17話
翌朝、私はいつもよりも早い時間に部屋がノックされて、私は朝の支度をしていたので少し驚きながら玄関口の方へと向かった。
「ラフィーナ様、起きていらっしゃいますか?」
声がかけられ、セオ様だと気づくと私は扉を開けた。
朝の少し湿り気のある空気が家の中へと入ってくる。昨日の晩に雨が降ったのだろうと思いながら私がセオ様へと視線を向けると、セオ様は右目に包帯を巻いており、私はびっくりして声をあげた。
「セオ様!? 一体どうされたのですか!」
セオ様は周囲を見回してから口を開いた。
「ラフィーナ様、中で話をしてもいいですか?」
「もちろんです。どうぞ」
「ありがとうございます」
セオ様の体が濡れており、私は慌ててタオルを持ってくるとセオ様に手渡した。
受けとったセオ様は体を軽くふくと、私に少し急いだ様子で言った。
「実は、昨日の夜ラフィーナ様の保管庫に侵入者がありました。物音で私は気づき駆け付けたのですが、一人と応戦している間に仲間によって運び出されてしまい……すみません。防ぐことが出来ませんでした」
項垂れるセオ様に私は首を横に振った。
「そんなことは良いのです! 傷は、セオ様の傷は大丈夫なのですか?」
そう尋ねると、セオ様はうなずき、私の手を掴むと言った。
「私のことはいいのです。とにかく、一時避難しましょう。これから私は騎士団に報告に行ってまいります。ですがその前にラフィーナ様は安全な場所に避難をお願いします。現在外に騎士も待機しているので、一緒に」
「待ってください! その前に、その怪我を見せてください」
「ラフィーナ様。まずはラフィーナ様の安全の確保が先です」
「いいえ。見せてくれるまで動きません」
私がはっきりとそう告げると、セオ様は少し窓の外を気にしてからうなずき、顔に巻いていた包帯を取った。
こめかみ辺りから右目を通り頬まで刃物で切り付けられた傷があった。かなり出血があったようで当てていた布は赤く染まっており、私はそれを見て、棚の中から薬を取ってくると、その後、昨日棚に直していた分の栄養補給水を取り出した。
これがあってよかったと思いながら、私は清潔なタオルを持ってくると、それに栄養補給水をたっぷりとかけ、それをゆっくりと優しくセオ様の怪我しているところにあてる。
そして、聖力を流し込んでいく。
「どうか治り給え。傷を癒し給え」
栄養補給水はただ飲むだけでも効果は発揮する。けれど、緊急の場合は補給水を力を流し込む媒体として使っていく。
この方が私の体の中の聖力をより直接的に、栄養補給水がしみ込んでいくのと同時に流し込むことが出来るのだ。
傷が光り輝ききらめく。
パチパチと音を立てながら星がきらめくようにして飛びかい、そして次の瞬間、まぶしい程に輝く。
「あ……」
セオ様は驚いた様子で自分の目に触れ、目を見開いた。
「嘘でしょう……」
「良かった。良かった。セオ様!」
「わっと……あ、えっと……そ、その……ら、ラフィーナ様」
傷が治ったことにほっとした私はセオ様に抱き着くと、ぎゅうぎゅうと締め付けた。
それにセオ様は顔を真っ赤にすると、少ししてから、私の体を引き離し、慌てた口調で言った。
「本当に、その、ありがとうございます。こんなに完全に治るとは思っていなかったので、その、ありがとう、ございます」
セオ様の言葉に、私はうなずきながらも、傷口をもう一度見ようとその頬に手を当て、それからじっと見つめた。
「だい、じょうぶそうですね。うん。傷口も塞がっていますし、目も、見えています……よね? セオ様、こちらを見てくださいませ」
視線をすっとそらされ続け、私がどうしてと思っていると、セオ様は顔を真っ赤にしたまま呟いた。
「す、すみません」
「いえ、そのちゃんと眼球が動くのを確認したいのでこちらを見てください」
「は、はい」
セオ様は私の目をじっと見るけれど、次第に視線がそれ、そして慌てた様子で口を開いた。
「ラフィーナ様。本当にありがとうございます。さぁ、避難しましょう」
「え? あ、セオ様! もう少し見せてください」
「す、すみません。私には、その、耐えられなさそうなので大丈夫です!」
「耐える? もしや、まだ痛むところがあるのですか!?」
「ち、違います! 大丈夫です。その、後は医師にも見てもらいますので、どうか急いで行きましょう」
その言葉に、私は仕方がないとうなずいた。
「分かりました。ですが、お医者様のところに行く時には私も同伴させてください」
「……わかりました。さぁ行きましょう」
私はセオ様に促されるように家の外に出た。すると、そこには幾人もの騎士が待機しており、保管庫の方には調査のための魔法使い達の姿もあった。
一体何時から外はこのようになっていたのだろうかと、のほほんと眠ってしまっていたことが申し訳なかった。
「気づかずすみません」
そう伝えると、セオ様は首を横に振った。
「いえ、出てこられなくて良かったです。外に出ていたならばラフィーナ様に危害を加えていたかもしれません。無事で本当に良かったです」
たしかに自分がもしも物音に気付いて外に出たとしても、役に立たずにむしろ迷惑をかけてしまっていたかもしれないなとそう思う。
数名の騎士が護衛の為についてきてくれた。
その騎士達に聞こえないようにセオ様は小声で言った。
「現在、何者の仕業か調べていますが、王城の警備を搔い潜っての犯行なので、内部に詳しい人間が手引きしたのではないかと考えれます」
「そうですね。王城の警備はかなり強固なものですし、私の家周辺も騎士の巡回がありますし……一体何者の犯行なのでしょうか」
「そう、ですね。詳しくはついてから話しましょう」
セオ様はどこか心当たりがありそうな雰囲気であった。
私は歩きながら考える。
保管庫に置かれていたのは基本的に薬草を干した物と、作った栄養補給水である。
一体だれが何のために?
私はまさかと、一瞬頭をよぎっていく人がいたけれど、そんなわけはないだろうと頭を振ったのであった。
(´∀`*)ウフフ
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