120話
歪んだ景色が元に戻った時。あたし達は石畳の上に居た。
どうもあたしと一緒に運ばれたのは、黒いおっさん、ぺちゃ、ショタ、そして包茎の四人みたいだねぇ。
で、ここは広場になってるような場所みたいでね。前方の少し小高くなった位置に神殿みたいのがあってね。
そしてその神殿とあたし達の間には――なんかずらっと神官の格好した男女と、そしてなんとな~く見覚えのある顔がひとり、集団の中心で偉そうに立っているんだよねぇ。
「あ、貴方は! コマゴメフ大司教!」
横からショタの奴が声を大に叫んだね。それであたしもはっきり思い出したよ。
こいつはあたしに試練ってのを与えたエロジジィだよ。
全く。随分と久しぶりな気もしないでもないけどね。
「いやいや。なんとも久方ぶりだねぇチヨダーク侯。それにボインな嬢ちゃんも」
髭を擦りながら相変わらず助平な視線を向けてくるね。
「コマゴメフ……そうか! これは転移陣! 王国で数少ない使い手と聞き及んではいたが――だがなぜ! 我らをこのようなところに?」
「え~? 何故って? 嫌だなぁ。そんなの決まってるじゃないかの~。ようやくこれでほぼ揃ったのだからさ。まぁ本当君たちには感謝しているよ」
髭を揺らしながら随分と愉快そうにしているけどね。一体なんだい? それに――腕に変なのを着けてるね。爪みたいなのがついた……小手? というかグローブというか――
「それじゃあ――ほい!」
て、エロジジィが手のひらを上にして、何かを引き寄せるように指を曲げたね。
「うん? な!? マ、マリヤ! これは!」
え? て、おい! なんで包茎の装備してた鎧と具足が消えてるんだい!
……もしかして!?
あたしは自分の腰に吊り下げておいた革袋も触るけど……中身がないよ――
くそ! エロジジィ! キッと瞳を尖らせて視線を走らせる。
すると案の定、エロジジィが七彩の神玉を手の中で転がしならが、んべっ、と舌を出してみせてきた。
腹立つね! おまけに横には鎧と具足もあるよ!
「ほっほっほ! 全くお前たちもよくやってくれたものだ。おかげでほれわしは特に労せずとも神宝を四つも手にすることができた」
「四つだって?」
「そう。わしのもってるこの無限の神手とあわせてな」
無限の神手? あの手にはめてる奇妙なのがそうだっていうのかい!
「無限の神手……その名の示すように持ち主に無限に魔力を与え続けるという代物……それを、よりによってコマゴメフ大司教が持つなんて!」
ショタが狼狽した表情で言ってるけどね。てかこいつも中々の説明好きだね。
「そうじゃ。まぁそういうことでな。見ての通りこちらには聖騎士と魔導神官たちも揃っている。それにくわえてこのわしだ。素直に神宝の事は諦めるのだのう。そうすればわしらも別に手荒い真似はせぬわ。おっぱいだけは揉ませてもらうがのう」
「ざけんじゃないよ! あたしはそんなの認めてないんだからね! 悪いけどすぐにでも取り戻させてもらうよ! それとただであたしの胸を揉もうなんて甘いんだよ!」
「マリヤよ。私も協力するぞ。胸のことはともかく、このような横から奪うようなやり方好かぬ」
黒いおっさんがあたしの横に並んで、歯向かう意思を示してくれたね。
鎧はドラゴンメイルってのになったけど元の腕は確かみたいだしね。
それなりに使える方かも。
「もちろんマリヤがやるなら、わしも協力するぞ」
包茎は当然だね。あたしの下僕なんだし。でもこいつが一人いるだけで戦力は段違いだ。
「チヨダーク公爵殿下はどうか後ろに! ここは私が!」
ペチャも顔を引き締めて剣を抜いたね。まぁわりとめそめそしてるこいつだけど、ショタを守るためなら必死になんだろ。
「成る程のう。つまり宝は諦める気はないしおっぱいも揉ませる気はないというのじゃな?」
「当然!」
あたしはきっぱりと言い切った。
「面白い! いいぞ! そうこなくてはな。なにせわしもこれの力を中々ためせずにいたのだ! 今こそ禁忌ともいわれた超魔法を使うとき!」
はぁ? 超魔法? 何をいって――
「天空を舞う星々よ――我が無限の魔力をもってここへ誘わん――この地に降り注ぐ流星となりて悪しき者達に天罰を!」
詠唱! しかも早いね! チッ、でもどんな魔法か知らないけど今のあたしには――
「マ、マリヤ! う、上! に、逃げないとまずい!」
はぁ? なんだショタの奴あわてちゃって。
上? て! すげぇ数の隕石が、あたしたちに向けて降ってきてやがるよ!
「はっはっは! どうださすがにこれから逃げる術はあるまいで! いやいやしかし、壮観だのう。一度やってみたかったのじゃ~~!」
そんなガキが買ってもらったばっかりのおもちゃ振り回すみたいな感覚で言ってんじゃねぇよ! とんでもないだろこれ!
「マリヤ。流石にこれはまずいかもしれぬぞ」
わ~~ってるよそんなこと! ちっ、どうし、て、そうだよ!
「おいあんたたち! とにかく端に行くんだ、走るよ!」
あたしはそう叫んで、全員で端に向かった。隕石が到達する前に! 間に合ってよ!
そして、移動した直後に鳴り響く轟音、爆発、そして床がバンバン陥没していって――
「おっと。これはいかん少々やりすぎてしまったかのう。う~ん、あの嬢ちゃんは死なすには少々惜しかったのだが――」
「勝手に人のことを殺してんじゃないよ!」
あたしは思わず叫んでいた。全く悦に浸った顔で、まぁ好きなこといってくれるよ。
「なんと! わが超魔法を喰らいながらも傷ひとつないだと!?」
当然! 出来るだけ隕石落下の少なさそうなとこ選んで、全部吸い込んだんだ! ダメージなんかありゃしないね! 目を丸くさせて何が超魔法だ。ざま~ってなもんだよ!
「コマゴメフ大司教! あの女こっちに向かってきます!」
「ふん! 面白い! わが軍勢の力を思い知らせるぞ! 我が無限なる魔力を持ちて神聖なる加護のもと――」
あの野郎またなんか詠唱しだしたね! そしたら周りを囲んでいる聖騎士や神官の身体が光り始めたよ。
でも、関係ない! あたしは大きく跳躍して、股から吸い込んだ魔法をお返してやる!
「なぁぁああ! 女の股間から、い、隕石がぁあぁあ!」
「あれはコマゴメフ大司教のと同じ――」
「あ、あんなとこから大司教の神聖な魔法を――なんと下品な!」
なんとでもいいな! あたしゃやられたらやりかえすんだよ! さぁこれでそっちも――
「ふん! そんなものが使い手自身に効くと思っているのか! さぁ! 無限の魔力を用いて我らを守りし壁となれ!」
と、また魔法かよ! そしたらなんかあいつらの周りにに半透明のドームみたいな壁が出来ちまったよ!
で、ドォオン! ドォオン! って隕石がぶち当たるけど、全く壊れる様子もないし!
「むぅ! あれが無限の神手の力か――あれだけの魔法を使っても全く魔力の減りが感じられん!」
マジかよ! てかおっさん! てめぇも感心してないでちょっとは何とかしろよ! たく!
まぁいいや隕石ダメなら――竜化!
「なぁああ! あ、あの女がドラゴンに!」
「むぅ。なんとも人外な嬢ちゃんだのう。全くペットに欲しいぐらいであるぞ」
誰が人外だふざけんな! てめぇがペットになれエロジジィ! さぁ! 焼きつくすよ!
「ウグォオオオオオオオ!」
あいつらの上空から咆哮して、相手の詠唱をキャンセルさせてから、一気に強大な炎を吐き出す!
轟々とすげぇ音を奏でながら、炎の嵐が吹き荒れるよ!
……でもね。魔法の力で防がれててまったくダメージがないし!
「馬鹿め! 何をしようとこの魔障壁の前では意味が無いわ」
マジかよ。なんだこいつ――
「マリヤぁあぁあ! わしも手伝うぞぉおお!」
おおっと! 包茎! あたしの隣に並んで翼を前後に動かしながら、同じように炎を吐いてくれたよ! これなら!
「がはは! 無駄よ! いくら攻撃しようがこの障壁は敵意のあるものの攻撃は一切通用せんわ! さぁこちらも守ってばかりもいられん! 見せてやるが良い、我が無限の魔力で強化されたお前たちの力を!」
マジかよこいつも攻撃が通じないって、あのおっさんと同じでこんなんばっかだな! しかもおっさんと違って状況が――
「射抜け氷の矢よ!」
「ほとばしれ雷撃!」
「千本の魔槍よ敵を穿け!」
チッ! 一緒に控えてやがった奴らが一斉に魔法を放ってきやがったよ! 強化されてるとあって、まとめてくるとウザったいね!
仕方ないね! 一旦炎を止めて、咆哮で魔法の詠唱をかき消すよ!
そう思ったが早々に、あたしは息を大きく吸い込む――けどね。
「無音の息吹、沈黙の風!」
誰かがあたしに向かって唱えた魔法。声が出なくなる沈黙。
チッ! これじゃあ咆哮も使えない!
その上で攻撃魔法もバンバン飛んでくるし――これは本格的に、て、うん?
「あ~はっは! どうだ防御の面でも攻撃の面でもこの布陣に隙などないぞ? そのまま命を落とすか、それとも諦めてわしに胸を揉ませるか――」
「大司教ともあろうお方がなんとも破廉恥な! だが、ごめん!」
その声に、へ? てエロジジィが横を振り向いた。そこには尖らせた瞳を向ける――ペチャの姿。
え~と――うん、どういうこと?
「ぐふぇええ!」
で、ペチャが思いっきり剣の柄をエロジジィの鳩尾に叩き込んでやったね。
身体がくの字に折れ曲がって、そのままゴロゴロと床を転がっていって倒れちまったよ――
うん。そしたら当然障壁ってのは消えてなくなるわけだけどね。
「おい包茎! ストップ! 炎は止めだ止め!」
あたしが竜語でそう叫んだら素直にやめてくれたね。
そしてペチャのやつは気を失ったエロジジィの手からあっさり無限の神手ってのを外しちまった。
それを唖然とした表情でみている神官や聖騎士達。
だけどしばらくして、ハッ! とした顔で。
「コマゴメフ大司教様ーーーーーー!」
「き、貴様! 大司教様になんてことを!」
「絶対許さん我が魔法で!」
騒ぎ出したね。仕方ないから。
『変な動き見せたら即効で燃やし尽くすよ!』
上空からその場の連中の心に向かって叫んでやった。
そしたらビクッ! て肩を震わせて青ざめた顔で、こっちを見上げてきたね。
まぁ馬鹿でない限り、流石に障壁がなきゃ炎を防げるわけがないのはわかってるだろうしね。
沈黙の魔法でも息吹は止められないし。
「大司教は気絶しているだけだ。それにあの女は必要とあれば私だって殺すだろ。そんな事になったら流石に無駄死にだろ? 素直に諦めるんだな」
ペチャの諭すようなその言葉で、ようやく全員観念したみたいで肩を落としたね。
でもひどいね。あたしは別に殺人狂じゃねぇっての――
どうやらまだ修正は必要そうですが10月までの猶予は頂きました。
引き続き運営様とやりとりしながら直していきます。




