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チームから追放したいんだが有能な上仲間から引き止められて辛い。

作者: 佐賀ロン

「オリヴィア!! 今日こそお前をパーティーから追放する!」


 そう言った瞬間、オレはガンナーの女プレイヤー――オリヴィアから銃口を突きつけられた。


「へえ……素晴らしい冗談だな……」

「グレネードガンを構えるなッ!!」


 せめてハンドガンであれ。いや違う。そもそも人に銃を向けるな。


「ちょっと、ハヤセ!」


 血相を変えて、アサシンのチヒロが止めに入る。


「この子は、性格はアレだけど! うちに欠かせない火力よ!?」

性格ソコが一番問題なんだよなぁ!!」


 ミッションをこなす度に、周囲を巻き込む破壊行為。下手したらNPCやPCの命すら奪いかねないプレイを平気でする。

 何よりコイツ、職業スキル『集中ターゲット(攻撃を他者に、あるいは自分に向ける)』で、ことある事に俺を盾にするんだ。本音はそこが100パーセント。自分に向けられるヘイトをガンガンオレに擦り付けてくる。



「こいつが技を避けるためだけに盾にされるオレの気持ちも考えてくれ!!

 オレ剣士セイバーだぞ!! タンクじゃねえ!!」

「だってこのゲーム、タンクいねえだろ」


 オリヴィアが銃をしまう。


「だったらHP多くてガッツ盛れるお前が盾になるっきゃねえだろ。俺やサクラが怪我したら、一巻の終わりだぞ」


 なんたって、このゲームはリアルとリンクしてんだからな、とオリヴィアが言う。

 『miniature garden』――日本語版だと『箱庭』。最新のVRMMOであり、世界中からプレイヤーが集まるゲームだ。

 そして、俺たちの命がかかっているゲームでもある。

 本来はもっと平和的なRPGだったんだが、どっかのバカが改造して生体反応とリンクしてしまった。ゲーム内での死亡はリアルでの死亡。そして、一人でもクリア出来れば、死んだプレイヤーも生き返るらしい。

 その中でオレたち――具体的にはコイツ、オリヴィアが、クリア候補と見なされている。

 だが、オリヴィアは性格がクソだった。

「全てを破壊する時の快感がたまらん」とか言って、敵味方関係なく巻き込んで攻撃する。なんだコイツ。


 そんなオリヴィアだが、サクラだけは扱いが違う。サクラは回復が使えるクレリックだが、大事にするのはそれだけじゃないようだ。

 なお、サクラは聖騎士型のクレリックなので、鎧一式を身にまとっている。盾もオプションで持って防御が一番高いのに、サクラを大切にするオリヴィアは絶対にサクラに傷をおわせない。なんなら、サクラが攻撃される時は自らかばいにいくほどだ。なんなんだこいつ。

 そして、大事に思っているのは、オリヴィアだけではないようで。


「ハヤセ……オリヴィアがこのチームを出るなら、私も出ます」


 と、可憐な声で言われた日には、俺も引き下がるしかなかった。なんせサクラは良心的な性格をしていて、ことあるごとにオリヴィアの暴走を止めていたからだ。

 が、仏の顔も三度まで。




「これ以上お前の残虐行為に付き合ってられん! オレが死ぬ前にチーム解消だ!!」



 そう叫ぼうとした時、グイッとチヒロに引っ張られた。


「なんだチヒロ! オレの心はもう、」

「アンタが良心的なプレイヤーだと見込んで頼むわ! チーム解消はやめて!!」


 チヒロは血相を変えて言った。



「この子野に解き放ったらどうなると思うの!!」



 ……それを指摘されて、オレは固まった。

 というか、考えたくなくて、意識的に想像することをやめていた。


「今はあんたとサクラがいるから、まだ歯止めが効いてるけど! 一人でも止めるやついなくなったら、『ちまちま敵倒さないで世界破壊すればよくね?』って考えになるわよ!!」


 どこのテロリストの発想だ。

 と、切り捨てられないのがこのオリヴィアである。

 このガンナー、マジでこの箱庭を破壊しかねん。


「幸い、あの子はクリアする気がある。

 あの子が暴走するのを食い止めながら、あの破壊力をクリアに向けて使いましょう!」


 そう言って、くっ、とチヒロは握りこぶしを作った。


「なんなら……集中ターゲット、私が肩代わりするから……」

お前(アサシン)HP一番少ないじゃん」


 盾にもならん。

 だが、チヒロの心意気は受け取った。



 何としてでも、この暴走車オリヴィアをコントロールして、このゲームをクリアする。

 けど、ああ……オレが死ぬ前に追放したいな……。その前に誰かクリアしてくれるといいな……。


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