24話
部屋の中に残ったのは、私とセオ様、そして倒れているルカ様だけである。
終わった。
私はほっと胸をなでおろすと、セオ様の方へと視線を向けた。
心臓がどくりどくりと鳴り始め、私は先程のことを思い出して背筋がゆっくりと寒くなっていくのを感じた。
自分が行ってしまったことの事実に恐怖がゆっくりと足元から登ってくるかのようだった。
やっとルカ様の一件がどうにか終わったというのに、むしろこれからが大変だと思った。
そしてセオ様には絶対に協力をしてもらわないといけない。
だけれど、セオ様ならば力を貸してくれると思う。
「セオ様……今見たことは、全て忘れてもらえますか?」
今回自分が思いついてしまい、実行に移した聖女の力の使い方は、明らかに危ないものだ。
聖女の血が瘴気に有効だという事実は、今後未来の聖女達を危ない目に遭わせるかもしれない。
瘴気が強まった時に、聖女を生贄にするような事態が起きないとも限らない。
だからこそ先にセオ様以外には避難してもらったというのも理由の一つにある。
セオ様ならばきっとわかってくれる。
そう思い視線をあげると、セオ様は笑顔で言った。
「私が緊急用に聖水を持っていたことにしましょう。どうにか持っていた理由などを用意し後は信じてもらえるようにしておきます」
その言葉に、私は笑顔を向けた。
「ありがとうございます」
「いえ。この方法は出来るならばもう二度と使われないほうが良いです。忘れましょう」
「はい」
私とセオ様はうなずきあう。
とにかく無事に終わってよかったと私が思っていると、セオ様は剣を鞘に戻してから私のことを抱き上げた。
「せ、セオ様?」
驚いて声をあげると、セオ様は歩き始めながら言った。
「急いで外に出て、現状を報告しましょう。あとラフィーナ様はしばらく絶対安静です。どれくらいの血を体内から失ったか分かりませんから、まず医者に診てもらいましょう」
その言葉に私は大げさではないかなとは思ったのだけれど、自分の手を見てみると震えており、足も向脛が痛い。
私の顔色を見てセオ様が言った。
「顔色も悪いです。とにかく、急ぎます」
「あ、ありがとうございます」
セオ様はうなずくと足早に私のことを運んでくださった。
建物の外に出ると、そこは物々しい雰囲気であった。
魔法使い達が魔法を張り巡らせており、聖女候補達も集められている。ただ聖女候補達の顔色はとても悪く、何をしたらいいのか戸惑っている様子が見えた。
私とセオ様が建物の中から出てきたのを見て、魔法使い達を指揮していたアレス様が声をあげた。
「ラフィーナちゃん! セオ殿! 大丈夫!? 中は一体どんな状況なの! 教えて!」
その言葉に、セオ様は口を開いた。
「ラフィーナ様を救護班へと誰か連れて行ってくれ。中の説明は私が行う」
アレス様はうなずき、すぐに医者を呼ぶと、私に向かって言った。
「ラフィーナちゃん。大丈夫? ……ごめんね。僕達が、ノエル嬢に協力したばかりに……この一件が終わったら、僕達もしっかり罪を償うつもりだから」
覚悟を決めたその言葉に私はうなずき、下ろされた私は救護班の所へと案内役の騎士と一緒に行くことになったのだけれど、私はセオ様の服を掴んだ手が何故か離れなくて、驚いた。
「す、すみません。手が、いうことを、利かなくて」
まるで固まってしまったかのように、セオ様の服をぎゅっと掴んでいる。
セオ様は焦る私の手をとると、ゆっくりと指をほどいてくれた。
「大丈夫です。話が終わったらすぐにそちらへ迎えに行きますね」
「は、はい」
セオ様は優しく微笑むと、その後は顔を引き締めてアレス様の方へと向く。
私は騎士と共に救護のテントの中へとはいると、医者の診察を受けた。
外傷はないことから、とにかくゆっくり休むようにと用意されていた簡易のベッドの上に横になっていると、外が少し騒がしくなった後に、聖女候補達が入って来た。
一体どうしたのだろうかと思っていると、皆が私の周りに集まり言った。
「ラフィーナ様。ご無事でよかったです」
「ノエル様の一件、私達、どうすることもできず申し訳ありませんでした」
「ご無事で、本当に、本当に良かったです」
瞳を潤ませている聖女候補達はそういうと最終的に皆が泣き出してしまった。
私は自分のことを、こんなにも心配してくれたのかと驚いた。
そしてセオ様の言葉を思い出す。
私のことを心配してくれる人はいるのだ。
私は胸の中に込み上げるものがあって、聖女候補の少女達と共に何故か泣いてしまった。
彼女達が何回も何回も私のことを気遣ってくれるから、大丈夫だと返事を返しながら、私はこうやって無事に帰ってこられて良かったと、ほっと胸をなでおろしたのであった。
それから聖女候補達は一旦神殿へと帰り、私も一緒に帰れるように他の騎士達が手配してくれようとしたのだけれど、私はそれを断り、セオ様を待つことにした。
だいぶん時間が経ち、私はいつの間にかにベッドで眠ってしまっていたのだけれど、人の気配を感じて瞼を開けた。
そこにはセオ様がおり、セオ様は言った。
「お待たせしました。王城に部屋を用意してもらっているので、帰りましょうか」
「はい」
私はセオ様と共に王城へと帰ることとなった。
セオ様が帰ってきてくれると、安心感があった。
不思議なもので、セオ様が傍にいるだけで心強く感じるのだ。
ただ、セオ様はやはり私のことを抱き上げるので、それは本当に恥ずかしくて、自分で歩けると何度も伝えたのだけれど、やはり下ろしてはもらえなかったのであった。
電気代と自分の体調を天秤にかけ、電気代を今月は高くても仕方がないと割り切るしかない(/ω\)
そう切実に思っています(´∀`*)ウフフ
皆様、体調にはお気を付け下さいませ。





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