表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/36

「莉子さん。俺、洋食が食べたい」


俺の声に莉子さんは当てていた指を口元からはずし、慶太と修平にも了解をとる。

そのままにこりと笑うと、あさっての方向に歩き出そうとした修平の上着の袖を、くんっと、その小さな手で掴んだ。

「こっち、ね?」

見上げて笑うその顔に、修平が嬉しそうに笑い返す。





ドクンッ





――え?



一瞬、心臓が、音を出した。



「――え?」



意味が分からず、自分の胸元に視線を移す。

左手で着ていたシャツを掴むと、慶太に背中を少し強めに叩かれて振り向く。

「ほら、行こう」


「――あぁ」


視線を莉子に戻すと、彼女の手はまだ修平の袖を掴んでいて。


「……」


思わず、足が動いた。


大股で二人の傍まで歩いていくと、莉子の左手を掴みあげる。




「え?」


びっくりして俺を見上げるその顔を、なんだか右手で一掴みしたくなってくるな。


にやり、と笑ってさっさと歩き出す。


「え? ちょっ……ちょっと」

まだ修平の袖を掴んでいた手が、俺が引っ張る勢いで外れた。



なんか、すっきり



「食堂はどこ? 俺、腹減ったよ。莉子さん」


俺に合わせるようにどこか焦って歩いていた莉子さんが、顔を上げて俺に掴まれたままの手を少し引っ張る。


「ちょっと涼介くんっ、歩くの速いっ! そんなに急がなくても食堂は消えないからっ」



――だから、そこかよ。少しは意識しろよ。

男に手ぇつながれてんだから。





突っ込みたいのはやまやまだけど。


何もいわずに、ぐいぐい引っ張っていく。



莉子の隣に、修平と慶太が歩いていて。

にやにや笑いの慶太と、莉子を少し心配そうに見ている修平。

ってか、修平。お前のその視線、気にくわねぇ



「涼介くんてばっ」


一向に離されない手にやきもきしてきたのか、莉子が少し大きめの声で俺を呼ぶ。

俺はにこにこと笑いながら、「両手に花だ」と修平たちを見る。


「ね、莉子さん?」

莉子さんは複雑な表情を浮かべて、首を傾げた。


「それいうなら、女の子でしょ?」

「えー、でも莉子さんがもし二人いて両隣に立たれていても、なんか――両手に……ハムスター?」

「何それっ」



ショックを受けたかのようなその表情に、俺は手を掴んだまま大爆笑で応えてみた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ