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御呼ばれ

架空の人物、団体です。フィクションです。ご理解の程をよろしくお願いします。

 あの驚愕の強制入部という儀式が終わった後、部長の「今日は疲れたでしょうから帰りなさい。」という言葉で私達一年生三人は帰路についていた。どうやら部長は自治会の仕事が終わっていないようで、副会長と一緒に部室で残るそうだ。やっぱり自治会の仕事は大変なんだと思う。先輩の鞄の中から出てきたたくさんの資料やファイルを思い出すだけで、気が滅入りそうになるし。とにかくそういう訳で、晴れて小説愛好会の一員となった私達三人は、作戦会議をしながら一緒に帰宅中。

 一応、お母さんに一言言ってから帰った。そうしないと怒られるような気がしたし。何より私がそうしたかったから。お陰で久澄さんには私とお母さんの関係がばれてしまったけど、久澄さんもお母さんも気にしてなかったから、多分問題ない。もちろんさゆみんは私の事情は把握済みである。親友だもんね。

 あれから分かったことがある。久澄さんは結構おしゃべりで、不機嫌そうな表情はそのままだけど、私達とはもう普通にしゃべってくれるようになった。何でも自己紹介のときは相当に緊張していたのだとか。何から何までかわいいなあ…。

 それから、さゆみんが呼ばれた理由。何でもさゆみんは高校の学校説明会のときに、部長その人に学校を案内してもらったらしく、その時に愛好会について話を聞いていたらしい。そういえば部長説明忘れてるし……。作者の力量不足だね!

「それにしても…どうしようか…小説…。」

「やらない訳にはいかないわよね…。」

 先ほどから私の横で二人の声が聞こえている。作戦会議の途中なのだが、さっきから一向に良い案は挙がっていない。無理もない、私達は小説なんて書いたことが無いのだから。私がその話に混ざろうとすると、久澄さんがポン、と自分の手を打った。何か閃いたようだ。

「うちに来れば二年前の姉さんの原稿があるわ!」

「その手があった!さすがプードルちゃん!」

「だからプードル言うな!」

 すかさず私が茶々を入れると、やっぱり久澄さんは怒って小さな身体を大きく動かして私を怒鳴ってくる。プードルちゃん、可愛いと思うんだけどなぁ…。さゆみんはその光景を少し離れたところでくすくす笑いなが見ている。そんなに面白いかなぁ?

 なんとか久澄さんをなだめていると、その久澄さんがコホンと咳払いをして、少し前に出る。そして私達の方を振り返ると、少し照れたような表情を浮かべてこういった。

「まぁ…これから、この三人で部活していくんだし…誰かが罰を受けるのを見るのも気が引けるからね…仕方ないから、うちで一緒に原稿見て、課題考えない?」

 …これは、まさかのアレですか?俗に言う御呼ばれってヤツですか?あのツンデレプードルちゃんからでれイベントですか!?貴重なイベントですか!?そんなの断る訳無いじゃないですか!むしろ行きたい!行かせてください!

 ちらりとさゆみんの表情を伺えばその顔だけで答えは決まっているようだ。私とさゆみんは久澄さんの方へ顔を戻すと、笑顔を見せてこう言った。

「もちろん、行かせて貰うよ!」

「私達も困ってたから、ありがとう、久澄さん。」

 笑顔で私達が久澄さんに伝えると、久澄さんは照れているのか頬をほんのりと赤らめて、いつもの仏頂面じゃない、困惑と驚きの表情を浮かべた後、一瞬だけ、本当に一瞬だけ笑ったように見えた。その姿はいつも通りに可愛かったんだけど…なんだか、とっても綺麗だった。

 


 …とまあ、そんな理由でお宅訪問なう。そして私はとてつもなく吃驚している。それはもう腰が抜けそうになるほどに。だって私の目の前には、この作者の世界にあるまじき姿…。

「何をしてるのよ?早く上がってよ?」

 玄関の扉を開けて、先に上がろうとしている久澄さん。ドアを押さえたままで此方を向いて怪訝な表情を浮かべている。隣に居るさゆみんは何事も無かったかのように久澄さんについて既に玄関に入っているが、私は動けない。何よりも普通に生きてきた私には、今の状況を何と言えば良いのか分からない。しかし私は言わなければならない。ゆっくりと、ゆっくりと口を開く。

「なんで………」

「ん……?」

 全くこの状況に疑問を浮かべない久澄さんと、若干苦笑を浮かべているさゆみん。なんで…なんで…

「何でお約束通りの豪邸とかじゃないの!?」

「何でって…うちお金ないし、なにが問題なの?」

「主人公の友達は一人は豪邸とかお金持ち設定じゃないの!?お約束は!?」

「そんなものはないわよ!悪かったわね!」

「私もハシャぎ過ぎた!ごめんなさい!」

 …まぁ、とりあえずお約束は終わったし、久澄さんに謝ってから玄関に入る。久澄さんも冗談だと分かってくれているのか、本気で怒ってはいないみたい。よかった、流石に冗談が過ぎたと思ったけど…。

 その後久澄さんの案内で玄関から階段を上がって二階へと上がる。そのまま『あすか』と可愛らしい猫の表札がかかった部屋へと案内される。どうやらここが久澄さんの部屋みたいだ。

「…散らかってるケド、あんまりきにしないでね」

「下着とか落ちてるの?」

「突き落として良いのね?」

 ……目がマジなのでやめてください。久澄さんがため息をつきながらも扉を開ける。そこには何とも女の子らしい部屋が待っていた。もちろん壁紙が前面ピンクとか、そう意味じゃなくて。何というか…可愛い、その一言しかない。若干歳に不相応かとも思うけど、久澄さんなら似合ってると思える。部屋のところどころに置かれた可愛らしいぬいぐるみや、ファンシーなデザインの小物達、きっと不思議の国のアリスの部屋はこんな感じなんだろう。うん、アリス良く知らないけど私のイメージではそんな感じだ。

「うわぁ…可愛い部屋だね…久澄さんらしい。」

「っ…!原稿、取ってくるから、座ってて…。」

 きっと素直な感想だったのだろう。さゆみんが久澄さんに言うと、久澄さんは照れたように顔を俯かせた後、私達を部屋に押し込めた後、扉を閉めてしまった。うむ、恥らう乙女は可愛らしいなあ…。自分には絶対出来無い表情だから、同姓なのに何か新鮮だ。

 そうして私とさゆみんは言われたとおり部屋の中央にある机の周りに座る。何だか自分の部屋はこんなに可愛くないから落ち着かない。他人の部屋って、何をしなくても居心地悪い時ってあるよね!

 私とさゆみんが特に何もすることが無く周囲を見渡していると、いきなり扉が開いた。恐らく久澄さんだろうとそちらを向くと、案の定そこには久澄さんが居た。飲み物と大量のお菓子の乗ったお盆を持って。…あれ?原稿は…?と一瞬思ったけど、もしかしたら気を使ってもらったのかも知れない。私は立ち上がると、久澄さんに近づいてお盆を受け取る。

「あ、プードルちゃん、手伝うよ。」

「あらあら、ありがとう。重くてたいへんだったのよ。」

 …………なに?

「ぷ、プードルちゃん…?だ、大丈夫…?」

「んー…?大丈夫よー…?」

 ……絶対おかしい!だってプードルって言って怒らないわけないし、よく見れば心なしか雰囲気がのほほんとしてる!そういえばいつの間にか私服に着替えてるし!その私服も可愛くて似合ってる!私的には何も問題は無い!でも問題ある!

 さゆみんもかなり驚いているようで、開いた口が塞がらないようだ。私は助けを求めるようにさゆみんを見るけど、逆にさゆみんに助けを求められてしまった。

「よっと…多いわね…ほら、持ってきたわよ…」

 そこに更に入ってくる一人の女性……いや、久澄さん…。私は目がおかしくなったようだ。久澄さんが二人見える。どうやら久澄さんが予想以上に可愛すぎてついに妄想を現実化する能力が発動したみたいだ。うん、これは一人お持ち帰りしていいというフラグですよね。私は手に持ったお盆をテーブルに置く。

「という訳でこのプードルちゃんは頂いて帰ります。」

「お、落ち着いて小百合ちゃん!その発想はおかしいよ!」

「あらあらー…私ったら頂かれちゃうわねぇー…。」

「あーもう面倒だから全員そこに座れぇぇぇ!」

 

……ちょっとは上手くなってきたかな?いいえ、まだまだ度下手で御座います。すみません。

今回は次回への複線を少し謎にしてみました。さあ、プードルちゃん二号の招待は一体誰なのでしょうか?アンケートにでもしようかな…(殴

という事で、次回へ続きます。今回も読んで頂きましてありがとうございました。また次回をお楽しみに!

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