3話:無人島
「……」
俺は長時間眠っていた。
しかし、なぜか俺の目の前には、綺麗な空と雲があった。
起き上がると、俺の後ろは砂浜、俺の前には森があった。
「どこここ!?」
俺は思わず立ち上がって、周囲を見渡した。
「ここって、無人島か!?」
すると俺の服から一枚の紙が落ちた。
その紙を拾ってみるとそこにはこう書かれてた。
『お前みたいな陰キャはこの無人島で孤独に暮らせ!』
これを見て、俺はこの無人島に置いて行かれたと理解した。
やっぱり、俺の嫌な予感が当たっていた。
「異世界転移して早々に無人島に置き去り?
しかもここ、何もないし!!
はぁ……最悪だ」
とりあえず俺は無人島を探索してみることにした。
もしかしたらそこに誰かが住んでいると信じてね。
しかし、誰もいなかった。
というか無人島は広さ的に実家の田んぼくらいしかないし、住むには適していない場所だった。
「ここ、人が住むには適してない場所だな。
こんなところ、さっさと脱出しないと……でも、どうやって脱出するんだ?
船とかないし、道具もないから筏すら作れないしな……俺、詰んだか?」
諦めながら無人島を探索していると、森の中から一隻の古い船が見つかった。
「デッカ!?
何この船!?
ってかどうして森の中に!?」
俺は驚いた。
どうやってこの森の中に船が!?
……いや、もしかしたらこれは脱出に使えるかもしれない。
中に入って、何もないか調べてみる。
「この船、古い割には綺麗だな。
見た感じ、ベッドもあるし、大砲もあるし……でもそれ以外は何もないな」
食糧が入っていたと思われる樽や木箱は空っぽで、どうやら動物に食べ尽くされたようだ。
でも、船全体としては大きいけど、問題なく使えるな。
「……ん?」
俺は船の近くに洞窟があることに気がついた。
「洞窟?」
俺はその洞窟に入ってみた。
その洞窟は少しだけ広く、下に続いていた。
しかし、下に降りるほど、だんだんと暗くなってきた。
「暗いなぁ……」
やがて最新部まで辿り着き、これ以上先には行けなかった。
しかし、そこには宝箱があった。
「これって、宝箱か?」
持ち上げてみたけど、なぜか軽い。
何も入ってないのか?
とりあえずそれを持って、洞窟から出た。
そして船内で宝箱を開けてみるとことにした。
そこには一枚のたたんである紙しか入ってなかった。
「この紙はなんだ?」
俺はその紙を開いてみることにした。
そこにはどこかの場所を示す地図だった。
「これって、宝の在処を示す地図のようだな」
この地図を見て、俺はとある記憶を思い出した。
「……俺、子供の頃からあの海賊のアニメが大好きだったなぁ……」
そう、その記憶は、俺が子供の頃から見ていたとある海賊のアニメを見ていたことだった。
そのアニメはとても人気で、俺が大人になってもまだアニメも続いてたし、原作となる漫画も続いてた。
だが俺がブラック企業に就職してから全然見てないし、どうなってるのかも全然わからない。
でも、少なくとも俺がオタクになるきっかけでもあった。
「……そうだ。
海賊になろう!!」
とりあえず俺は、海賊として生きることを決めた。
「あの主人公は言ってたな!
自由な奴が海賊だってな!」
となれば、あの船を砂浜まで運ばないといけないな。
「はぁ……はぁ……重たい」
デカすぎて、押すことすらできない。
そしていつの間にか夕方になっていた。
「もう夕方か……仕方ない。
あのベッドで寝るか」
食べるものはないが、ベッドはある。
まぁ、ブラック企業であまり食べる時間がなかったこともあるから、多少空腹になっても我慢することはできる。
それから数時間後、俺は目が覚めた。
「……」
誰かがいると感じた俺は、起き上がって、寝室から出ると、そこには一羽のニワトリくらいの大きさをした鳥がいた。
「アレ、ドードー鳥か?
ゲームで見たことがあるけど、こんなサイズだっけ?」
そう、俺が知っているドードー鳥は確か、七面鳥とほぼ同じ大きさだと聞いたことがあるが、この世界でのドードーは小さいな。
しかも後ろの尾羽はほぼ孔雀みたいで派手だった。
「グワーッ!」
その鳥は寝室に入ってきた。
「あっ、コラ!
そこは俺の!」
その鳥は寝室に入って、寝室にある机の下に隠れた。
そして安心したのか、眠りについた。
「……もしかして、寝る場所を探していたのか?」
確かにこの無人島には、得体の知れない獣がいるのは間違いない。
森の中を探索していると、獣の足跡、獣の糞、獣の爪痕などがあった。
それから程なくして、今度はツノが生えたツチノコに似た蛇が侵入してきた。
「ツチノコ!?
いやでも、ツノがあるけど……」
しかし、その蛇はさっきの鳥に襲うことはなく、そのままベッドにある枕の下に隠れた。
まぁ、よくわからんが、俺はなるべく枕から離れるようにして眠った。
次の日、俺は船を砂浜へ押そうとした。
すると、船からあのドードーに似た鳥とツチノコっぽい蛇は、俺を見つめてからどこかに行った。
多分、泊めてくれてありがとう的な感じだろうな。
「行っちゃったか……まぁいい!
この船を……」
押しても全然進まない。
そうこうしているうちに時間が過ぎていった。
「どうしょう……船が動かない。
やっぱり俺には無理か」
すると、さっきのあの鳥と蛇が慌てた様子で、俺のところに来て、俺の後ろに隠れた。
「グワーッ!」
「シャーッ!」
「ど、どうしたんだ!?」
すると、森の奥からパンダみたいな巨大な獣がいた。
「パンダ!?
しかも見た目こっわ!!」
黒の部分が紫、白の部分が緑で、顔が完全に熊そのものだった。
そりゃパンダは熊だけども……でもそれ以上に顔が怖い!
まるで鬼のような感じに!
そしてその同時に、俺はあの鳥と蛇が逃げてきた理由を理解した。
そう、この無人島での生態系の頂点はあの熊だった。
確かにパンダも肉を食べると聞いたことがあるが、まさかパンダが島の頂点だと誰も思わないだろうな。
まぁ、少なくとも俺が知っている動物園にいるパンダと違って、可愛くないし、逆に熊本来の怖さ丸出しでめっちゃ怖い。
「ガルルルッ!!」
(俺には武器も持ってない……けど、この子達を守らないと!)
俺がそう考えていると、そのパンダみたいな怖い熊は、俺達を睨みつけた。
「グワーッ……」
「シャッ……」
完全にあの鳥もあの蛇も怯えていた。
「グアアァァ〜〜オオオォォ〜〜ッ!!!!」
その怖い熊は俺達を襲いかかった。
(終わった……俺、海賊になる前に死んだな)
俺は覚悟を決めた。
ところが、ここで予想外なことが起きた。
ガシッ!!
「!?」
なんと、あの熊は船を押し始めていたのだった!
「ガルルルッ!!!」
ギギギギギギッ……
「動いた!!
すげーっ!!」
俺が押してもビクともしなかった船が音を鳴らしながら推していたのだった。
「よくわからんが、これはチャンスだ!」
俺も熊と一緒に船を押し始めた。
それに続いて、あの鳥もあの蛇も覚悟を決めて一緒に船を押した。
ギギギギギギッ……
押しては休憩し、押しては休憩を繰り返した結果、夕方になった頃には、なんとか砂浜まで押すことができた。
しかし、船としては全体的に大きい。
俺が見たあの海賊のアニメに出てくる海賊船よりもはるかにデカい。
そりゃ押すことすらできないわけだ。
「後少しだ……これを海に船を出す!
だからお前ら、もう少し協力してくれないか?」
俺がそういうと、鳥、蛇、熊は頷いて、一緒に船を海へ押し出した。
そして遂に……
ザッバァーーーンッ!!!!!
「やったぁ!!!
やっと船を海に!!!」
「グワーッ!」
「シャーッ!」
「グアアァァ〜〜オオオォォ〜〜ッ!」
これでやっと脱出ができる。
後はこの船に乗って、そこから俺の海賊としての異世界生活を始まるだけだ。
でもその前に疲れたから休憩しないとな。