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あるひのVRMMO日誌  作者: カグツチ
第1章:テストプレイですの
4/6

第4部:裏門より

光が収まってくると大きな噴水が目の前に現れた。

しかも見覚えがある噴水である。

「始まりの噴水かぁ、懐かしいな」

始まりの噴水、これはこのゲームを始めてプレイした時に現れる始まりの街のシンボルである噴水のことである。

まぁ死に戻りをした時にもこの噴水や各街にある噴水から始まることから、とも言われてはいるのであるが。

あたりを見回すとちらほらといるプレイヤーと思われる人物の幾人かも同じように懐かしそうな目でこの噴水を見上げている。

恐らくはかつてMSOをプレイしたことのある人たちなのであろう。

そしてその人たちを含め次から次へとあらわれるプレイヤーたちは、手慣れたように進んでいく経験者についていく形で正門へと続くNPCの店が立ち並ぶ通りの入り口へ進んでいった。

「MSO経験者の方PTに募集してまーす、一緒にレベル上げましょう!」

「誰か正面の平野で経験積みませんか―?後衛さん大募集です」

「おうおうおう、だれか俺とPVPしようや!レベル無視してスキルだけでやりあおうぜ!」

「装備はいらんかね―?NPCよか良い装備だよー」


「お、さっそくやってるねー、さっさと待ち合わせの場所に行くか……」

そんな喧騒に突っ込むのは病み上がり精神状況の俺では厳しく、更にこの街がどうやらMSO時代からはそれほど変化が見れらないことから裏門へと続く道へと進んでいった。


裏門についてしばらく待っていると、街の中心部からプレイヤーと思われるキャラが走ってきた。

「シンちゃんごめぇーん、待った?」

「結構遅かったな、あと今はキャラ名で呼びなさい」

「わかりましたー、たいしょー!」

「いやお前絶対にわかってねえだろ」

「見た目がたいしょー!って感じだから仕方ないよー」

金色の短髪に緑の目をした見目麗しい女性キャラの彼女は登場と同時に俺のリアルネームを呼びかけてくれたので少し焦った。

この天然っぷり、どうやら蓮のようだ。


「今回はリリーって名前なのでよろしくお願いします」

『プレイヤーのリリーからフレンド要請が来ています。受諾しますか?』

挨拶とともに現れたウィンドウにYesと返す。

『プレイヤーのリリーとフレンドになりました』

フレンドとはゲームにおける友人のようなもので確か100人まで登録ができるシステムだ。

フレンドになっておけばPTを組んだ時にフレンド補正がかかったり、プライベートウィスパー略してPWを行うことが可能になる。

PWは簡単に言えばチャットのようなものだったんだがVRだと電話みたいになるんだろうか?

ちなみにPTはパーティーのことであり、最大で6人までメンバーを集めることができるシステムである。

このPTを組んでいなければ同じモンスターを攻撃した際にペナルティが発生してしまい危険が伴うのである。

ただし街へと帰還すると自動で解散となってしまい、次に街の外へと出るときに結成しなおさなければならない必要も存在する。


そしてフレンドになったところで予定を確認する。

「今からどうするよ?狩りに行くにしても正面は人だらけでロクにプレイできんぜ?」

「裏でやってみない?PT組んじゃえばはぐれくらいは倒せると思うよ」

「了解。じゃあ装備とスキル教えて」

「私は前と同じで『魔法』『治癒』『強化』『詠唱』取って最後だけ『杖術』にしちゃった。そっちは?」

「ソロでもいけそうなスキル構成か。俺は『剣術』『料理』『観察』『身体強化』『見切り』にしたよ」

「そっちもソロで行ける構成じゃない。じゃあPT組んで狩りにいこー」


「そいやっさ」

「プギィィィ」

「そーれ!」

「ゴホウビデスゥゥゥ」

裏門から出てフィールドに入ってから30分。

正門とは違って全く人がいない中で俺たちは狩りを行っていた。

ちなみにさっき倒していたのが『ピグット』と『イタゴブリン』の混合PT。

ピグットはピンク色の毛と前歯の長いウサギでイタゴブリンは名前の通りちょっと痛いセリフの多いゴブリンである。

先ほどの断末魔がどちらのものかは普通にわかると思う。

正門から出たフィールドにいるモンスター、ラビット・ゴブリンの上位種である。

正門前のフィールドは初心者のためにあるフィールドなので、モンスターは単体で発生しとても弱い。

対して裏門のフィールドはモンスターは上位種がPTを組んで発生するので初心者が行ってしまうと死に戻りになってしまうのが落ちである。

ただし得られる経験値は桁違いで攻撃さえ食らわなければレベル上げにとってとてもおいしい狩場なのである。

しかしどうして一撃死のフィールドでここまで狩りができているのかといえばこのゲームの仕様とスキルがミソなのだ。

VRゲームでは脳から送られた電気信号を読み取ることでゲームのキャラに反映させ、ゲームのキャラの六感をプレイヤーにフィードバックする。

つまり脳で考えたことを実行するのにはそのスペックに見合った器があれば良いのである。

しかも画面上であるとはいえその器を10年以上も見続けてきたのである。このゲームにおいてはキャラクターを理想通りに動かすのは苦ではない。

さらにスキルの身体強化や強化といったもので一時的にステータスを上げることも可能である。

つまり上位種であろうと彼らが相手をしているのはMSO時代最強の一角を占めたプレイヤーなのである。

どう考えても勝敗は明らかであろう。


「プギィ!」「バクハツゥゥ!」

「リリー、新しく湧いたぞ。MP残ってるか?」

「あー、ちょっとキビちいかも……どつきまわしに参戦するね」

「うーい」

今まで前衛後衛と別れていたもののリリーがステータス強化などに使っていたMPがなくなったようで前衛に参戦して戦うことになった。

その長い歯で敵を抉ろうとするピグットの攻撃を見切りを発動しつつかわす。

そこに合わせてイタゴブリンが棍棒を振るってくるので初めから持っていた木の剣を地面にさした反動で飛びずさる。

「あー、この連携が初見殺しになりそう……」

「プ、プギャ!」

また同じようにピグットが突っ込もうとしていたが、それはリリーの手にあった木の杖のフルスイングに阻まれてさらにノックバックしていく。

「チャーンス、だよ」

そこにリリーは容赦せず大上段に振りかぶった杖を叩き付け、ボグッと嫌な音を立てるとともにピグットはポリゴンへと変化した。

「やるねぇ。俺も頑張らないと」

ピグットとの連携を考えていたせいかすでに振りかぶる準備をしてあったイタゴブリンは慌てて防御の姿勢を取ろうとする。

しかし遠慮なくそのどてっぱらに持っていた木の剣を付きこむと今までのダメージもあってか、イタゴブリンはポリゴンへと変わっていった。

「プギャァァ」


「いやー。レベルもが上がったねぇ」

「上がったねー。素材もボックスパンパンだよ」

あのあと続けて狩ろうにもリリーのMPは回復してないし、アイテムもいっぱいになってきたのでいったん街に戻って装備を一新しようということになった。

ちなみにレベルは両方5で、おそらく最前線でもレベルは7くらいだからまぁ早いほうである。

「全部のアイテムうっぱらった手持ち金が2000ガルちょっと……個別店舗を持つのに20万ガルか」

「お金だったらもうちょっと先の街で貯めたほうが効率良いと思うよ?第一テストプレイでお店持っても製品版で残ってるとは限らないよ」

「それもそうか」

確かにテストプレイ特典くらいはつくだろうがプレイヤーの差別をしてはならないだろうからほとんど初期化することは明白だ。

それならばこのテストプレイのほうもシナリオやクエスト、スキルなどの実演していくほうがいい気がする。

一応バグ潰しが仕事であるからな。

「あとさ、一つ言いたいんだけど」

そう考えているとリリーが随分と深刻そうな感じの表情でこちらを向いていた。

どうやら重要な要望でもあるらしい。

「なんだ?」

「言ったら悪いと思うんだけどごめんね。……その顔で若者口調似合わないから改善した方が良いと思うよ?」

「なん……だと……」

拝啓ゲーム課課長様。嫁の一言に関してもう少し威力の調整をお願いします。このままでは嫁にPKされそうです。

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