい!」」



 馬を操る事に関してはアトラ爺の息子達は流石の技量であったが戦闘まで行わせる訳にはいかない。 私兵隊とは違って彼等は守るべき民たちだ。 ハサンと騎兵隊の二人が先頭に広がり、その後ろにアルベルト。 エリザベスとアトラ爺の息子達という陣容で山道を駆ける  



「見えた!ハサン!!」


突撃(チャージ)準備!」


「いつでも行けます」


「こっちもです」



 アルベルトの声にハサン達は端によって馬車を通す。 そのまま護衛達もやり過ごすと再び陣形を整え迎撃の準備を整える。 闇人(シャドウ)達の投石を警戒して馬車との距離を開けていた追手と接触する僅かな間に準備を終えた彼等の姿が白いオーラに包まれる



『ほっほっほ。見事な攻撃じゃな』


「これを見越してハサンを選んだんでしょう?」


『まあの。じゃが実際に目にするとやはり見事だと思うのじゃよ』



 私兵達はマーリンが鑑定でステータスを確認した上で捕虜とした元帝国兵達だ。 ハサンの場合は騎兵隊の隊長を任せられるだけあって騎乗で役立つスキルを豊富に持っていた


 その中でも目の前で発揮されている【突撃(チャージ)】は騎乗突撃の際にオーラを身に纏う事で突進力を上げる効果がある。 それに加えて【指揮官先頭】を持つハサンが先頭に立つ事で部下達にも恩恵を与えている



「なんだテメェ等!!ギャアァ!」


「テメエら道を開けろ!!ドリャアアア!!」



 道幅一杯に広がった三騎の突進が先頭の下っ端を吹き飛ばす。 そのままの勢いで追手達を纏めて吹き飛ばす筈の【突撃(チャージ)】は、しかし後ろから叫び声と共に振り下ろされたお頭のグレートアックスが放つ衝撃に押し留められる



「サウスバーグ領の者だ。貴様らは王国の領土を侵犯している、早々に立ち去るがいい」


「はぁ~?聞こえねぇなぁ。おい、何か言ってるみたいだぞ?」


「へい、どうやらあの兄さんは勘違いをなさってるようで」


「ヒャッハ~、王国領はまだまだ先だぜ~兄さんよぅ」



 お頭の叫びに反応できなかった下っ端をも巻き込んだその一撃に自らのスキルを止められた事には忸怩たる思いはあるものの、それを隠して冷静な表情で告げるハサン。 しかしお頭は馬鹿にしたような笑みを浮かべながら部下を振り返ると、参謀役や下っ端たちも煽る様に茶化す



「その鎧、チュバル公国の者だな。良いだろう正式に抗議させて貰おう、お前らを打ち倒した後でな」


「ハッ、数はコッチの方が上だ!テメエらやっちまえ!!」


「相手の土俵で戦うな!馬から降りて廻りこむんだ!!」


「ヘイ、兄貴!!」



 相手の態度は腹が立つが、どの道戦闘になる事は予想していた事だ。 冷静な表情を獰猛な笑みに変えて剣を構えるハサンは逆に相手を煽り返す


 それに対して親方も悪役定番のセリフで部下達を突っ込ませる。 何処までもテンプレ通りだが実際、アルベルト達の数を入れてもまだ追手の方が人数は多い。 そして彼等の狙いは馬車の中にいる少女だけなのだから人数を活かして攪乱すれば目が有ると踏んだのだろう


 馬から飛び降りて散開する追手達に馬上では小回りが利かない事を悟ったハサンとその部下も馬から降りて馬車へと向かう下っ端たちの進路を塞ぐ。 騎馬でなくともバイマトに鍛えられた彼等なら戦える自信があっての事だ



「ハッ!」


「な!?グァ!」



 短い気合と共に斬りかかったハサンの剣が下っ端の持つ剣を弾き飛ばす。 その隙に一歩踏み込んだハサンの突きをもろに喰らった下っ端は血飛沫を上げながら後ろに倒れる。 装備こそ立派な騎士装備だが下っ端たちは見るからにそれに慣れておらず、ハサンの部下達も危なげなく渡り合っていた



「おい弓持ち何してやがる。サッサと援護しやがれ」


「馬鹿言うな、そんなに近くに居たら狙える訳ねぇだろ!!」



 ハサンとその部下の攻撃を受けるので精一杯な下っ端が後ろの弓持ちに怒鳴り付けるが、味方との距離が近すぎる為に援護も間々ならなかった



「たくっ、だから武器だけは自前の物を使っとけってつったんだよ。ほら退け!」


「こっちは良いから、お前らは廻りこんで馬車を狙え」


「へい、すいやせん」



 部下達の戦いぶりを見ていたお頭と参謀役はその不甲斐無さを嘆きながらも、部下達を下がらせると余裕の表情でハサン達の前に出てくる


 お頭は先程のグレートアックスを肩に担ぎ馬鹿にしたようにハサンを睨み付け、参謀役はオーソドックスなカイトシールドと長剣を構える。 ハサンとその部下の腕を確認した上で出てきたところを見ればそれなりに腕に自信があるのだろう、数の不利を承知で三人の前で構えてみせる



「オラァ!楽しませてくれよ」


「クッ!重い!!」



 気合の叫びと共に上段から振り下ろされるグレートアックスを辛うじて受け流すハサン。 両手持ちのソレを軽々振り回すお頭は受け流された得物を膂力に任せて強引に引き止め、ハサンを吹き飛ばそうと横薙ぎに襲い掛かるがそれを後ろに飛び退いて躱す、しかしその空気を裂く音に戦慄が走る



「へっへっへ、案外俺達もやるだろ?」


「ふん、山賊にしては上出来だ!!」


「おっとっと、兄さんもやるねぇ」



うなじの辺りがチリチリとする感覚に目の前の相手は間違いなく強敵だと認識したハサンであったが、それを隠して言葉の最後に気合を込めて打ち込む


 バイマトに鍛えられたハサンは帝国にいた時と比べてその実力を確実に高めていた。 だが、余裕の表情を見せる親方はからかう様な笑みを浮かべたまま気合と共に振るわれたその剣をヒョイといった感じでアッサリと弾いてしまう。 


 剣士や騎士が振るう様な上品な動きでは無い荒々しいものではあったが、お頭の腕はハサンを上回っている事は確かだった


 見れば部下達も二対一だと言うのに参謀役に翻弄されている。 お頭とは違い何処かに正統派の剣術を感じさせる参謀役は巧みな位置取りで常に一対一の状況を造りだし、更に盾を上手く使った受けの姿勢で無理な攻撃をしない、明らかに時間稼ぎの動きだ



「よそ見してる場合じゃあねぇだろ!?」


「この程度で!!」



 ハサンは気合を入れ直すと剣を構えてお頭に突っ込んで行く。 下段から振り上げた剣は先程と同様に弾かれるが、それは予想の範疇。 そのままの流れで剣を横薙ぎに振るう、バイマトの教えに従って次の攻撃へと繋がる動きを意識した攻撃は連撃となって襲い掛かる


 取り回しの難しい両手持ちの長柄、しかも先端に重量の掛かるグレートアックスであれば細かい攻撃を捌ききれないだろうというハサンの目論見は、余裕を保ったまま長柄の中央を両手で持って刃と石突を使って悉く打ち落される



「ほらほら、そんな事じゃ後ろの馬車が襲われちまうぞ?」


「なに!?」


「お前ら、一番に馬車を襲った奴には金貨二枚だぞ!」



 お頭は実力で勝っていても更に挑発する事でハサンの集中力を崩そうとしてくる。 彼の辞書には正々堂々などという言葉は掛かれていないのだろう。 ハサン自身もその事は理解してはいたが部下の苦戦と後方の馬車が気になるのは事実で目の前に集中せねばと思えば思う程、お頭の言葉に揺さぶられてしまう



「ヒャッハ~、早いもん勝ちだぜ~」


「おい、狡いぞ!」



 ハサンを焦らす為の言葉であっただろうが下っ端たちには思わぬボーナスだ。 俄然やる気を出して山道を迂回した下っ端たちが馬車の方へと殺到する



「悪いけどここは通さないよ?諦めて公国へ帰った方が良いよ」


「ガキが!邪魔するんじゃねぇ!!」



 殺気立つ下っ端たちの前にアルベルトが悠然と立つ。 成人を迎えたとはいえまだ15歳のアルベルトは線が細く屈強とはお世辞にも言えない。 如何にも育ちの良さそうなお坊ちゃまが剣も抜かずに目の前に立っても、金かに目がくらんだ下っ端たちの勢いを削ぐ事は出来なかった



「警告はしたよ」


「なにを言って・・・って、腕が、俺の腕がぁあああ!」


「テメェ!ナニしやがった!!」



 迫る下っ端に冷静に告げたアルベルトの表情がスッと冷たい物に変わる。 そんな変化に気付かない下っ端は振り上げた剣で斬りかかろうとして、刹那光の帯が目の前に走ったのを目にする


 宙に舞う自分の腕と舞う血飛沫に何が起きたのかを理解した彼は、その事実に驚き後からやってきた激しい痛みに叫び声えを上げてのた打ち回り、アルベルトの動きが見えなかった周りの下っ端達は狼狽える



「ん・・・五月蠅い」


「ガッ!」


「ゆ、弓だ!弓持ち!サッサと撃て!!」


「させる訳ないでしょ」


「グゲッ」



 アルベルトの背後から現れたヴィクトリアがその拳で騒ぐ下っ端達を黙らせると、思いもかけない強敵に混乱する下っ端達は後ろから来る弓をもった仲間に叫ぶ


 しかし帰って来たのは蛙でも潰した様なくぐもった響きであった・・・



「べス・・・そこは魔法じゃないの?」


「こんな奴等、魔法を使うまでも無いでしょ」


「ヒィイイイイ、ば、化け物」



 山道を廻りこんで現れたエリザベスは弓持ち達を叩き潰した血塗られたメイスを両手に持ち、呆れた様子でアルベルトに答える。



「失礼ね!誰が化け物よ!!」


「ん・・・的確」


「ヴィクも煽らないの」


『ほっほっほ、さて誰が一番の化け物かのう』



 逃げ惑う下っ端たちを駆逐しながら交わされる会話はそれだけを聞けばいつもの事だった。 しかし、ヴィクトリアの拳で宙に舞いエリザベスのメイスで纏めて吹き飛ばされる男達がいつもとは違う風景を彩る


 そしてテンゲンが造ったアルベルトの剣は木々の間から差し込む光を反射してキラリ輝き、それが光の帯を造りだすとその度に赤い指色が混じる



「助かったのよね?」


「ええ、しかし姫様・・・」


「判ってるわ。彼等の力を何としても借りなくては・・・」



 アルベルト達の動きを見て化け物と言った下っ端の気持ちが良く判る少女は、しかしその言葉をグッと胸の内に飲み込む。


 彼女の目的の為には王国の力を引き出す必要が有ったが、それは目の前の三人だけでも叶うかもしれない


 驚きと恐怖を胸にしまい込み目的の為に新たな決意をする少女であった・・・


改稿前を読んだ方には予想出来た展開ですが、少し纏めてスピード感を出そうとしてはみたものの・・・


なんか纏まりに欠けるような気も・・・


皆さんはどう思ったでしょうか?


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