異世界へ2
「初めまして、俺は、ティグリス・バーン。ルチーナ王国騎士団の副団長をしています。これからよろしくお願いしますね」
ティグリスさんは、茶髪に同色の瞳の優しそうな人でした。
「こ、こちらこそ、私は黒霧 舞です。よろしくお願いします」
今更だけど、ルチーナ王国なんてあったかな?
「それでは、あなたにはルチーナ王国の姫のお世話係になって頂きます」
「お姫様の、お世話係?」
「……団長、ちゃんと説明して連れてくるはずでしたよね?」
「あ?あ~そう、だっけ?」
「団長?」
「まさか……そこからですか、あなたはこの人のことをどこまで知ってますか?」
「名前、だけ……」
「……そうですか、名前だけ……」
ん?ティグリスさんめっちゃ怒ってますよね……。
笑ってるけど、目が全然笑ってない!
「どういうことですか?タリウス団長?」
「え、いやー面倒だったんだよー」
「だからって、こんな大切なことを説明せずに連れてくるなんて、馬鹿なんですか!元の世界には戻せないのに!」
「元の、世界?」
「ここは、今まであなたが過ごしていた世界とは異なる世界です。つまり、元の世界にいるあなたの両親や家族に会えなくなった、ということです……」
「家族に、会えない……」
両親にも、お兄ちゃん達にも……真優にも……。
「うそ、ですよね?」
「いや、本当だ」
「そんな、だってあなた何も言わなかったじゃないですか……」
「それは、その、すまなかった……」
「すまなかった?……そう思うなら、私を元の世界に還してください。」
「それは、できない……」
そんなの、おかしいじゃない。
どうして何も説明せずに、連れてきたりしたの?
「おい、大丈夫か?」
「顔色が悪いですよ」
私、これからどうしたらいいの……。
お姫様のお世話係になれって言われたけど……。
「衣食住は大丈夫だぞ、しっかり面倒みてやれるし」
「何も心配は入りませんよ、何かあればタリウス団長に言ってください」
「その……家族と一生会えなくなるのを黙ってて、すまなかった……」
「いえ、私も少し混乱しました。でも、もう来ちゃったのは仕方ないですよ、この世界で頑張ります」
「本当にすみません、うちの団長が……」
「タリウスさん、団長だったんですか?」
「あぁ、改めて……ルチーナ王国騎士団の団長をやってる、タリウス・シェーンだ。よろしくな」
「こちらこそ」
「とりあえず、今日は休んでもらいましょうか色々あって、疲れているでしょうから」
それから、タリウスさんとティグリスさんに部屋まで案内してもらい、ぐっすり休ませてもらった。