拐われて
「ん……あれ、ここ……」
目が覚めると、私は冷たくて硬いコンクリートみたいなところに寝かされていた。
体痛いー、まぁ、こんなところで寝てた訳だしね、無理もないよね……。
ここどこだろ?おまけに、窓がないから昼か夜かも分かんないから、拐われてどれだけ時間が経ってるのかも分からないな……。
コツコツ
足音?拐ったやつかな。
「あら、目が覚めたの」
「ベルリーナ、様」
やっぱり、この人だったんだなー。
まさか本当に、拐うとは思わなかった。
「あのお茶会に参加していた令嬢はね、私と仲がいい人達でね、私が今回の提案をした時も快く引き受けてくれたわ」
なるほど、確か侯爵令嬢だったな……彼女達は、ベルリーナ様の言いなりなんだ。
「何が、目的ですか?」
「タリウス様と婚約するの、最近、女遊びをあまりしなくなったのは知っているかしら?」
タリウスさんが、女遊びをあんまりしなくなった?
「それは、貴女がタリウス様の思い人だからだと噂がたっているわ、だから……貴女を拐って脅せば、婚約して下さると思ったのよ」
そんな訳ないじゃない、ただ仕事が溜まってるだけだと思うんだけど……。
私にかまうのも、多少、責任を感じてのことだろうし。
「なに?言いたいことがあるなら言いなさい」
「仕事が溜まってただけなのでは、ないんですか?何かと忙しい方ですし」
「貴女、最近タリウス様が仕事が終わって一番に行くのが、厨房なのは知っていて?」
あ、そういえば……最近毎日のようにタリウスさん、厨房に来てたな……。
でも、すぐ帰ってたけど。
「でも、すぐに帰ってましたよ?」
「あの方が、毎日通うということが驚きなのです。あの方は、毎日違う女のところに通うのよ。最近は、縁を切った女までいるそうよ」
それって……。最低だよね。
「でも、あの方は私と結婚なさるのよ。」
「……それは、タリウスさんも了承しているんですか?」
「私以上に釣り合う女はいないの、タリウス様は私としか結婚できないのよ」
「それは、ベルリーナ様が勝手に決めていることですよね?」
「なんですって……」
「タリウスさんにも、決定権はあるはずです。それを勝手に決めつけるのは、タリウスさんに失礼です」
「黙れ!!」
パンッ
「いっ!……」
「はっ、貴女にはそれがお似合いよ。せいぜいおとなしく捕まってなさい」
そういうと、ベルリーナ様はここの見張りを頼み、去っていった。
痛いな、血の味がするから口の中切れたな……。
せっかく治ってきてたのにな、前にぶたれたところ……ていうか、ベルリーナ様の爪で頬にも傷できて、血出てるし。
私、こんな巻き込まれ体質じゃなかったと思うんだけど……、こっちに来ていろいろ巻き込まれ過ぎだと思うな。
床冷たいし、硬いからお尻痛いし。
辛いよー……。
せめて、今が何時なのかが知りたいんだけど……。
コルセットも外したいし。
あー、疲れた~。
もう1回寝よ、さっき叩かれたところもいたいし。
助けに来てくれるかな。
また、ミスティ様に心配かけちゃうな……。
そんなことを思いながら、私はまた目を閉じた。