嵐が来た2
「まだ働いていたの?懲りないわね、あなた」
「はぁ……」
そして、今日もまたベルリーナ様に絡まれています。
「全く……いい加減辞めて、実家にでも帰ったら?」
「あのー、私……帰れないんですが……」
「帰れない?あ~そういうことね、ならば私がどなたか紹介しますわ。あなたのような、何の取り柄も無さそうな方でも、誰かは気に入るでしょ」
「あの、そういう意味ではなく……」
「じゃあ、なんだっていうの?」
「あの、私はこの世界ではない……別の世界から来たので、もう帰れないのです」
「別の、世界?」
「はい、タリウスさんに確認して頂ければ分かると思いますが」
「なぜ、そこでタリウス様がでるのです!」
「タリウスさんが、私をこの世界に連れてきたので」
「な、んですって!」
そういうと、ベルリーナ様は何かを考え始めた。
私、早く仕事に戻りたいんだけどな……。
だいたい、なんで私がタリウスさんに好意を持ってるってことになるのかな?
「……今日は帰るわ」
「あ、はい」
そして、ベルリーナ様は綺麗なドレスを華麗に捌きながら、足早に去っていった。
ふぅ~疲れた~。
ベルリーナ様の相手をすると、1日分のエネルギー全部使ってる気がする。
「よう、なにやってんだ?こんなとこで」
「タリウスさん、なんでもないです。ちょっと考え事をしてただけです」
「そうなのか?ミスティ様が探してたぞ」
「あ、そうでした。早く行かないと、ありがとうございました、失礼します」
「おう」
私は、タリウスさんと別れてミスティ様の部屋へ向かった。
ベルリーナ様からの嫌がらせは、とても地味だ。お菓子を運んでいるときに足を引っ掻けたり、私が掃除した場所に、ゴミを撒いたり。私の制服が無くなったり、切られていたり。そんな感じだ。
子供か!と、言いたいところだが相手は伯爵令嬢だ、下手に私が反撃すると逆に私が足元をすくわれてしまうだろう。
ま、とりあえず……これ以上ひどくなったら、1度ティグリスさんに相談しよう。
タリウスさんに相談できないし、ミスティ様は心配症だし。
トントン
「ミスティ様、遅くなりました」
「マイ!大丈夫だった?またベルリーナに絡まれなかった?」
「大丈夫ですよ、ミスティ様。さ、今日は何をしましょうか?」
「今日は、花壇に花を植えようと思って……この間、兄さんがまた新しい花の種をくれたの、だからそれを植えようと思って」
「分かりました」
ベルリーナ様の嫌がらせ、これ以上酷くならなきゃいいけどな……。て、これ以上って何があるんだろう?
殺されたり、しないよね?まぁ、拐われるのは……ありそうかな?
面倒なことに巻き込まれたな……。