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15話

 少しは楽しもうかなんて気持ちは、一時間もすれば消え去ったよ。


 なんか最初こそ、草原とか眺めて鼻歌歌ってたけど、ずっと同じ景色じゃん! いい加減飽きるよ! 北の国かよ!


 あぁそういえば、途中最初にあたしが盗賊とファックした森の近くも通ったな。

 なんでもあの時も侯爵家からの帰りだったらしい。結構行ってんだな。そんときはスラパイは家にいたらしいけど。


 あ~あ、しっかし暇だなぁ。これが車でドライブだったらCDぐらい聞けんのに。

 全くこんなんだったらipotぐらい持ってくりゃ良かったよ。あ、くそ! そうだチートそれにすれば良かったんだ! 畜生! ドングリも気づけよ!


 はぁしかしホント暇だなぁ。外眺めててもなぁ。


 あ、そうだ。


「アレックス。ちょっとExileとか歌ってもらえないかしら?」


「何ですか突然! てかエグザ――って何!」


 チッ。こいつ優秀だから、もしかしてと思ったけどやっぱ無理か。


「まぁアレックス。折角マリヤ様がこう言っているのですから、その、なんですか? エロガイル? というのを歌って差し上げては」


 ニッコリと微笑んでるところ悪いが、とりあえずヒロに謝れ。


「そうだぞアレックス。マリヤがこういってるということは私の命と同じこと。そのイキマクルというのを歌って差し上げなさい」


 なんだこの低レベルな伝言ゲームは。そしてお前は一旦ズーにあやまれ。


「……判りました」


 判ったの! すげぇな犬。まじで血統書もんだわ。


「えっぐざ~いる。えっぐざ~いる。えぐざいるる~えぐざいる~」


 お前はのっぽさんか! もしくは茶色いアレの中身か! 


「却下ですわアレックス」

 とりあえず冷笑浮かべて返しておいた。


 あ、なんか犬が凹んだ。





 馬車の旅はとにかく暇だ。ただ時折は面白いものも見れる。例えば私が知ってるのより、はるかにでかいウサギが草原を跳ねまわってたりした。


 危険はないのかなと思って犬に聞いたら、草食でおとなしいらしい。なるほど安心だな。まぁ北国の鹿みたいなもんだろ。実際食用としても重宝されてるようだ。


 他にもやたら脚が長いダチョウみたいなのもいた。ただ顔はほぼ鶏だ。鶏冠がある。ただ毛はない。ちょっと不気味だった。

 コケッチョウというらしい。


 まぁそんなのを眺めてるとまぁまぁ楽しかったりもするけど、それも長くはもたないからね。


 もうとりあえず寝るしかないかなと思ってたら、アリスが何かを取り出した。


「そろそろお昼ですわね。私お弁当を作ってきたのです」


 アリスがニコニコしながら足元からバスケットを取り出した。しかも四つ。小分けして其々に用意されている。流石主婦。何か水筒みたいな物には紅茶も入れてるらしい。凄く気がきいている。


「さぁ、召し上がれ」


 受け取って蓋を開けるとバスケットの中身はサンドイッチだった。

 成る程これなら揺れる馬車の中でも食べやすい。


「おお流石アリス。旨いなコレは」

「私にまでありがとうございます奥様」


 二人に倣ってあたしも有難うと言うと、なんか両手を頬に添えてやたら明るい表情をみせる。全く屋敷じゃないと遠慮がないな。


「私、特にマリヤ様の分は気合をいれましたの。味わって頂けると嬉しいですわ」

 

 目をキラキラさせてるのはいいが、それは流石に犬はいいとして馬鹿にはどうなんだろ? まぁ知らないわけじゃないんだけど。


「ちなみにマリヤ様のそのサンドイッチには、私特性のジャムが入ってますの。キャッ!」


 ……口にふくむ直前。あたしは手を止めた。


「あ! なんかカップルが青姦してる!」


 窓を指さして言ったら皆の視線がそっちに向かった。チャンス!


「誰もいないぞマリア」

「そうですわね。激しい腰つきはどこにも見当たりませんでしたわ」

「不肖アレックス。この視力を持ってしても確認する事が出来ませんでした」


 おまえらどんだけ青姦に興味あんだよ。


「ごめんなさい。私の見間違いでしたわ」


 そう言って微笑んだら、な~んだ、と皆納得しやがった。もうチョロいんという表現だけじゃ収まらない何かを感じるよ。


 あ、犬が食べた。それ密かに交換したバスケットね。まぁ毒ではないんだけど、さすがに食べもんに愛液とか入れられてもこまるわマジで。





◇◆◇

 

 太陽が沈み始めて、段々薄暗くなってきた頃、ユニコーンの引っ張る馬車が止まった。


 もしかして、もう着いたのかな? なんて思ったけど流石にそれは無かったね。それもそうか、三日の予定が一日でなんて事は流石のユニコーンでもありえない。


「皆様。今日はここで宿を取りましょう」


 御者のカグラが扉を開けてそう伝えてきた。くりくりっとした瞳はやっぱ可愛い。


 馬車から降りると、カグラはなんか青年の後を付いて馬車を引っ張っていった。どうやら馬房があるようでそこに預けておくらしい。

 

 荷物とかは盗まれたら困るからと一旦全て犬が出した。大変だな犬。


 ここは街道を渡る旅人や馬車が休むための宿場だ。この世界にはライトがないから、夜になっての移動は危険度が高いらしい。


 その為、街道沿いにはこういった宿場が一定の間隔で用意されているんだと。

 ちなみに宿場といっても他にも村民は暮らしていて、周辺には田畑が並んでる。


 まぁ馬鹿の暮らす町の周辺ほど人も畑も多くはないけどね。


 宿は木造のまぁなんかちょっと大きな家って感じだな。

 二階建てで、一階が食堂みたいになっている。トイレも一階のみ。

 でも風呂は無いってさ。ざけんな! 温泉掘れ!


「皆様には、侯爵様のご厚意で部屋を三つ用意させて頂いておりますので」


 御者のカグラが戻ってきてそう説明した。二人部屋が一室、一人部屋が二室だ。

 二人部屋は夫婦の為に用意してるんだろうなと思う。


「あら? カグラちゃんはどうされるのですか?」


 スラパイが問いかけると、はい! とカグラが元気よく応える。


「私は馬車の中で一夜を明かしますのでご心配には及びません」


 そういう事か。一応あたし達はお客様扱いだけど、この娘に関しては使用人って感じなのね。


「そんな! 女の子が一人で馬車の中だなんて危険ですわ。だったら部屋を一つあけましょう」


 またスラパイはお節介なことを言い出したな。まぁ好きにすればって感じだけど。


「そうだぞ。私達をわざわざ向かえに来てくれたというのに、そのような場所に一人にさせておくわけにはいかん」


 でもなぁ。部屋割りどうすんだろ。追加で一部屋取る気なのか?


「そうだこうしよう。私とマリヤが同室。これは一人部屋でもかまわない。そしてアリスとカグラちゃんは二人部屋でアレックスは一人部屋とこれで完璧だ!」


 何でだよ! なんであたしと馬鹿がシングルなんだよ! 狭いだろうが!


「まぁ貴方ったら、何を言い出すかと思えば。違いますよ。ここは私とマリヤが二人部屋で愛を育み、貴方はアレックスと一人部屋、カグラちゃんは女の子ですし一人部屋で……」


 うん。さっきよりはあたしとしてはマシになったけど、それでもあえて言わせてもらおうかな。

 ちゃっかり何いってんのお前?


 て、うわ! カグラの目が異様に丸くなってる! そりゃそうだ! これだと二人があたしを取り合ってるみたいだよ。何だコレ!


「そ、そうですわ! 少々狭くなりますが、メルセルク夫妻と私が一緒に、アレックスとカグラちゃんはそれぞれ一人部屋という事でいかかでしょう?」


 もうこうなったら仕方ねぇ。この手しかねぇよ。


「え?」「まぁ?」

 

 おい! 二人して顔赤くして何想像してやがる! 


「あ、あの、私の事は気にされなくても……そ、それに、三人とは――」


「カグラ様。心配されなくても大丈夫でございます。マリヤ様はメルセルク伯の側室にあります。つまり、まぁ、そういう事なのです」


 犬のやつ何とかごまかそうとしてくれたな。まぁ多少濁してはくれたが察してくれただろう。


「は!? なるほど! これが俗にいうハーレムというものなのですね!」


 なんか、どこか高揚した感じに思いがけないこと口走ってきたよこの娘。


「確かにマリヤ様は両手に花と言えますわね」

 

 スラパイ、お前はとりあえず口をしめとけ。


「え? マリヤ様が両手に……?」

 

 あぁ畜生! 意外と細かいとこに気づくなこいつ!


「ち、違いますぞ! 今のはマリヤ様がいることでメルセルク伯にとって両手に花という意味なのです!」


「あ、なるほど! 確かにそうですね!」


 ナイス犬!


「ただそれでもやはり私は、ご行為に甘えるわけにはいきませぬ……只の御者の身で部屋を一つ独占するなど……」


 年に似合わず固いなこの娘。てかそれなら早く言えよ! これまでのやりとり無駄じゃん!


「そう言わず部屋に止まりなさい。第一馬車などで寝られて身体をこわされたり、何か危険がおきたりしては、それこそ侯爵に申し訳がたたない」


 馬鹿にしては中々な言い方だな。まぁでもこの娘も強情そうだしな……。


「それもそうですね。わかりました。ありがたくご行為に甘えさせていただきます」


 はや! 意外と納得はや! 


「それでは、話もまとまりましたしとりあえずお夕食を頂くとしましょうか。それから……ウフフ――」


 スラパイは一体何を考えているんだか……いや、まぁなんとなく判るけどね。


 で、全員で食堂に行き、暗くなる前に夕食を摂った。

 だけどね……まぁ領主の家と比べちゃいけないのかもしれないけど、もう食べた気しないわ。


 なんか出てきたのは茶色っぽいドロッとしたシチューみたいの? それとやたら固い紫色っぽいパン。

 あまりに硬くて顎が痛くなりそうだったよ。男のモン長時間咥えてる気分だ。

 で、犬とか馬鹿とかみてたらシチューみたいのに付けて食ってた。


 そうする事でちょっと柔くなるんだよね。まぁ確かにシチューにパンとかやったなぁ。なんか懐かしいけど、それでもこの食事が大して旨くないのは確かだ。

 肉も入ってなくて野菜だけだし、その野菜もこの馬鹿の畑で採れたものの方が美味しい気がする。何が違うかしんねぇけど。


 まぁでもね、他にないんだから仕方ねぇ。あたしは我儘だけど、ないもの寄こせとまでは言えないしね。


 で、暗くなってきたから部屋に入って寝ようかってなったら、馬鹿とスラパイが、どっちがあたしと同じベッドで寝るかで揉めやがった。


 ちなみに部屋には一人用ベッドが二つ。前の世界ならツインルームって奴だな。

 まぁ広いベッドは高価だから、こういった宿場ならそうなるだろうね。


 で、もうあたしはさっさと寝たいんだけど、どっちと寝るかと詰め寄ってくるからめんどい。まぁ何が目的化はわかってるし仕方ないなぁと思いつつ。


 夫婦丼して寝た――。




 




 

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