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1話:同窓会

ある日、俺のところに同窓会からの招待状が届いた。

ご丁寧に会場となる場所の地図まで書いてある。

その会場は居酒屋で、どうやら同窓会当日のためだけに貸切にしていたようだ。


「ハァ……あんまりいい思い出がないんだよなぁ……俺、陰キャだったし」


そう言いながら、会社へ出勤した。


俺の名は猫犬津波……ブラック企業の24歳の陰キャサラリーマンだ。

趣味はゲームやアニメといった“オタク的な趣味”、それと生き物の飼育くらいである。

ただ、あのブラック企業に就職し、それに伴って一人暮らしをするようにやってから、全然趣味に没頭することができずにいた。

しかも俺が今住んでいるアパートでは、全面的に動物の飼育が禁止にされており、それも虫ですら飼うことが許されていない。


おまけに“ブラック企業”と呼べるように、毎日仕事三昧、上司による男女問わずのパワハラ、残業は当たり前で残業代が出ないこと……おまけに給料が絶望的だ。


「これ今日中だからやっておけ」

「えっ!?」

「頼んだぞ!

それとも、この俺様に逆らうのか?」

「い、いえ……」

「俺様は今日、出張だから忙しいんだ!」


このように仕事中にも関係なく上司がやるべき仕事を俺達に押し付けている。

勿論、上司は何もしておらず、むしろ出張という名の“サボリ”だからだ。

何をしているのかわからないが、噂では、風俗やパチンコ、パパ活、競馬などで、社内にいる時は仕事とは関係のないものの情報(例えば先ほどの風俗やパチンコなど)を調べたり、オンラインゲーム、ネットショッピングなどをしていたとそう噂されている。

しかも上司はコネ上手で、常に社長などの立場の上の人から“仕事ができる優秀な人材”として信頼されているから、上司の本当の顔とその悪行を言っても誰も信じてくれない。

俺を含めた他の社員達も同じ気持ちで、どこかで諦めているのだ。


それから程なくして、ついに同窓会当日となった。


「仕事を終わらせたのか?」

「はい、これを……」


俺はそう言って、完成した資料を上司に見せた。


「……フッ、流石俺様の社畜よ!

他の役立たずどもよりも役に立っている。

流石大卒!

これだけの仕事ができるなら、お前にもっと仕事をさせてやりたいな!

なぁ?

お前、仕事が好きだもんな?」

「は、はい……そうですね」

「まぁ、今回だけは残業はなしにしてやる!

今日だけは好きなだけ息抜きのために飲みに行くことを許可してやる!

ただし、明日以降はそれ以上の仕事を用意してくからな!

期待しているぞ!」

「は、はい……」


俺はやっと久しぶりに定時に帰ることができた。


「はぁ、定時に帰れるのは久しぶりだな。

まぁ、今日は同窓会に行かないといけないから、ちょうどよかったよ」


俺はそう言いながら、会場となる居酒屋へ向かった。


実は俺達を定時に帰らせたのは、社長が部署に顔を出しに来るからである。

その目的は仕事をできているか確認したり、残業をしている社員がいないかどうかなどを確認するためである。

もしも上司が自分の仕事を社員達に押し付けて、残業をさせていることがバレたら、クビになるのはほぼ確実なため、上司はそれを誤魔化すために理由をつけて帰らせたのだった。


「おや?

みんな帰ったのかね?」

「社長!

はい、私の頼りになる部下達のおかげで、早めに終わらせることができました!

それで、皆さんには飲みに行くように言っておいて、帰らせました!」

「そ、そうか……最近、ここで残業をしている人がいるとは聞いていますが……」

「ご安心を!

仕事の量が多かったので、私もお手伝いしてたんです!

部下を早く帰らせてあげるためにね!」

「なるほど……では引き続き頼んだぞ」

「はい!」


そう、こんな感じで誤魔化しているのだ。

これは俺達も密かに隠れて聞いていたから、上司が嘘をついていたことは知っていたのだった。

まぁ、もう手遅れだし、社長に上司のことを報告する勇気もないからね。

俺がそう考えていると、居酒屋に着いた。


「……ここか」


俺は居酒屋に入った。

そこには、かつての同級生達がいた。

そして同級生達は俺を見た。


「アレ?

陰キャが来たぞ!」

「ったく、誰だよコイツを呼んだの!?」

「童貞だし、存在そのものが陰キャだからキモいよ!」

「そう言うなって!

アイツだけハブるのは、可哀想だろ?」

「確かにそうだな!

アイツ、噂ではあのブラック企業に入っているんだってな!」

「せっかく来てもらったんだから、酒くらい飲ませてやろうぜ!」


相変わらず俺に対する扱いが酷いものだ。

いじめとかはなかったが、俺が陰キャであることを理由に色々とバカにしたり、悪口を言ったりしている。


(とりあえずさっさと帰りたい)


俺はそう思いながら席に座った。

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