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21話

2014/09/19 修正版と差し替えました

 腕立てしながら、あたしに弄くられて、それでも犬のやつは冒険者について教えてくれた。


 どうやら確かにこの世界には冒険者というのがいるみたいだね。それにギルドってのもあるようだし、オタラノとオタゲーで見たのと一緒だなって思えた。


 ただそれでも一つだけ気になる点はあったんだよねぇ。だってさ。


「でもあの馬鹿の領地で冒険者ギルドなんて見たこと無いけど、どっかの村とかにあんの?」


「ワ、ン、い、え、う、くぅん、その、メルセルク様の領地には、はぁ、はぁ、ギルドがありません、から、な」


 成る程ね。そりゃないんだったら判るわけ無いよね。でもなんでだろ? あったらなんか暇つぶしになりそうかなと思ったんだけどな。とりあえず理由を犬に聞いてみる。


「ワン! 四九七……その、メルセルク様の、りょ、四九八……あ、そこは、はぁ、はぁ、えぇ、領地は平和、でしたので、必要ないと、は、判断されて……ご、五〇〇ぅううう!」


 お、よく堪えたな。立派立派。しょうがねぇから、もうこの辺で許しておくか。話も聞きたいし。


「冒険者ギルドは設置にも費用がかかります。それらは全て領主持ちとなりますしな。その為私を始めとする騎士と戦士で結成した自警団で事足りると思ったのです」


 ふ~ん。でもだったらどこも別にギルドなんて作る必要ないんじゃないのかな? で、それも聞いてみたんだけど。


「いえ、メルセルク様の領地はまだ目の行き届く程度で住んでますが、他の領主が収められてる領地は広いですからな。それに冒険者ギルドの利点として元騎士や兵士など腕っ節の強いものが所属することが多いのが特徴です。それに王国による管理もされてますしな信頼度が違います」


「ふ~ん。でもそもそも冒険者って何をすんの?」


「色々とありますが、護衛業務などが特に多いですかな。件の盗賊のような輩が商人の馬車を狙う場合もあります。また村の農作物が獣に荒らされた時の対処、猛獣の住む森や山々での採取業務などですな」


 犬の話だと冒険者はこれらの依頼をこなして、依頼者から報酬をもらって生計を立ててるらしい。報酬は依頼の内容によってマチマチらしいけどね。


「その報酬ってギルドとかいうのにも入るんだよな? だったらそっから更に領地に入ったりとかするんじゃないの?」


 何となくそう思った。ショバ代とかよくある話だし。それがあるなら最初に費用がかかっても取り戻せんじゃないか? って気もすんだけど。


「いえ。冒険者ギルドの報酬は管理費として王国側が徴収する分はありますが、領主には一切はいりませんな」


「はぁ? なんだよ。だったら領主からしてみたらやっぱ作る意味がなさそうじゃん?」


「確かにそれを収入源とする事は不可能ですが、ただギルドがあると態々領主側が自警団を用意しなくてもいいという点もありますな。それに腕の良い戦士というのは探すのも中々大変でありますし。それに……」


「それに?」


「一番の利点は王国への貢献度を高める事に繋がるという部分でしょうか。冒険者ギルドは引退した王国騎士の受け皿としても利用されてますし、先程の通り、管理も王国側がしてますからな。ただメルセルク様はあまりそういう事には拘りがありませんので」


 まぁ確かにあの馬鹿はそんな感じかな。ただでさえ、やたら税金を安くしたり、自由を与えたりとか考えなしにやってたような奴だし。


「うんじゃ、とりあえずあの馬鹿は作る気は無いってことなんだね。まぁ費用がかかるならムリする必要もないか」


「えぇ。まぁ確かにこれまではそうだったのですが……」


「何かあんの?」


「そうですね。マリヤ様には前に少しお話いたしましたが、最近領内でも問題がが多くてですな。小さな村などは盗賊の手で壊滅状態になったこともあるのです。それに関しては我らの手で解決いたしましたが」


 あぁすっかり忘れてたけどそんな事言ってたっけなぁ。だからどうだって感じであたしも聞き流してたけど。


「その事もあって、最近はギルドの設置を強く望まれてましてな」


「強くってその王国から?」


「それもありますが……これからお会いする、チヨダーク侯爵殿下も強く推してましてな」


 なんで侯爵とやらがそんな事いってんの? と疑問に思ったけど、犬の話だと、その殿下とやらは馬鹿と幼い時から親しくしていて年も二歳上とか、馬鹿は兄みたいに慕ってたらしい。


 で、最近のそのちょっとしたゴタゴタを気にして、これを機に設置してはどうか? と提案してるとか。成る程ね。


 ちなみに二人は早くに家族をなくしてるって点も共通してんだと。

 だからこそお互い通ずるものがあるのでしょう、なんて犬は言ってけど、どうもそのチヨダークとかいうのは馬鹿よりも遥かに大きな領地持ちで、王位継承権とやらも引き継いでんだと。


 ぜんぜん違うじゃん! 全くなんともご立派なこった。金ありそうだな。喰っちゃおうかな。


「あの……念の為なのですが……あまり変な事は考えないで頂けると――」


 ちょっとニヤけちゃったかな? 犬が心配そうに言ってくんな。知るかって。いけそうならいくよ。


 しっかししつこいぐらい念を押してくるな犬。犬のくせに生意気だ! てどっかのガキ大将みたいだなあたし。


「何? 犬、あたしのやり方に文句があるの?」


「ワン! そ、そんな事はありません!」


 それでいいんだよ。口答えするなんて生意気は許さないんだから! ……何いってんだあたし。


「まぁいいや。大体判ったし部屋もどんね」

「え?」


 え? じゃねぇよ。何を股間抑えてモジモジしてんだか。


「何? したいの?」


「あ、いえ、それは、ただバレると……むむむぅ」


 アホくさ。はっきりしない奴だな全く。


「もういいからマス掻いて寝てろ」


 あたしはそう言い残して部屋を出た。なんか咽び泣く声が聞こえたけど知~らないっと。





◇◆◇


 次の日、全員で下に降りた時には既にあの冒険者達はいなかった。なんでも朝早くから出て行ったんだと。


 まぁあの吊り目と会っても気分が悪いしな。それは馬鹿達も一緒だろ。


 で、朝食を摂って横付けした馬車に犬が荷物運んでっと、さぁ出発だと思ったらあの油ギッシュが飛び出てきて馬鹿に詰め寄った。


「あ、あんたぁ! うちの食材とかっが、すっがらかんなんだけんど、何かじらんがい?」


「はぁ? そんなもの私が知るわけがないだろ」


 馬鹿があっさり言い放った。けど、どうも油ギッシュは納得してないみたいだからムキになって馬車の中とかも見せてんな。


「あの……マリヤ様――」


 うん。犬が何かいいたげだけどね。別にあたし悪くないし。油ギッシュもあたしには聞いてこなかったもんね。それに『あるものは好きにしていい』って言ったのは向こうだしな。


 文字通り好きに持ち帰らせてもらうわ。てか馬車の中なんて探したって無駄だっつの。ザマァみろ油ギッシュ。





◇◆◇


 三日目の道のりは昨日に比べたら楽だった。猪に襲われることもないし、揺れる山道もない。丘陵地帯とかがあったぐらいかな。


 で、昼は昼で、昨晩の食材でスラパイが作っておいてくれたサンドイッチを今回はマセコも一緒にパクつきつつ。


 途中仮眠をとりながら、馬車で走り続ける。

 でもユニコーンは本当疲れを知らないって感じだな。昼少し止まってランチを食べた時以外は走りっぱなしだ。

 まぁ今更でもあるけど。


 で、更に走ること数時間かな? もう太陽も傾き、辺りも暗くなりかけた頃、マセコが小窓から声を掛けてくる。


「見えました! もうすぐ到着いたしますよ」


 あたしは思わずおもいっきり息を吐き出していた。いやぁやっぱ三日は長いわ。しかもこんな日が暮れてからの到着だからね。


 それにしても侯爵殿下ねぇ。馬鹿の二歳上らしいけど一体どんな顔してんだか――




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