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29話

大失態

申し訳ありません。本来掲載予定だった12話が

1話まるまる抜けていた事に本日気づきました。

その為、昨日までの12話のところに別の12話を追加しております。

結果○話の表示が12話以降一つずつズレております。

本当に申し訳ありません。今後はこのような事がないよう気をつけて参ります。

 ショタの口から次いで出てきたお願いというのは、

「実はベンツの領地に冒険者ギルドを建てるのを私はあいつに進めているのだけどな。その件をマリヤからも説得してくれないものかと思ってね」

ということだった。


 まぁ正直あたしとしてはそんな事か、って感じだったんだけどね。夜伽してくれとかだったら、どう、焦らそうかとも思ったけどね。

 

 てか、まぁそっちの方があぁやっぱ中身はチョロいんな男か、とも思えたんだろうけど。


 でも一応は返事をしないといけないだろうし――と思ったんだけど、そこへ丁度料理がやってきた。


「おお、来たね。じゃあとりあえず頂くとしようか」


 ショタは相変わらずのニコニコ笑顔で、あたしに料理をすすめてきた。


 こっちも腹は減ってたし、ショタが手を付けたのを確認してナイフとフォークを取る。

 丸皿には鶏肉らしきものがソテーされたものが乗っていた。

 付け合せには野菜がついてきている。


 味付けは塩だけっぽいけど、肉自体が美味しいから不満はない。

 パンも白パンで柔らかいな。ランチとしては十分すぎるほどだと思う。


 で、食事も落ち着いてきて、紅茶を楽しむショタの幼い顔を眺めながら、あたしは聞いた。


「どうして私に?」


 一応言葉の端に、もっと適切な人がいるだろう、という含みをもたせた。

 こいつならそのニュアンスにも気づくだろう。


 でも不審な顔は見せない。あくまでちょっと気になった程度に、ほほ笑みは絶やさないでおこう。目の前のショタと同じように。


「これは私の勝手な憶測ではあるのだがね」


 ショタは少し顎を引いて、カップをおいた。小さな口から言葉が継がれる。


「ベンツのやつは正妻であるアリス夫人より、マリヤの方を愛しているように思えるのだよ」


 うん。成る程ね。でも、まぁそれはわかりそうなものか。素直に応えるわけにもいかないけど、全くもってそのとおりだし、更にいえばスラパイだってあたし寄りなわけだしね。


「それは流石に――」


 あたしは苦笑してみせた。一応は否定を示しておかないとね。


「違うのかな?」

「私からはお応えしかねる質問ですわ。勿論あの人がそう思ってくれているのなら嬉しいですが。でもそれはアリスにも悪い気が致します」


 そう言うと、ショタが、あっはっは、と楽しそうに笑い出した。


「全く君たちは不思議な関係だな。昨日も思ったが、中々あぁ仲良くは出来ないぞ。まるで姉妹のようだ」


 姉妹、ね。全くこのショタも勘がいいんだか悪いんだか。


「いや、とはいえ急に不躾なお願いをして悪かったな。ただそこまで難しく考えてもらわなくてもいい。それとなくギルドに関して好意的な話をしていてくれればいいのだ」


 それとなくね。


「それにマリヤは先程もギルドに興味があったようだしな。その気持をそのまま言ってくれればベンツのやつにも通じるだろう」


 まぁ確かに暇つぶしにはいいかなとか思ったけどね。しかしこいつもなんだってそんな人の領地の事に拘るんだか。


「……私とベンツは幼い頃からの仲でな。だからこそあいつの事も自分の事のように心配でな。領地についても最近は色々トラブルも多いと聞く。農民が多数を占めるベンツの土地では戦士も中々集まらない。だからこそギルドがあれば随分楽になると思うのだよ」


 ……顔に出てたかな? 疑問に思ってた答えがそのまま返ってきた感じだ。


「……チヨダーク侯爵殿下にそこまで思って頂けるとは。あの人もそれを聞いたなら大変お喜びになると思います」


「ハハッ。どうだろうな」


 軽く笑みを零して、ショタが紅茶を啜る。

 その姿を眺めながら、ただ、とあたしが発すと、上目にこっちを見据えてきた。


「冒険者ギルドの設置には費用が掛かると伺った記憶がありますわ。もしかしたらそれを気にされてるのかも――」


「いや、それなんだが。私はギルドを設置するなら、とりあえずの初期費用分は融資しても構わないと伝えていてね」


 はぁ? マジか? 


「だが、それでもどうにも迷いがあるみたいでな」


 そう言ってまたショタは笑ってみせる。


 しかしねそうなるとまた話が妙な感じだよなぁ。なんともモヤッとする感じだねっと。





◇◆◇

 

 昼食を終えた後は、そのまま宮殿へと戻ってきた。一通り街も見て回ったし、今日はまた、夜の宴に参加しないといけないしね。


 で、ショタとはそのまま判れた。BLは最後まで不快そうにあたしをみてたけど、そんなにショタが好きなら口説いてみればいいのにと思う。他人事だけどね。


 部屋に戻る途中では犬にもあった。

 どうでしたか? と聞かれたから率直な感想で、疲れた、と言っておいた。


 因みに馬鹿はまだ休んでるらしいね。情けなさすぎて笑えないレベルだマジで。


 ショタがなんか言ってたギルドの事は、まぁとりあえずは放っておく。

 その内確認ぐらいするかもしれないけどね。


 部屋に戻ったらメイドが何か必要な物は? とか聞いてきたから風呂だけお願いした。


 流石にデカイだけあって部屋にもしっかり設置されている。

 しかも身体とか洗いにくるんだよね

。マジかよって思ったよ。どこの風俗だって話だ。


 で、湯から上がってさっぱりしたとこでふわっふわのベッドにゴロリ。そのまま瞼を閉じたらもう完全に意識が飛んだ。





◇◆◇


 メイドに起こされた時には、もう宴の始まる時間との事だった。


 色々手伝ってもらいながらも着替えを済ましていく。今日ショタから貰ったネックレスも忘れない。首から胸元までを被うようなゴールドに貴石が散りばめられている。


 これだとドレスはあまり派手なのは向かないね。昨日と同じってわけには流石にいかないから、柔らか系の色でっと。


 うん、まぁこんな感じかなっと。


「ベンツ・メルセルク伯爵はまだ少し体調が優れないようで、後から参られるとの事です」


 出る直前にそうメイドが教えてくれた。

 ほんとあいつ、どんだけだよ……。 


 スラパイには不自然に思われないよう、良くなるまで見ておいた方がいいとは言ってるけどね。


 で、犬も勿論騎士として主の側に付いてるだろうから、とりあえずあたし一人で会場に向かった。


 と言っても二回目ともなると、正直見飽きた感がある。

 一応、昨日のが終わった時点で帰った連中もいるらしいから、入れ替わりはあったようだけどね。

 

 でも貴族なんてみんな似たようなもんっしょ。


 そういえばショタの奴、今日は随分偉そうなのに囲まれてるな。こっちから近づく理由もないし、馬鹿とかがくるまで適当に摘んだり飲んだりしておくか。


 て、思ってたけどね。あたし一人となったら、なんか声かけられたりするんだよね。あぁウザい。


「初めまして。確かマリヤさんでしたわね?」


 真っ赤なドレスを来た女が、ワインを両手に声を掛けてくる。なんか妙にケバい女だな。

 年は二十四か二十五ってとこかな?

 地方の安いキャバクラにでもいそうな感じの女だ。


「お近づきの印に……」


 どうやら乾杯しましょうって事みたいだね。とりあえず差し出されたグラスを受け取ろうとしたけど。


「きゃ! ごめんあそばせ!」


 まぁやけにワザとらしく叫んで、指からグラスを放しやがったんだなコレが。


 で、ガシャァーンって音が耳に残るけど。


「あの? 大丈夫でしたか?」

 

 あたしは瞬時に赤ドレスの背中側に回りこんで、その肩を少し引いた。ムカつくけどね。とりあえず心配してる振りをする。


「素敵なお召し物が汚れずに済んで良かったです」


「え? あ、そうね、ありがとう。貴方は大丈夫?」


 どの口が言ってんだか。


「はい。でもお気になさらず。私などは汚れてしまっても誰も気にはしませんわ。貴方様のように素敵なドレスを着こなしたり出来ませんし。本当、情熱的ないいお色」


「そ、そう? でも貴方だって中々の者よ。もう少しこういった場を経験して洗練されれば、きっとお似合いになると思うわ」


 余計なお世話だし、こんなピエロが着るようなもん着たくねぇよ。お前は鶏の鶏冠か。ケバい化粧だからドレスも毳毳しいってどんだけだよって話だ。


 たく、とりあえず少し話して更に移動する。 そしたら今度はどこかから湧いてきた男どもが寄ってきた。


「いやぁ。昨日見た時から美しい方とは思っていたのだけどね、こうしてお話が出来て光栄だよ」


「まぁお上手ですわ。でも私も貴方様の事は昨日お見かけして、特に存在感のあられる素敵な方と思っておりました。それに、とても優しそうで……奥様が羨ましいです」


 デブってだけで目立つんだから役得だよな。まぁ優しそうというよりやらしそうって感じだけど、ハゲでデブでチビって、マジで奥さんに同情するわ。

 んで、少し話して爵位は男爵とか。ヤベッ、まじでもう男爵イモにしか見えねぇ! 吹き出しそうになったのをこらえながら適当に話を切り上げる。


「そのネックレスといい、ドレスといい良く似あってるぜ。よかったら今度夜の街を僕の馬車でトゥギャザーしないかい?」


「ふふ、面白い御方。それにとても個性的なお召し物でセンスの良さが滲みでておりますわ。私などでは不釣り合いかもしれませんが、機会があれば是非――」


 また変なのが寄ってくるもんだ。金と銀のタキシードってだけでも目がチカチカすんのに、オマケにラメ入りってどんなセンスしてんだよ。おまえは人間ミラーボールか。

 更に口調が寒すぎる! こんな奴とじゃ一緒に歩くだけでも恥ずかしそうだな。

 もし付き合うにしても、見返りが無いとやってられねってマジで。


 とまぁこんな感じに寄ってくる男どもをあしらうだけでも大変だなほんと。

 とりあえずそれなりに地位のある男も多いみたいだから、それなりの期待感は持たせておくけどね。


「ちょっとあんた!」


 突然この場にそぐわない怒鳴り声が響いてきた。どうもあたしがターゲットみたいだね。

 で、振りかえったら、これまた、なんだこいつ? 女なのか? ってのがドシドシって効果音が付きそうな勢いで近づいてきた。


「聞いたわよ! うちの夫に色目使ってるらしいわね!」


 なんだこのモンスターペアレント。全くウザいな。しかもガミガミ言ってるのを聞いてる限りだと、旦那ってあの男爵イモじゃん。

 よりによってアイツかよ。

 この中で尤も最低ランクの男だぞアレ。


「あんたの事は噂で耳にしてるよ! 伯爵を妻から奪った泥棒猫で、侯爵殿下にもその優しさにつけこんで色目も使う悪女だってね! その上うちのまで奪おうとは、なんて恥知らずな!」


 馬鹿の事はともかく、ショタのことまで噂になってんのか。

 やっぱ個人的に案内とかしてもらったからかね? 


 しかし顔真っ赤にさせて、噴火寸前の火山みたいになってんな。全体的にゴツゴツしてる感じだし。


「申し訳ありません奥様。誤解を招くようなはしたない真似をしてしまいまして。とても話が面白くて素敵な御方でしたので、つい話し込んでしまいましたわ」


「ふん! そうやってたぶら――」

「でも、お聞きした通りの素敵な奥様ですわね」


 とりあえず文句を言いかけたところに言葉を重ねてみたら、眼を丸くしてこっちを見てきた。え? 素敵? と瞳をパチクリさせてんな。


「はい。正直申し上げると、私すこしだけ焼いてしまいました。だって幸せそうに語るんですもの。奥様はとても頼りがいがあって、自分にとって最高の女性と」


 勿論嘘だ。あの男爵イモはずっとあたしの胸ばっかみてたからね。ほんとキモイ最低の旦那だよ。


「でもお話のとおりでしたわ。とても旦那様思いの優しくて聡明な御方……私お声を掛けて頂きとても光栄に思いますわ」


 旦那も旦那なら嫁も嫁だよな。声とかマジで貴族か? ってぐらいに下品だし、小うるせぇヒステリックババァッて感じで、今度は逆に男爵イモが可愛そうだなって気にもなってきたよ。


「あ、あの人がそんな事を? いやだわちょっと。照れるじゃない」


 頬に右手を添えて、もう片方の手で、や~ね~って完全に下町とかのおばちゃんって感じになってんなコイツ。


「うふふ。笑顔もとても素敵ですわ」


「あらそう? それ良く褒められるのよ」


 笑うと横に口が広がってまるでガマガエルだな。口がやたらでかいし。顔平べったいし。これで褒める奴がいるなら目医者につれていった方がいいなマジで。


 でもまぁ気分は良くなっったみたいだねっと。はぁめんど――

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