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118話

「なんだ! なんだ! なんだ!」


 なんだを連呼しすぎだろこのショタ。

 たく、ちょっと鉄格子を素手でぶち破ったぐらいでうるさいな~。


「チヨダーク侯爵殿下!」


「お前! レイダン! そ、それにマリヤまで! どういうことなのだこれは?」


「こいつがメソメソしながらあんたを助けて欲しいっていうから、面倒だけど助けにきたんだよ」


 あたしがそう告げると、メ、メソメソなどしてない! て反論してきたけどね。

 してんだろメソメソ。


 で、その後はあたしが助かった経緯とかも含めて簡単に説明する。


「助け……この私をか? あれだけの事をしたのに――」


 なんか俯いて申し訳ないみたいな顔して呟いてるね。


「後悔だったら後でなんぼでもしな。それより一旦外にでるよ」


「あ、あぁそうだな。しかしさっきから何やら騒がしいようだがいったいなにが?」


「エンペラードラゴンが暴れてくれてんだよ」

 

 あたしが答えると同時に、何!? ってパニクった顔になりやがったね。


「た! 大変ではないか! そんなのに暴れられたら……」


「あぁ大丈夫だよ。適当に加減してやってくれって命令しといたから」


「へ? め、命令――?」


 キョトンとしてっけどね。全くそれも説明しないとダメか。面倒だねぇ。





 あたしとエンペラードラゴンの関係も説明したし、三人で一旦出口を目指す。


「しかしマリヤがエンペラードラゴンまで下僕にしてしまうとは……」

「チヨダーク侯爵殿下もうこの女の事は深くは考えないほうが宜しいかと――ビッチというのは人外の事をあらわすようですし」

「誰が人外だよ!」

「人外だろうが!」

  

 全く走りながらも喧嘩売るような事いってくんだからね。まぁあたしがどんな状態になろうとここまでブレないのは感心ちゃあ感心だけど。


「てかそいつがあたしを考えないなんて無理だろ。なぁ? あたしのおっぱいほちいでちゅ~って――」

「うわわわわわぁああぁあぁああ!」


 ショタのやつ真っ赤になって瞳をぐるぐるさせるようにしながら、叫びだしたね。


「な。なんで! なんで君がそれを!」


「だってあんとき洗脳されてたフリしてただけだも~~ん」

「な、なぁあああぁあぁあ!」


 走りながら口をあんぐりとあげて。あはっ! おもしろ~い。


「き、貴様はやはり最低だな! チ、チヨダーク侯爵殿下落ち着いてください! わ、私はそのようなこと別に気にしては――」


 ペチャがフォローしてるけど、ショタの奴、両手で顔を覆ってぶんぶん首を振ってるよ。まぁあれはな~正直あたしもひきそうだし。


「とまれぇえええぇえぇええ!」


 て、おぉっと! 流石に簡単に抜けさせてくれないか。


「全く油断も隙もない! まさかこのような状況で、どさくさに紛れて逃げ出そうとはな! だがそれもここまでだ! われらネリマドルク竜騎士団総勢五〇の精鋭、そして我らがしもべ蜥蜴戦士リザードマンも同じく五〇! もう逃げられぬぞ! 観念するが良い!」


 なんか太い偉そうなおっさんが前方で叫んでるけどね。


「な! あれはリザードマン!」


「知ってるのかいペチャ!」


 あたしはなんとなくそれっぽく聞いてみた。

 そしたら、ペチャはやめろ! って怒鳴り返された。ペチャだろうがおめぇは。


「あれはネリマドルク領に生息する亜人リザードマンだな。蜥蜴のような身体を持っていて、鱗が非情に堅いのだ。膂力もつよくそれでいて動きも素早い。生半可な実力では相手にもならないであろうな――」


 ペチャの後を継ぐようにショタが説明してくれた。で、そこに、更にそれを従える騎士は当然それ以上の実力ということだ、とも付け加えてきた。


 すげぇ緊張した顔でね。


「ぬはは! よく判ってはいるでないか! ならばもうこれ以上抵抗しても無駄なのはわかっているな?」


 ……やけに自信満々って感じだけどね。


「くっ。仕方ない。いくら貴様でもこれでは……こうなったらふたりで侯爵殿下を守りながら……て、貴様なにをしてるのだ!」


 ずんずん前に出るあたしの背中に、ペチャが叫んでくるけどね。いいからあんたはそこで愛しのショタでも守ってろっての。


「むぅ女! 先に貴様から観念したと――」


「するかボケェ! いいから雑魚はさっさと消えな!」


 ムカつくから叫んだ後、思いっきり息を吸い込んで、ゴオオォオオオ! ってデケェ炎を吐いてやった。


「なぁああ! むちゃくちゃだ貴様はぁあああ!」

「マ、マリヤ、そ、そんな事まで――」


 後ろのふたりがうるせぇけどね。いいんだよ一番手っ取り早いんだから。


「ひ、ひぃいいいいい! 炎が炎がぁあ!」

「うわあぁあ、ドラゴンメイルが、もえ、燃えるうぅうぅううう」


 うん。中々の阿鼻叫喚ぶりだね。リザードマンなんかこんがりといい色に焼けてるよ。

 食いたいとは思わないけどね。


「うんじゃいきますか」

「……本当にいいのかこんなので――」


 全くペチャはブツブツとうるさいねぇ。





◇◆◇


あたし達は一旦外にでた。空では包茎が今も適当に暴れまわっている。


 さて、どっすかな。こいつら適当に逃してあたしも暴れようか――


「全く随分となめた真似をしてくれたものだな!」


 うん? なんか声? て空中からなんか影が、で、あたしから十メートルぐらい離れた前方の地面に着地! 


「ネ、ネリマドルク侯!」


 前に出てショタのやつが叫んだ。その横にペチャが付いて腰の剣に指を添える。


「よりにもよってエンペラードラゴンの襲撃に乗じて脱走を試みるとはな。その大胆さだけは褒めてやってもいいが、私の眼はごまかせんぞ」


 そう言って、黒いおっさんが両手に持った槍を構えてきたね。


「てか、あたしたちから奪ったものを、ちゃっかり身につけちゃって図々しいね」


 あたしはショタよりさらに前に出ながら、眉を顰めて言い放つ。


 黒いおっさんの脚にあの疾風の神足が装着されてるからね。

 てか、だからあんな空中から現れるみたいな真似出来たんだろうけど。


「ふん。この神宝は私のような驍将にこそ相応しい。前に出て自ら戦いに出れぬようなそこの腑抜けとは違うからな」


 ショタを嘲るように顔を歪めて、右の腰に吊るされた革の袋をポンポンと叩く。


 どうやらあの中には、七彩の神玉が収まってそうだねぇ。


「なんか得意気になってるとこ悪いんだけどさ。あたしからしたら正直カモネギなんだよね」


 両手を振り上げながらそう告げると、黒いおっさんが、何? と眉を揺らした。


「だから、丁度その神宝も奪い返そうと思ってたとこで、それがわざわざ向こうからやってきたんだから、逆にありがたい話さ」


「……ふん、何を戯言を……まさか本気でこの私から神宝を奪えるとでも思っているのか?」

「イエス」


 あたしは断言した。


「くっ、くくっ! 面白い女だ! だがな私をただの何も出来ない領主と思ったら大間違いだ! あのドラゴンをも単身で打ち破るドラゴンバスターの名は伊達じゃな――」

「はい、ドッカァアァアァアァン!」


 前置きが長すぎるからイラッときて、ダッシュで思いっきる殴ってやった。

 かなり自信あるみたいだから、しにゃしねぇだろと思ったんだけどね。


 うん、一発殴ったらめちゃめちゃ回転しながら数十メートルぐらい吹っ飛んでいって、更に地面に叩きつけられたあと、ゴロンゴロンって土煙あげながら、転がりまくって最後に遠目に見える岩に背中をぐしゃっと叩きつけてようやく止まった。


「…………」

「…………」


 ショタとペチャが揃いも揃って目玉飛び出るぐらいに両目見開き、唖然としてやがるね。


 いや、流石に死んだかなあいつ?


「くっ、くくっ。あ~~~~っはっはっはっはっはっはぁああぁ!」


 うぉ! なんだ! あいつ急に笑い出しやがった! て、え? むくって立ち上がって、で、とぉ! とかいって大ジャンプ! 一気にあたしの目の前まで戻ってきたよ。


「なんだい随分丈夫なやつだね」


「ふん! 当然よ! 確かに並々ならぬ膂力を誇ってるようだが、私にはその程度つうじん!」

 

 大口開けて、どうだ! といわんばかりに叫んできたね。


 そうかい判ったよ、だったら――


「じゃあこれでどうだい! ドラゴンブレス!」


 あたしは黒いおっさんに向かって、今度は思いっきり炎を吐きつけてやった。

 流石にこれには耐えれないだろうしね。

 神宝は……まぁ頑丈な事を祈るよ。


 て、でもね。このおっさん炎を喰らっても涼しそうな顔してやがる。

 はぁ? 何これどうなってんの?

 しかも炎を喰らいながら槍構えだして、おわっ! あぶね!


「ふん! 無駄だといっておろうが! おろかものめ!」


 マジかよ! なんだこいつ!


「そ、そうか! その鎧! 神宝【堅剛の神鎧】! だから攻撃が――」


 は? 神宝? これが? 


「おい! それでその鎧は何の力があるんだよ?」


「う、うむ。聞いた話では、堅剛の神鎧には装備者をあらゆる攻撃から守ってくれる、そんな力が備わってるらしいのだ」

 

 マジかよ! 何それ卑怯!


「ふんその通り! ふふっ、しかしここまでとはな。私自身が強すぎるあまり、これまでは効果が実感できなかったが、お前との戦いでようやく、この力が本物だと実感することが出来た、その点だけは感謝してやろう!」


「じゃあ感謝ついてにあたしから盗った神宝を返してよ」


 あたしは右手を差し出して要求する。


「何を馬鹿な事を……そもそも盗ったなどと戯けたことを。神宝は今正しくあるべき所有者のもとに返ってきたというのが正しい!」


 うわぁ……あたしがいうのもなんだけど、こいつ自分の都合のいいように話を捻じ曲げるタイプだね。


「さぁ! どうする気だ女! 貴様の攻撃は私には通じぬが、この通り私の攻撃は容赦なくその生命を狙うぞ!」

 

 うわぅ! だからあぶねぇって! すげぇ突きの連射だなおい! ドラゴンバスターだっけ? カッコ悪いけど自称するだけに腕は確かみたいだね!


「マリヤぁあぁああぁあ!」


 て、うん? お! 包茎が叫びながらこっちに戻ってきたよ! で、その爪で――グシャ! って黒いおっさんに一撃!


 ……またえらく吹っ飛んでったな。






「マリヤ! 平気か!?」


 包茎が人の姿になって、あたしに駆け寄ってくる。心配してくれてるみたいだね。


「大丈夫だよ。攻撃うけてはいないからね」


 あたしがそう返したら、ほっと包茎が胸を撫で下ろす。


「……しかしいくら神宝を装備しているとはいえ、あのような攻撃を喰らっては流石に……」


 ショタがおっさんの吹っ飛んだ方に眼をやりながら、哀れむように眼を細めたね。


「馬鹿め! いったであろう! この鎧を着てる限り私は無敵だ!」

 

 て! 戻ってきたね! ゾンビかてめぇは! ショタも細めた眼をまた見開いてびっくりしてるし!


「しかし、しかしよもやエンペラードラゴンと組んでいるとはな! むぅ……」


 そこまでいって今度は包茎に目を向けて、上から下までジロジロとみてやがるなおっさん。


「その男がエンペラードラゴンということなのか?」


「あぁ。人間はわしをそう呼ぶ」


 包茎が答えると、ふむ、といってまたおっさんがジロジロとみる。

 まぁ珍しいのはわかるけど見過ぎじゃね?


「――と――キで――まそうな――いよ……」


 うん? なんかおっさんが呟いたね。よく聞こえなかったけど。


「なにぶつぶついってるんだい?」


「むっ! な、なんでもない! それよりどうする?」


 はぁ? どうするって?


「何がだい?」


「ふん。見ての通りこの私にはおまえたちの攻撃など通用しない。つまりもうおまえたちに勝ちはないということだ。後に騎士達も異常をしり駆けつけてくるだろう。素直に降伏したほうが身のためだぞ」


 ……う~ん、確かに攻撃が通用しないとなるとどうしようもないね。

 でもね戦力的にはこっちの方が勝ってるのに、攻撃が通じないぐらいで降伏なんて――通じない、ぐらい?


「あ、そか」


 あたしは思わず握った右の手で左手を打った。


「ちょっとあんたいいかい」


 あたしは包茎をよんで耳打ちする。


「うん? それは大丈夫だぞ。自分の炎にやられる竜などありえないだろう?」

 

 ほうほう、だったら。

 あたしは更に作戦を耳打ち。そしたら納得して頷いたね。


「ふん。何を考えてるか知らないが無駄だぞ」


「さぁ、それはどうだろうね。じゃあ! 頼んだよ!」


 あたしが命じるようにいうと、包茎が息を吸い込み、黒いおっさん目掛け炎を吹き出す!


「むぅ! 馬鹿が! だからこのような事をしても無駄だといっておるだろう!」


「さぁ、それはどうかな~?」


 あたしが背後から声をかけると、ギョッとした顔で首をこっちに回してきたけどね。遅いんだよ!


「なっ!」


 エンペラードラゴンは自分の炎にはやられない。つまり同じ力を持つあたしにも通用しないってことさ。だからあいつの炎を目眩ましにして、背中に回りこむ。


 で、後ろから腰に両腕を回してっと。


「き、貴様何をするき――」

「せ~~~~の!」


 あたしは思いっきり後方に反り返りながら、おっさんの頭を地面に叩きつけた。

 バックドロップって奴だね。


 そしてすぐに起き上がって次に移行する!


「おら! はずかし固めだ!」

「な!? ななな何をきさまぁあ!」


 うん。まぁぶっちゃけるとまんぐり返しだけどね。いや男だからちんぐり返しか? どっちでもいいけどね。


「き、貴様! き、騎士に向かってこのような恥辱を! どういうつもりだ!」


 いや、みてのとおりだけどね。


「……マ、マリヤ、それは一体何を?」

 

 はぁ? なんだよショタまで不思議そうに聞いてくるけど。


「んなの見ての通りだよ」

「見てわからぬから聞いておるのだろうが!」


 んだよ。ペチャに突っ込まれると腹たつけどね。


「だから。こいつは攻撃が確かに通じないけど、ようはそれだけだからね。こうやって動きを封じるぶんには何の問題もないだろ?」


 ショタとペチャが顔を見合わせて、あ~、となるほどって顔を見せたね。


「でもマリヤ。その体勢でこの後はどうする気だ?」


 んなの決まってんだろ。こいつ鎧の力に頼ってるからなのか、ズボンは普通だからね。


「おいちょっと包茎。この脚のとってくれない?」


 言ったら素直に頷いて疾風の神足を外してくれた。さすが下僕だよ!


「くっ、まさかこのような! だがな! この鎧は絶対に外さぬぞ!」


 鎧は別にそのままでいいよっと。後で自分から外させてやっからさ。だからとりあえず。


「な! き、貴様! ズボンを脱がすなど! え? いや! そんな! パンツまで!」


 はいはいっと。おっと竜の頭みたいのがひょっこり出てきたね。


「ま、ままっままままっま! マリヤ! 君は一体何を!」

「み、みてはダメです侯爵殿下! この女、やはり頭がおかしい!」


 全く酷い言われようだよ。結果的にはあんたらを助けることにもなるってのにさ。


 まぁいいや。


「こ、このような辱めを……絶対に、絶対に許さないぞ!」


 はいはいっと。それじゃあまずはこの頭をパクっと!


「ぐお! な、け、汚らわしい! や、やめろそんな汚らしい口で! ふざけるな!」


 ……あれ? 何だこいつ。全然反応しねぇし……いや、じゃあ手でっと。


「やめんか愚か者! うぅ! うわあ耐えられん! 鳥肌が! 鳥肌がぁああ!」


 はぁ? ざけんなてめぇ! あたしがこんだけやってんのに鳥肌とか! なめてんの? インポかてめぇは!


「マリヤ。大丈夫か?」


 包茎の奴がちょっと心配そうに覗きこんできたけどね。大丈夫じゃねぇよマジで。どうなってんだいった……うん? 何こいつ、目線を包茎にむけて、顔を赤らめて……。


「そ、そんな眼で私を見るでない!」


 ……プイって顔を反らしたね。あたしじゃなくて、包茎から。


 ……あぁ~、なるほどそういうことなのね。

修正版との差し替え本日完了致しました

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