狼の気持ち『七』
「嘘でしょ?」
あいつはニヤニヤと笑いながら
俺を見てきた
バレたと同時にその顔にムカつく
俺はあいつと目を合わせないように
目をそらす
「やっぱり」
まだ、ニヤニヤしてやがる
「もういいだろ」
少し耐えきれなくてつい声を出す
「せっかく久しぶりに会ったのに元気ないねー」
こいつは相変わらず元気な奴だ
「もしかして私が声をなくしたのは自分のせいだと思ってるの?」
……こいつは俺の心がわかるのかっと疑ってしまうぐらい当たっている。
だけど
半分は当たっているが
半分は違う
その事について引きずってるのはあってるが
今思ってるのは
喜び、焦り、緊張、そして……
恐怖。
俺はこいつと会っていいのだろうか?
また、あの時みたいになるんじゃあないか?
でも、今会えて凄く嬉しい自分がいる
だけど、あんなことを繰り返したくないという
否定している自分がいる
トントン
誰かが俺の肩を叩いてきた
その衝撃で我に返る
(なんだ?) と思い後ろを振り返る
すると、あいつは困り顔になりながら俺を見ながら
「どうしたの?」
と、聞いてきた
どうやら俺がしばらく動かなかったから心配していたようだ
これ以上重い空気にしたくないな
気持ちを隠そうあいつが笑顔になるように
悲しませないように
俺は少し笑顔を作り
「大丈夫。」とだけ答えた
これ以上こんなやつ(自分)に向けて心配して欲しくないからだ。
「本当に?」
…。
「本当に大丈夫だよ」
また、俺は『嘘』 をついた
「なら、よかった。ところで今日一緒に帰らない?」
あいつはコロッと表情を変えて
嬉しそうに俺を誘ってきた