拐われて2
「お兄さま!マイが拐われたって、どういうことですか!」
「落ち着け、ミスティ。体に障るだろ」
「落ち着いてられません!」
俺とティグリスは、マイが拐われたという知らせを聞き、すぐに行動したが結局犯人はつかまらず有力な情報も得られなかった。
だから、とりあえずいったんミストラス王子の執務室に集まることになった。
まぁ……犯人は分かってはいる、だが、証拠がない。相手は伯爵だ、迂闊には行動できない。
「ベルリーナ様の家が所有しているところを片っ端から、調べていくんじゃ時間がかかりすぎるしな……」
「また、あの女……手を出してないといいけど」
「出してない、とは思いますが……」
最初に叩かれたところも、最近目立たなくなってきたところだったからな……。
「団長!団長宛に手紙がきてます」
「手紙?誰からだ」
「ベルリーナ・ヤングル様からです」
「ベルリーナからだと?」
俺は手紙を届けにきた奴から手紙を受け取り、内容に目を通した。
“タリウス・シェーン様
貴女の思い人をお預りしております。
帰して欲しければ、次の条件を満たしてください。
・私と婚約をすること。
これさえ、のんでくださればお返しします。
ただし、条件が満たされなかった場合お預りしている方の安否は、どうなるか分かりませんのでお気をつけ下さい。
返答が決まったら、ヤングル家の第3の離宮までお越し下さい。
ベルリーナ・ヤングル”
「また、凄い条件を出してきましたね」
「これは、勘違いだろ。なんでマイが俺の思い人になってるんだ?」
「たぶん、最近団長がマイさんにかまって他の女性のところには、あまり行かなくなったからではないですか?」
「あー、確かに……最近はマイのとこばっか行ってたしな」
「で、どうするつもりですか?」
「ヤングル家を調べる。前からあの家はなんかおかしかったからな……」
最近のヤングル家の者の行動は、どうもおかしいのだ。
貴族、それも伯爵が普段行かないような場所に通っていて、そこで何かの取り引きをしているという情報も俺のところに入っている。
「まずは、外堀を埋めるってことかな?タリウス」
「はい、ミストラス王子。許可を頂けますか?」
「あぁ、許可しよう。ヤングル家が裏で何をしているのかを調べて、マイさんを無事に保護するように」
「了解」
さて、裏でどんな悪いことやってんだろうな……。
ヤングル家は、それなりに歴史のある家だが今の当主であるベルリーナの父は、黒い噂が絶えないのと、俺よりも女好きだという。
さすが、あのベルリーナの父だけあり容姿端麗であるため、女性の方から近付いてくるのもあるらしい。
「団長、今夜また取り引きが行われるそうです」
「よし、ならそこを狙うか……第一団に招集をかけておいてくれ、俺も行く」
「分かりました。第3の離宮にも誰が行かせましょうか?」
「あぁ、隠密部隊に行かせろ。人数は2、3人でいい」
「了解しました。」
もう少し待っていてくれ、マイ。
必ず助け出す、こっちに勝手に連れてきてその上拐われて、お前には迷惑ばかりかけてるな。
帰ったら、なんでもしてやる。
ちゃんと助けに行くから、おとなしくしておいてくれよ。
もし、傷でもあったらミスティ様にますます嫌われてしまうだろうな。
「タリウス団長、行きましょう」
「あぁ」
さて、ここらで本気出さないとな。