拐われて~タリウス~
「団長!マイさん、牢の中に入れられてご飯もろくに食べさせてもらっておらず、ベルリーナ様から暴行も受けており熱も出ている様子です」
「マイ……」
「誰か、ミスティを部屋へ」
ミスティ様には少し、酷なことを聞かせてしまったな……。
それにしても、飯もろくに食べさせてもらってないのか……。
「どうしますか?団長」
「……一度その離宮へ行こう、これからは定期的に食べ物を牢に持ってくようにしよう。こっちの調査が終わるまでは、伯爵と令嬢を捕まえることはできないからな」
「分かりました。薬も用意しておきましょう」
「あぁ、頼む。離宮へは準備が出来しだい出発しよう」
「タリウス、ティグリス。マイを必ず助けるんだ」
「はい」
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「ここですね、ヤングル家の第3の離宮」
ここにマイが……。
「団長!」
「中にマイ以外の者はいるか?」
「先程、警備していた者を眠らせました」
「分かった、それじゃティグリス達はここで待っていてくれ」
「分かりました、これ薬です」
「ありがとう」
マイは俺が思っていたよりも酷い状態だった。
身体中に痣が出来ており、たぶん服で見えないところもすごいことになっていただろう。
とりあえず俺は、マイに薬を飲ませ意識が朦朧としているマイに、もう少し待ってくれと言って牢から出た。
マイの熱は打撲から出たものだろう。
女でありながら、ベルリーナは中々力が強いのだろう。
「あ、団長。マイさんはどうでした?」
「なるべく早く助け出せるようにしよう、打撲やら切り傷が凄い……」
「ヤングル家の調査を早く終わらせましょう」
「あぁ、じゃないとマイの身体がもたない」
「このまま、調査に行きますか?」
「行く、マイの様子はなるべく見に行くようにしてくれ、それからちゃんと食事もやってくれ。……拐われる前よりも痩せてた」
「拐われる前も痩せてましたよ!あれからまた痩せてるんですか!?」
「落ち着け、まだちゃんと意識はあった。熱でうなされはしてたがな」
「そう、ですか……分かりました」
「さ、行くぞ。あと少しだ」
そう、あと少しなのだ。
あと少し証拠が揃えば、捕まえることができる。
「団長……」
「イルか、何か見つけたか?」
「これを……」
「これは、ヤングル家のここ10年の帳簿か……」
「はい、少々気になることがありまして……その帳簿を良く見て頂けると……」
「……三年前から、やけに金が入ってるな」
「はい、そこから伯爵の女遊びも激しくなり娘であるベルリーナ嬢の浪費も、目立つようになっています」
「これは、凄い金額ですね」
「それと、これを……」
「王宮の帳簿……」
「三年前から、見てください」
「どっかに金が定期的に出てるな……まさか」
「そのまさかかと……」
まさか、王宮の金がヤングル家に入っていたのか……。
「これで、いけるな……手引きした奴は?」
「こちらで預かっております」
「よし、今からそいつに話を聞いてヤングル家に乗り込む、イルはマイのところへ追い詰められてマイに手を出さないとは限らない」
「はっ」
イルは隠密部隊の隊長で、これまでも助けられてきた。
とても、心強い奴だ。
「さーて、突撃だ」