2話:謎の光
「お前、誰だっけ?」
「えっと、猫犬津波です」
「あぁ、そうだったな!
ごめんごめん、お前って陰キャだし、影薄いから忘れてたよ」
「気にしないでくれ」
「それにしても変な名前ね。
”猫犬”っていう苗字が珍しいしね」
「それな?」
(早く帰りたい)
そう、こういう”いじり”がガチで嫌で、今もそれが続いている。
しかも、あの上司にもいじられている(特に俺の苗字!)。
だから俺は適当に返事している。
「お前、ブラック企業だっけ?」
「……株式会社”パラドックス”って言う会社で働いている」
「マジか!?」
「やっぱりね!
あそこ、”アットホームな職場”って言っておきながら、実際は完全なブラック企業!」
「まさに”矛盾”した会社だな!」
「そう言う意味では俺らホワイト企業に就職できてよかったな!」
「あぁ、猫犬、どんまい!」
ほとんどの元同級生達は楽しくしているが、俺だけ全然楽しめなかった。
なぜかというと、俺以外の元同級生全員が陽キャだからで、特に目立勇志とその彼女の笑田鈴根、そして二人の友達がよく俺のことを絡んでくる。
しかも全員成人しているからか、酒を飲んでるせいで、うるさいくらい騒ぎ始めた。
ちなみに俺は酒は飲めないため、代わりに麦茶とかコーラとか飲んでるため、俺だけ唯一酔ってなかった。
それから程なくして、同窓会の終わりの時間が来た。
「いやあぁ〜、久しぶりに会えてよかったぜ!」
「お前らも結婚するとはなぁ!」
「結婚式にはお前らも招待してやるよ!
まぁ、あそこの陰キャだけは正体しねーけど!」
「それな?
一人だけ酒を飲んでないしな!
空気読めっての!」
「こっそり帰ってるかなと思ってたが、最後までいてたのが意外だったわ!」
「まぁ、次からは招待しないけど!」
(言いたい放題だな……俺だってさっさと帰ろうとしたのに、お前らが騒ぎすぎて、帰るタイミングがなかったんだよ!)
俺の心の声がそう叫んだ。
ところがその時……
ピカアァッ!!
「な、なんだ!?」
「光ってる?」
「幻覚か?
だとしたら飲みすぎたな!」
「おいお前、これは厳格だよなぁ!?」
「いや……これはその……幻覚ではないと」
「あぁ?」
突然と発生した謎の光は、俺達全員を囲むように光が大きくなっていた。
「これやばくね?」
「だよな?
もう逃げるしか!」
しかし、逃さないと言わんばかりに、なぜか俺を含めた全員足を動けなかった。
というか、誰かに足を捕まっているような感じにな!
そして更に強くなって、眩しすぎて目を閉じるしかなかった。
「これダメな奴だ!」
「眩しい!!」
目を閉じていてもはっきりとわかるくらいの眩しかった。
しかし……
「おぉ!!!
見よ!!!」
「予言通りに勇者とその勇者とその仲間達が君臨されたぞ!!!」
明らかに知らない人達の声が聞こえた。
目を開けてみると、そこには見たことのない場所、見たことのない人達だった。
「お待ちしておられましたぞ!!
勇者様!!」
「お、俺っすか?」
「お名前は?」
「目立勇志……まぁ、好きなように呼んでくれ!」
「ではユウシ様、あなたはこの世界の勇者となって、世界を
お救いください!
そちらにいる方々はあなたが率いることになる騎士団のメンバーとなります!」
「マジ!?」
「これって、今流行りの”異世界転生”とかじゃね!?」
いや、これは違う。
異世界転生は死んだ後に異世界に行くことだが、俺達の場合は異世界へ転移されたものだから、”異世界転移”って奴だ。
「よくわからんが、そのために呼んだってことか?」
「いいえ、これは予言に導かれたからです。
予言では、邪神が各地に魔王を召喚しまくったこの汚れた世界……ですが、この聖なるこの地に、神に祈りを捧げることで、勇者率いる騎士団が天から君臨されると聞いております」
「まさかそれが当たって、あなた方がここにおられるのです!」
「なるほどな!」
「まぁ、これはこれで面白そうだ!」
「……ですが、一人だけ騎士団ではなく、偶然にも巻き込まれた方がいますね」
どうせ俺のことだろうな。
「コイツか?」
「えぇ、そうです。
そちらの方、特にこれと言った能力が皆無ですね」
でしょうね。
明らかに雰囲気的に俺だけ仲間外れだからな。
「そちらの方以外は全員、騎士としての才能があります。
よろしければ、我が国で鍛えてみてはいかがでしょうか?」
「ついでにユウシ様のための武器も用意しておきます!」
「いいのか!?」
「それと、そちらさんは?」
「私は笑田鈴根!
スズネって呼んでね!」
「コイツは俺の彼女だ!」
「なんと!?
勇者の奥様も!?」
「まだ結婚してないけど!」
俺だけ仲間外れな気がするから、仕方なく俺はこの場から去ろうとした。
しかし、勇志は俺の肩を掴んだ。
「お前、どこ行くんだ?」
「いや俺、明らかに仲間外れな気がするから」
「なんだお前、陰キャだと自覚してたのか!?
まぁ、確かにお前はどう考えても騎士団に入れるとは思えねーし!
……まぁ、可哀想だし、一緒に来いよ!」
それに続いて、鈴根も言ってきた。
「そうよ!
言っておくが、陰キャのアンタに拒否権はないから!」
俺は強制的に同行することになった。
「いいのか?」
「あのまま置いて行ってもいいんだぞ?」
「可哀想だけど、一人だけ陰キャがいるのもアレだしさぁ」
「安心しろ。
アイツ、人と関わることすらできねーコミュ障だから、どこかに放り込んでも問題ねーだろ?」
「だったら、無人島に置いて行かね?」
「それはいいな!!」
もう嫌な予感しかしなかった。
だが俺はブラック企業で長時間も仕事して疲れていたせいか、眠ってしまった。
「……おや?
アイツ、寝てるぞ!」
「これはチャンス!」
「後は無人島へ」