聴覚障害者の日常 怖いもの編
怖いもの……何だろう?
一昔前は、「地震 雷 おやじ」が怖いものの代表だったっけ?
確かに自然災害も怖い。
人災も怖い。
魑魅魍魎としたオカルト、ホラーな映画や物語も、悪意に満ちた憎悪も妬みも、怖い。
怖いものは色々あって、甲乙つけがたいだろう。
皆があまり怖くないもので、アタシにとっては怖いもの、それは暗闇だった。
聞こえない分、目で情報を集めようとするが、その機能がはたらかなくなる状況というのが、暗闇なのだ。
人間の感覚は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚があり五感と呼ばれるらしい。アタシは、そのうちの聴覚はほとんど機能しないので残りの四感(?)で生きている。
暗闇は視覚をうばってしまう状況になるわけで、そうすると、残りの三感(?)で何とかしなくてはならなくなってしまう。
人間は普通、暗闇で活動する動物じゃないから、暗いときは寝るだけだ。寝るだけなら、怖くはない。
ただ、突然何かが起こり、停電するとしよう。
アタシは、パニックを起こすと思う。いきなり見えなくなり、状況を把握したくても動くのが怖くなる。触って確認していけばいいだろうけれど、触っていいものかどうかの判断もきかないし、方向感覚がなくなるのでなおさら動けないのだ。
しかも、会話も不可能になる。
文字通り、暗黒の世界だ。
1人の時は怖かったが、結婚してからは、暗闇は怖くなくなった。
夫は暗闇でも、手話…ほとんど指文字だが、話しかけてくれた。人肌の温もりと、指で会話ができる、それだけで安心できた。
夫はアタシにとっては偉大だ。
でも、停電時、いつも夫が側にいるわけではないから、克服できたとは言い難いのかもしれないけど…。