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6話

 聖女の仕事とは、多岐にわたってある。


 神殿で祈りを捧げる儀式、薬草を使った薬づくり、聖力を込めた聖水の精製、書類仕事としては神殿の管理確認や各街に設置されている神殿の報告書の確認、瘴気の発生が確認され次第その対応などなどある。


 また季節ごとの行事や、儀式の準備、王城との連携などもある。


 聖女の任期は5年あり、その5年間は踏ん張ってそれらをこなさなければならない。


「聖女様の聖水により、一命をとりとめた時、私は聖女様に心を奪われました」


 ロンド様に思い出したかのようにそう言われるけれど、私からしてみれば聖水を作るのも仕事の内であり、いつのことか、申し訳ないけれど覚えていない。


「ふふふ。それを言うならば、俺は聖女様と神殿の建設にあたって仕事を一緒にした時に、その真面目さに心を打たれたよ」


 神殿の建設は、聖女の大きな仕事の一つであり、丁寧かつ迅速に行っていく必要のあることなので、仕事である。


 そして神殿を作るにあたってたくさんの人の手を借り知恵をかりなければならないので、パトリック様もその一人という認識しかない。仕事である。


「あー。それを言うならさ、僕は運命的だよ? 王国の守護の魔法と聖女様の祈りの聖力とを混ぜ合わせて王国に降注がせるからね。聖女様の力を感じて、僕はときめいたんだ」


 魔法と聖力とを混ぜ合わせて守護として使った方が性能がいいということで、一緒に確かに仕事をさせていただいたが、ときめきは感じなかった。


 私は、自分が仕事だと思い一生懸命に行っている間に、そんな想いを抱かれているなんて思ってもみなかった。


 こういったら失礼かもしれないのだけれど、仕事であり婚約者もいる立場であるからそのような感情を抱くことすらなかった。


 なので、そのように言われても若干引いてしまう。


「あの、話を戻しますが……聖女様が仕事をしないとは? どういうことですか?」


 聖女の仕事は引継ぎが簡単に出来るようにと全て書類で分類分けまでしてまとめてある。


 あれを見れば一目瞭然であり、今後どのように仕事を進めて行ったらいいのかも記入したはずだ。


 分かりにくかったのだろうかと思い眉間にしわを寄せた時、思いもよらない言葉が聞こえた。


「隣国との境界線にある砦へ騎士達が出立する門出に渡す、聖水を作ってほしかったのです。怪我をしても大丈夫だというお守りのような役割にもなりますし……ですが、なんでも結婚式のドレスが気に入らなかったらしく、そちらを作り直しているようなのです……」


「あぁ、俺の所には結婚式の予算を増やすようにと、今後の神殿の経費の打ち合わせをしようと思ったらそう言われたんだ」


「あ、僕の所はさ、魔法で結婚式を派手に出来ないかって言ってきたんだよ! 僕としては瘴気が確認されていないか一度直接確認に一緒に行ってほしかったのに、それはまた今度って言われてさ……」


 三人は頭を抱えて大きくため息をついた。


「えっと、聖水ならすぐに作れるはずですし、神殿の経費については引継ぎに残してあるのでそれを見れば分かるはずです。あと瘴気に関しては、聖女が赴く方がいいと思うのですが……」


 そこまで大変なことではないはずである。


 結婚式の準備も私がほとんど終わらせているはずなので、せわしなく何かをしなければならないというわけではないはずだ。


「全然話を聞いてくれないのです」


「今、聖女様が仕事をしないからかなり仕事が滞っているんだ」


「魔法塔との連携も全然取ってくれないんだよぉ」


 私は辞めた身なので、どうすればいいだろうかと思っていると、セオ様がコホンと息をついて言った。


「失礼ですが、レオナルド殿下には報告はされたのですか? ご婚約者でもありますし、現状をお伝えするべきでは?」


 すると、三人はげんなりとした表情で言った。


「いいました」


「当り前だろ」


「そうだよぉ。そしたらなんて言ったと思う?」


 私とセオ様は一体何といわれたのだろうかと思っていると、三人はため息をつきながら言った。


「「「お前らでなんとかすればいいだろう」」」


 その言葉に、私とセオ様は驚いて言葉も出ない。


「それは……」


「なんとも……」


 私とセオ様の様子に、三人は大きくため息をつく。おそらくこんなことになるなんて誰も思っていなかったのだろう。


 項垂れる姿を見て、私は数度会ったことのあるノエル様を思い浮かべる。


 聖女として聖女候補と顔合わせや指導を行うこともあるのだけれど、確か、くるくるとした髪の毛の、お目目ぱっちりの可愛らしい女の子だった。


 公爵家のご令嬢ということだったので、本来であればそのまま公爵令嬢として過ごしていた方が幸せだっただろうになと内心思った。


 決して公爵令嬢が楽だとかそう言う風に思っているわけではない。令嬢には令嬢の大変さというものがある。


 それは分かっている上で思うのが、令嬢の生活から聖女候補の生活へと移る困難さがあるのだ。


 聖女候補になるとそこからは厳しい生活が始まる。令嬢のように侍女がつくことはなく、自分の力で全てしなければならない。


 貴族令嬢から聖女候補になった令嬢はその生活に悲鳴を上げる者が多かった。


 貴族令嬢としての生活に慣れている者からすれば、聖女の生活そのものが困難に感じるのである。


 ノエル様が聖女候補になったのは数か月前だったはずだ。


 聖女とは神殿と王国の承認があって次期聖女が決定される。本来であれば神官長が聖女候補から最も優秀な者を選びそれを王国と協議して決定されるはずだ。


「聖女とはもっとも聖女候補の中から優秀な者がなるはずです。ですから、結婚式さえ終われば、ある程度、時間に余裕も生まれるのではないでしょうか」


 私がそう言うと、三名の顔色がうっすらと悪くなり、視線を反らされる。


 なんだろうかと思っていると、セオ様が口を開いた。


「……私はそこに実は疑問があります」


「え?」


 セオ様の話を遮るようにロンド様が口を開いた。


「ラフィーナ様。お願いです。聖水を作っていただけないでしょうか」


「え? 私がですか? あの、聖水は聖女が作る物を聖水というのであって、私が作っても、聖水と名前を付けてもいいものではないのです」


 これは明確な決まりである。私も神殿側からそう習っていたが、ロンド様が言った。


「実はノエル様より、その……そんなに欲しいならば元聖女に作ってもらえばいいと、言われたのです……私が作ったことにするからって」


「は?」


 その言葉に、パトリック様とアレス様も口を開いた。


「実は、俺も聖女様に話しをしたらラフィーナ様にお願いをしてみたらって……」


「あ、僕も……今聖女の任が解かれて時間があるでしょうからって……」


「は?」


 私は意味が分からずに呆然とした。



大混乱大混乱!


皆様暑い日が続いておりますので水分補給をしっかりと体調お気を付け下さいませ!

倒れたら大変!

気持ちはプールとかにのんびりと永遠とつかりながら美味しいジュースを飲んでいたい。

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