25話
あの事件から数日後、私は自分の家に戻っていた。
あれから警備体制は見直され、魔法具が王城のいたるところに設置されるようになった。
緊急事態を招かない為に必要不可欠だと国王陛下が命令を下し、公にはされていないがノエル様に手を貸した罪を償う代わりにと、仕事の役職を降格、寝る間も惜しんで現在ロンド様とパトリック様とアレス様は必死になって働いている。
今回の一件が何故公にされなかったといえば、神殿長であるルカ様と代替わりしたばかりの聖女ノエル様が事件を起こしたとなれば、王国中に不安が広がるかもしれないと国王陛下が判断されたからである。
その為、神殿長とノエル様が突然いなくなるという事態は国民に不信感を抱かせるだろうということで、今回の一件は筋書きが変更されて国民には伝えられることになった。
公爵家の保有する屋敷から瘴気が自然発生し、それを食い止めるために神殿長とノエル様が向かったけれど対応しきれずに負傷し療養のために二人共職を辞する形として知らされたのである。
その後前聖女である私とセオ様、他の騎士達によってその場は対処され、瘴気も消えたというような筋書きとなった。
国民を不安にさせない為とはいえ、ルカ様とノエル様との罪が公には出来ないということにセオ様は悶々としたようだけれど、私は仕方がないと考える。
変に国民の皆を不安にさせるよりは、断然良い。
ルカ様は流刑が決められた。傷は癒えたものの、記憶を失い年齢が退行している様子であるが、罪の重さから刑は執行されるだろうとのことであった。
ノエル様は公爵家からの嘆願もあり、公爵家の取り潰しとノエル様の幽閉が決まった。
ルカ様についてもノエル様についても国民には知らされることはなく、秘密裏に処理されることとなった。
レオナルド殿下は、王国唯一の王子ということもあって恩赦が与えられた。
ただ、何も処分がないと言うわけではない。
今回のレオナルド殿下の失態は、ノエル様にそそのかされて愛に走り婚約破棄をしたこと、それが様々な要因を生み出した。
謹慎処分一か月。そしてそれから無償の労働を国王陛下から命じられ、様々な場所に派遣されては仕事に取り組んでいる。
肉体労働などしたことのなかったレオナルド殿下が、農作業から用水路の掃除まで様々なことをしているという話を聞いて驚いた。
性根を叩きなおすと国王陛下は意気込まれており、現在はかなり厳しい状況にいる。
国王陛下からの王族命令が出され、レオナルド殿下に対しては甘くすることが禁じられ、全てにおいて厳しい目で対応されているらしい。
レオナルド殿下が王太子として認められるかどうかは、今後の行動にかかっているとされており、だからこそ踏ん張りどころでしょうとセオ様が言っていた。
そして私はというと、次の聖女と神官長が決まるまでの間は聖女の任をもう一度賜ることになり、忙しくノエル様が行っていなかった仕事を処理していった。
仕事はどんなに面倒くさくても、任された以上はやっておいてほしかったと、私はノエル様に心の中で文句を言ってしまう。
今日は、夕方からは聖女が健在なことを皆に知らしめるための舞踏会が開かれるという。
私はそれに参加予定である。
これまで舞踏会に顔を出したことはあったが、それは私の仕事のためであり、たいして興味はなかった。
ただ、今日の私は一味違う。
「ふふふ。ラフィーナ様、楽しみですか?」
次期聖女と決まったばかりのソフィー様に私は聖女の仕事を教えながら、そう尋ねられて大きくうなずく。
「えぇ。だって、セオ様が今日の舞踏会には参加されると言っていたから。はぁぁ。楽しみだわ。舞踏会に出席するセオ様の姿を見るのが」
そんな私の様子を見てソフィー様は笑った。
「ふふふ。恋ですね! あ、そう言えば噂になってましたよ」
「え? 何がかしら?」
私が小首を傾げると、ソフィー様は楽しそうにいった。
「ラフィーナ様は、王国で人気な三名からの求婚を断ってセオ様を選んだって。本当ですか?」
私はその言葉に驚いた。
「え? ど、どうして? どこからそんな噂が?」
焦る私を見てソフィー様は興奮した様子で言った。
「わぁぁ。本当なんですね? 王国騎士団のロンド様、次期宰相と名高いパトリック様、そして魔法使い最強のアレス様! 婚約破棄されてからの求婚の嵐なんて! 乙女ならば誰でも憧れます!」
ソフィー様の言葉に、私は苦笑を浮かべると言った。
「そう……かしら? まぁそうよね」
「でも、どうしてセオ様なんです? だって、セオ様って……側近を辞めて、ラフィーナ様の補佐をされていた、その、地味な方ですよね?」
その言葉に私は笑ってしまった。
「まぁ失礼だわ。セオ様はとても素敵な方なのよ?」
「そりゃあラフィーナ様が選ぶ方ですもの。素敵な方なのはわかりますが」
セオ様はとても素敵な男性である。だけれどもそれを知っているのは自分だけでいいなぁと私は思うと人差し指を唇に当てた。
「内緒。でも、私にとっては世界で一番セオ様が素敵な方よ」
「きゃー! 素敵! 私もいつかそんな恋がしたいです」
「まぁ、聖女の任期をまず5年はしっかりと務めてもらわないとね?」
「はぁぁ。長いですね」
「あっという間よ」
次期聖女のソフィー様は明るく快活でいて、それでとても仕事が丁寧な少女である。
私と違って聖女に憧れて聖女候補になっただけあって意欲的であり、そしてよくしゃべる女の子だ。
「次期聖女として私頑張ります。ラフィーナ様みたいな立派な聖女になって見せます!」
その姿を見て、私は微笑む。
「ラフィーナ様は私の憧れの聖女様ですもの!」
これまで聖女として頑張って来た私は、婚約破棄をされて自分のこれまでの頑張りは何だったのだろうかとそう思った。
だけれども違った。
私の頑張りは、次代に引き継がれている。
私はそれを感じて、心から自分のやってきたことは無意味などではなかったのだなと思うことが出来た。
「さぁ、頑張りましょうか」
「はい!」
明るい声に、私の心も明るく晴れ渡ったのであった。
最近毎日アイス食べてます(*´▽`*)
チョコレートアイス、チョコチップアイス、シロクマ、かき氷、雪見大福!
呟き↓読み飛ばしておっけいです!
この小説、連載当初からずっと追いかけてきてくれる方々がいて、そして新規で読み始めてくださった方も毎日ついてきてくれる印象で、なんだか、書いていてよかったなって、たまに泣きそうなくらいに嬉しい気持ちになるんです。
完結まであと少し、楽しんで読んでもらえるように頑張ります!





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