42話
※2014/09/19 修正版と差し替えました
メイド長が幽閉されてる地下牢ってのは、馬鹿の敷地内の、ちょっと外れにある小屋から入っていける仕組みだ。
まぁ小屋と言っても石造りの真四角の造りで、扉はしっかり施錠できるようになっている。
昼間の内は監視役として留まっている騎士が扉の前に交代で立っている形だが、夜には内側から鍵を掛けてしまっていて外からは何をしているかわからない。
ちなみに教会が残していった騎士は三人。あたしもチラッとみたぐらいだけどね。
で、メイドが言うには夜、腹がへると騎士から夜食を頼まれるのだと。
で、その際に気になった事があり……けれどメイドの自分では勝手な事は出来ないので、あたしにその確認をお願いに来たってことだ。
まぁ助けて欲しいって最初は言ってただけに、彼女も何が行われてるかはなんとなく想像が付いたんだろうけど。
あたしはメイドから預かった鍵を使って地下牢につながる小屋の扉を開けた。
そもそも馬鹿の住む敷地の小屋だからね。当然鍵は屋敷で保管してある。
小屋に入ると地面は石造り。で真ん中辺に床に埋め込まれた木製の扉があった。それを持ち上げると降る階段が現れる。
この地下牢は名前の通り罪を犯した者を閉じ込めて置くためのものらしいけど、最近はめっきりつかわれなくなってたみたいだね。
領内では色々トラブルも多いらしいけど屋敷の周りはまだまだ平和って事だ。
というわけであたしは、そっと階段を降りていく。
地下はあたしが立ち上がってもまぁまぁ余裕があるぐらいで、通路の壁には台が掛けられていて、夜はそこに蝋燭を固定して灯りとする仕組みだ。
で、今は通路内でその蝋燭の灯りがゆらゆらと揺れていた。牢屋は全部で三つあるようだ。一つ一つの牢は割りと広めにも感じる。
設備といえる設備が何もないってのも理由かもしれないけど、数人纏めて閉じ込めても大丈夫なよう設計されてるみたいだからそう見えるのかもね。
まぁそんなわけであたしは蝋燭の灯りを頼りに奥へと進んでいったわけだけどね。
「おらぁ! どうだこら!」
「全く、こ汚ねぇ淫売の癖に生意気なんだよてめぇは」
「あん? なんだその顔は? 貴様! 聖騎士団たるわれらにそのような態度でいいと思っているのか! おら! 罰だ! もっと――」
…………ふぅ。まぁメイドから話は聞いて予想はついてたけどね。
しかしまぁトーゲン教だか聖騎士団だかしんねぇけど男は大概これなのな。これもテンプレってやつか?
あ~あ、しっかし脱ぎ、ていうかありゃ完全に破り捨てられてるね。あのボロボロぐあいからして、暫く服着させてもらえてないのかね? 肌も結構土とかで汚れちまってるし。まぁ別にあたしが気にすることでもないけど。
……さてっと。まぁ正直このまま帰ってもいいんだけどね。
……全く面倒だね。
「何をされているのですか?」
あたしが声を掛けたら三人同時にギョッ! とした顔で振り向いてきたね。
一人はまぁまぁ身長のある筋肉質なハゲ、もう一人は中途半端なデブ、最後は背の低めなトカゲ顔だ。
「こ、これはマリヤ・メルセルク様!」
言ってハゲが、あたしを向いてきた。
で、他の二人もまずいとでも思ったのかね。弾けるようにハゲの横に並びだした。
開放されたメイド長は一旦横に倒れたね。でもすぐに起き上がって、はぁ、はぁ、と荒い息を立てながらこっちを睨んでくる。
お~こわ。
「し、しかし神の使いたる貴方様がなぜこのようなところまで?」
戸惑った様子でハゲが聞いてくる。どうもこの三人ではこいつが一番偉そうな感じだ。ついでに性欲は強そうだね。まぁ基本ハゲは性欲が強いって言うしね。しらんけど。
「少々気になる話を耳にしまして……夜な夜な地下牢から妙な声が聞こえると。それで様子を見に参ったのですが……で? これは何を?」
三人共顔を見合わせてどっか狼狽えてるね。てかすっぱでそんなもんぶら下げて、今更あわてても仕方ねぇだろ。
「こ、これは罰です!」
お、今度はトカゲが言ってきたね。
「そ、そうであります! これは神罰なのです!」
で次いで半端デブと。
「二人の言うとおりでございます! 何せこの女は神の使いたるマリヤ・メルセルク様をよりにもよって魔女などと臣民に吹聴して周り、貴方様を貶めようとした悪しき罪人でございます!」
てか神の使いの目の前で神罰ってのもなんだけどね。
「ですから我々は、この女が二度と神の使いたるマリヤ・メルセルク様に対して今回のような邪心を懐かぬよう! そして二度と生意気な口が聞けぬよう! この身を持って悪しき精神を浄化させるべく努めておる次第であります! それこそが神罰であり、神の使いたるマリヤ・メルセルク様であればご理解頂けることかと」
お前ら一体どこの新興宗教だよ? なんか怪しい薬でもやってるんじゃねぇかって心配になるレベルだぞ。
でもまぁ、とはいってもようは。
「何か難しくてよくわかりませんが、簡単に言ってしまえば、二度と歯向かうことのないよう、調教して屈服させようとしているという事で宜しいのですよね?」
あたしの言葉に三人が目を丸くさせる。
「あ、いや、そのような……」
「別に私に遠慮などする必要はありませんよ。正直私だってその女には色々と酷いことも言われましたし、その上今回の魔女呼ばわり。いい加減腹に据えかねていたところです」
あたしの言葉に三人は再び顔を見合わせた。
「あの、それはつまり?」
「判りませんか? もし貴方達がそこのメイド長を屈服させられると言うのなら、是非この目で見届けようと思っているのですよ。私はそのために来たようなものですから」
このあたしの言葉にハゲが嫌らしく唇を歪めた。
「ふはははははははっ! 流石! 流石神の使いたるマリヤ・メルセルク様だ! よく理解してらっしゃる!」
大口あけて、全く下品な笑い方だね。
「さぁ! 神の許しが出たぞ! お前たち! この女に再び! 罰を!」
残りの二人も嫌らしい笑みを浮かべながら、三人が再び、罰とやらを再開する。
メイド長のあたしを見る目つきが怖いね。
で、奴らが再開したけど、メイド長はその後は声の一つも漏らさず、気丈にも奴らを睨み続けている。
「ところでマリヤ様。知ってましたか? この女、三十にもなるってのに未だ男を知らなかったのですよ」
「全く。シスターでも実際は三十ぐらいまでには男ぐらい知ってるってのに。マリヤ様を貶めようとした愚女のくせに何を大事にしてたんだか!」
「まぁそれも我ら三人によって失われましたがね! まぁ教会の聖騎士である我らにその身を捧げたのだから、これも神のお導きという奴であろう」
全く何が聖騎士なんだか。性騎士の間違いだろって。
しかも、メイド長はもう一言も声も漏らさない。眉間に皺を寄せて、相手を睨みつけるばかりだ。全く、しょうがないね。
情けないったらありゃしない。
本当に――
「もういいですわ。やめて下さって結構ですので」
あたしはとりあえず微笑み、首を少し傾けながら奴らに向かって言った。
すると、へ? と間の抜けた顔で三人が振り返る。
「ですから、もう、やめろと言ってるんだよ。聞こえねぇのか? ハゲ」
もう取り繕ってるのも馬鹿らしいから、素で言い放った。言われたハゲが目を丸くさせている。
「お、おっしゃっている意味がよくわかりませんが……それにその口調は?」
メイド長から離れてあたしへ向き直る。
「悪いけどね。これが素なんだわ。なんかお前らみてると、言葉選んでるのも馬鹿らしくなってね。てか、そこの二人もいい加減みてらんねぇから、さっさとやめな」
あたしの言葉に、みぐる、しい? と二人が其々いって目を丸める。
そしてメイド長を横に投げるようにして放り、ハゲの近くまでやってきた。
「どういう事でしょうかな? まぁ言葉遣いはおいておくとして、やめろとは……マリヤ様も言ってましたよね? この女には腹を据えかねていると。それとも、やはり同じ女だから見てはおけなくなったとでも? ご自分から我らを煽っておいて、流石にそれは……」
「ば~か。おまえらほんと頭悪いね。わたしがその女に同情なんてするわけねぇだろ」
腕を組み言い放つ。三人はあたしの発言に腹が立ってるのか、血管がピクピクと波打ってるね。
「でしたら、なぜ? 理解に苦しみます」
「無駄だからだよ」
無駄? と三人が間抜け面で声を揃えた。
「お前らさ、あたしが何ていったか覚えてないのかい? あたしはその女を調教して屈服させられるというなら、この目で見たい。そう言ったんだよ」
ハゲがハゲを擦りながら、ハゲ息を付いて、
「ですからこのようにして三人でしっかり調教をしてみせてるではないですか」
とハゲた事を言う。
「調教? だったらお前らそこの女を良く見てみな。全く屈服する様子もなく、寧ろ更に輪をかけて反抗的な目になってる。さっきから見てても声の一つも漏らしちゃいない。あんたらこの行為を何日も続けてんだろ? なのにこれって……はん! 鼻で笑っちゃうね!」
ハゲが歯をむき出しにギリギリと噛み締めている。しかしそれでも一応感情を抑えるように表情を取り繕いながら、あたしに聞いてきた。
「だったら、どうしろと言うんですかね?」
ハゲだなほんと。こいつ頭んなかもハゲだな絶対。
「何もないよ。だからやめろといったんだ。あんたらみたいなヘタクソが、何をしたところで屈服なんてさせられやしないよ。そんなものを見続けるほどあたしもヒマじゃないんでね。無駄な事は嫌いなんだよ」
三人の握りしめた拳がフルフルと震えている。よっぽど悔しいのかね? ふん。一丁前に悔しがる暇があったら体位の一つでも覚えとけハゲ。
「いくら神の使いといえど、それは少々言いすぎでは? 大体ちょっとみたぐらいで、一体何がわかると――」
「わかんだよ馬鹿。ビッチなめんな」
「ビッ――チ、何を言ってるかがイマイチわかりませんが、そもそもこれは調教でもあり罰なのです。快楽だけではなく苦しみも」
「勝手な言い分で言い訳してんじゃないよハゲ! デブ! トカゲ! あんたらのやってるのはな、ただ女使って自分の快楽みたそうとしてるだけなんだよ。全く神罰だなんだと聞いて呆れる。腰ふるだけならあんたらじゃなくても、その辺の畜生連れてきてやってりや同じ事だろうが。いや寧ろそっちのほうがまだいい働きするかもね。あんたらのその無様な腰つきなんかよりは犬の方がまだマシな働きするよ!」
三人の顔が赤く染まっていき、唇も拳も更にワナワナと震えている。
「なんだい? 一丁前に悔しいのかい? ふん! 何を生意気に! てめぇら三人雁首揃えて女一人満足にいかせられもしないくせに悔しがるなんて百五十万年早いんだよ!」
「ぐ、ぐぬぅうう!」
おお、おお、随分とまぁ、三人揃って歯ぎしりして。全く使えねぇくせに!
「判ったらお前らもう去れ。あたしはワザワザそんなキタねぇケツが見たくて来たんじゃないんだからね」
「冗談じゃない!」
ハゲが声を荒らげた。なんだい全く。しつこいね。
「そこまで言われて我ら三人。はい、そうですか、と引き下がるわけにはいかぬ!」
しょうがねぇだろ。テメェら下手くそなんだから。
「大体この気持ちをどう収めろと言う気か!」
知らねぇよ。マスこいてろ。
「そもそもこの女の監視を任されてるのは我ら! 去れと言われて去れるものではない!」
あたしがいいって言ってんだからいいんだよ。
「……大体、いくら神の使いだからと口がすぎやしないでしょうかね? そもそもそこまでいう貴方はどうなんだって話ではありますよ。大層な事を言われてますがな」
「そうそう、言うだけなら誰だって簡単ですしな」
「まぁ証明してくれるというなら話は別ですが、とは言えそんな事は無理でしょうがなぁ」
こいつら口元吊り上げて、開き直りやがったな……たく。
あたしは雁首揃える三人の前でこれみよがしにため息を付き、そして睨めつける。
「な、なんですかな? そのような目をされても――」
「わかったよ」
へ? と三人がまた間の抜けた顔で声を揃えた。
「そこまで言うなら格の違いってのをみせてやるよ。あんたらがどれだけヘタレかって事もあわせてね」
あたしがそう告げると、しかし、どうやって? なんてヌルいことを言い始めやがる。
「一分だ」
「え? 一分?」
「そうだ。あんたら三人纏めて、あたしが、この口だけで、一分で逝かせてやるよ」
口を開け舌を指さし、あたしがそう宣言する。
すると三人は腕を組み、お互いの顔を見合わせながら、がっはっは! と下品な笑いを奏でだした。
「全く我らもなめられたものですな」
「よりにもよって一分とは」
「で? そこまで言ってもし出来なかったら、一体どうするおつもりで? まさかごめんなさいで済ますつもりじゃないでしょうな?」
「その時は好きにしろ」
うん? とハゲが顔を眇めた。
「もしあたしが一分で逝かせられなかったら、あたしの身体を好きにして構わないっていってんだよ。いくらでも好きにさせてやる。勿論その事を誰かに訴えたりもしないよ」
あたしのその言葉に、三人の唇が歪み、どこか興奮したような表情で更に一歩あたしに踏み込む。
そして、そそり勃ったソレを見せつけながら三人が順番に口を開く。
「面白い!」
「教会の種馬とも名高い我が三人!」
「たかが一分で満足させられるなど、やれるものなら、やってみろ!」




