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8話

 部屋の中で一人、机の上に広げていた仕事道具を片付けていく。


 私は小さくため息をつくと顔をあげ、窓の外を見つめた。


 空はすでに薄闇に包まれ始めており、あっという間に時間が流れて行ったのが分かった。


 久しぶりに集中して仕事をしたなと思いながら、部屋に魔法具の明かりを灯していく。


 ロンド様とパトリック様とアレス様の話を聞いた後、私は一体どういうことなのだろうかと思った。


 ただ、懇願するような瞳で三人に見つめられ、仕方なく聖水の準備やパトリック様の仕事の確認、そしてアレス様の話していた瘴気の確認の位置などを話した。


瘴気に関しては、私が行くわけにはいかないのでアレス様に確認を頼むしかないのだけれど、念のために私は瘴気を抑える聖水の能力をさらに凝縮した結晶を託した。


七日七晩かけて作り出すその結晶は、緊急事態に使用するものであり、以前作っておいたものだ。


 聖女の任を辞した今、私が作った物は聖水も結晶も聖なる物として扱ってはならない。


 だからこそ、私は今回だけだと念を押して伝えそれを渡したのだ。


 そして三人が帰った後、セオ様は今回の一件を調べてくると言って家を出て行った。


 私は一人部屋の中で、今後仕事をするための準備をただ淡々と続けた。


 何かをしていないと、今聖女であるノエル様が何を考えているのだろうかと延々と考えてしまいそうだった。


 仕事は進み、薬草を使った茶葉が戸棚にしっかりと飾れるくらいの量は出来上がった。


 私はそれを見つめながら、息をつくと、薄暗い中庭へと出た。


 空には月が昇り、家の横に流れる小川にその光を映し出す。


 私は、家の裏手にある倉庫からガラスの小瓶を取ってくると、小川に映りこんだ月の光を集めるように水をすくっていく。


 聖水に大事なのは綺麗な水と月の光、そして聖女の聖なる力である。


 ただ私はもう聖女の任は降りたので、これは聖水という名前ではもうない。なので、私はこれはただの栄養補給水として今後は作っていくつもりだ。


 聖力を込めるのは簡単だ。全神経を集中して流し込めばいい。


 光が舞う。キラキラとしたまるで妖精のように光が宙を飛びまわり、小瓶の中に集まっていく。


 それは淡く輝き、そして月の光を詰め込まれたように、小瓶の中で揺れる。


「ラフィーナ様」


 声をかけられ振り返ると、セオ様がそこには立っており、私に手を伸ばした。


「一時間ほど前からこちらで待機していたのですが、終わりそうだったので声をかけさせていただきました」


 私はその言葉に、一瞬だと思っていたけれどすでに祈りを捧げて一時間も経っていたのかと気が付いた。


「すみません。集中をし過ぎてしまったようです」


「大丈夫です。ただ、今後は私がいる時にしてもらえますか? 王城内なのですが、夜ですので念のためにお願いします」


「あ、そう、ですね」


 もうここは神殿ではないのだと私は反省をする。


「ありがとうございます。ではこの栄養補給水を作る時にはよろしくお願いします」


 私の言葉にセオ様がきょとんとした表情で首をかしげる。


「栄養補給水、ですか?」


「はい。もう私は聖女ではありませんから聖水とは言えません。なので、栄養補給水と命名してみました」


 セオ様は小さく笑う。


「すごく元気になれそうですね」


「えぇ。たいていの病気はこれで一瞬で治ります」


「え?」


「ん? あれ、セオ様これ飲んだことないですか? 結構な量毎月作っていたのですが」


 その言葉にセオ様は眉を寄せる。


「ちょっと待ってください。今の話、詳しく教えてもらえますか?」


「え? はい」


 私はセオ様はどうしたのだろうかと思いながら、一度家の中へと戻ったのだけれど、セオ様は少し困った表情を浮かべた後に言った。


「すいません、話を聞きたいと思ったのですが、明日の朝お聞きしてもいいですか?」


「はい。今でもいいですけれど?」


 そう告げると、セオ様は苦笑を浮かべて言った。


「さすがにもう夜なので」


「え? あ、あー。そうですね」


「男女が夜まで一緒にいると変な噂が立つことになりかねませんので。では、また明日。ラフィーナ様、バスケットの中にサンドイッチを作ってありますから、お腹がすいたら食べてくださいね」


「ありがとうございます」


「では、おやすみなさい。また明日」


「はい。おやすみなさい。また明日」


 私達は手をひらひらと振り合う。セオ様は外に出て行き、私はいつものように鍵を、外に音が響かないようにゆっくりとかけた。


 それから、セオ様の用意してくれていたサンドイッチをお皿にのせ、飲み物と共に机に運び、それを口に運んだ。


「美味しい」


 私は静かな部屋の中で、小さく息をついた。


 セオ様の気遣いが優しさが、身に染みる。


 勘の良いセオ様のことであるから、私が不安になっていることにも気づいているだろう。


 聖女の任を解かれたと言うのに、聖女の代わりに聖水を作り書類の確認をし、瘴気の心配をする。


 それが嫌なわけではない。


 王国の為にこれまでもやってきたことなので慣れているといえば慣れている。だけれども、どこか釈然としない想いがある。


「はぁ、だめね」


 私はサンドイッチを食べ終わってそれを片付けると、小さく息をついて結んでいた髪の毛を解く。


 お風呂に入って寝ようと思い私はお風呂場へと向かった時であった。


――――――ダンッ。


 物音が響き、私はびくっと肩を震わせる。


「え?」


 一体、何だろうか。


 私は急いで風呂場を出ると掃除道具から箒を取り出し、構えたのであった。



さぁ、一体誰が外にいるのか……


糖分過剰摂取中の作者かのんです(●´ω`●)

皆様、暑い中お疲れ様です。

部屋の中は寒くて外に出ると暑いですね。お部屋の中では温かな飲み物を飲むといいらしいです。

私も聖女の紅茶のんで体力全回復したい……。

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