114話
あたしをのせたドラゴンは、風に乗って飛行を続ける。
しっかしドラゴンって冷静に考えたらすげぇな。こんなのに乗れるなんてやっぱ異世界ぱねぇなって感じだ。
ただねぇ。乗り手がね手綱を持ったまま全く喋らないよ。
まぁ仕方ないけどね。あとどれぐらいで着くの? って聞いても無言だよ。
すげぇあたしの事敵意してるのな。たく、チンチンもんだろか!
まぁそんなわけであたしの乗った竜を含めた、十五匹程の竜の団体は特に問題もなく進んでいる……ようにも思えたんだけどね。
なんかじゃっかん空が曇ってきて、風も強くなってきたよ。
おいおい大丈夫かい? あんまりいい予感がしないけどねぇ。
「……!? た、大変です! 前駆隊より! 伝令! 遠視によりエ、エンペラードラゴンを捕捉したとのことであります!」
は? 何そのエンペラードラゴンって? てかドラゴンにのってる連中も随分と慌てだしたね。
「エンペラードラゴンだと? 馬鹿な! アレはまだ休眠期であるはずであろう! そんなことが――」
なんかあの黒いおっさんも焦ってる感じだね。
「侯爵殿下! 見えました! そ、そんな……で、でかい!」
右側の竜騎士ってのが叫んだ。てか、確かにあたしからもみえるけど……遠目にもすごそうだなってのがわかるわこりゃ。
「来ます! エンペラーブレス!」
「全隊回避行動を取れ! 右舷、左舷ともに――」
黒いおっさんの命令で竜騎士団ってのが急いで動きだしたね。て! うわ! すげぇぐるぐる回り出しやがった! おいおい! 落ちたらどうすんだコラ! て――
「グォオオオオォオオオオオ!」
デケェ! 雄叫びがでかい! なんだよこれ、ぱねぇなマジで! で、おいおいおいおいおいおい! すげぇのがこっちに向かってきて轟々と空を燃やしてるかのような炎の波が通りすぎていったぞ! 何これマグマ! ぐつぐつ煮えたぎってそうじゃん!
しかも何匹か回避しきれないで、なんか悲鳴みたいの一瞬だけ漏らして、飲み込まれちまったよ。
もうドラゴンも乗ってる人間も骨も残らず蒸発って感じ? 洒落にならねぇ~~!
「竜騎士三騎撃墜されました!」
「今直ぐに陣形を変更。龍翼陣! お前たちグズグズしてないで急いで……」
「だ、ダメです! 時間が、エンペラードラゴン! 来ます!」
て、お前! はやく避けろって! マジで来てるぞデケェのが!
うわっ! 突風! めちゃめちゃでけぇのが真下を通り過ぎたよ! なんか他の竜と違って鱗が真っ赤だし!
今乗ってるのなんてあれにくらべたら赤ちゃんみたいなもんだろ! どんだけだよエンペラードラゴン!
「エンペラードラゴン旋回! 背後から迫ってきております!」
「え~い! 見れば判るわ!」
てか背後ってあたしの乗ってるのが一番後ろじゃん! 冗談じゃないよ!
「ちょっとあんた! しっかり運転しなよ! こんなところでやられるなんて流石にゴメンだからね!」
「え~い! 黙っていろ! こっちは集中……え?」
へ? おい、なんかデケェ口と牙がすぐ後ろに見えてるんですけど――
「う、うわぁああぁあああ!」
バクン――
「マ、マリヤぁああぁあ! マリヤが! おいマリヤが! ネリマドルク! 早く! 早く!」
「……いや。あれはもう無理だ。全隊全速力で退避! このまま直進だ! 疲れなど気にせずともよい! 一気にここを抜けるぞ!」
「ば、馬鹿いうな! ふざけるな! マリヤを、マリヤを見捨てると……」
「全軍退避! 退避だ! 全速力でエンペラードラゴンから距離を離すんだ!」
おいおい。全く勝手な事を言ってくれるよねぇ。てか参ったね本当。食べられる直前思わず咄嗟にドラゴンの背中から飛び降りちゃったけどねぇ。
あはっ。どうしようこれから~、てか~何故かエンペラードラゴンてのがこっちに口広げて向かってきてるし~あの黒い野郎あたしを餌に逃げやがったな! てか、え~やだ~ドラゴンにもモテモテ~?
なんて言ってる場合じゃないよ! じょ~~~~だんじゃない! このままじゃマジであのデカイのの胃袋の中に入っちまうよ! 嫌だよなんか熱そうだし!
でも、どうしよう……なんて考えてる場合じゃない! あたしは急いで空中で下着を脱ぎ捨てた! 後のことなんて知ったこっちゃない! 股を開いて……いけ! 閃光弾!
「グォオオォオオオオ!」
よっしゃ決まった! 眩しさに弱いのはドラゴンも一緒だね! これで若干軌道が下にずれたから……この頭の角を握りしめて!
「グォオオ! グォオォオオオ!」
ば! 馬鹿! あばれんなコラ! て、ツルって! やべ! 角から手が! うわっ、チョ! 背中転げたみたいになって! やべ落ちる! ってさせるかよ!
「グォオオオオオォオ!」
だからうるせええぇっての! でも、なんとか尻尾の先を掴んだよ! もう絶対離さねぇ!
てか! こいつさっきからやたら暴れてんな! なんなんだい全く! てか! なんかこの尻尾妙にねっとりしてるし! なんだよこの液体!
うん、う~ん? とりあえず右手で必死に尻尾にしがみつきつつ、左手を見る。
何これ? ヌメヌメってかベトベト? 匂いは……なんかアレに似てるような……え? え? おいおいもしかしてこれ尻尾ってか……。
あたしは試しに尻尾で素股してみた。スリスリってね。
「グォ、グォン、クォオオン――」
……なんか声が大人しくなった? いや、てか、え? マジで感じてる?
う~ん。とりあえず何とか胸を露出させてっと。尻尾にクッション押し当てて、両腕をなんとか回すようにしっかり掴んで、全身で――スリスリっと。
「グォン、グフォン。クォオロオォオン」
やっぱだ! こいつ尻尾がアレだ! なんかアレっぽい! てことは雄かいこいつ? それになんか尻尾がムキムキって先っぽから割れて、てか捲れた! え? マジ? これって皮? え? 皮被りなのこいつ?
しかも中から露出されたのは黄金色の逞しいソレだよ。剥けたらムキムキにナッタヨお客さん。
う~ん。とりあえず剥けた方に頭をやるよう反転てっと……で、さすりつつペロペロってね。
「フ、フォオオォオオオォオオン!」
て! うわ! なんだこいつ! 急に暴れ、いや興奮して! ビクンビクンって尻尾も脈打ってるし――てか! 落ちてるぅうううぅううう、マジかよぉおおおおおおお――
◇◆◇
まぁそんなわけでね。
あたしゃこのエターナルドラゴンてのと一緒にどっかの森に落ちちまったわけだねこれが。
てかどこだよここ? なんか樹海って感じだね。まぁ村とかなくてよかったなって感じだろうけど。
うん。だってこいつデカイもの。普通に小高い山が一つできたぐらいにデカイもの。
全く。あたしの上に覆いかぶさってこなくてよかったよ。いくら巨人の力があっても、こんなの支えられる自信ないしね。
てかなぁどうしようこれ。このドラゴンもグタ~っとしてるし。なんだろうね? もしかして死んじゃった?
『人間よ――』
おわ! びびった! え? 何これ!
なんか頭のなかに声が響いてくんだけど!
『わしだ。わしが直接頭のなかに語りかけておる』
「え? わし……て! もしかしてあんたかい! エンペラードラゴン!?」
『エンペラー? うむ確かに人間はわしの事をそのように呼んでいるようだな。だがわしの本当の名前はホウキングエレヌスグァンダムドヴァルググメントテスタローサーンヒョミユレムバハムルテントゼクスである』
「なげーよ!」
『むぅ? うむそうか。ならば好きに呼ぶが良い』
「あっそ。だったら包茎で」
『ホウケイ? 変わった名だな。まぁ良かろう』
いいんだ。びっくりだな異世界。
「それで、なんで急にあたしに話しかけてきたんだい?」
『それは……お前にお礼を言おうと思ってな』
「お礼? てかさ。あたしの言葉わかるならあんた普通に喋れんじゃないの?」
『いやこの姿ではそれは無理なのだ。多分わしの言葉ではお主は理解が出来ぬであろう』
ふ~ん、そういうもんなのかねぇ。
「でもお礼って? よくわからないけど」
『うむ実はな。わしも久しぶりに目覚めたのであるが、なぜかはわからぬが先ほどまで理性が保てなかったのだ。おかげでかなり暴れまわってしまった。あのまま続いていればこの大陸全土を崩壊しかねぬところだったのだ。それがお主にされた行為で随分と落ち着いた。被害も最小限で済んだ。本当に感謝している』
最小限って……三匹と人間何人か燃えて、一匹と一人は喰っちまってるけどね。
まぁでも包茎からしてみたら大した事ないのかねぇ包茎だけに。
『しかし一体お前は何をしたのだ? 助けてもらっておいてこう聞くのも何であるが、人間がわしを止めるなど本来出来るものではあるまい』
と、言われてもねぇ……。
「そもそもあんた、なんでそんな暴走してたのか自分でわかってないのかい?」
『うむ。目覚めた直後妙にウズウズというかそうだなすごく興奮していたのは記憶にある。ついでに尻尾のあたりが酷くムズムズしてな……だがお前に何かをされた事で、す~っとな。なんとも心地よい気分になれたのだ』
いや……それってあんた。
「ようは発情期だったってことだろ?」
『発情期だと? なんだそれは?』
「いや、だから交尾がしたいんだろ?」
『交尾? 交尾……よく判らぬな。そうだお前ちょっとわしの目を見てくれぬか?』
目? 全く一体なんだってんだい。
まぁとりあえずこのデケェ奴の目を見てやる。
『……ふむ! なるほど! 理解したぞ! これが交尾か! うむそういえば以前にも見た記憶があるぞ。一体何をしているのかと思っていたが……』
なんか頭の中へ、いやに興奮した口調で語りかけてきてるけどね。
目をみたら判るのかよ。やっぱドラゴンだな、包茎のくせに。
で、なんか剥けた尻尾を顔の近くに持ってきたけどね。うん、おい何のつもりだい。
『ならばお前。早速続きと行こうぞ。ほれこれを受け入れるのだ』
「出来るかぁあぁあぁああ!」
ざけんな! 思わず大声で叫んじまったよ! 入るかんなもん!
『む、むぅなぜだ。正直言うとわしはまだ満足はできておらぬと思うぞ。まだむずむずしてたまらぬのだ。もっとお主と交尾をしたくてたまらないのだ!』
急に図々しい事を言ってきたなこの包茎! 童貞包茎竜の癖に!
「あのねぇ。あんたサイズをちょっと考えなよ。いくらあたしでもソレは無理だよ絶対。軽く貫通できるレベルだからね!」
全く巨チンでさえギリだったのに、こんなん入るかよ。裂けるわマジで!
『むぅ! なるほど! サイズか――確かにこれはうっかりしておった……ならば!』
うん? なんかそんな事いった直後……て! おい! 急に光りだして! な、なんだよおい――
「……これでよいか? 人間の女よ」
……て、おいおいマジかよ。




