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守護霊様は賢者様  作者: 桐谷鎭伍
第一章 幼年編
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第十話 アルベルトの成長日記~五歳

今日も三話投稿です 本日の三話目です。前のお話しからお願いします

 辺境伯メネドール・サウスバーグが治める辺境の地サウスバーグ領。その領都であるカモーラでは住民達が、いや近隣の町や村の住民達も集まってお祭りの準備をしている。


 そう、今年五才になるアルベルトの生誕祭の準備で大盛り上がりなのだ。この世界では十五歳で成人になるのだが、働き始める年齢は十歳からと言うのが通例だ。そして五歳を迎える子供達は神殿で神々に感謝を捧げる儀式が執り行われる


 賢者マーリンが生きていた時もそうであったが、この世界は残念ながら子供の死亡率は高い。その為五歳まで成長できた事を神々に報告して感謝を捧げるという訳だが、まぁそれは(ついで)になっていると言うのが正直なところだ


 儀式の最後に神々からその才能を石板に示して貰える。とは言っても実際には神殿に安置されている神具での鑑定結果を教えて貰えるだけなのだが、稀に神々から祝福を授けて貰う事が有り、スキルに目覚める場合がある。


 その為、五歳と言う年齢は子供を持つ親にとって非常に大事な時期になるし、子供にとってもこの先の人生の指標ともなり得る大事なイベントだ。・・・が、領主の跡継ぎといえども普通は街や近隣の町村を挙げてまで行う事では無い。


 しかしそこは皆のアイドル、アルベルトである。住民達が自主的にサウスバーグ領全体を挙げてのお祭り騒ぎへと持って行ったのであった



「ふぉっふぉっふぉ。相変わらずアルの人気は凄いのぉ」


「ええ。この五年でアルのやってきた事を考えれば当たり前ですけど、それにしても凄いですわね」



 屋敷のバルコニーから街の様子を窺いながら、メネドールとソフィアは満足そうに笑う。


 この五年でアルベルトが残した功績は各分野に渡る。アルベルトの名前で行われた鉱山開発、それに伴う公共事業などで近隣の町村は近年に無い潤いを見せている


 また、アルベルトの名前で開発された各種の魔道具は安い値段で民衆に配られていてその生活を楽にさせていた。その他にも魔物や盗賊の討伐、軍の組織改編による治安の向上など、アルベルトの名で行われた各種の画期的な政策は民衆に安心と豊かな生活を齎していた


 勿論これらの事は表向き(・・・)はアルベルトの名前を使ってメネドールが行った事であり、真に褒められるのはメネドールになる。しかしメネドールがアルベルトの名前で行ったのだから民衆もアルベルトに感謝しましょうという訳だ


 しかし、バルコニーから街を眺める二人は知っている。それが誰によって齎されたのかを・・・



「父上、母上。只今戻りました」


「おお、アル。お帰り、して成果の方はどうじゃった?」


「はい。今日も二人のお蔭で無事に使命を果たせました」



 ニッコリ笑うアルベルトの後ろで肩を竦めるのは家庭教師で雇った筈のバイマトとカイヤだ。二人とも鎧やローブといった防具を身に着けバイマトは背中に大剣を、カイヤは杖を持っている


 アルベルトも専用の防具と剣を腰に吊るしており、言葉からも何かしらの任務を果たしてきた様だ



「街道に出る盗賊たちはみんな牢屋に入れといたので取り調べは父上にお任せします」


「うむ。二人もご苦労だったな」


「いえ。私達は見ていただけでしたから・・・」


「まったく末恐ろしいガキだよ。ぐふっ!」



 乱暴な物言いにカイヤの肘打ちがバイマトに炸裂する。メネドールは元々冒険者仲間という事もありバイマトの性格も知っているので特に気にしている様子もなく笑っている



「おおアルベルト様、丁度良い所に。この間のお話しですが無事に商会の方と話が付きましたよ」


「うん。これで農村の皆も楽が出来るね」



 内政の文官が身に着ける制服を着たウマルが報告書を携えてアルベルトに声を掛ける。詳細の書かれた報告書をメネドールに提出しながらアルベルトにも報告した格好だ


 税が免除されている種類の作物を一括で辺境伯家で買い上げ、入札を行い高値を付けた商会に卸す契約の話をアルベルトが提案したのだ。これにより買値が高くなり農民達は蓄えも出来るし、商会は大規模な取引になるので多少高くなってもメリットが出る


 この仕組みを僅か五歳が考えたのだから大した物だとウマルは感心する。そうアルベルトの名前で行われた政策は実際にアルベルトが発案しているし、討伐などもアルベルトが行っているのだ。


 当然この三人もアルベルトがサウスバーグ領に何を齎したか知っている。というか、初めにアルベルトからの提案を聞いたのがこの三人だった。


 渋るメネドールを説得し、時には事後報告で納得させながら彼の行動を妨げない様にしてきたのだからアルベルトの一番の理解者たちだ



「訓練中に盗賊がいる、って言い出した時は吃驚したよな」


「そうそう。しかも街一つ向こうの街道なのにね」



【千里眼】というスキルが有る。読んで字の如く遠くを見る事が出来るスキルで軍の斥候などでは重宝されるスキルだ。しかし意識して見なければ盗賊の存在など判る訳では無いし、アルベルトは【千里眼】のスキルなど持っていない


 ならば何故?・・・当然、守護霊であるマーリン(やり過ぎ賢者)の仕業だ。現在サウスバーグ領には彼が張った結界が張り巡らされている。


 過保護な彼がアルベルトの危機を未然に防ぐ為に張ったのだが、マーリンが魔法を使う為にはアルベルトを通さなければならない。結果、サウスバーグ領で異分子が発生するとアルベルトも感知できるという訳だ



「でも賢者マーリンとはね・・・」


「そうそう。千年前の賢者様なんてお伽話の存在だと思っていたよ」


「だから二人とも内緒だって言ってるじゃないか」



 部屋を出て自室に向かう廊下で話し込むカイヤとバイマトにアルベルトが抗議する。この二人にウマルを加えた三人は守護霊の存在とマーリンの事を話してある


 と、言うよりも話さなければ盗賊の存在を信じて貰えなかった為にアルベルトが話したのだ。通常は守護霊の事が見える者などいないので子供の話と取り合わなかった二人。しかしマーリンがアルベルトを通して放った上級魔法の説得力は強力だった


 結局、ウマルも加えた四人でアルベルトの言う場所に向かってみると実際に盗賊が隠れており、更に訓練の時には見せなかった身体強化まで使って盗賊たちを瞬殺したアルベルトに彼等も信じざるを得なくなったという訳だ



『ふ~むこの三人に話して良かったのかのぉ』


『まぁ良いんじゃない?女神さまからも何も言われてないんでしょ』



 珍しく常識的な一面を見せるマーリンにライラがあっさりと答える。孫馬鹿全開の彼女はアルベルトの無事が保障されるのならば味方は多い方が良いという考え方だ。


 しかも最近ではメネドールよりもアルベルトの傍にいる事が多い。成長によって守護対象から離れる事が出来るので屋敷内では殆どアルベルトに付きっきりだ


 公務で首都にメネドールが向かう時など最後まで駄々を捏ねる有り様だった


 そんな会話を交わしながらアルベルトの自室に入った三人は目下の問題である神殿での儀式の話を始める。一週間後に迫った儀式だが普通ならば特に問題にすることは無い。


 神殿で感謝のお祈りの後、神具に手を翳して儀式は終了だ。問題はアルベルトのステータスが丸見えになる事なのだ。


 通常は家族と神官しかいない部屋で執り行われる儀式。極稀にあまり良くないステータスの場合が有るので子供の進路を守るための措置だ。


 五歳の時点のステータスなど指針に過ぎずその後の努力で幾らでも道は開ける。しかし神具で出た結果という物はやはり影響力の有る者なので他者を介在しない方がいいと思われている


 しかし、アルベルトの場合は別だ。圧倒的な民衆の支持、そのうえステータスが低い訳が無いのはこれまでの行動からメネドールも承知している


 ならば、民衆が望む様に公開しようというのも無理からぬ話だ。それほど人気が高く民衆の興味を惹く存在に成ってしまったアルベルトなのだ



「問題はこれよね・・・」


「ああ、これを見せる訳にはいかねぇだろ」


「下手すると王家からの召還状が届きますよ?」



 三人とアベルとの前に広げられた紙。そこにはマーリンが持つ【鑑定】の結果が記されている


 LV   20

 HP  220

 MP  400

 STR  80

 VIT  60

 AGI 110

 DEX 120

 INT 100

 MAG 120

 CAM  90

 LUC  60


 スキル 身体強化

     魔法強化(全属性)

     無詠唱

     上級剣術

     格闘術

     隠密術

     気配察知

     精霊魔法


 加護  慈愛の加護

     武術の加護

     魔法の加護

     精霊の加護


 称号  賢者の守護

     神に愛されし者



「はぁ~五歳でこれって・・・もうベテラン冒険者の領域だぞ」



 バイマトの呟きに苦笑いで答えるしかないアルベルト・・・


 高すぎるステータスで苦労する事が有るとは誰も思わないだろう・・・



『だからやり過ぎって言ったのよ!』


『テヘ?』


『可愛くない!!』



 守護霊のやり取りはアルベルトしか見えない。


 更に苦笑いが深くなったのを三人は不思議そうに見つめていた


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