最終29話 大聖女の紅茶店
カーテンの隙間から、太陽の光がちらちらと入ってきて、その光によって私は目が覚めた。
今日は少し遅くなってしまったなと、太陽の日差しを感じながら私は起き上がると、ベッドの上で背伸びをしてから起き上がる。
朝の支度をさっと整えて、私は薬草を採りに外へと向かう。
庭には美しい花々と共にたくさんの薬草が植えられている。
それを一つ一つの成長を見ながら、私は今日必要なものを採取していく。
温かな日差しの中で積む草花達は生き生きとしていて、花の香りや土の香りが心地よい。
するとセオ様がやってきて私に手をあげて挨拶をしてくれる。
「おはようございます。ラフィーナ様」
「おはようございます。セオ様」
私達は笑顔を交し合い、いつものようにセオ様はキッチンへと向かい朝食の準備をしてくれる。
その準備が整うまでに私は朝の準備を終わらせていく。
王城の警備体制は見直され、私は安心して暮らすことが出来るようになった。
あともう一点変わったことと言えば、私の家の隣にセオ様の住む家が建てられた。
セオ様は私の安全をこれからも一番傍で見守るようにと国王陛下から名を受け許可の下家が建てられたのだ。
そして私達は早々に婚約を果たそうと話をしているのだけれど、なかなかにその話が進まない状況にあった。
今日も朝一番からお店には、お客様がくる。
栄養補給水を混ぜて出していた飲み物が、体が元気になると噂を呼び、さらに大聖女の称号のある私が働いているということもあって、皆時間が空くと訪れるようになったのである。
私とセオ様はのんびりお仕事をしたいと思っていたのに、今ではてんてこ舞いで仕事に明け暮れている。
ただ、婚約が進まない要因はそれだけではない。
「ラフィーナ様。お疲れ様です」
「ラフィーナ。無理するなよ」
「ラフィーナちゃん。ふふふ。僕も手伝おうか?」
いつの間にか、ロンド様とパトリック様とアレス様はまた店に訪れるようになったのである。
そしてそればかりではなく、現在三人と一緒にレオナルド殿下も一緒にお店に来るようになった。
「ふん。私にもいつものをくれ」
一回は仲たがいしたように離れた四人だったけれど、やはり学生時代からの仲だからなのか、いつの間にか仲直りをした様子であった。
それについて尋ねると、レオナルド殿下は嫌そうに顔を歪めた。三人は三人でレオナルド殿下と以前よりも腹を割って話をし、そして遠慮なく忠言するようになった印象である。
今回の事件を通してそれぞれが国からの監視の目がついたらしく身動きがとりづらくなったとぼやいていた。
そしてこの四名が来ると他のお客さんは大抵が遠慮して店から出て行く。
急ぎの人は大抵朝くるので、別段問題はないのだけれど、私はすでに店のテーブル席を定位置のように座っている四名に言った。
「あの、皆様、こうして頻繁にここに来ても良いのですか?」
忙しくないのだろうかと思うと、四人は良い笑顔を私に向けるだけで何も言わない。
「ラフィーナ様、店はすいたので今の時間で、薬草などの片づけをしても大丈夫かと思います」
奥の部屋で私はまだ薬の調合の片づけがまだであり、セオ様の声に返事を返した。
「ありがとうございます。では片づけてきます。皆様また後程」
私は一礼をしてからその場を後にする。
ラフィーナが奥の部屋に行ったのを見つめた四人は、紅茶を持ってきたセオに向けてレオナルドが言った。
「正式に婚約して結婚するまでは、まだチャンスがあると思っている」
それに続いて賛同するようにうなずく三人に、セオは余裕の笑みを浮かべると答えた。
「ふふふ。ラフィーナ様をもう譲る気はありませんよ」
その言葉に四人は首を傾げた。
「「「「もう?」」」」
セオは優しくラフィーナの方へと視線を向けると言った。
「そりゃあ、私は自分に自信があるわけではありませんから、自分よりも皆さんがラフィーナ様を幸せにしてくれるのであれば、と見守っていた時期もありました。でも、皆さんの前でラフィーナ様は自然には笑わない」
片づけをしているラフィーナを見つめながら愛おし気にセオは言葉を続ける。
「好きな人には幸せになってほしい。一度は諦めました。でも、二度目はありません」
はっきりと笑顔でセオは告げる。
「皆さんには任せられません。ラフィーナ様と共に幸せに笑っていられるように、私はこれからも努力します。では、失礼します。ごゆっくり」
セオはラフィーナの方へと向かい、片付けの手伝いを始める。
二人は微笑み合い、一緒に、片づけを行っていく姿が見えた。
「まさか元側近と元婚約者が恋仲になるとは思わなかった」
レオナルドの言葉に、三人は大きくため息をついた。
「私は何故あの時、引いてしまったのか」
ロンドの言葉にパトリックも同意する。
「本当になぁ。俺達はバカなのだろうな」
アレスは、ため息をつくと突っ伏した。
「甘えるラフィーナちゃんでもよかったんだ。僕は自分が甘えることに固執しすぎてた……」
四人は幸せそうに笑う二人を見つめて大きくため息をついた後に、笑みを浮かべる。
そして仲良く紅茶を飲み終わると、また来ると告げて店を後にしたのであった。
「皆様、本当によく来られますね」
私がそう呟くと、セオ様は苦笑を浮かべた。
「いつラフィーナ様が連れ去られるかと、私は時々心配になります」
「まぁ」
セオ様の冗談に私は笑うと、店に誰もいないのを確認して、セオ様の横にピタッと引っ付いた。
「ラフィーナ様? ふふ。あまり可愛いことをしないでください」
嬉しそうに照れて笑うセオ様に、私はじゃれつくように引っ付く。
男性とこんな風に仲睦まじくなれるなんて思ってもみなかった。
だけれどセオ様と一緒にいると、こういう少しふざけたりじゃれ合ったりする時間が心地よくてたまらない。
「セオ様、大好きです」
そう告げると、セオ様は嬉しそうに微笑んで、私の唇に軽くキスを落とした。
真っ赤になる私に、同じく顔を真っ赤にしたセオ様は、恥ずかしそうに言った。
「お願いですから、他の人には……そんな可愛い姿を見せないでくださいね」
「は、はい」
お互いに赤くなった私達は、それからお互いに手を握り合い、そして笑った。
「ラフィーナ様、大好きです」
「私もです。セオ様」
私達は、微笑み合う。
――――――カランコロン。
お店のドアチャイムの音で、慌てて私達は距離を取ると、小さく笑い合い合いながら口を開く。
「「いらっしゃいませ」」
王城内にある大聖女の紅茶店は、今日も人で賑わっていく。
最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
この二週間、毎日、朝、昼と読んで追いかけてくださったかたもいるかと思います。
一緒にここまで歩んでくださりありがとうございます。
今日で完結をいたしましたので、最後に評価★とブクマをつけていただけたら、飛び上がって喜びます。(´∀`*)ウフフ
評価をいただけると、毎回ぴょんぴょんと飛び上がるほどに嬉しいです。
もらえた分ぴょんぴょん飛んで、夏に高カロリー摂取した分を消費したいと思います。
最後まで、本当にありがとうございました!
まだまだ暑い日は続きます!
どうか皆様もお体にだけは気を付けてください。
頑張ってこの夏を乗り切っていきましょう。
また、どこかで出会える日を楽しみにまっております。
作者 かのん
宣伝→心の声が聞こえる悪役令嬢は、今日も子犬殿下に翻弄される3 8月10日発売開始です!
こちらのコミカライズ第1巻が8月15日発売ですので、そちらもよろしくお願いいたします!





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