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4話:出航

その日の夜、俺はさっきの船で、だいぶ体力が消耗した。

腹が減った……けど、この無人島には食べるものがない。

俺は再び空腹に耐えていると、あの熊が鳥と蛇と一緒に大量の木の実を持ってきた。


「これ、俺に?」


どうやら俺のために食べれるものを集めてくれたようだ。

俺は遠慮なくその木の実を食べた。


カリカリッ……


ポリポリッ……


思ってたよりピリ辛で、まるでオカキを食べているような感じだった。

でも、何も食べないよりはマシだ。

俺は無意識にどんどんと口を運んでいった。


カリカリッ……


ポリポリッ……


気がつけば、俺はあの大量にあった木の実を完食させた。


「食べれてよかった……ありがとうな」


俺はそう礼を言った。

すると俺はここであることを思いついた。


「グワッ?」

「シャッ?」

「グアオォッ?」


そう、手伝ってくれたコイツらに名前をつけることだ。


「……よし、お前らに俺から名前をつけてやろう!」


というわけで、ドードーみたいなニワトリサイズの鳥には“オニキス”、ツノの生えたツチノコのような蛇には“ヒスイ”、そしてあのパンダみたいな怖い熊には“エメラルド”と名付けた。

まぁ、全部宝石にちなんだ名前だけど、その方が覚えやすいと思った。


「グワーッ!」

「シャーッ!」

「グアオォッ!」


どうやら名前が気に入ったようだ。

そして夜が明け、遂に出航した!

オニキス、ヒスイ、エメラルドは俺と一緒に船に乗ってくれることになった。


ちなみにこの船はいわゆる“帆船”だが、布が流石にボロボロだったので、そこら辺の大きな葉っぱで穴を塞いで、なんとか使えるようにした。


「本当に良かった……古くても使えるとはなぁ……実にありがたい!

あの無人島はまさに、この船を守るためにあるのかもな?」


俺は船の舵を取りながら、後ろにいるオニキス、ヒスイ、エメラルドを見た。

エメラルドはパンダらしく笹っぽい植物をかじりながら食べ、ヒスイはダンゴムシのように丸くなって眠っていた。

オニキスは船内をウロウロしていた。


(あんな奴らと一緒にいるよりはマシだな。

多分この世界での魔物に当てはまる生き物だとは思うが……でもなんだろう。

大学のために上京して、あのペット禁止のアパートで一人暮らしをしてからずっと生き物を飼ってなかったな。

俺が高校を卒業する頃、実家で飼ってた犬と猫が寿命で死んでしまい、俺が大学で上京することになったのを理由に、親戚の子供達に俺が育てたヘラクレスオオカブトとニジイロクワガタ、アマガエル、ベンケイガニ、ヒョウモントカゲモドキをあげてからかな?

……久しぶりに生き物と一緒に暮らせるなんて幸せだ!)


俺がそう思っていると、背中に何か違和感を感じた。

そう、誰かに触られているような感触……それも人間ではなく、触手みたいな?

勘弁してくれ……ここに来て俺が触手に襲われることはないよな?

俺はその背中に触れた。


「!?」


そこには、ヌメヌメしたような感触だった。


「これってまさか!?」


俺はそう思って、それを掴んで、背中から引っ張って取り除いた。


スポッ!


「取れた!」


俺はそれを見てみることにした。


「キューッ……」

「えっと……イカとタコみたいな生き物かな?」


背中の違和感の正体は、イカとタコが合体したような謎の生き物だった。

多分、子供の個体と思われる。

そしてどこかで船にしがみついて、俺のところまで登ってきたのだろう。


でも、この子はとても可愛い!


「お前、めっちゃ可愛い奴だな!」

「キューッ?」

「良かったら俺と一緒に来るか?」

「キューッ!」


イカとタコが合体したようなその生き物は喜んだ。

タコやイカは確か、高い知能を備えた生き物として知られ、タコは無脊椎動物の中で最も知能が高く、イカは人間でいうと6歳児並の知能があると聞いたことがあるが、この子はそれ以上の知能がある!

でもここは異世界……もしかしたらクラーケンとかかな?

まぁいいや……とりあえずこの子には、“カルサイト”と名付けることにした。


「よし、お前は今日からカルサイトだ!

よろしくな!」

「キューッ!」


カルサイトは人懐っこい……もしもこれがクラーケンだしても、クラーケンとは思えないくらい温厚だ。

クラーケンといえば、船を襲って沈めるという凶悪な海の魔物で、特に北欧では“海の脅威を象徴する存在”とされ、恐れられていた。

俺が好きなあの海賊のアニメに加え、あの有名な海賊映画、海賊がテーマのゲームなどにも必ずと言っていいほどクラーケンが登場していた。

ちなみに食料は、オニキス、ヒスイ、エメラルドが自分達の分と俺の分として、木の実を大量に集めていた(なお、エメラルドしか食べないであろうさっきの笹っぽい植物も食料として含まれていた)。


「パンダは雑食だし、ドードーとかも硬い木の実を食べると聞いたことがあるが、蛇またはツチノコが木の実を食べるとは思わなかったな。

まぁ、この無人島はそもそも肉以外の食べるものがほぼないから、もしも獲物を仕留めることができなかったら、おそらく木の実を食べて命を繋いでいたのだろうな」


ちなみにカルサイトに木の実一つだけ見せてあげたら、まさか喜んで食べていた。


モグモグッ……


「キューッ!」


(この木の実って、実はヤバい奴でした的なオチにならないよね?)


それから程なくして、天候の様子が変わった。


「ん?

これは……」


さっきまで晴れていたのに、急に雲が多く現れ、その多くの雲で太陽を覆い隠した。


「これは……まずい!」


俺は慌てて、一人で帆をたたみ、オニキス、ヒスイ、エメラルド、そしてカルサイトを船内に入れさせた。


「グワッ?」

「シャッ?」

「グアオォッ?」

「キュッ?」

「悪いけど、お前らここにいろ。

多分、この海は大きく荒れるぞ」


そして俺はオニキス達を船内に入れさせた後、俺は船内から出て、舵を取って、すぐに船を動かした。


すると……


ザアァーーーッ!!!


バッシャーーーンッ!!!


ピカッ!!!


ゴロゴロッ!!!


案の定、嵐が発生した。


「マジかよ……出航して早々に嵐とはなぁ!」


とりあえず俺は、船首を風上に向け、砲門などの舷側の開口部や甲板の昇降部は閉じ、後は後ろの方についていた“海錨”という道具を打っておいた。

これは錨のかわりに帆布で作った凧を水中に入れることで、風で船体が流されてもこれが水中で抵抗となり、自然と船体が風上に向く……というものだ。

これは俺があの海賊のアニメを見ていた時に海賊船について興味が湧き、それで図書館で調べていた時に得た確かである。


「それにしても古くてもまだ使えるようになっているとは……むしろ助かったよ。

後はこれを乗り越えるだけだ!」


俺はびしょ濡れになりながら舵を取って、船を進ませながら、嵐に立ち向かった。


ザアァーーーッ!!!


バッシャーーーンッ!!!


ピカッ!!!


ゴロゴロッ!!!


「クソ……上等だ!!

これは俺が海賊になるための“嵐”という神様からの試練だ!!

これさえ乗り越えれば、俺は立派な海賊になれるぞ!!」

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