略取・1
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持っていかれたモノ
それは、持っていかれたことさえ
少しも気付けない“モノ”でした
――後日談
――――――――――――第三章 略取
翌日十一時。
莉子に指定された時間に、俺たち三人はとある大学の正門前にいた。
――って
「ここ、俺の通う大学じゃねぇか!」
呆然と中の建物を見上げる俺の横で、慶太と修平は、さも当然のように頷いた。
「ここの大学院で、研究生をしつつ教授の助手をしてるそうだよ」
へー、そっかー(にっこり
「じゃなくて! 言えよ、そういうことは昨日のうちに!」
思わず突っ込むと、慶太は首を傾げる。
「別に言おうと言うまいと、来るんだからいいじゃない。あ、いた。莉子さーん」
その声に、正門に向かってくる小さい生き物……基、莉子の姿が目に映る。
「あれ?」
思わず声がでた。
あの時は垂らしていた肩より長い髪を、クリップで上げていて。
セーターから出ている、ジーンズに包まれた華奢な足。
走ったせいで白い肌を少し赤く染めて、白衣を翻しながら駆けてくる。
制服フェチのくせして――
ていうか、ちゃんと見たら、結構かわいい系じゃね?
あの時は、前の彼女とかイラツキとか全て八つ当たりに等しくこいつにあててたから、顔をあまり見てなかった。
あれー……俺って、こいつに文句言える立場じゃなかった……かも?
思わずじっとみていたら、慶太がニヤニヤしているのに気付いて目を反らす。
「ごめんごめん、遅れちゃった」
綺麗なソプラノ。
なんか、外見詐欺の意味が分かった気がする。
全然、高校生でもいけるんじゃねーの? こいつ。
「いいえ、こちらこそわがまま言ってすみません」
「……」
慶太は、大人受け絶対いいと思う。
にこやかに対応する姿を見て、生徒会侮りがたしとか考えてみる。
「えーと、慶太くんと修平くんと……涼介くん?」
カチーン
「なぜ、俺だけ間が空く。そして何ゆえ疑問系?」
俺の言葉に、目をパチパチさせて動きが止まる。
なんか、意図せず苛めた感じ?
内心、居心地悪く溜息をつく。
突っ込まずにいれない、この性分をどうにかしてぇ――
莉子を見下ろすと、にこーっと笑みを浮かべられた。
「ううん、ちょっと驚いちゃって。よかった来てくれて、すごい嬉しい」
「え?」
本当に嬉しそうに笑うから。
なんだかちょっと、ドキッとしてしまったのは、きっと俺の霍乱だろう(なんだそりゃ
少し莉子に対するイライラが収まろうとしていたその時、
「いやー、あれだけ怒らせたから今日は来ないかもって思ってて。あー、安心したー」
だから、そっちかよ――
……再び、増大しました。