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狼の気持ち『六』
しかも、あいつの反応は笑顔になるだけではなく
今にも大声で叫びそうなぐらい『喜んでいた』
「いっくんなの!?会えて嬉しいよ!」
あいつは〝手話で伝えてきた〟
そうしたら気がついたのか『ハッ!』 とした顔をして
今伝えてきた言葉を急いでメモに書こうとしていた
(そんな事をしなくてもわかるのに…)
そう思いつつ俺はあいつの方をぽんぽんと叩いて
あいつが振り返った時に
「手話でいいよ。わかるから」
何故か俺も手話で伝えた
耳は聞こえるのに。
するとあいつは俺が手話を出来ることを知ると
凄く驚いた顔をした。
「どうして手話出来るの?」
どうしてって覚えたに決まってるのに
「覚えた」
俺はまた、手話で伝えた。
「なんで?」
あいつは不思議そうに俺を見てくる
なんでって聞かれると答えにくい
『お前のために覚えた』 なんて絶対に言えない
と、いうかそんな恥ずかしいこと
死んでも言いたくない。
どう伝えようか……
散々考えたあげく
「趣味で……」
手話が趣味な高校生っているのか?
いや、いないだろう