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117話

 ギャーギャーうるさいペチャにいい加減説明すんのめんどいから、包茎にやらせた。


「あ、あなたがエンペラードラゴンだというのですか?」


 この野郎。あたしも一応ドラゴンになった事は言ったのに、馬鹿が馬鹿な事を馬鹿みたいにいうな! とか信じなかったくせに。


 包茎の話し聞いたら、急に言葉遣いまでなんか改めやがって。


「うむ。そうである」


 で、包茎もなんか偉そうに腕くんで頷いてんね。発情包茎童貞竜の癖に。


「た、確かにその身体の色に鱗のような肌には、竜の面影もございますが――」


 とはいえ、ペチャもまだ半信半疑って感じかね? 眉も軽く寄せて、親指を噛んでるよ。


「証明してみせよう」


 包茎はそんな事をいったそばから、元の姿に戻って吠え上げやがった。

 いや、まぁ確かにこれが一番手っ取り早いだろうけどね。


 流石にでかすぎるから、岸壁が翼で抉れちゃったよ。


「あ、あぁ、ほ、本当にエンペラードラゴン様――」


 ペタンって地面に膝を付けて、なんか祈るようなポーズもとってるよ。

 なにこいつ? そんなにありがたがられてるの。


「お~い。ペチャも納得したみたいだから人に戻れよ。目立つだろそれじゃあ」

 

 あたしは両手を口の前に持って行って叫んだ。

 

 そしたらペチャの奴、両目を見開いたガバッ! て立ち上がる。


「き、貴様! 誰がペチャだ! いや! それよりも! エンペラードラゴン様になんて口の聞き方を! 失礼であるぞ! 謝れ! 今直ぐ謝って許しを請うて――」

「全くうるさいねぇ。いいんだよ別に。あいつはあたしに忠誠を誓ってんだからさ」


 はぁああぁあ!? て、またうるさいねぇこのペチャ。


 で、包茎が人の姿に戻った……というかこっちが仮の姿だけどね。

 まぁ人の姿になったらペチャが近づいて。


「こ、この無礼者はこんな事をいっておりますが、まさか忠誠なんてそんなことは――」

「うん? いやマリヤの言うとおりだぞ。わしはこの女に惚れた。だから忠誠を誓っておる」


 あんたあたしに惚れてたのかい。もてる女は辛いね!


 まぁそんなわけでね。ペチャはまた口をあんぐりさせて、金魚みたいにパクパクさせてたけどね。


「とりあえずさ。なんであんたひとりで逃げてたんだい? チヨダークの奴はどうしたの?」


 そう聞いたら、あっ! て何か思い出したような顔になったね。


「そうだ! 私は……いや、いい貴様に話しても仕方がないからな」


「あっそ」


 あたしが一言あっさり返したら、え? て顔されたけど。知らねぇよ話したくないなら別にいいし。


「それであのネリマドルクとかいうのがいんの、あんたが来た方向でいいの?」


「……まぁそうだが、どうするつもりだ?」


「うん? 攻めこむよ。神宝も全部取られてむかつくし。やられたもんはやり返してやんないとね」


 そうだよ。結局ドラゴンに乗せられた時に、七彩の玉ふたつと疾風の神足もってかれたからね。


「本気でいってるのか? あの男のいるのはネリマドルク領で尤も堅牢な要塞都市だぞ。いや全領地で一番といっても良いかもしれない。そんなところにたったふたりで攻め込もうというのか?」


「たったって、何あんたエンペラードラゴンの事を舐めてんの?」


 意地悪な感じに言ってやったら、首と両手を同時に左右に振りながら、いや! そういうわけでは! て包茎をみて狼狽える。


「たく。第一あたしもいるから問題はないよ」


「はぁ? なんで貴様ごときがいるから問題がないなんて話になるのだ!」


 ……さっきのちゃんと見てなかったのかな? まぁいっか。面倒だから一回変身して証明した。





「…………」


――いやなんか包茎の時と反応が違うね。変身はもう解いたけど、どこか遠くを見るような目であたしをみてやがるし。


「――の、人外め」


 あん!?


「おいあんた! 聞こえたよ! ぼそっといったつもりだろうけどしっかりとね。誰が人外だこら!」


「だったら化け物だ! この化け物! なんなのだ貴様! 何がドラゴンになれますだ! ふざけるな! これが化け物でなくなんだというのだ!」

「ビッチだよ! こら! 文句あっか!」

 

 あたしとペチャは顔を突き合わせるようにして、文句をいいあった。全くなんなんだいこいつ! ムカつくね!


「ふたりは随分と仲が良いのだな」


「どこがだよ!」

「冗談じゃありません!」


 包茎のやつ思考がぶっ飛びすぎだろ! どこをどうみたら仲良くみえんだ!


「大体ビッチビッチとわけのわからないことばかり――」


 ビッチはビッチなんだよ! ビッチなめんな!


「あぁもういいや。とにかくもうあたしたちは行くよ。あんたは仮にも騎士なんだからこの先どうにかなんだろ? じゃあね」


「ま、待て!」


 あ? なんだよ。さぁ行こうって時に。


「……本当に行くつもりなんだな?」


 はぁ? 何を今更。


「だからそう言ってんじゃん」


「――たら――てけ……」


うん? いや声が細すぎて……。


「何いってるか聞こえないんだけど?」


「だから! あたしも連れてけといったんだ!」


「は? はぁ? いやだってあんた今逃げてきたんだろ?」


「それは……事情があるんだ!」


 瞼を閉じて、振り絞るようにいってきたけどねぇ。なんだよ事情って。





◇◆◇


 で、結局ペチャも付いてくることになったよ。

 今はペチャは包茎の上に乗ってるけどね。なんか変身したあたしを不思議そうにジロジロみてるよ。まったく三秒で慣れろよ。


 それにしても、こいつの話を聞くとなんかショタの奴は、付いて直ぐ捕まっちまったようだね。

 領地の事でもめた……というか一方的に条件付きつけられて断ったら、即効牢屋いきだってさ。

 

 相変わらず無茶な事すんな異世界。


 それでこのペチャは隙を見て逃げ出したみたいだね。でもショタは助けられなかったとか。

 だから、助けて欲しいって頼まれたわけさね。でもね。正直めんどいって返したんだけどね。それに助ける義理もねぇし。

 

 でも、そしたらこいつ急にメソメソしはじめやがってさ。

 本当面倒な奴だよ。

 

 まぁ結局恩を着せといても損はねぇかなって事で、協力する事になったわけだこれが。


「もうすぐ見えてくるはずだ!」


『そうかい』


 ちなみにドラゴンになってる間は、頭のなかに話しかけてる感じだ。

 竜の言葉は通じないからね。


 てかこんな事まで出来るようになってるなんて凄いね。

 まぁあんま離れた相手とは出来ないみたいだけど。

 

 そういう意味では火の玉のくれた魔道具に負けてるね。まぁそれも今は持ってないけど。


「そろそろ一度下りたほうがいい!」


 うん? ペチャがそんな事をいってきたね。


『なんでだい?』


「この先には見張りの竜騎士が要塞の周りを旋回して、不審者が侵入してこないか目を光らせている」


 見つかったら厄介だって話みたいだね。


 まぁあたしと包茎なら、見つかろうが問題なさそうだけど、ショタのことがあるからって事だろうしね。


 仕方ないから、一旦山の道に下りることにした。


 着地した場所は、道と言っても舗装なんてされてない、本当に山道って感じだけどね。


 なんか足元もゴツゴツしてるしさ。まぁ別にいいけどね。あたし疲れないし。


 その後は、ペチャの案内で歩いた。途中、あの蜥蜴に乗った見回りのやつもいたけど、そいつらはあたしと包茎でサクッと片付けた。


「……貴様を見てると、慎重になるのが馬鹿らしくなるな」


 うるさいな。いいじゃん楽で。


 で、そうこうしてるうちにいよいよ要塞に辿り着いたよ。


 ペチャの話だと、ここは円く壁で囲ってるんじゃなくて、上から見たら竜の顔見たくなってるらしい。後でみてみようかなぁ~。


「さて。問題はここからだな。なるべく目立たないように見つからぬように……」


「包茎。ちょっとあんた元に戻って、派手に暴れておいてもらえない? あ、でも一応助ける事とかあるから、そこは考慮してね」


 あたしがそういったら、包茎は素直に判ったって頷いてドラゴンに戻って飛翔、上から咆哮して、炎も軽く吐いたりして暴れてくれた。


 当然、要塞とやらは相当なパニックに陥って、竜騎士もバンバン現れて、包茎に向かっていってる。

 でも、まぁそんなドラゴン程度じゃ勝てるわけないよね。


 案の定、あっさり数匹、包茎の牙にかかったり、爪に引き裂かれたり、空中で炎に焼かれたりしてる。


「さて。じゃあ今のうちにいくとしようかなっと」


「…………」


「うん? どうしたのさ。早く案内してよ」


「……いいのか? こんな大雑把で?」


 いいんだよ。





 兵士はほぼ包茎の事で手一杯て感じみたいでね。地下牢に行く通路はすっかり手薄になってたよ。


「しかし貴様、エンペラードラゴン様に、その、あの呼び方はないだろ!」

「うん? 包茎かい? いいんだよあいつ意味判ってないし」

「いや、それにしたって……」

「てか、あんたは意味判ってんの?」

「な!? いや、しょ、しょれは……」


 顔中真っ赤にさせてゴニョゴニョいってるよ。どんだけ初なんだあんたは。


 それから暫くは黙ってペチャの後に付いて行ったけどね。


「あそこの扉の先だ。しかし、流石にここは見張りがいるか――」


 柱の影に隠れて、地下牢に繋がる扉を指し示しながら、ペチャが声を顰めるけどね。


「仕方ない。ここは戦いになるのも覚悟で出来るだけ手早く――」


「お~い。見張り~、一応警告だけど逃げた方がいいよ~」

 

 あたしは見張りのふたりに近づきながら、親切にいってやる。

 

 でも腰の剣を抜いて、曲者め! てヤル気満々だね。

 

 まぁしゃあねぇか。後ろからペチャも騒いでうるせぇけど、はいはいっと腰を落として、よ~い――ドン!


 あたしは思いっきり扉に剥けて体当たりを行う。もちろんかなり全力に近い猛ダッシュでね。立ち塞がろうとした、馬鹿な兵士は纏めて吹き飛ぶことになったよ。


 全く人がせっかく忠告してるのに聞かないからそうなるんだよねぇ~。

 あんたら新幹線に生身で飛び出すみたいなもんだからね。


 そして勿論だけど扉も一緒に吹き飛ばす。鍵が掛かってたらしいけどお構いなしだね。


 さて、地下いこうかなっと。

 てか、ついてきてるペチャが、またブツブツうるさいねぇ。


 なんだよ。敵に囲まれてピンチみたいのやりたいわけ? そんなの一人でやってろよってね――

予定として書かせて頂いておりました通り、本日午前中から一部の話を修正版と差し替えていきます<(_ _)>

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