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Journals of the Dead  作者: 数奇者星
第一部 学園監獄編
30/33

第五話 聖者は夜に去っていく(4)

東校舎一階。

響は大きく深呼吸し、意を決して保健室のドアを開けた。

中では草薙と、別の女生徒が会話していた。

「あ、大森さん。絵美ちゃんはいた?」

何も知らない草薙が、のんきにそう尋ねてきた。響は顔の筋肉を総動員させて、笑顔を作る。

「おう、いた。やっぱきつかったみたいだ。そこのベンチでへばってるよ」

そういって、消毒液を入れた鞄を机の上に置く。それをみた草薙は、苦笑いを見せた。

「こんなに沢山?いいのに……あ、ありがとうございます。ご苦労様って絵美さんに伝えておいてください」

「ああ。それで、ええと、絵美なんだけど……」

そこで、スコップを肩にひっかけた女生徒が口を挟んできた。

「木中さんはもう歩けるんですね?それじゃあ、寮の方へ戻った方がいいかもしれません」

ちょうどこれからそう伝えようとしていた響は、かすかに驚いてその理由を尋ねた。

すると彼女は、その後の話し合いで決まった方針―――感染者の捜索には教師陣が当たることを伝えた。

「ですから生徒は寮に戻っておくように、と。守りを一か所に固めようって話ですね。感染者がどこかにいるかもしれませんし、付き添って寮の方へ戻ってくれますか?」

好都合だった。どちらにせよ、今のままの絵美では他人を欺く余裕はないだろう。保健室を出させて、人気のないところへ連れていくつもりだった響としては、わたりわたりに船だった。

「そうか。そんじゃあ、私は絵美を連れて、寮の方へ戻ってる。アンタ等は?」

「一応救急セットだけもって、後で戻ります。ただ、理事長が問題で……」

理事長は意識不明の重体だ。体の中はどうか知らないが、全身の骨がやられているらしく、ベッドから動かせそうもない。助かる見込みがあるとは響としては思えなかったが、今はどうでもいいことだった。

「わかった。それなら、寮に戻ったときにどうするか聞いておく。あるいは意見を仰ぐように頼んどくから」

よろしくお願いします、と手を振る草薙に見送られながら、響は保健室を出た。


応接室手前のベンチでは、絵美がどこか青い顔をしながらうつむいていた。

「おう、絵美。いったん寮に戻ってもいいみたいだぜ」

響は努めて明るい声を出しながら、そう話しかける。

絵美の顔色は優れない。思わず投げ出された彼女の右手に目が行った。手の怪我だけが原因ではないだろう。アルコールで消毒し、手持ちのタオルで縛った右手。響の視線に気づくと、絵美はつい、と袖口を伸ばして指先丸ごとを隠す。

「……うん。わかった」

「腹減ってないか。適当に食い物が必要ならあとで持っていくけど」

「別に、大丈夫だけど……」

うつむき調子の絵美の歩幅に合わせて、ゆっくりと響は歩く。視線は四方八方と油断ない。今のところ校舎には人気はないが、外であれこれと具合を聞かれるのはまずいだろう。出来るだけ急いで寮へと戻りたいところだが……。

「ねえ、響ちゃん……」

そんな響の様子から何かを考えたのか、絵美が面を上げてきた。

彼女の深い瞳になにか気押されるようなものを感じながら、響は必死に笑顔をつくろうとした。

「あのね……」

しかし、絵美がなにかを言いきることはない。その肩が、急に抱き寄せられたからだ

「ちょっと待った。そこ、誰かいるのか」

物音を捉えた響はそう声をかけながら、ポケットに入れたバールに手を伸ばす。

しかし血にも濡れておらず歯もむき出しにしていない少女が出てきて、それは杞憂だったと知った。

だがその少女が誰かを理解すると、響は表情を曇らせざるを得なかった。

「あ、あの、先輩……」

背丈の小さい、眉じりの下がった大人しめの少女。

知り合いらしいと理解した絵美は怪訝な顔で此方を見つめている。お知り合い?

「何?悪いけど、さっさと寮に戻りたいんだけど」

絵美が余計なことを何も言わないように、肩をがっしり掴みながらすげない態度でそう答える。

「いえ、その、大丈夫でよかったです……って、伝えたくて。その」

「そう。悪いけど、友達を寝かしてやらなきゃいけないんだ。話は後で」

小柄な少女がそういって話をしようとするのを、響はすげなく切り捨てる。こんなところでおしゃべりするつもりはなかったし、それに彼女にはそういった態度をとるべきだと響はわかっていたからだ。

「そう……ですか」

意気消沈したそぶりを見せながら、じろり、と何か不穏なものの混じった視線を絵美に投げかけるのを、響は見逃さなかった。しかしそれをどうこうている暇はない。

それじゃあ、といって戸惑う絵美の手を引っ張り寮へと急ぐ。

校舎の外からちらりと後ろを窺うと、少女はじっと二人を見送っていた。

「ねえ、響ちゃん、あの子は……」

「もてる女はつらいってことさ」

響はそれだけ言って会話を打ち切る。彼女との関係をいちいち説明する気はなかった。絵美もなんとはなしに察してはいるのだろうが、今口にして話し合う問題じゃない。

彼女が向けてきた粘っこい視線がまとわりついてきている気がして、響はその足を早めた。


寮に戻るにあたって最大の問題だったのが、残っていた遺体だった。

襲いかかってきた感染者の遺体。それをどうするかということについて、

そうしてとられたのは、一時的に別の場所に置いておくということだった。


「それじゃあ、いくわよ。いっせーの、せ!」


室内に入った時にム割とした悪臭。死のにおいに顔をひきつらせながら、必死に体育館脇の用具室へと遺体を運んだ。

搬送には、誰かが倒れた時に使う担架を使った。

反対側では、松波曜子が手を貸してくれていた。


たとえ自分たちの手で始末したとはいえ、仮にも同校生だった相手だ。ぞんざいに扱うことはできない。

だからといって今こうしてその場しのぎとして置き場所を変えることが、彼らのためとはいえないのが苦しいところだ。結局はたらいまわしにするしかないのと同じで。

何ともやりきれない仕事だったが、他に志願者がいないために明里がやるしかなかった。それについてきてくれた曜子には感謝していた。

「……だから、その。クリスちゃんは反省していて、もうさっきみたいなことしないって言ってたから」

ただ、彼女もきちんと目的があったらしい。彼女は先ほどの騒動の後のクリスについて、あれこれと話してくれていた。

「その、もうあんなことはしないって、反省してたから。だから、出来たら許してあげてほしい。お願い」

クリスの弁明を、さっきから必死に曜子はしていた。しかしそれを明里にいちいち話すのは、杞憂だったと言ってもいいだろう。

「許すも何もないわよ。こんな時だもん。皆パニクるし、皆青ざめるし。別にどうこう言うつもりはないわ」」

クリスは非常に出来た人間だと思う。頭だって回るし、他人との協調性も申し分ない。

ただその半面、他人に対して自分を合わせ過ぎるきらいがある。雰囲気や勢いにのまれた行動にでてしまう、そうした彼女の特徴が、先ほどの蛮行へと走らせたのではないかと明里は推測していた。

「そう。……ありがとね」親友に代わって礼を述べる曜子を、明里はまぶしいものを見るかのように見つめた。

「まあ、今も元気に動いているんでしょ。なら、あなたもそんな心配しなくて大丈夫だと思う」

「うん。そうだね。こんな時だから、いろいろと後悔だけはしないように、って行ってた。大丈夫だと思う、クリスちゃんなら」

曜子が頷くのに、明里も頷きを返した。霧生達に解き伏せられて、霧生隊の異様な雰囲気にのまれない自信は、自分にもない。それくらい今の霧生達には勢いがある。

「私もクリスは当てにしている。今だって、これからも、ね」

そうして運ばれた遺体を丁寧に並べ直しているうちに、ぽろりと曜子がこぼす。

「ねえ、杉ちゃんはない?何か心残りになりそうなこと」

「そんなの……考えるときりがないわよ」布の破れ目を隠しながら、明里は肩をすくめる。

「そうじゃなくて。杉ちゃんは、もっと自分を正直に出してもいいと思う」

向き直った曜子の瞳が揺れる。それで彼女が何を言いたいのか、明里にも分かった。

「まあ、こんな時だから、ねえ。えっと……」

と、そこでふと明里が目を逸らしたのと言い淀んだことから、曜子の表情が変わった。

「あれ?えっと……、杉ちゃん、もしかして……」

「や、違う、違うから!その、ちょっと、かっこいいですって、ほめただけだから!」

何でこの子はこういう時だけ異常に勘がいいんだ。自分の失言を棚に上げて、明里はうめく。

わたわたと他の生徒に聞かれないよう、曜子の口を押さえるが、彼女の笑みは止まらない。

「ふーん。なるほど、そうかそうか。じゃあ、余計な心配はいらなかったね、ほんとうに」

「だから、違うって!違うから!」

そうしてごく普通の女学生のようなやり取りをしていた二人の元に、駆け寄ってくる少女がいた。

「すいません、副会長。ちょっと来てくれませんか」

「あ、はいはい。わかったわ。おーけー!ナイスタイミング。じゃ、その、そういうことだから!」

そうして大慌てでその場を去ろうとする。

「杉ちゃん。攻撃は最大の防御だからね!」

背後から掛けられる声にてをひらひらさせながら、明里は苦笑する。

とはいえ、彼女が元気になってよかったとは、明里も思っていたのだが。




絵美と日和良の部屋。

「とにかく、ここで静かにしてるんだぞ。」

絵美を寝かしつけてから、響は絵美の頭をなでる。


寮の中には、すでに結構な人数の生徒たちが集まっていた。いずれも見知った生活空間に戻れたという安堵感のせいか、やや活気が戻っていた。

響はその人の数を見て、思わず絵美をつかむ力を強くした。

好奇の視線を感じながら、出来るだけ煩わしそうに階段を上る。絵美の具合を案じてか、話しかけてくる人間はいなかった。

そうして滑り込むようにして入った部屋の中で、要約二人は人心地ついた。そして響は、病人として絵美を寝かしつけているところだった。


「ねえ、でも、私は……」

「絵美。聞いてくれ」

絵美の言葉を遮って、響は絵美の肩をつかんで語りかける。

「まだ、全部が決まった訳じゃない。だから、もう少し。もう少しだけ、様子を見よう。ほかに手がないと決まったわけでもない。それからでもおそくはないはずだ。決めるのは、もうちょっとだけ待つんだ。いいな」

響は意図してゆっくり、相手の呼吸を落ち着かせるように言い聞かせる。絵美はまっすぐな視線を響に投げかけながら、黙考したのちに、

「……わかった。もう少しだけ、少しだけがんばる」

いい子だ。ふるえる指先をそっと髪の中に差し込み、梳く。

「別に感染率が百パーセントと決まった訳じゃないんだからな。全部を決めつけたって、ろくなことにはならない」

そういい募りながら、頭の片隅ではそれが希望敵観測でしかないことを響も理解していた。それでも響の言葉を受けた絵美はその意図をくんで、ひとまずベッドに横になったままでいることを約束してくれた。

外の様子を見てくるよ。部屋を出た響は、そっと頭をドアに押しつける。くそ、何だっていうんだ。


いったい、絵美がなにをしたんだ。歯を噛みしめ、頭をかきむしりながら、響は大きく息を吐き出す。


そうして胸を二度、三度と上下させた後で、勢いよく頭をドアからはなす。こんなことをしている場合じゃない。やるべきことはすでに決まっている。

響はそれまでの悩みを振り払うように頭を降り、颯爽と歩きだした。



生徒に伴われた先は、東棟校舎だった。

「どうやら、あなたの推測が当たっていたらしいわね」

そう言ってトイレの壁に寄りかかり、霧生はそれをあごでしゃくる。

「……女生徒は自分が感染していることに気付き、首吊り自殺を図った。しかし結局はゾンビ化してしまい、何者かに襲いかかった」

首に巻き付いたロープと、頭部を指しながら霧生は推測する。

「しかし撃退されて、そののちにこのロッカーの中に隠されていた、と。この場合は死因は何になるのかしら?自殺?それとも殴殺?」

手早く説明と会話を済ませてくる霧生に、明里は自分の神経がささくれ立つのがわかった。

「……一つ、聞きたいんだけど。勝手に調べたのはどういうつもり?」

明里としては、その点を見逃すわけにはいかなかった。

捜索をいったん打ち切り、生徒たちの安全を確保すること。先ほど柿谷たちと交わしたやりとりで、それはすでにきまったことのはずだった。

「あら、何を言っているの。状況に応じて、適切な行動をとるようにって言っていたでしょう」

まるでこちらが間違っているかのように、鷹揚に窘める霧生に内心で苛だちながら、明里は問いつめる。

「別に見つけたこと事態はお手柄だと思っているわ。けど、自分勝手に行動するのは……」

「そうね。まさか雨宮さんが見落としをしているなんて、私も思いもしなかったわ」

霧生がそうつぶやくと、トイレ入り口にいた雨宮がびくりと肩を震わせる。

本来ならばこの校舎内の調査は、既に雨宮が済ましているはずだった。にもかかわらず遺体がここにあるということは、彼女の仕事に見落としがあったことに他ならない。

ただ、明里としても一概に雨宮に対して不満をぶつけようという気分でもなかった。

なにも俯いている彼女を憐れんでいるわけではない。

最上階で感染者が暴れた教員棟と異なり、東棟ではあらかじめ封じ込めに成功している。それを鑑みれば、見落としがあったとしてもそこまで不思議には思わなかったからだ。

そんなことよりも。雨宮の責任を問うよりも、別の問題がそこにあった。

「……どうやら、すでに問題は別のところに移ったみたいね。この通り、頭が凹んでいるってことは」

自分の問いがはぐらかされた形になったことに胸をくすぶらせつつ、明里は霧生の指さした場所を観察する。

ロッカーを開けると同時にモップに交じって出てきたという遺体。首つりを図ったというその顔はうっ血してもはや紫色になっている。ただ感染して死に至った遺体よりも、それは何倍も凄惨な姿だった。

もはや何物もうつさない瞳と目が合わないようにしながら、頭部を斜めから観察する。どろりとした血が滴る即頭部は、確かによく見ればぼこりと凹んでいる。その破れた皮膚からかすかにのぞく、ピンク色をした頭の中に顔をしかめて、霧生の方へ顔を向ける。

「そのようね。他に傷はないみたいだし……あ、股のあたりが濡れてるけど」

「失禁したんでしょ。首つり自殺にはよくあることよ」

あそう、と顔をしかめながら頷くと、明里も改めて問題を直視せざるを得なかった。

「間違いなく、とどめを刺した誰かがいる」

「そしてその誰かは、遺体をロッカーに入れた。ふふ、なぜかしらね」


アンモニア臭と血のよどんだ空気が満ちたその空間で、少女は嗤う。

「どうやら、捜す相手が増えたみたいね」



絵美の部屋の下の階層。

「よう。邪魔するぜ」

勝手知ったるという体で、響は部屋のドアを開けた。

床が本や得体のしれない器具で散乱しており、一歩一歩に注意が求められる。おそらく学内でももっとも部屋の汚い女―――鳴海聡子の部屋に、響は足を踏み入れた。

「お、響。おつかれ、あとおかえり」

実は、日和良や絵美に比べると、響は鳴海聡子とのつきあいが深い。それというのも、彼女にはいろいろと便利な道具などを作ったり直したりしてもらうためだ。それをなにに使うか、などを尋ねることなく正当な対価のみを求め手くれる彼女との距離間は、響も気に入っていた。

「ああ。調子はどうだ。そっち、外界との連絡は?」

「今のところダメさね。こりゃ、完璧にいかれてる」

鳴海はそう言って、頭を神経質そうに掻き毟る。

机の上にはこの学園から外部との連絡を取り持つことが出来るという衛星電話のなれの果てがあった。


鳴海には学園内の治安維持とは別の仕事があてがわれていた。

彼女の能力、科学全般の知識をあてにした、通信機器の修理がそれだ。

彼女自身が希望したわけではない。ただ何人かの生徒の期待を受けて修理に着手したのだが、受け取った時のひきつった顔からは、ある程度その結果は予想出来ていた。


歪んだフレームのなかから取り出した部品をピンセットで指しながら、鳴海は口端をゆがめた。

「どうにか直そうにも、代わりになるパーツがないさね。一番大事なところが、やられちゃってる」

「アンタがそういうんなら、ホントに無理なんだろうな。……うわあ、うん」

ベッドに片足を載せて覗きこんだ響が呻き声を挙げる。窓から落ち骨折した理事長の下敷きになったということで、ひどい有様だった。せめて職員室に置いといてくれれば、よかったものを。余計なことをしでかしたものだ。

「まあ、別口の作業が出来たから、科学者キャラの面子は立ったと思うけど……それで、何か用だわさ?」

「別口?それのことか?」

机の上に放り出された機械を指さして、響が尋ねた。みた感じペンライトを分解してあるようだが。

「感染者用の秘密兵器か?ひょっとして」

「そこまで上等なもんじゃないだわさ。まあ、サポートアイテムな?」

響はふうん、とだけいって、いすに腰掛けた。興味がなくはないが、今は本題がある。

「ま、仕事の手が開いたんならちょうどいい。ちょっと雑談がしたくなってな。付き合えよ」


ベッドに腰掛けた響の顔を見て、鳴海もようやく椅子を回転させて、此方と向きあってくれた。

「さっき銃を突きつけられたのは知ってるな。感染の定義、のことだ」

出来るだけ頭を悪そうに、響は基本の基本を確認する。

「まずそれは、噛まれちまったら移るんだよな?」

「そう。この病気の特徴として、厚生労働省が発表した新型の感染病。恐るべき致死率を誇るというこの病気に、但し書きとしてついたのが、直接感染しかしないって話」

正月終わりくらいの夜中に流れたニュースだというそれの話は、響はあまり知らない。

「ちなみにインフルエンザとか感染した人間の咳とかで移るのが、飛沫感染。空気感染って言った方が分かりやすいかな?要は空気中を漂うウイルスを吸いこんでも、感染しちゃう病気のこと。新型のインフルエンザによって、人類が滅ぶかもしれないってのは何度も危惧していた人がいるけど、それにくらべればこの病気は幸いにも感染範囲が限られる。だから安心だっていうふれこみでみんなには知らされた」

しかしそれ以上の病気の実態そのものについては、人々が知ることはなかなかなかった。パニックを避けるため、と言う名目のもとで機密情報扱いされた病気に関しての情報は、人々をやきもきさせつつも、別の刺激的な事件に注意を集めさせることとなっていた。

「……まあ、まさかその新型の感染病が、こんな代物だなんて思った人は、殆どいなかっただろうさね。ほとんどオカルトじみた話にしか思えないし、そのあたりの情報も操作されていたかもしれない、かねえ……」

韜晦するようにそうつぶやく鳴海の話がそれつつあることに気づいて、響は軌道を修正する。

「問題はそれだ。その直接の接触とやらは、あくまで噛まれたかどうか、っていう基準でいいんだよな」

「んー、たぶんね。聞いた話じゃあ、腕を捕まれたりした柿谷先生とか相川先生は、無事だったらしいし

。ただ、血液が傷口に入った場合は……いや、でも……うん、血液と血液が触れる時点で結構危ないかもしれないだわさね。ただ、ちょっとなにかひっかかるのが……」

しばし頭を書きあげながら、鳴海は黙り込む。響が話を変えようとしたところで、動きがあった。

「そうだ!!そうだわさ!!」

突然大声を挙げると、鳴海は腰を浮かして、本の山の中から一冊を抜き取る。案の定積まれていた本は崩れたが、鳴海はそれに見向きもせずにその雑誌を慌ててめくった。

「これ、これだわさ!」興奮した鳴海は鼻息も荒く、その雑誌をこちらへと突き出してきた。

面喰いながらも、差し出されたページに、響は手早く目を走らせる。

まず、「一家惨殺」の文字が響の眼に飛び込んできた。

概要を簡単にみると、山奥でペンションを営んでいた男性が、家族を皆殺しにしたという凄惨な事件について書かれていた。論調は仲の良い家族であったことと、脱サラしたという男性の経歴と人格について述べられていたのだが、気になったのは発見時の状況だ。

「突如襲いかかってきた家族をやむなく斧で撃退し……全身ぼろぼろで返り血を浴びて真っ赤になったシャツを来て、街まで歩いてきた……」

響は頭の奥が冷たくなる感覚を覚えながら、呻いた。

「なんてこった。もうすでに感染による被害は、漏れていたんだ」

この病気は、すでに日本でも広がりつつあった。精神鑑定されているというその加害者の男性を見やりながら、響はその事実をかみしめる。すでに自分たちの目の前に存在していた真実に気付かなかったことに、歯がゆさを感じずには居られなかった。

しかし、その反応に鳴海は不満のようだった。

「そんなことはどうでもいいだわさ。これが本当だとすると、血液感染は噛まれた時ほど心配しなくていいってことだわさ。めでたい!」

笑顔でそう言い放つ彼女を唖然として見やりながら、再び紙面に視線を落とす。確かに、犯人とされている男性は返り血を浴びていたとされて、しかもそれでいて事件が発覚したのが犯行の丸一日後―――人里に彼自身が降り立った後の話だ。かなり時間が立っていても、彼は感染していなかった。

確かに、これが事実だとすると、この感染病に対しての恐れは少し減る。それはめでたいことだろう。

しかし、それを素直に喜べないのが今の響だった。絵美は、噛まれた。

「いや、というより、噛まれてウイルスが入るのと、血液がウイルスに入るのではどう違うんだよ」

「そりゃあ、まあ……ていうか、ずいぶん難しい話になって来ただわさねえ」額を抑えながら、鳴海がそうぼやく。「別に私は専門家じゃないんだけど」

「アンタよりこの問題を考えられる奴がこの学校にいるのか?」

響がそうおだてると、んふふ、と笑い声を漏らした。どうやらもう少し話しに付き合ってくれているようだ。

実際、人を動かしたり学園全体の問題ならともかく、こういった学術的な問題に関しては鳴海より詳しい人間はいないだろう。特に保険医でもあった万実が死んだ今では。

「戻すぞ……そもそも、本当に感染しているかどうかは、はっきりとはわからないんじゃないか。時間差があるっていう意味で」

「だわさ、ね」

だわさって、肯定系なのか否定系なのかどっちだよ。と響は思わないでもなかったが、鳴海とてそれ以上のことは何もいえないのに気づいて、それ以上追求するのをやめた。いや、そもそもだわさってなんだ。

「……じゃなくて。ええと、そうだよ。その、ウイルス。じゃあ、噛まれたら、百パーセント発祥するのか。アウトか」

肝心の部分にようやくたどり着いた。

「まあ、今のところはその前提でことに当たるべきだと思うだわさ」

響はその言葉に、一瞬で肝を冷やされた。

「はっきり言って、こんな病気は誰もみたことがない。感染したとおぼしき人間を死に至らしめ、その人間をあらたなベクターとして感染を広げる。最悪の病気だわさ」

「ベクター?」

「ああ、媒介物のことだわさ。あ、説明になってないか。ええと、つまり昆虫とかが花粉を運ぶのと同じで、ウイルスそれ自体が移動するのではなく、宿主となった対象によって、その生存範囲を広げていく。」

なるほど。アタシらはウイルスにしてみれば、体のいい乗り物ってことか。響は自嘲気味に顔をゆがめた。

しかし、いろいろとまずい方向に事実が塗り固められているのは響も理解していた。彼女自身の認識としても、洒落にならないレベルの病気だというのは分かっていた。しかし鳴海が今こうして改めて断言するのなら、それは自分の想像の範囲を超えて厄介だということだ。


絵美。彼女が助かる道があるのか。彼女の弱弱しい表情を思い起こしながら、必死に頭を回転させる。

彼女は大丈夫だ、と言いはることは不可能に近いだろう。だとしたら、彼女の身を守る、少なくとも暫くの間安全を確保するという意味で、もっと搦め手が必要になって来る。


「響ンがこういう話を好きだとは。意外だっただわさ」

ふと漏らされた疑問から、響は怪しんでいるのだと直感した。そろそろころ合いだ。響はその疑念を払う為のカードを斬ることを決めた。

「それで……ええと、性交渉はどうなんだ。感染しているかもしれない相手、とナニをしたら、どうなるんだ」

と、響はさも重要であるかのように、声を鎮めながら尋ねた。

「どうなんだ?」

「どうって……」

聞かれた鳴海は、しばらくだまりこんでしまった。

適当に場を取り繕う言葉を発するか否か悩んでいるときに、答えはきた。

「……なるほど。まあ、それなら人目をはばかるわけだ」

鳴海がため息をついた。

「エイズなら、キャリア―にかまれても大丈夫だけど、性交渉はマズイ。って言えば、どっちの方がヤバいかはわかるだわさ」

あきれ顔を作りながら、彼女はいう。

「性交渉なんて、危険に決まってるだわさ。唾液を交換したり、体液を合わせたり……や、私がアンタに言うのも釈迦に説法でしょうけど。もしも本当に相手が感染しているかもしれないって思えるような状況にあるんなら、するのはまずい。てかするな。……いや、まあ、程々にね」

「へいへい」

「……なるほど。他の人に相談できないわけだわさね。さっきもそうだけど……ほんと、そのあたりはいい加減にすることだわさ」

響はできるだけ下劣にみられるように、歯をむき出して笑った。



鳴海は、響のちょっとした小遣い稼ぎについても知っている一人だ。


最初はちょっとした遊びだった。娯楽もなにもない中で、退屈を紛らわせるためのちょっとした刺激。

女同士のむつみあいに興味はなかったが、そもそも男に対する終着ももそれほどない。

女生徒に告白されて、別段断る理由も見つからないので、ということで軽く付き合ったのがきっかけだった。

いったい少女たちが響になにを感じたのかはしらない。

響がもつどこか危険な雰囲気という奴に引かれたのだろうか。

けれども少なくとも彼女たち自身の求める幻想に、なにかしら当てはまることがあったのは確かなだろう。年頃の少女たちが抱くほのかな恋心とやらにつきあう振りをするのは、悪くない遊びだった。

しかし相手はそうではない。形やあり方がどうであれ少女たちはそれなりに真剣だったし、そうなればどうやって何事もなくそれを受け流すかということによって、その遊びを続けるかどうかが決まる。響は生来の粗暴さと繊細さによって絶妙の距離間をつくることにも慣れて行った。

しかしそうした遊びにも、飽きはくる。日和良や絵美といった仲間と出会うこと、そして目的を共有することによって、完全に関心はそこになくなった。

そうしてつまらない相手との関係を清算していく中で、しかし何人かがすがりつきながら、紙片を押しつけてきた。

そうして響の遊びは実益をかねた仕事に変わった。別に自分から言い出したわけではない。けれども勝手に一人歩きしだした数字と噂をとめるすべはなく、その状況を響は受け入れる羽目になった。

もちろんある程度は響次第ということになる。興が乗らなかったり、相手が生理的に不快だったり。

しかし響は響なりの誠実さでそれに応えてきた。

行為自体は不純かもしれないが、それを咎められる筋合いも、罪悪感を覚えるほどのけがらわしさもなかったと響自身は思っている。

今日道場の方へ行ったのもそれが理由だった。

「少なくとも、お友達二人が心配なら、これからはしばらく止めておくことを勧めるだわさ。いや、ほんと」

鳴海が口を酸っぱくして言い聞かせるのを、響は内心の満足を隠しながら、頷いていた。



「つまり……自分が噛まれたから、遺体を隠したってこと?」

「そう。隠す必要性があったとしたら、それがもとっとも妥当よね」

遺体を見下ろす霧生の顔を、血の気が引いた表情で明里は見つめる。

「だとしたら、もっとまずいじゃない。感染している人が、私たちの間にいるっていうんなら」

しかも今度の相手は、誰とも知らない。いや、ここを出入りした人間はそう多くないはずだ。頭の中でそう算段をつけていると、「そうとは限らないわよ」という声がした。

「ここを見て頂戴」頭部を指し示されて明里は気色ばんだが、目を薄めながらよくよく観察する。

「武器は何かしら?ハンマー?」少なくとも包丁でないのは確かだが、だとしたら得物で犯人が絞れるかもしれない。

「いい着眼点ね。でもそこじゃないわ。問題は、場所よ」

「何が?」

二つとなりにある個室トイレのドアを使って、霧生は疑問を口にした。

「ほら、ここ。ドアを開けたタイミングで飛び出してきたんなら、この測頭部には当てられないんじゃない?」

言われてみて、明里も理解した。たしかに、角度的に後頭部に位置するこの場所にぶつけるのは難しい。

感染者は生きている人間に跳びかかるはずだ。

「鍵はかかっていなかったのよね」

明里が確認すると、霧生は背後に従えていた生徒を見やって確認する。

「はい」

「それなら、いったんドアの鍵を外から開けて、おそってきてあわてて締めて、押さえておいて、ええとそれから」

「相手が飛び出してきた瞬間、横に回り込んで側頭部をたたく?」

「そう、それ。それならどう?」

霧生は口元を押さえながら、考えるそぶりを見せる。

「確かに、それはありえるかもね。……いえ、やっぱり難しいはずよ。この距離で押さえていたんなら、多分両手がふさがっているでしょう。それなら、扉を開ける時点で横に動かないと、力を緩めた時点で危険になる」

言われて、確かにそうだと明里も思った。抑えた状態からハンマーを取り出し打ちすえるには、飛び出してきた感染者の注意を完全に目の前に引きつけなければならない。連中の反応速度なら、それは可能かもしれない。いや、しかし……、と考えがおぼつかなくなったところで、霧生が弦の人声を飛ばしてきた。

「それよりも、別の推測を私は立てているの。―――ここには、もう一人別の生徒がいたんじゃないかしら」





「しかし、ほんとうにいろいろ調べるっていうんなら、実際に感染した人間を見ないとまずいんじゃないか?」

「まあ、言われてみればそうだろうさ。机上の空論、砂上の楼閣にすぎないだわさね」

これまでの話を否定されたような気がしてか、鳴海の表情が不機嫌そうに歪む。

「それじゃあ、もしも・・・・・・かまれた人間がいたとしたら、アンタならサンプルとして生かしておくか」

部屋に沈黙の帳が降りて、響は質問したことを後悔した。

もしも鳴海の協力を得ることが出来るとしたら、彼女自身の利益や目的に沿っている必要がある。

その場合は、絵美は研究対象として保護されることになる。

ただし、安全を保証するという意味では彼女を信じきれないのも確かだ。こんな何もない場所で研究もくそもないだろうが、それでも鳴海なら何か情報を見つける。少なくとも皆がそう思うくらいには彼女は信頼されているだろうという算段が、響にはあった。

だがそれを聞いて、鳴海は一切の動きを止める。

踏み込みすぎたか?思わず自分の唾を飲み込みながら、この空気を打ち消す言葉を捜していると、「難しいだわさ」と小さなつぶやきが漏れ聞こえた。

「まあ、研究材料もとい情報収集のためには一人くらいは必要かもしれないけど・・・・・・皆が納得しないだわさ」

「それは・・・・・・ゾンビ状態のその人を、昆虫よろしく捕まえたままにすることが、か?」

響はわざと刺激的な表現を使っておどけようとしたが、口ぶりの重たさがそれを邪魔していた。

「生かすにしても、殺すにしても、つらい決断になる。ただ・・・・・・」

響の動揺等露知らず、何か思い詰めたような顔で鳴海がぼそぼそと口を開く。

「      」

しかしそこで、思わぬ横やりが入った。


「あ、あ、あの、その、し、す、失礼します!」


ドアのノック音とともに、緊張しているらしいそんなうわずった声が聞こえてきた。

やがてゆっくりドアを痛めないように配慮しているかのようにして開き、砂野一代が現れた。先ほどまでと違い、アームガードとチェストガードははずしてある。ただし、洋弓は背負いっぱなしでドアの上部に引っかかりそうだった。

「ああ、砂野。言ってたものができたから、確認してほしいだわさ」

「あ、は、はい」

鳴海と響の間で視線をさまよわせる少女に、響は片手をあげて挨拶する。

「んじゃあたしは一回戻るわ。賞もない話につきあわせて悪かったな」

「いんや、また何かあったら気軽にどうぞ、わさ」

ここらへんが潮時だろう。先ほどの質問の答えが得られなかったことが残念ではあったが、響は腰を浮かせた。

鳴海がカップを掲げるのを横目に、響はその場を去ろうとした。

「あ、あの、せ、大森先輩・・・・・・」

「おう。頑張ってな。それじゃあ、また後で」

砂野が何か言おうとしてきたが、これ以上雑談している余裕がない響はそれを遮った。

とにかく、この場はここまでだ。


ドアの外にでて、響は大きく胸元を上下させる。息を吐き出して、必死に呼吸を安定させる。

危なかったかもしれない。鳴海は怪しんでいた。

しかし何よりも恐怖を感じたのは、鳴海聡子と言う人物を響が見誤っていたかもしれないと思い知らされたことだった。

彼女が味方になり得る。それはとんでもない勘違いだったかもしれない。

思い出すのは、鳴海がぼそりと最後に呟いた言葉。


「むしろ、死んだ後のサンプルの方がほしいかもしれない」



いつの間にか、夕食時になっていた。一階へ降りたところで、響は目的の女生徒を見つけた。

「ああ、響さん。よかった、ご無事で。絵美さんは、こちらに戻っていらすのよね。具合はどう?」

名雲文香がかすかに疲労の色をにじませながら、問いかけてきた。

「まあまあだな。あんたと対して顔色は変わんないよ。あとご飯粒」

名雲はあわてて手で口をおおい、響が指さした場所を手で拭う。食堂の方を見ると、まばらに食事している生徒たちがいた。どうやらみんな勝手に配膳して食事しているらしい。そして彼女はもう飯を腹に入れたらしい。

「失礼。……そうですか。何か私にできることは?」

気遣いを見せる名雲に、響は反射的に手を振った。

「いや、お前も疲れてんだろ。絵美もそれだと、逆に気を使わせるから、今はいいよ」

何気ない風を装いながら、そう答えると、名雲はそうですか、と簡単に納得してくれた。

「それでしたら、大森さん、ちょっとあっちでお手伝いを一緒にーーー」

「悪いな。ちょっと車関係で用事があるんだ。後にしてくれ」

そうですか、と名雲は再び引き下がってくれた。

そうしてその場を立ち去ろうとしてしまったところで、響は立ち止まる。

何をやってるんだ、私は。

響には、内心躊躇があった。絵美と彼女には繋がりはあるが、どちらかというと響とは中が悪い方だ。とことん真面目な彼女と、とことんふまじめな響のそりが合うはずもない、とこれまで敬遠してきた。

「いや、そうだ、そういえばーーー」

だが、どう交渉をするにせよ、必要になるだけの発言力と理由を持っている相手は、彼女しかいないだろう。味方につけられる相手として、他に選択肢は多くない。

「絵美のことで、聞かれたらまずい話がある。人気のないところへ」

響は、名雲にすべてを話すことを決めた。



「つまり、ここには二人以上の人間がいた。不幸にもゾンビを発見し、噛まれて、ドアを押さえていた人間と、もうひとり、ゾンビへとハンマーをふりおろした人間。私たちが捜すべきは、この二人なんじゃないかしら」

霧生の意見は確かに最もだった。状況からの推理に、明里も異論を挟む気はなかった。だとしたら、やるべきことの方向性は決まった。

明里はトイレから飛び出そうとする。

「さて、条件に当てはまる人間を捜すのに、時間はかからなそうね。さっそく聞き込みにいきましょう」

「そうね。ただ……」

「ただ?」

明里が聞き返すと、霧生はかぶりを振った。

「いえ。遺体を隠すのにはそれほど本気でないのを見ると……それほど長い間隠す気はないのかもしれないわね」

霧生の言葉をしばし明里は考える。

「なんとか、その相手の無事を守るように算段をつけるってこと?」

「そう。おそらく、交渉なりなんなりをするつもりなんでしょうね。だから、一時的な時間稼ぎとして遺体を隠していた。隠ぺい工作がこの程度なのは、自分自身の保身も図っているんでしょうね。後で言い訳が聞くレベルだと思ってる。つまり、彼女もずっと隠せるとは思っていない。」

だとしたら、次はどう動くか。

「おそらく……味方を増やして、なんとかその感染した子の安全を確保する。じゃないの?」

そう。その通りよ。まるでよくできた生徒をほめるようにほほ笑む霧生に薄ら寒いものを明里は感じる。

その生徒の行動は、そもそもが過激な行動に走りつつある霧生達の責任ではないのか。そんな懸念が喉からでそうになる。

「そう。その子を守ろうとしているのよ。その誰かさんは。そして感染したその友人を守るために、秘密裏に動いているはずよ」

霧生はあくまでいつもの調子で、語りかけてきた。

「……そうなるわね。うん、多分」

明里が同意を示したのを見て、霧生は早速今後の指針を言い放った。まるですでに腹を決めていたように。

「それじゃあ、伝えておきましょう。全員に伝えてはだめよ。その生徒が気付いてしまう。……名雲さんや、クリスさんたちの、今学園を取りまとめている人達に。なにかあったら、私たちに、すぐに教えるようにって」



お待たせしています。今回一番あれこれ悩んだところ、感染病についての鳴海との会話ですが、色々考えた結果、別枠で情報は補填していこうと思います。

元々導入での「感染病」がかなり突然かつ曖昧なので、そのあたりもはっきりさせた情報も、また手記とは別の形式で書きますので、また後日。


いよいよクライマックス。最長記録を更新したこの(4)を過ぎれば、もうお待たせすることはないと思うので、よろしくお願いします。

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