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一発ネタSFシリーズ

死刑執行代理人

作者: ミミズク

一発ネタです。

 2000年代後半、先進国の間では死刑の是非に関して喧々諤々の議論がされていた。

 死刑は人道主義的見地を除いても様々な実際的問題がつきまとう。その最たるものが死刑執行人の存在だ。首吊り、電気椅子、薬物投与、どんな死刑方法を用いようとも実際に手を下す人間は必要なのだ。もちろんこれにはあらゆるレイヤーでリスク分散がなされている。実際に死刑に許可を出すのは役人だし、複数のレバーを用いて誰が執行したか分からなくする等のケアもされている。


「今日は待ちに待った連続強姦殺人魔の死刑日でーす!みなさん、盛り上がってますかぁー?」


「「「イェーイ!!」」」


「今日、川澄はるかは新宿駅前に来ていまーす!ちょっと待ち行く人々にインタビューしていきますネ」


 はるかは20代前半の男にマイクを向ける。

「ええ!!すごく楽しみです!!昔は掲示板に書き込むだけだったのが少しだけでも力になれるなんて」


 次は30代後半の女性だ。

「・・私は気が進みません。なんだかやっぱり・・間違ってる気がします」


「「「非国民!!治安悪化に加担する気か!!」」」


 次に男子小学生に聞いてみる。

「しょうがないでしょう。死刑は必要なんですから。国連のお偉方も余計なことをしてくれました」


「ええ、達観している子供もいるようですね!!ではスタジオに返します」


「ありがとうございました。では引き続きスタジオよりお送りします。大津さん、どう思いますか?今回の試みは」


「いや大変有意義だと思いますね。むしろ何で今までやらなかったのか分かりません」


「私なんか今日のためにスマートフォンを新調したんですよ!!」

 キンキン声のおばさんが答える。


「堺さん、新調するのはいいですけどちゃんとアプリ入れましたか?」

 キャスターの田中ミカはキンキン声の堺に確認する。


「え?アプリって何よ!?」


「死刑執行代理人【NEAT】ですよ。はやくダウンロードしてくださいね。もう1時間もありませんよ」


 実際にはもちろん既にインストールを済ませてある。これは世間への説明をかねたアピールなのだ。


「ええ、そうです、そうです。ではみなさんこの画面を開いてお待ちください。待つ間、大津さんにもう一度解説してもらいます」

 ミカはヅラ疑惑のある大津に視線を向ける。


「はい、何度も言いますが死刑の代理は国民の義務です。私達が死刑制度の存続を望むならば、国民はちゃんとその責任を行動で示すべきです。北欧の似非人道家たちに日本人の心意気を見せてあげましょう!!」


 近年、死刑制度は人道的な見地からも犯罪抑止的な見地からも異議が申し立てられていた。とくに死刑執行人に関しては多くの人達から避難を浴びることとなった。

 苦し紛れに日本政府が打ち出したのがこの「死刑執行代理人制度」通称ニートシステムである。

 これにより国民はそれぞれの端末から死刑執行ボタンを押すことができるのだ。


 キャスターは最終確認の言葉をかける。

「ニートシステムではある一定の人数によりボタンが押されなければ死刑は延期されます。みなさん心してお待ちください。・・・それでは10・・9・・8・・・・・3・・2・・1・・」


 そして数十秒のラグののち受刑者の運命は決まった。

こ、これはSFなのか?

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