第十一話 アルベルトの成長日記~五歳②
LV 20
HP 220
MP 400
STR 80
VIT 60
AGI 110
DEX 120
INT 100
MAG 120
CAM 90
LUC 60
スキル 身体強化
魔法強化(全属性)
無詠唱
上級剣術
格闘術
隠密術
気配察知
精霊魔法
加護 慈愛の加護
武術の加護
魔法の加護
精霊の加護
称号 賢者の守護
神に愛されし者
アルベルトのステータスに悩む三人と、それを見守るマーリンとライラ。
ステータスが高すぎて悩む三人を余所にアルベルト本人はいまいちピンと来ていない様子だ。なにせ他の人間のステータスという物を見た事が無いのだからしょうがないだろう。
「いいかアル。普通は各項目の内一つでも100を超えたら一人前と言われるんだ」
「なら僕だってそれ位じゃないか」
「そうじゃないのよ。アルみたいに幾つものステータスが平均して高いって事が普通は無いのよ」
口を尖らせ不満を訴える姿と口調が普通の5歳児になっているアルベルトにほっこりしつつ宥めるカイヤが経験値とLVについて説明を始める
LVとは何かしらの経験を積む事で上がっていが子供の場合は年齢とLVはだいたい等しくなる。
これは抑々経験を積むほど何かをする事が無いしさせないのが一般的で、普通に身体を動かしたりお勉強程度の経験ではなかなか上がらないからだ
本格的にLVが上がるのは、10歳を過ぎて見習いとして働き始めた辺りからで、そこで得られた様々な経験で積み重ねられた経験値が一定数溜まれば初めて年齢とLVの差が生まれる
そしてLVが上がると全てステータスの値が上がる。基本的には経験を積んだ内容に応じた項目の値が大きく変動し、それに資質や祝福などの補正が掛かり個人差が生まれてくる。
その為、概ね成人する15歳までには大体の傾向が決まってくると言われているのだ
本来、5歳の儀式はそういった資質や祝福を調べる意味合いが強く、子供の苦労を少なくしてあげたいと言う親心から常態化した物だ
それらの資質や祝福に合った道に進み効率的に自身の才能を伸ばしてもステータスの値が100を超えて一人前になった頃には色々と偏りが出てきて当たり前でアルベルトの様に万遍なく数値が高いと言うのはあり得ない話だった
「大体、LVが20やそこらで100を超えるステータスってのもおかしいんだぜ」
世の中で天才と言われる人物の成長率でもLVが20程度ではステータスが100を超えることは無い。そうでなければ何もしなくても20歳になれば100を超える事になってしまう
「そこはほら、僕の場合は人よりちょっと早く魔物を倒したりしてるからだよ」
「それを言っちゃうと5歳児に魔物は倒せないって話になるわよ?」
良い事考えたとばかりに明るく言うアルベルト。しかしカイヤの言う通り魔物を倒したから上がったのではなくステータスが高いから魔物を倒せるという反論に口を噤んでしまう
『ほらだからやり過ぎって言ったじゃない!』
『お、お主だって「アルは成長が速いわね~」とか言って喜んでいたじゃろうが!』
コソコソと守護霊の二人が責任の擦り付け合いを始めているのをタメ息交じりに見つめるアルベルト。彼自身も判っているのだ、ステータスの値が高いのは明らかに賢者式幼児教育が原因だという事を・・・
「取敢えずアルのステータス数値が高い理由は置いておきましょう。それよりどうやって隠蔽するか?それの方が大事でしょうから」
ウマルが話を戻す。しかしアルベルトの頭上を見つめながらの発言なので原因がマーリンにある事はお見通しなのだろう。
「とは言ったってな、神具をぶっ壊す訳にはいかねぇしな」
「神官を抱き込んで偽装の石板を渡すとか?」
「いや、無理しょうね。あれは虚空から現れますし神殿内部にまで民衆がいる以上は難しいでしょう。それにあまり秘密を知る人物を増やしたくはないですね」
神官に知られれば神の御子とか騒がれるのは目に見えている。そうなるとある意味、王様に呼び出されるよりも厄介な事になってしまうのが目に見えている
「そ、それじゃあ体調不良とかで別の日に・・・、とかは?」
「それも考えましたが、この熱狂ぶりから考えると普通に体調が回復するのを待ちそうですね」
アルベルトの提案を否定したウマルには先程メネドールの部屋のバルコニーから見えた大通りの様子が思い浮かんでいた
「何かねぇのかよ、マーリン様よ。賢者なんだろ!」
『そ、そうよ!なんか誤魔化す魔法とか魔道具とか無いの?』
アルベルトの頭上を見ながら、しかしまるで敬っている様子のまるで無いバイマトの発言にライラも乗っかってマーリンを見つめる
『そうじゃの~、まぁ偽装の腕輪なら・・・』
『「有るんじゃないか!」』
アルベルトとライラの声が重なる。当然三人にはアルベルトが叫んだ様にしか見えないが、その発言で何らかの方法がある事と判った彼等はアルベルトの頭上を期待に満ちた目で見つめる
『し、しかし相手は神具だ。完璧に誤魔化せるかどうか判らんからな。それに素材は有るのか?』
『素材って何が必要なのよ!』
ライラがマーリンの胸ぐらをつかみながら問い詰める様子を解説するアルベルトの言葉に三人も固唾を飲んで見守る
『ま、先ずはその手を離せ!』
『あら?ごめんなさいね。おほほほほ』
『ふぅ、まったく・・・素材は先ずはベースに聖銀の腕輪。それに魔石じゃな、神具を騙すのだからなるべく高純度の物が良いじゃろう。それから精霊の涙、これは闇の精霊の物じゃな。後は迷宮の奥にいるリザードフォスの角じゃな、あぁなるべく歳経た者が望ましいな』
しかし、アルベルトが語るマーリンの言葉に徐々に三人の顔が曇っていく・・・
「魔石ですか?市販の物じゃ・・・ドラゴン?そんな魔石売ってる訳ないでしょ?」
「闇の精霊?呼び出せるけど・・・彼等が泣くなんて聞いた事無いけど?」
「リザードフォスって、リザードマンの変種だろ!?迷宮の奥ったってそう簡単には見つからんぞ?」
アルベルトが通訳するマーリンの言葉に三者三様に困惑の表情を浮かべる。お伽話の求婚を断るお姫様が出す難題並みに難しい素材ばかりだ。
『ふ~む。そんなに難しいかの?儂が若い頃ならヒョイヒョイと集めて来たんじゃが・・・最近の若いもんはなっとらんのぉ』
「そういう問題じゃないみたいだよ・・・」
マーリンが酒場でくだをまく年寄りみたいな事を言っているのをアルベルトが嗜める。
「そりゃあな時間さえ有るならなんとかするさ、でも一週間ってのは無理だ。」
『しょうがない、偽装の魔法で何とかしようかの』
『「そっちを先に言ってよ!」』
再びアルベルトとライラの声が重なる。当然三人には先程と同じようにアルベルトが叫んだ様にしか見えないが何か他の方法が有る事が判る、が・・・
「・・・また何か変な条件とか無いでしょうね?」
ウマルが疑惑に満ちた目でアルベルトの頭上を見つめる。段々この賢者との付き合い方を学んでいるようだ
『全く最近の若いのは礼儀がなっとらん!人に聞いておいて疑うとは何事じゃ!!』
「マーリン!」
『ああ、判っておるよ。まったく・・・偽装の魔法はの効果時間が短いんじゃよ精々半日が精一杯じゃ』
マーリンの言葉をアルベルトがみんなに伝えるが、最近の若い者は云々と愚痴っていた部分はカットして必要な情報だけを抜粋している
5歳にして既に空気を読むという能力を身に着けているアルベルト。こんな所まで規格外に育っている
「効果時間が短いって言っても半日保てば十分ね。神殿の儀式の間くらいは持ちそうね」
「でも先々の事を考えると腕輪も用意した方が良いでしょう。アルの場合ステータスを隠したい場面は多いでしょうからね」
「まぁ時間を掛ければ大丈夫だろ?アルならそう遠くない内にドラゴンも倒せるさ」
バイマトがドカッとソファーの背もたれに身を投げ出しながら簡単に言う。懸案の問題が解決した事で一安心といった感じだ
言葉の内容もこれが普通の5歳児に向けての言葉ならば社交辞令かお世辞の類だろう。
しかし、そう言わしめるだけの実力を持つアルベルトだけにその通りになるだろう事は此処にいる全員が同じ思いで銘々が笑みを浮かべていた
だが、アルベルトはまだ知らない・・・
「先に言ってよ!」
再びそう叫ぶことになる未来が迫っている事を・・・
視点がコロコロ変わっていますが、第三者目線で進めて行こうかなと思っています。
先々の展開を考えるとマーリン視点だけだと辛そうなので暫くは第三者目線で話を進めて行くつもりです
読んで頂いてありがとございます