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5話:魔女との出会い

嵐は長く続いた。


ザアァーーーッ!!!


バッシャーーーンッ!!!


ピカッ!!!


ゴロゴロッ!!!


(あの無人島からどれだけ離れたのだろうか……もう今更あの無人島には戻れない!)


ザアァーーーッ!!!


バッシャーーーンッ!!!


ピカッ!!!


ゴロゴロッ!!!


それから数十分後、ようやく嵐が収まった。


「ハァ……ハァ……やっと嵐が収まった。

だが、俺はあの嵐を乗り越えたんだ!

どうやらここからが本番のようだな……海賊としての俺の新たな人生をな!

俺はもう、海賊になるからには陰キャとバカにされないようにしないと!」


陰キャの俺って、こんなキャラだっけ?

と思っているだろうが、元々は俺はこういう奴なんだ。

だが、小学校の頃に一部の女子生徒達からオタク達に対する悪口を言っていたのを聞いてしまった。

それ以来、俺は自分がオタクだと同級生達に知られると、オタクに対する偏見とか差別とかがありそうではないかという恐怖に襲われるようになり、周囲から“陰キャ”と呼ばれるほどまでに大人しくずっと暮らしてきたのだ。

だが俺は今、一人だし、自由に生きる海賊だから、おそらく本来の俺を取り戻せたような感じがする。


ガチャッ!


「ん?」


嵐が収まったのか、船内からオニキス達が顔を出していた。

そして嵐が収まったことを理解すると、安心したのか、エメラルドは再び笹っぽい植物を食べ始め、ヒスイは再び丸くなって眠り始め、オニキスは再びウロウロし始め、そしてカルサイトは俺のところにやってきて、俺の肩にしがみついてきた。

カルサイトは本当に人懐っこいのか、ずっと俺から離れようとしなかった。

でも、これはこれで悪くなかった。


そして夕方になった頃、遠くから巨大な島……いや、大陸が見えてきた。

しかも所々に光っているから、アレはおそらく港があると思われる。


「見えてきたな……でも金はないけど、どうすれば……」


そして夜になった頃、港に到着した。

後は錨を下ろし、港に船を停泊させた。


「もうすっかり暗くなってきたな……」


俺は朝になってから港町の探索することにし、とりあえず船内のベッドで寝ることにした。


ところが、深夜になった頃に誰かが船内に入ってくる音が聞こえた。


「ん?

誰だ?」


その音で目が覚めた俺は、部屋から出た。

そこには、清楚系の女性が怯えた様子で船の倉庫に隠れていた。


「あ、あのー……」

「!?」


その女性は俺を見ると、泣き出しそうな顔をしながら俺を見つめた。


「ど、どうしましたか?」

「た、助けてください!」

「えっ?」


彼女の名はサバト・ヴァルプルギス……話を聞くと、彼女は魔法を使う魔法使いで、いわゆる“魔女”である。

だが、この港町では今、とある宗教の影響で、彼女を含めた魔女を排除するための大規模な迫害活動“魔女狩り”が行われていたようだ。

そのため、彼女はその標的にされ、ずっと逃げてきたそうだ。

そのために何度も魔法を使って逃げたが、魔力が切れてしまい、何もできずに走って逃げるしかできず、そして俺の船に入ってきたとのことだ。


「そうだったのか……」

「あ、あの……私をここに匿ってもらえませんか!?」

「べ、別にいいけど……でも言っておくが、俺は今から海賊になるんだ。

もしかしたらお前も海賊と見なされるかもしれないけど、それでいいのか?

なんなら、どこかの島まで送っていくこともできるぞ?」

「そうですか……」


サバトさんは少し考えた。


すると、外から人々の騒ぎ声が聞こえてきた。


「あの魔女はここに逃げ込んだ!

もう魔力も切れてるし、走る体力もない!」

「邪悪な魔女がいなくなれば、あの方が言ったお告げの通りに平和になれるぞ!」

「いっそのこと、あの船ごと燃やせ!」


覗いてみると、そこには多くの人々がいた。

どうやらコイツらが魔女狩りをしている連中だ。


「チッ……なんてこった」

「ど、どうしょう……私はもう……」


俺は、彼女を守る決心をした。


「……サバトさん、ここで待っていてください」

「えっ?」

「アイツら、追い払ってくる!」

「で、でも……」

「心配すんな。

俺は今から海賊になるんだ」


そう言って、俺は船内から出た。


「おい出てきたぞ!」

「コイツ、船に寝ていたのか!?」

「つーかお前は誰だ!?」


俺はあえて自分の名を名乗らずにこう言った。


「俺は通りすがりの海賊だ!!

これ以上騒ぐのなら、容赦はしねーぞ!!」


俺は海賊らしく大声でそう言ってみた。


(緊張しちゃった……でも海賊はこうやって堂々と強気でいかないと!)


「か、海賊だと!?」

「なんてこった!!

ここに海賊が現れるとは……」

「でもいい機会だ!

あの魔女と一緒にあの海賊もここでぶっ殺せば、ここはあの方のお告げ通りに平和が訪れる!」

「あの方のお告げではこう言った……この港町に災いが訪れる。

その災いの元凶全て排除することで、ここは救われるのだ!」

「その元凶こそ、魔女、魔法使い、そして海賊だとなぁ!!」


そう言って、人々は俺達に直接襲い掛かろうとした。


ところが……


ドガァッ!!!


「グアアァァ〜〜オオオォォ〜〜ッ!!!!」


怒り狂ったエメラルド達が船から飛び降りてきた。

エメラルドの背中にはオニキス、ヒスイ、カルサイトが乗っていた。

どうやらアイツらが大声で騒いでうるさかったことに怒っているようだ。


「な、なんだあの魔物達は!?」

「や、やべーぞ!!」

「よりによって……なんであの“リーパーパンダ”がいるんだ!?」

「リーパーパンダって、あの“魔獣三大危険生物”に指定されているというあの!?」

「しかもよく見ると、背中にはあの怪鳥“ブラッディールフ”の雛に、転がるだけで国が更地になって滅ぼす“ランドスライドスネーク”の幼蛇、そして海に潜む全ての海の頂点に君臨する最強クラーケン“アイランドクラーケン”の幼体もいるぞ!?」

「で、でもあのパンダ以外は子供だから……」

「何言ってんだ!?

子供でも立派な魔物だ!

実際にアイツらに襲われて死んだって話があるんだぞ!?」


オニキス達って、実は極めて危険な魔物だと、俺は知らなかった。

そして怒り狂ったオニキス達は一斉に人々を襲い始めた。


「お、おい!!

待て待て!!

ここに来て早々に騒ぎを起こすな!!」


俺がそう注意しても、止まらなかった。


ドガァッ!!!!


「ぎゃあぁ〜〜っ!!!」

「うわぁ〜〜っ!!!」


ものすごい暴れっぷりだ。

でも俺は諦めずに大声で叫んだ。


「お前ら落ち着けって!!!!

これ以上暴れてしまったら、ここが崩壊してしまう!!!!

だからお願い!!!!

これ以上暴れるな!!!!」


俺がそう叫ぶと、オニキス達は我に返ったのか、俺のことを見つめた。

そして周囲を見渡してから、改めて俺を見つめ直した。

その表情はまさに申し訳ない気持ち……というかやっちゃった的な顔をしている。


「お前ら……落ち着いたか?」

「グワッ!」

「シャッ!」

「グアオッ!」

「キューッ!」

「ハァ……よかった。

でも、次からは俺の許可を得てからな!」


すると、一人の男がいきなり俺に土下座してきた。


「み、見逃してください!!

望みのものをなんでもやるので、どうか命だけは!!」


すると多くの人々は慌てた様子で街の方へ行き、しばらくすると金が入った樽一つと食糧がふんだんに入っている多くの木箱が運ばれてきた。


「こ、これをやるんで、見逃してください!!

そしてあのお嬢様には二度と近づかないと誓いますので!!」


そりゃあの危険な魔物が暴れ回ったら、みんなこうなるよな。

でも、アイツらにとっては因果応報……喧嘩を売る相手を間違えたってところだろうか?

だが俺はアレが欲しいと思い、追加で言ってみることにした。


「食糧と金か……ちょうど欲しかったからありがたくもらっていくよ!

でも、できれば武器が欲しいなぁ……」

「ぶ、武器ですか!?」

「あぁ、武器があれば助かるよ。

それと何日か分の着替えと……」

「少々お待ちください!!!

望みのものはすぐに用意します!!!」

「なので、どうか見逃してください!!!」


というわけで、俺は金、食糧に加えて、品質のいい拳銃とその弾と刀、何日か分の着替え(サバトさんの分も含む)、世界地図、コンパス、望遠鏡、そして椅子やテーブルなどの最低限の家具を得ることができた。

まぁ、思ってたよりも俺の目的が早く達成できたので、朝になったら出航して、あの港町から離れることにした。


「ありがとうございます。

おかげで助かりました」

「気にしないでください。

それよりどこに行きたいですか?

送っていかますよ?」

「いえ、その必要はありません」

「えっ?」


サバトさんは俺に真剣な顔で見つめた。


「あなたは海賊になるんですよね?

でしたら、私も一緒に海賊になります」

「いいのか?」

「えぇ、一応追われの身ですからね……居場所がない場所にいるくらいなら、あなたと一緒にいた方がいいかなって」

「……」

「それに私、魔法が使えるので、あなたを援護することもできます!

なので、どうか私を海賊の船員にしてもらえないでしょうか?」

「そっか……わかった!

じゃあ、歓迎するよ!」

「ありがとうございます!」


こうして、サバトさんは俺の仲間となった。

そう、最初の船員を得ることができた。


「ところで、お名前は?」

「俺か?」


(そういやあの陽キャ達は、下の名前で呼ばれていたな?

まぁいい……どのみちここで名乗ることになるからな)


「ツナミっていうんだ」

「ツナミさんですか?

改めて私はサバト・ヴァルプルギス!

魔女と呼ばれた魔法使い!

あなたの力になれるように頑張ります!」

「あぁ、よろしくな!」

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