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「え?」
誰もが、呆気に取られていた。
ちびっこの莉子が、まさかジャンプシュートを決めるとは。
ってか、バスケットボール持ったままよくジャンプできたな。
そこからして、びっくりだ。
「あら、まだ鈍ってないのねぇ」
静かな中、坂口のさも当たり前のような声が響く。
「ねー、私もできるかわかんなかったけど。よかったー」
「……三島。お前、こんな特技があったのか」
教授の、驚いたような声。
こっちの反応の方が、普通だろう。
「すごいねー、莉子さん」
修平がにこにこと笑いながら拍手した途端、割れんばかりの拍手喝采がコートを包んだ。
「すげぇ、すげぇよ!」
「意外性の女……」
「ありえねぇ、その身長でどんな腕力してんだよ」
「見た目で騙されたーっ」
等々(一部抜粋)、皆結構失礼なこと言ってる気がするけど、本心からそう思う。
絶対、ありえねぇ
驚愕の事実にじっと見ていたら、ふぃっと莉子がこっちを見上げた。
目が合って、思わず反らす。
「涼介くん!」
うわっ、呼びかけやがったっ。
横目で下を見ると、案の定ほとんどの奴等が俺の方を見上げてる。
呼びかけんなよ、恥ずかしいから。
無邪気というか天然は、ホント手に負えねぇ……。
今、俺見世物になってるんだけど、気付いてる? なぁ、莉子さんよ。
慶太の言葉をかみ締めながら、諦めて顔を莉子に向ける。
そこには、予想を裏切らずにこにこと笑う莉子の姿。
「見てたのー? 褒めてもいいよー! だから、ご褒美頂戴!」
ごっ、ご褒美……?
一瞬、ドキッとした俺ってスケベ?
だって、ご褒美って言ったらキスとかキスとかキスとか――
あー、はいはい。ごめんなさい。
莉子に限ってそれはないですね。
でもまー、確かに凄かったっちゃあ凄かったけどねー。
ここはのっておいてやるか。
「あー、凄いですねー。なんですかー、何が欲しいんですかー」
めっちゃ棒読みで言ってやったのに、一欠けらもダメージ受けないのか莉子はでっかい声で思いっきり叫んでくれました。
「涼介くんの制服姿の写真を撮らせて!!」
……さっきのジャンプシュートは幻かと思ったけど。
まごうことなく君は莉子だよ――
すみません、今回短めです。
次回、少し長く更新しますので!