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41話

 散々あたしの事を魔女だ何だといっていた教会の連中や領民は、あたしの股を拝むだけ拝んだら帰っていった。


 ……と、まぁ実際は教会に関しては、その後ちょっとした話はあったんだけどね。

 あの、あたしに火の玉お見舞いしようとした支部長も、一旦話を持ち帰ってあたしに関する説明を行わなければいけないというし。


 まぁメイド長以外はあたしを神の使いだか女神だかって感じに信じきってしまったからね。

 魔女としての疑いがとりあえず晴れた事に関して文句をいう奴は、メイド長を除いて一人もいなかった。


 あのロリパイとモジオにしても、周りの雰囲気に飲まれたのか、それからは何も口にしなかったね。まぁその辺はやっぱガキだね。


「マリヤ様の事に関してはこのトーゲン教メルセルク支部支部長イメクラがしっかり説明して差し上げます!」

と帰り際妙に張り切ってたのが、散々不埒だ醜悪だ淫売だと怒鳴り散らしていた支部長だ。

 てか名前はここで初めて知ったんだけどね。


 しかしこの世界の奴らの手のひら返しっぷりはすげぇよなマジで。

 あたしの事もそうだけど、何が凄いってあたしを神の使いだ~女神様だ~! と崇め始めた瞬間から、メイド長に対する目が変わったこと。


 何せその後は、メイド長は女神様を貶めようとした女で、神に仇なすとはメイド長こそが裁かれるべきだ! とちょっとした騒ぎになったぐらいだからね。


 教会の奴らもあたしの変わりにメイド長を捕らえて、連れ帰ろうとまでする始末だったんだけど。


 ただこれには、馬鹿とスラパイがあたしが捕まりそうになった時と同じように、反対を示した。

 これまで屋敷をきりもりしてもらった事もあって、じゃあハイそうですね、って気持ちにはなれなかったようだね。全く二人共お人好しだよ。


 あたしに関しては、ほんとそのまま捕まってくれても構わなかったんだけどね。スラパイと馬鹿があたしにまで頼み込んでくるからとりあえずは、慈悲も必要、とか適当に合わせておいたけどね。


 まぁ結局は教会の正式な判断が下されるまでは、メイド長は屋敷の地下で幽閉し見張りとして何人かの騎士を残すという形で決着となったわけだ。ヤレヤレだね。





 で、なんとか無事難を逃れたあたしではあるのだけどね。


「まさかマリヤが神の使いであり女神だったとは……」

「これまでの非礼お許しください」


 とまぁ、ロリパイとモジオの二人にも頭を下げさせながら、スラパイと馬鹿がそんな事を言ってきたわけだ。ほんと頭を床にこすりつけるぐらいの勢いだよ。


 まぁあたしもそこで、苦しゅうない、とか言ってみようかと思ったけど、自分でもなんか寒いからやめた。


 てか、たまにあう人間に崇められるぐらいなら、まぁそれもアリか、と思えなくないけど、しょっちゅう顔を突き合わせる二人に、イチイチこんな国宝でも扱うような態度取られてもね。正直逆にウザいし。


 だからあたしは犬にも隣についてもらって、この際だからとぶっちゃけた。まぁつまり神の使いや女神なんてのもハッタリだったって事をね。勿論ガキ二人は退出させたけど。


「そうだったのか……」


「でもマリヤ様が神に選ばれたのは事実なのでございましょう?」


「それに関しては、天寿を全うすれば皆にチャンスがあるような形かと思います。それに別に私は神の使いとしてこちらの世界に参ったわけではありませんので、その辺を理解して頂けると……ですので私に関しては、どうぞこれまで通り接して頂けますと嬉しいですわ」


「という事はこれまでどおり夜をともにすることも可能ということか?」


 お前は最初に口にだすのがソレかよ。


「マリヤ様とあんな事やそんな事もこれまで通り、ウフ、ウフフ……」


 笑い方がなんかキモいぞスラパイ! てか寧ろ興奮しちゃうぞ! みたいなそのノリなんだよ!


「それにしてもアレックス。お前はとっくに知っていたとはな」


 鼻で息を吐き出しながら馬鹿が犬に言った。まぁ別に怒ってるという感じではないけどね。


「黙っていたことは申し訳なく思っております。いずれはとは考えておりましたが、タイミングを逃してしまっておりました」


「メルセルク様。あまりアレックスを責めないであげて下さいね」


 一応あたしからもそう言っておく。


「勿論責めるき等はないさ。ただ私にではなくアレックスに最初というのが……いやこのような事を気にするようでは領主失格であるな」


 まぁそれは、あんたの犬がデバガメだったのが原因なんだけどね。


「それにしてもメイド長がこのような行為をするなんて……」


 スラパイが寂しそうな表情を浮かべる。確かに話を聞く分には領民達を駆り立てて、教会に進言するよう持っていったのはメイド長だったようだ。まぁ会話からそんな気はしてたけど。


「マリヤ。このような目にあった君にこんな事をいうのはアレなのだが、メイド長をあまり恨まないでやってくれないだろうか?」


 馬鹿がそんな事を言ってきた。まぁ一応、はい判っています、とは返しておいたけど、色々言われてるし魔女扱いまでされていい気分はしないけどね。


 まぁだからって、あたしからこれ以上何かする気もないけど。大体女から恨まれるのは過去には何度かあったしね。

 

 てかやっぱこいつらお人好しだよなぁ全く。





◇◆◇


「おねぇ様とお別れするのは寂しいですぅ……」


 マセコは馬鹿の屋敷に三日ほど滞在していたけど、橋が直った、という知らせがあり、いよいよあのショタの領地に戻る事となった。

 

 ただワーウルフの件もあって、一人で帰らせて何かあったら大変だという話もあってね。で、犬の部下が何人か護衛に付くことになったみたいだね。


 まぁこういう時には冒険者ギルドがあれば楽なんだろうねとも思えるけど、で、その手配も終わって、今あたしの目の前では涙を浮かべたマセコが立っているってわけ。


「私マリヤおねぇ様と離れたくないですぅ~」

 

 しゅんとした表情で瞳を伏せる。全くしょうがないねぇ。


「マリヤ、おねぇ様?」


 あたしはそっとマセコの小さな身体を抱きよせる。すると見開いたまん丸の瞳で、あたしの顔を見上げてきた。


「私も寂しいですが、これでお別れというわけではありませんよ。貴方さえ良ければ、いつ遊びにこられても構いませんし、いずれはまた私の方から出向く事もあるかもしれません。その時はまた旅を楽しみましょう」


 そう言ってあたしが微笑んでみせる。


「そうですよカグラちゃん。私もいつでも歓迎いたしますから」


「勿論私もだ。自分の屋敷だと思っていつでも遊びにくるといい」


「このアレックス。騎士としていつでも出迎えにあがりますぞ」


 あたしと皆の言葉にマセコの表情も花が咲いたみたいにパッと明るくなった。


「判りました! 私戻ったらまたすぐにでも遊びに参ります!」


 ……うん。まぁ確かにいつでもとは言ったが、それはどうかと思うぞ。





 さてっとマセコの見送りも終わって、これでまたいつもの屋敷ライフが戻ってくるというわけだけどね。


 だけど……。


「お風呂に入ろうかと思うのですが準備の方は可能かしら?」


「も、申し訳ございませんマリヤ様! 水の補給の手配をうっかり……本当にもうしわ、申し訳ございません!」


「あのドレスはどこにいったかしら? 今日はそれにしてみようかと思ったのですが」


「も、申し訳ございません! 洗濯がまだ済んでおりませんでした! すぐにやってまいります!」


「あのベッドの染み……」

「申し訳ございません! 申し訳ございません! 申し訳ございません!」


 と、なんともメイドのミスや細かい見逃しが、やたらと目立つようになってきた。

 この理由は、まぁ明白だ。何せメイド長は現在地下牢に幽閉中だ。


 その影響が早くも出てきたってわけ。おかげで料理の方も何か薄味だったりするし、だから早速そっちは犬にも頑張って貰ってるけど、掃除とかも細かい汚れが目立ったりして、改めてみるとメイド長はマジで出来る奴だったんだなって感じだ。


 いつ仕事してんだ? とか思った事もあったけど目立たないように、それでいてしっかり仕事をこなしていたのが、やはり彼女の凄いとこだったのかもしれないねぇ。


 でもまぁこればっかりはねぇ。う~ん、でも引き継ぎぐらいさせとくべきだったな。て、それも無茶な話か。


「あ、あの……」


 そんな事を考えながら歩いていたら、青い髪したちょっとロリっぽいメイドがあたしに声を掛けてきた。

 

 で、何か? て感じに聞いてみると、口に指を添えて、なにか口ごもっている。

 なんだよはっきり言えよ。


「その、このような事を神の使いたるマリヤ様に申し上げるのは図々しいことかもしれませんが……」


 だったら言うなよ。と言いたくもあるけどね。仕方ないから。


「構いませんよ遠慮無くどうぞ」


 にっこり微笑んで返す。なんかちょっと頬が紅くなったな。流石あたしの美スマイルだね。造りだけど。


「あ、の。恐らくマリヤ様はメイド長の事を許してはいないかもしれませんし……このようなお願い、でも! 出来れば……」


「出来れば?」


「出来ればメイド長を助けて上げて欲しいのです!」


 助ける? はぁ? 何言ってんだこいつ――

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