表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/36

その頃、涼介の部屋のドアには、耳をそばだてる皓の姿。

涼介の声が聞こえなくなった後、足音をさせないようにリビングへと降りた。


「涼介、一体なんだったの?」


リビングのソファに座っていた母親が、無表情気味の顔を皓に向ける。

皓は冷蔵庫からアイスコーヒーの入ったサーバーを取り出すと、コップにそれを入れて母親の前の椅子に座った。

「珍しくも、女の子がらみの悩みみたい」

同じ様にアイスコーヒーに牛乳をたっぷり入れたカフェオレを飲みながら、母親が物珍しそうにふぅんと呟く。


「あの子がそう言ったの? あんたにそんなこと言うなんて、結構重症?」


負けず嫌いの涼介が、兄とはいえ相談事をするとは思えない。

あえてそれをしたなら、精神的に重症な気がする。

皓は母親の言いたい事を理解したのか、持っていたグラスをローテーブルに置いて手を振った。


「涼介がそんなこと言うわけないじゃない。あんまり無いんだけど、あいつ女の子がらみで何かあるとさ、俺の顔を見るの嫌がるんだよね」

いい迷惑だけど、と肩を竦める。




――その女顔、目の前で晒さないで



確かに、涼介はそう言った。




母親は無表情に戻った顔を皓に向けて、グラスを手に取る。

「ホント、憎らしいくらいあんた女顔よね。私とかわって欲しいくらい」

「俺だって、かわって欲しいっての」


性別を間違えたんじゃないかって程、悲しいほど女顔の二十五歳長男と、男顔の四十八歳母親。

不毛な言い合いに、思わず溜息をつく。

ちなみに女顔の遺伝子を持つ父親は、自分の部屋で仕事中。


「それに俺が出て行った後、なんか叫んでたし。莉子の事は忘れよう! ってね」

「あら、振られた感じ? いーんじゃないの? あの子、恋愛に関しては生意気で嫌な男だから」


母親が言う言葉かと皓は内心苦笑したが、口の悪さは言っても直らないので諦めてそれを流す。

「まぁ、あれだけもてれば女性への見方が捻くれるのも、分かる気がする。涼介は、追われる恋愛しかしたことないだろうから。追う恋愛は、勝手が違くて戸惑ってるんだと思うけどね」


「分かった口を聞くのねぇ? その顔でも、恋愛経験は涼介以上?」


「その顔は余計。ただ、少なくても涼介の気持ちくらいは分かると思うよ。一応、おにーちゃんですから」


にっこりと笑うと、母親は溜息をつく。




母親はさばさばしているといえば聞こえはいいけれど、根っからの鈍感な性格。

天然とまではいかないけれど、あまり気にしない性格だから子供も放任主義。

父親似でよく気がつく皓に、涼介の面倒を見てもらってきたといえばその通り。



内心苦々しい気持ちを味わっていると、皓が溜息をつきながらソファの背もたれに寄りかかった。




「大体、涼介。自分が相手の事を好きだってこと自体、気づいてないんじゃないかなぁ。あの言い方だと」

「は? そこまで、鈍感なの? あの子」


けれど目を細めた皓に鈍感はかーさんもでしょ、と言われれば口を噤むしかない。


「わからないんだよ、多分。好きの気持ちがさ。自分が好きになる前に、相手に好かれてたんだから」




その言葉に二人で視線を合わせると、同時に溜息をついた。




――面倒くさいけど、不憫な子……



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ