閑話~タリウス~
「ミスティがとても喜んでいたよ、彼女が作ったチーズケーキがとても美味しかったと」
「それは、良かったですね」
「あぁ、あんなにキラキラしたミスティの笑顔を見たのは久し振りだったよ。彼女には感謝しなきゃいけないね、それに、タリウスとティグリスにもね」
「「もったいないお言葉です」」
ミスティ様がまた、あの笑顔を見せてくれたのは俺達、騎士やこの城で働く者達はとても嬉しいんだ。
その笑顔を出したのは、俺が異界から連れてきた女……マイのおかげだ。
マイを連れてきたのは、2~3日前だがマイはすでにミスティ様と、仲良くなり色々なところで二人一緒に居るのをよく見る。
マイはこの国には珍しい、黒髪黒目のやつで平凡な、どこにでもいそうなやつだ。
だが、俺が何も説明せずこちらに連れてきて、もう元の世界には戻れないと知っても、悩んだのは少しですぐに、ミスティ様のお世話に取りかかった程で、そうとう肝が据わった女だと思った。
「さて、今日も仕事をしなきゃね。マイに機会があれば、僕にもお菓子を作って欲しいと言っておいてくれ」
「分かりました、それでは失礼します」
「失礼します」
俺とティグリスは、ミストラス様の執務室から出た。
「さ、俺達も戻りましょうか」
「あ~またあのむさ苦しい男どものとこか……」
「貴方は団長なんですから、しっかりしてください!それに、そろそろ身を固めたらどうですか?団長なら、選びたい放題でしょう」
「それは聞き飽きた、そっちこそ婚約者とはうまくいってるのか?」
「心配いただかなくていいですよ」
「そうか」
「じゃ俺は、マイさんのところに行ってきますね」
「おう、この前のチーズケーキうまかったって伝えてくれ」
「分かりました」
それから、ティグリスと別れ俺は訓練場へ向かった。
俺は、タリウス・シェーン。
ルチーナ王国の騎士団の団長を任されている。
そして、ブロンドの髪に炎のような赤とオレンジの瞳と、整った顔で女には困らない。
剣の腕も自分で言うのもなんだが、けっこう凄いと思う。
王子に剣の指導をしたのも、俺だしな。
そういえば……マイは、俺に媚売ったりしねぇな……。
俺を見たら大概の女は、媚を売ったり言い寄って来るのに。
自意識過剰なのか?
「「「「おはようございます!団長」」」」
「おう、やってるな」
色々考えていたら、訓練場に着いていたみたいだ。
訓練場では、いつもどうり他の奴らが訓練していた。
いつきても、むさ苦しいよな……。
もうちっと華があってもいいと思うんだが、騎士団の寄宿舎やら、この訓練場で働く者は全て男だと決まっている。
何代か前の騎士団長が、かなりの女好きだったらしく、いたるところに女と一緒にいたとかそれで一時期、他の騎士達もまねして女を連れ込んだらしく、それで寝取ったり、寝取られたりして雰囲気は最悪、団結力も無くなったからそこから女はいっさい入れるなと決まったらしい。
全く、もう少しうまく出来なかったのか当時の団長……。
「団長、今日はどうしますか?」
「そうだな……昼まで訓練して、昼飯たべたら町に巡回にいくか」
「分かりました、団長も訓練に参加しますか?」
「おう、参加する」
団長で、訓練に参加する奴はあまりいない。
ほとんどが、ふんぞりかえって高みの見物だ。
俺は、体を動かすのも好きだし今でも王子に剣の指導をしてるから、時間があるときは訓練に参加している。
さ~て、今日も頑張りますか。