102話
「このライオン・ハート! マリヤ様に一生の忠誠を誓います」
片膝を付いて、ライオンがわりとあっさりあたしに鞍替えしてくれた。
全くこいつも所詮雄だよね。
「だ、団長! 本気ですか!」
「それはつまり、トーゲン教を敵に回すということですよ!」
「どうかお考えなおしを団長!」
うん、流石に他の騎士達は納得行かないって顔してっけどね。
「俺が決めたことだ! 考えは変わらぬ!」
吠えるように団員達に言い放つ。その姿に騎士達も戸惑いの色を隠せてないけどね。
「あんた達はどうするの?」
あたしは顔を見合わせている聖騎士達に問いかける。
「わ、我らが教会を裏切ることなど出来るはずなかろう!」
誰かの声に、そうだ! そうだ! と波のように続いていく。でもね――
「ふ~ん、でも本当にいいの?」
あたしは嬌声で騎士達に語りかけた。悩めしいポーズも織り交ぜ、自慢の胸を強調する。
何人かの生唾を飲む音が聞こえた。それに顔を紅くさせてるのも多くいる。
こいつらは、あたしとライオンのプレイをその眼にしてるからね。
強がってはいるけど、まず間違いなく性欲は掻き立てられているはずだ。
「も・し、あ・た・し、に忠誠を誓ってくれるなら――」
あたしは小指を口に含み、色目を使うように彼らを見回し告げる。
「後でたっぷりサービスして、ア・ゲ・ル――」
最後の一言をいい終えた時には殆どの騎士が股間を……いや騎士だけじゃない。その周りの兵士や魔導師もアレを押さえてモゾモゾしだしていた。
「ち、ち、誓います! 俺! マリヤ様に忠誠を! 誓います!」
一人が左手でソレを押さえつつ右手を上げて宣言する。そしたら、あ、お前ずるいぞ! なんて声もあがり、更に次々と、俺も! 俺も! と手を挙げだした。
「あ、あの俺達も」「私達も」
「忠誠を誓ったらサービスを受けれますか!」
……盗賊系の兵士と魔導師の連中もそんな事を言い出したね。
「忠誠を誓ってくれるならね」
そう言ってウィンク決めたら、うぉおおおぉおおお! って大地が震えるぐらいの歓声が沸き起こって、当然一斉に誓います! の声が轟いた。
だけどね、う~ん、ひーふーみー、……三千以上いるかこれ? 言った手前やるっきゃないけど……ま、いっか。なんとかなるっしょ。
「むぅ流石マリヤだ。これだけの兵を寝返らせるとは」
まぁ実際寝て返らせる感じだけどね。
「しかしマリヤ大丈夫なのか? こんな人数……いくら君でも――」
馬鹿が心配そうに言ってきたけどね。
「大丈夫なの! マリヤ様のビッチ力があれば! これぐらい余裕なの!」
うん。余裕ではさすがにないぞ。
「マ、ママ! マリヤ! ぼ、僕も、て、てつだ――」
「何言ってるのクラウン。貴方にはまだ早いわよ。どうしてもというときはこの私が――」
「な、何を言ってるんだアリス!」
……とりあえずモジオはどうやって手伝う気だったのかがちょっと気になるかもね。
「マジヤ……」
うん? あぁ巨チンか。何か話したそうにしてるね。
「うん? 何かあった?」
「……おでをあやづっでだまどうじ、にげようどしでる」
うん? 逃げようと……て! マジだ!
「おい! ヘンガミ! どこ行く気だい!」
ビクッ! て背中を震わせたね。そいつ意外にも何人か魔導師が付いていってるよ。
「ふ、ふん! 命びろしたな! とりあえず撤退してやる! だが覚えておけ! 街で戦力を整えて今度こそ貴様らを殲滅させてくれる!」
「愚かな! ヘンガミ! 俺達から逃げられると思っているのか!」
ライオンが噛み付くように語気を強めて言い放ったけどね。
「ふん! 当たり前! 見よ! 我が浮遊の魔法!」
言うが早いか、変髪の身体がふわりと浮き上がり上空高くまで到達する。
「そ、そんなヘンガミ様! 私達を置いて行く気ですか!?」
「え~い! お前たちも魔導師の端くれなら自分たちでなんとかせい!」
そんな事を言い残して、変髪が背中を見せて逃げ出した。
むぅ、空中じゃ流石にこっちも何も出来ないね。
「あぁ失敗したなぁ。あの杖だけでも奪っておくんだったよ」
「神様はあの杖をご所望ですか?」
「うん? あぁ巨人をあれで操ってるらしいからね」
「承知致しました」
そう言ってゴブリン長の命令で、一匹のゴブリンがクロスボウを構えて――撃った!
ヒュン――パンッ!
「うぉ! わ、私の杖がぁああぁ!」
おお! ナイス! 見事に矢が杖に当たって落っことしてくれたよ!
「クッ! くそぉおお! 覚えておけ! 覚えておけよぉおおお!」
そんな捨て台詞を吐いて、変髪は飛び去っていったね――
◇◆◇
「もう私達も愛想が付きました。マリヤ様に忠誠を誓います」
変髪と逃げようとしたのは女の魔導師だった。
まぁ色仕掛けはとりあえずは女には効かないからね。
だから一緒に逃げようとしたんだろうけど、変髪のジジィに置いてかれて諦めたというか呆れたというかそんな感じらしい。
「マジヤ。おでのながまもマジヤにちゅうぜいぢがういっでる」
どうやらあたしが杖を奪ったお陰で、開放される事になったのが嬉しいみたいだね。
「ところでマリヤ、これからどうするつもりかな? 私は人質も無事戻ってきて、これ以上は特に拘りはないのだが」
「はぁ? 何いってるんだい。これからそのタイトウのいる街に向かうよ。こっちも今なら人数もいるしね」
「え? ほ、本気かいマリヤ?」
「本気も本気さ。やられたらやり返す! 万ぐり返しさ!」
「……マリヤ様。何か一言よけいな気がするがのう……」
うん? そうかい? まぁいいじゃん。なんか一度言ってみたかったんだよねぇ。
「だが確かにマリヤの言うとおり! ヘンガミは我らも含めてここに主要な戦力を注いだ、つまり街の警護は手薄であろう!」
ライオンの声に触発されてか周りの連中も、そうだ! やろう! 攻め込もう! 等といった声も上がってくる。
デカマラやゴブリン達にダークエルフもあたしの決断に従うつもりらしい。
「よし! それじゃあ!」
「マリヤ様ぁあぁ! やっと抜け出しましたぞぉおおお!」
うん? なんかが壊れたような音が聞こえて――
「このイメクラ! マリヤ様の為に命を投げ打ってでも敵を撃つ覚悟であります!」
あ、すっかりこの二人の事を忘れてたよ。
◇◆◇
ライオンの先導で、あたし達は領主の滞在するタイトウの街に向かった。
とりあえず巨人だと早いって事で、先遣隊ってのを組んでライオンにデカマラとエロイーヨ、馬鹿に火の玉と何体かの兵士や騎士を乗せて移動してる、
犬は疾風の神足があるから、走って付いてきてる形だ。
スラパイと子どもたちは戻って貰ったけどね。せっかく取り戻したのにまた捕まったら元も子もないし。
で、走り続けて日が落ちて夜になった頃に街の前まで辿り着いた。
朝まで待つか? て話もあったけど今のうちに仕掛けようってあたしから提案。
で、とりあえず単身であたしが向かうって話をした。
でも皆反対してくるんだよね。
「大将が単身突っ込むなどありえぬぞ! ここはしっかり作戦を立てて――」
「いや、だからとりあえずだって。それに夜のあたしはそう簡単にやられないから大丈夫だって」
あたしの発言に多くは頭に疑問符を浮かべたみたいになってるけど、知ってる者はなるほどって顔を見せてくる。
「ならばこの犬めがサポートに付きます。危険であればなんとしてもマリヤ様も逃してみせますので……」
「いや、しかし」
「それに夜のマリヤ様について行けるのは、恐らくこの犬だけでございます」
更に知らない連中が怪訝な顔を見せるけどね。もうめんどいから、あたしはその場で変身してみせる。
「な。なんと! マリヤはウェアウルフでもあったのか!」
ライオンが随分驚いてる。でもあんたも見た目は獣人と変わらない気もするけどね。
「確かに今のマリヤに付いていけるのはアレックスだけだな。頼んだぞ」
馬鹿が納得を示したところで、あたしは街に身体を向ける。
「判った。だが危なくなったらすぐ呼ぶのだぞ!」
ライオンの声に判ったよと返し、あたしは一気に脚に力をこめて跳ねるように駆けていく。横からはしっかり犬も付いてきてるよ。
「あ~~はっはっは! 馬鹿め! ノコノコやって来おって! どうせ夜襲でも仕掛けてくるつもりと踏んでおったわ。私の魔法を舐めるなよ! 既に前もってくることを察知し! 見よ!」
街の前ではズラズラと魔導師達が勢揃いして入り口を塞いでいた。
どうやらそこで迎撃しようって魂胆みたいだね。
「しかし、たった二人で仕掛けてくるとは愚かな! ウェアウルフであった事には多少驚きであるが、そんな事問題ではない! さぁ一斉に魔法で決着を!」
「ウォオオオォオオオオン!」
あたしの咆哮で魔導師達の多くが耳を塞いだ。魔法相手には便利だねこの技。
でも変髪を含めた何人かは堪えたね。
その辺は流石だねっと。
「クッ! この程度で我々は怯まん! 喰らえ!」
叫びあげた瞬間には炎の玉や風の刃、岩石や雷槌、氷の矢なんかが跳んでくるけど、あたしや犬はそれを全てひょいひょいと躱す。
「さて、どうしますかマリヤ様?」
犬が作戦を聞いてくるけどね。
「難しいことは何もないよ。ちょっとあたし一つやってみたいことがあるんだ」
そう言ってあたしは更に加速して、魔導師達の側まで一気に詰め寄る。
「ヘンガミ様! あの動き! 早すぎます! 捉えきれません!」
「え! え~い! とにかく撃て! 撃つのだ! 大量に放って撃ち落とせぇえ!」
更に飛んでくる弾が増えてるけど、あたしは構うことなく跳躍! そして何発か喰らいつつも気にすることなく。
腕を振り上げて、着地寸前、あたしは一気に力を込めて、地面を殴ると同時に闘気を――爆発させる!
その瞬間目の前がピカっと光ってドゴォオオォオオオオオオオォオオン! と世界がひっくり返ったかのようなすげぇ爆音。衝撃波が広がって、地面が噴火したように天を突く。
そして――
「で? どうされますかな? まだ続けますか?」
頭上からあたしの代わりに犬が問いかける。
すると震える変髪の声が聞こえてくる。
「ま、参りました……降伏、致します――」
うん。まぁそうかな。そうだよね。
ははっ、いや参ったね。まさかねぇここまでとはねぇ。
うん、デカマラの力×巨チンの力×ウェアウルフの力×獅子爆塵イコールで……まぁ拳を打ち込んだわけだどね。
その結果出来たのは、隕石でも落っこちたんじゃないのかい? ってぐらいでけぇクレーター。アハッ、こりゃ軽く東京ドーム一個分ぐらいありそうだね。
……テヘッ、ちょっとやり過ぎちゃったかも――




