お酒って良くないね
第一部は主人公とシエルさんの出会うまで、主にギルドでの日常を書いていきます!
僕が冒険者ギルドと直接契約をしたのは約2年前かな。仕事にはだいぶ慣れたし、トラブルを起こさずに我ながら良くやれている。死亡するリスクは確かにあるが、うちのギルドは安定志向なので死亡リスクがゼロの仕事を取ってくる。実際、創業して300年経つが、1人も死んだことがない。首都フラナダにある他の冒険者ギルドと比較しても異例であり、その名誉を讃えてつけられた別名はゼロの冒険者ギルドである。創業者の名前もゼロであり、死亡者もゼロであるから、ある意味適切な名付けであると思う。
しかし、安定志向を維持した結果、ギルドの規模は小規模であり、ほかの冒険者ギルドに比べるとどうしても経済的に豊かとは言えない。低リスク低リターンであるが、ゼロのギルドは低リスク中リターンを獲得している。市場戦略は直接契約によって優秀な人材を確保して、無茶な依頼は絶対に受けない事だ。小さな信頼を積み重ねて、小規模ながら安定した運営が続けられている。フラナダ内の評判も高く、確実に仕事をこなしてくれるギルドとして確固たる地位を築いている。
加えて、レベル3以上の冒険者が30人ほど在籍しているので、簡単な依頼と言いつつ、他の冒険者ギルドからすれば割と難易度高めのクエストもこなしてくれるので、その点も評価ポイントに加算されている。
レベルは7〜1まであり、レベル3を取っても全大陸で約3%のレアキャラだ。評価基準は中央大陸が実績をもとに決めており、以下の分類になる。
レベル7 単独で国を崩壊させられる。
レベル6 その国の命運を握る戦力
レベル5 国の地域では敵無し
レベル4 同世代の中だと敵がいない
レベル3 秀才、努力の限界点
レベル2 基礎的なレベル
レベル1 一般人
僕はレベル5であり、自分で言うのも何だが結構つよい。生まれ故郷の西部大陸含め、全大陸の中で200人しかいない。その上のレベル6は10人、レベル7は2人になる。
なので、僕の就職先は大当たりだ。自分の才能を適当に活かせるし、ゼロのギルドの雇用方針は終身雇用であり、一度雇って貰えたらあとはサボっても極論問題ない。まあ流石にそんな人は居ないが、安心して働ける仕組みだ。暴力と不安定を生きてきた僕にとって、暴力の無い安定はとても心地良い。こんな日々が続くのも悪くはない。しかしある日、聡明であるはずのゼロのギルドから信じられない依頼が届く。
"シャルル殿を問題児シエルの教育係に任命する"
ああ神様。なんでこんな事になってしまったのでしょう。
ーーーーーーーー遡ること1ヶ月前ーーーーーーー
「シャルルさんも耳に入れておいて下さい」
「なんでしょうか?」
ギルドの受付嬢のエリーさんは、基本的に僕を担当している。とても綺麗な美人といった具合で、長い黒髪や整った目鼻立ち、豊かな胸はほかの受付嬢とは一線を画している。ギルドに所属するほかの冒険者からは殺意の眼差しを向けられている。幸い、僕の本質が他人に興味を抱かない奴である事がバレているので事無きを得た(?)のだが、いつ殺されるか分からない。
ゼロのギルド初の死亡者が同僚になるかも知れない。
「2年ぶりに新しい子を雇ったみたいで、シエルさんと言うレベル4の大型新人です」
「レベル4ですか? 即戦力じゃないですか」
このギルドでもレベル4は5人しかいない。シエルさんも加えて6人か。
「年齢も20代前半みたいで、シャルルさんと近いそうですよ」
「それは非常に助かります。このギルド平均年齢が30代以降だから、同年代の同僚ができるのは割と安心します」
エリーさんも自分と同じ年代なので、割と同感のよあだ。受付嬢の人は皆若く見えるが、実際はベテランの人が多いらしい。年齢を聞くのは怖いので、絶対に聞かないが。
「教育係としてラベンナさんが担当することになったので、もし一緒に働かれる際はお願いしますね」
ラベンナさんといえば、聖人でお人好しの凄い人だ。あの人が担当なら安心して任せられるな。ある程度成長したシエルさんと働くのが楽しみだ。
「了解しました。では、今日のところは帰りますね」
依頼をこなして疲れたので、さっさと家に帰ってシャワーでも浴びて寝よう。早速ギルドの正面口に駆け足で移動しようとしたのだが、エリーさんに呼び止められる。
「あの、シャルルさんはこのあと予定がありますか? もしなければ私と一緒に食事にいきませんか? 直ぐに退勤するので、お時間は取らせません」
今更気づいたのだが、エリーさんはいつにも増して綺麗な気がする。普段より化粧が凝っているし、服装も可憐な白のワンピースだ。ゼロのギルドには服装規定が無いので全く問題はない。ただ、普段のカジュアルで清楚な見た目からのギャップで、普段抑えている感情の起伏が激しく揺れ動くのを感じる。
「分かりました。お腹も空いていたので、僕でよければ一緒に行きましょう」
「やった! すぐに仕事を片付けますね!」
声が弾み過ぎたのか、ほかの受付嬢に注意されたエリーさん。しょんぼりとしている。
エリーさんが退勤した後、向かった先は近場のソーセージとワインが凝ったオシャレなレストランだ。西部ギルド連合国の交易が主体の文化が生み出した副産物であり、ソーセージとワインは共に他国の輸入品だが、品質は一級品である。他国ではフラナダほど交易が活発ではないので、グローバルリミックスな店は余り無く、その地域に根ざした伝統料理が盛んである。
例外は中央大陸であり、貿易、文化、武力、土壌、全てに恵まれた化け物が隣国であるが、それは例外とさせて頂こう。
「ソーセージとポテト、アヒージョ、白ワインを2人分お願いします」
エリーさんが先陣切って注文してくれた。男としてちょっと情けないな。こういう店は慣れていないもので。
「すいません。こういう雰囲気の店に来るのは慣れてなくて、リードしてくれてありがとう御座います」
「良いんですよ気にしなくて。寧ろ私に付き合ってくれてありがとう御座います」
逆に気を使われてしまったな。なんていい人なんだ。
「それにしても、エリーさんが食事に誘って来たのって、今回で初めてじゃないですか? 僕が誘った事もありませんが」
「そうですね。シャルルさんを担当して2年が経って初めてです。ずっと誘いたかったのですが...」
あれ? エリーさんの顔が段々赤くなってる気がする。気のせいかな。
「あの、顔が赤いようですが体調の方は大丈夫でしょうか?」
「いいえ気にしないでください! これは何というか、現状を俯瞰してたと言うか」
「あまり無茶はしないでくださいね」
頬を膨らませてこっちを睨んでいる。何か不味いことを言ってしまったのだろうか。
そんなこんなしているうちに食事一式とワインが届く。割と量もあり、ワインとセットで十分にお腹が満たされるので経済的に有難い。
「では、乾杯しましょうか!」
グラスがカランと音を立て、夜が本格的に始まった。
エリーさんとの食事は楽しく、話し上手なエリーさんに引っ張られるように、つい話し込んでしまった。
そろそろ店も閉まる頃に運命が決まった。
「シャルルさん。もしシエルさんがラベンナさんの手に負えない人だったらどうします?」
「そんな事は万が一にも起きないと思いますが、その場合は僕が面倒を見ても良いですよ。レベル4の人の教育係は何かといい経験になりそうだ」
「可愛い女の子だったらどうします? 付き合っちゃうんですか?」
「付き合いますね?!?!」
お酒のせいもあるだろう。僕の失言によってそれ以降エリーさんは業務以外で口を聞かなくなった。いくら必死に話しかけても無視されてしまう。これは、女心を軽んじた僕の罪であり、今後改善しなければエリーさんに殺されるだろう。
加えて、本当にラベンナさんの手に負えない問題児であったため、1ヶ月後に本当に僕が教育係に任命された。お酒の勢いで面倒見ても良い(冗談やん)って言ったけど、マジでどうしよう。教育係とかやった事ないし、そもそも問題児は避けたい。ラベンナさんでも無理な人を育てるのって不可能だろ。
お酒って良くないね。
余談ですが、地中海料理を扱うレストランって本当に高いですよね。値段だけで見るとサイゼで飲み食いした方が安くて美味しいですが、店の雰囲気味の質を考えるとそういった系統のレストランの方に軍配が上がります。
しかし、デートする時の究極の二択がありまして、サイゼで喜んで貰うか、高めの地中海料理の出るレストランで小洒落た雰囲気を取るかの2択で迷ってしまいます(勿論お金は自分が全部出すしかない...)
エリーさんはお金持ちなので、主人公の分も纏めて会計してくれました。マジでカッコイイ大人の女性ですね。憧れます。




