第9話 ダイス教
「部屋は、好きに使ってもらって構いません。
仕事を教えますので、30分後に
先ほどのカウンターに集まってください」
俺たちはジョニーに部屋を案内された。
さっきまでの客室と違い
従業員の部屋は、何もない。
押入れに布団が入っている程度。
ここに、5人で雑魚寝をするしかない。
そして、エレナ達はメイドさんとして働く。
ちょうど、みんなメイドさん達が
やめてしまったらしい。
メイドさん達は大金が手に入ったらしいのだ。
俺は、掃除からベットメーキング、配膳の手伝い
などなど雑用係だ。
「働くことって、楽しいのよ。
そして、働いた後のお風呂と食事よ。
最高に幸せを感じられるのよ」
体験したことがあるかのように
エレナが偉そうに語る。
確かに働いたことのない人にとっては
そう感じる人もいるかもしれないし、
そう感じる職場もあるかもしれない。
しかし、ここの職場はどうだろうか?
「私もエレナから聞いて、働くっていうのを
やって見たかったのですよ。」
ハニーがエレナの話にのっている。
「一生懸命、頑張んなきゃだすね」
アンも張り切っているようである。
君たちが張り切りほど、危険なことは無い。
「ユウスケ、私が風を起こして掃除を手伝おうか?」
ジュリアンが恐ろしいことを言う。
そういうところです。
僕が恐れているのは。
「やめて下さい」
俺は、丁重にお断りした。
そして、その日から俺達は働きだした。
ジョニーいわく、1年以上働かないと宿泊代は
返せないから早く働いた方が良いとの事だった。
俺は、直接ジョニーさんの指導のもとで働く。
4人の巫女様は、他のホテルから急遽呼ばれた
メイド指導員のラッセルさんから教わって
働くらしい。
現在、俺は客室の掃除とベットメイキングだ。
ジョニーさんは、壁を指でさすって。
「ユウスケ君、埃がついている気がする。
やり直し」
ベットを叩いてから
「シーツにシワがある。
やり直し」
などと、俺の仕事を手伝ってくれる。
結構、掃除って難しい。
拭く場所によって、拭き方が違うのだ。
結構、簡単なのはトイレかもしれない。
何故か、ジョニーさんはトイレのチェックはしないのだが。
掃除を終えると、料理や配膳の手伝いだ。
ここで俺に仕事を教えてくれるのは
料理長のカーネルさんだ。
「ジョニー管理長から厳しく教えるように言われている。
バシバシ鍛えて一流のシェフに育ててやる」
カーネルさんは気合が入っている。
別に俺は一流のシェフは目指していないんだが。
まずは、皿洗いからだ。
ちゃんと洗剤らしきものがある。
俺の星と一緒で界面活性剤、つまり油を落とすものであろう。
能力を扱いながら皿を洗って、並べていく。
「早すぎだ。雑に洗ってんじゃねーぞ」
カーネルさんは怒って言いながら、
皿をチエックしていく。
キュッキュッ
手で皿をこすった音が聞こえる。
気持ちの良い音だ。
「お、おう。ちゃんと洗えているじゃねえか。
悪かったな。雑に洗ってなんて言って」
カーネルさんは、こんな俺に謝ってくれた。
何か頑張れそう。
「おう、鍋が洗い終わったら、配膳手伝え」
カーネルさんがお呼びだ。
すぐに鍋を洗わなくては。
俺は能力を使いながら束子で奇麗に磨いた。
うん。
カーネルさんが言っていたように鏡のようになった。
新品としても売れるのではないか?
「これを真似て、更に盛り付けしろ。
料理は時間が勝負だ。
急いで、しかし丁寧にだ。」
カーネルさんが色々教えてくれる。
俺は、能力を使いながら流れるように盛り付けしていく。
おそらく、カーネルさんの見本とほぼ変わらないだろう。
「お、おまえ。どこかで働いていたのか?
というか盛り付けのプロフェッショナルなのか?」
カーネルさんからお褒めの言葉を頂いた。
食事の用意が出来たところで
4人のメイドさん達が現われた。
そう4人の巫女である。
身のこなしは、軽やかであるが。
俺は、恐怖でしかない。
しかし、4人の巫女様
メイド姿が似合うじゃないか。
まるで、別人のようだ。
なぜ、布切れより、こちらの方が興奮するのだろう。
4人ともミニスカートから細い足が見える。
うん。服装のセンスが良いな。
いやいや、今は仕事の時間だ。
「では、こちらが101号室で、こちらが102号
・・・・・・・・・・・・・・
こぼさないように、お願いしますね。」
俺がエレナ達にお願いする。
「大丈夫ですよ」
エレナ達は余裕そうである。
数十秒後
「すみません。お客さんが肉料理がないと
怒っています」
エレナが報告してきた。
「そんなわけねえだろ。人数分作ったぞ。
おかしいな。
すぐ作るから。待ってて。」
カーネルさんは巫女さん達には優しい。
というか、エレナの口の周りが汚れている。
「お前、食ったろ」
俺は、小声でエレナを問い詰める。
「何を?証拠は?」
エレナが開き直っている。
俺は、エレナの口元を俺の手で拭いて
見せてやった。
「これでも、白を切るのか?」
俺は警察のように言ってやった。
「変態、スケベ。
女性の口元をいきなり、さわるなんて。」
エレナが逆切れである。
「おい、どうした?
エレナちゃん。
ユウスケが何かしたのか?」
カーネルさんがお怒りだ。
「何でもないです。ハハハハ」
俺はとぼけた声でエレナのかわりに返事した。
チクショウ。ふざけるな
「はい、出来た。
エレナちゃん持っていって」
カーネルさんは女性には優しい。
「はい。ありがとうございます。」
エレナがまた、巫女モードに入った。
「すみません。お客さんが、お酒がまだかと言っております」
ハニーだ。
「お前、さっき持っていったよな」
俺はハニーを問い詰めた。
「持っていってません。
空でした。
証拠はあるのですか?」
ハニーが顔を赤らめて答える。
「口からアルコールの匂いがビンビンだ。
匂いで俺が酔いそうなほどだぞ。」
俺は問い詰める。
「変態、スケベ。
女性の口臭を嗅ぐなんて、最低です。」
「おい、どうした?
ユウスケが何かしたのか?
ハニーちゃん」
カーネルさんがお怒りだ。
「いえ、お酒が欲しいそうなので
注いでおきます。」
俺がハニーの代わりに返事をする。
疲れる。
何で俺がこんな目に。
そして、アンやジュリアンも次から次へ
「ユウスケ、終わったな。
何だか今日は、滅茶苦茶忙しかった気分だ。
賄い飯は作っておいたから、みんなで食べてくれ。
俺は風呂入って寝る。
あと、出来る範囲で良いから片付けておいてくれ」
カーネルさんは、色々と疲れたらしい。
原因は4人の巫女様、メイドさん達だ。
俺も疲れた。
4人のメイドさん達はまだ、戻ってこない。
俺は戻ってくるまで片づけをすることにした。
床の掃除から、皿洗い、鍋などを洗って
調理台も・・・・・・・・・
俺は、ジョニーさんの真似をして指で厨房をなぞる。
「うん、埃はない」
そんな満足をしていると、
酔っぱらいのメイドさん達が戻ってきた。
「賄い飯があるみたいだから、食べる?」
俺はみんなに聞いた。
「食れまふよ。食れまふ。
ひっぱい働いたから食れまふ」
エレナ達は、つまみ食いしてたくせに、まだ食べたいのか?
なんか、すごく酔っている感じだし。
堂の片隅のテーブルで俺たちは
賄い飯を食べている。
俺の星のカレーライスみたいなものだ。
まあ、まあ美味しい。
しかし、何かが物足りない。
おれは、ウースターソースとケチャップ
をわざわざ部屋のリュックから持ってきて入れてみた。
何となく味が決まった。
他の4人も俺の真似をする。
「らっぱり、味の魔法使いらすね。ユウスケは。」
アンが褒めてくれる。こいつも酔って。
「それより、わらし、4万もらっちゃった。
隣で飲んであげただけなのに。」
エレナは嬉しそうである。
お客さんにつき合わされたのだろう。
「私らんか5万らよ。ひえーい。」
アンはエレナに勝ち誇っている。
「私は3万れすた。負けれす。
悔しいれすね。」
ジュリアンも飲まされたのか。
「みんな、甘いですわね。
私は10万ですよ。
もう、飲まないでくださいってと頼まれましたけど。」
ハニーが1番飲んでいるようだが、1番まともだ。
しかし、すぐに宿代稼げちゃうんじゃない。
何が1年以上だ。
1日で22万だよ。
もう、1週間もすれば、帰れるんじゃないか。
「この調子なら、1週間くらい頑張れば
宿代払って、帰れるな。」
俺は酔っぱらい達に提案した。
「私たちのお金よ。
何言ってるのよ、ユウスケ。
もっと、稼ぐにょよ。
あの客かりゃは、まらまら吸い取れるにゃ」
エレナが何かに目覚めたようだ。
「そうよ。パンツ一枚にらるまで、
いや、パンツももらいまひょう。」
アンもおかしい。
「そういえば、一緒に寝たら
100万とか言ってらな。フフフ」
ジュリアン、それは駄目です。
「酒で酔わせば、男なんてイチコロね。
スッカラカンにしてやるわ」
ハニーもやる気満々だ。
やっぱりこの人たち怖い
というか、帰れないのか
一銭も稼いでいない俺に権限はない。
「そういえば、何で急に客が入ってきたんだろう
お前たち、巫女さんで宣伝したのかな?」
俺は、話題を変えようと聞いてみた。
「何れも、ここ数日、この星が戦時状態で
来たくても、来れなかったと言ってまひただふよ。」
口のまわらないアンが答えてくれた。
そうか、俺たちのせいで。
戦時体制だったんだ。
きっと、お客様はゼルダさんのアクワット星
から来ているのか。
「なんか、女を買いまくりゅとか
安いりゃしいよ」
ジュリアンは、何故かその話題。
よほどスケベな客だったんだろう。
アクワット星とこの星では金の価値が違うのだろう。
食事をする感覚で女性を買えてしまうのか?
植民地あるあるだな。
新しい文化に支配されると物価高騰で、
貧富の差が大きくなったりするんだよな。
そして、何時も犠牲になるのは女性や子供だ。
まあ、そう考えればパンツ一枚になって帰ってもらうのも
良しとするのか?
俺たちは食事を終えた。
4人のメイドさん達は温泉に入って寝るらしい。
俺は、みんなの洗い物をして
明日の献立を見て、明日の準備もしてみた。
怒られたら、怒られただ。
「こんな感じかな?」
俺は、自己満足して温泉に入るのであった。
「ういー。
やっぱり、仕事終わりのお風呂は気持ちが良い。
戦った後の風呂とは全然違う。」
俺はひとり言のように言いながらお風呂に浸かう。
ガラッ
こんな夜中に誰か男湯に入ってきた。
この風呂場では良い思い出が無い。
音の方向に目を懲らして見ると
美少年のジョニーだ。
「お疲れ様です。
こんな遅くまで仕事ですか?」
俺は湯船からジョニーさんに声をかけた。
「ハハハ
そんなところです
ユウスケ君も・・・お疲れ様です。」
どうしたんだろう?
ジョニーさんが恥ずかしそうである。
ジョニーさんは体を簡単に洗うと
俺の隣に来て湯船につかった。
「ユウスケ君。あの、ごめんね。
私、嫌いで、厳しくしているわけじゃないのよ。」
どうしたんでしょう。ジョニーさん?
そんな言葉遣いでしたっけ?
「全然、親切に色々教えていただいて
感謝していますよ。」
俺は本心からジョニーさんに言った。
「本当に。
ありがとう。
私、素直になれなくて・・・
巫女様たちと仲良くしている姿を見ると・・・
どうしても、きつくなっちゃうんです。」
ジョニーさんは、俺と巫女たちの関係がどう見えているのだろう?
しかし、ジョニーさんが
ジワジワと近づいてきている気がするのだが。
というより、腿がくっついている。
「ユウスケ君・・・・・・・
私みたいなのは嫌いですか?
ずっと、ここで働いてほしいんですけど」
ジョニーさんが女性のように話しかけてくる。
何故か少し色っぽいし、奇麗な女性のようにも見えてくる。
女性のように?
しかし、あるはずのところは、ちゃんと膨らんでいる。
ないところは、いや少しふくよかに膨らんで。
あれっ?
「最初は、お金に目がくらんで・・・・
ごめんなさい。
でも、あまりの逞しさに段々と・・・・
恥ずかしがらなくて良いですよ。
私は、既にユウスケ君の裸を隅々まで見ていますし。」
上目づかいで俺を見るジョニーさん。
そっか。ジョニーさんには俺の裸を隅々まで
見られているのであった。
俺は偏見などしない
男だから駄目、女だから良いとか
そんなことは関係ない。
関係ないのだが・・・・・・・・・・・・
いや、関係ありすぎだ。
「すみません。ずっと働くのは無理なんです。
僕、ここの星の人間ではないので
すみません。」
この緊張感からやっとでた言葉だ。
「そう、残念ね。
でも、時間はあるわ。
あと、あの巫女様たちには
気を付けて下さい。
女の直感でわかるんです。」
ジョニーさんは、そう言って湯の中で
俺の手を握る。
女の直感?
まあ、良いでしょう。そこは。
「ハハハ
わかっています。
しかし、あんな巫女様たちでも
ここでは、崇拝されるのですね。」
俺は話題を変えようとした。
「それは、そうです。一応、
何度も生まれ変わりをしてきた方々ですから。
大したことは出来ないのですが
貧困な人々は、それでも何かにすがりたく
何かを期待して崇拝してしまうのです。」
ジョニーさんが教えてくれた。
なるほど、
自分達でどうしようもない時に
何かにすがる。
うーん、精神の安定には良いかもしれない。
悪用されなければよいのだけど。
まあ、あの巫女たちはそんな知恵は回らないだろうが。
塀の中にも、色々な宗教はあったけど。
自然の全てに感謝するみたいな感じの人の方が
多かったかな。
あれは、宗教と言えるのかな?
「私たちは、巫女様たちよりも
偉大な、ダイス様を崇拝しています。
私は、ダイス教徒なのです。」
ジョニーは体をくっけながら自分のことを話し始めた。
「ダイス様?
何か聞いたことありますね」
俺は、どこかで聞いた覚えがあって言ってみた。
「ダイス様は、この街の防衛軍大将もしております。
巫女様たちと同じように
何度も生まれ変わりをしており、信者も。
うなぎのぼりに増えています。」
そうか禿げ頭のダイス様だ。
俺を殺して差し出してくれとか言っていた人だ。
「そうなんですか。
そのダイス様というのは偉大なんですね。」
俺はジョニーさんに言った。
「はい。とても偉大な方です。
自分に正直に生きろと。
欲しいものは努力して手に入れろと。
私は、ダイス教に入って自分を変えることが
できました。」
ジョニーさんが俺の大事なところの近くを指で
なぞってくる。
うん。
相手は女性ではないが女性なのだろう。
この状況で、俺の下半身が反応し始めている。
俺もダイス教徒になったら、ヤバいかもしれない。
しかし、
ジョニーさんの下半身が大きく膨れているのを見ると
やはり、俺は違う気がする。
「の、のぼせそうなので、先に出ますね
また、明日、宜しくお願いします」
俺はそう言って、そそくさと逃げるように湯船を出る。
「明日も、一緒にお風呂に入りましょうね。」
後ろの湯船からジョニーさんの声が聞こえてくる。
俺は、聞こえないふりをしながら温泉を後にした。
なんだったんだ。
明日から仕事がやりにくくなりそうな。
いや、明日も気合を入れて頑張らなければ。
俺は温泉を出て部屋に入る
もう、みんな寝ているだろう。
そう思って、ドアを開けると
「カンパーイ」
エレナ達が宴会を開いている。
どんだけ飲めるんだ。
「勇者ユウスケ様のお帰りらー」
ジュリアンが笑いながら言う。
「ユウスケ、お前も飲め」
ハニーが俺に酒の入ったグラスを無理やり渡す。
「このお酒、どうしたんだ?」
俺はハニーに聞いた。
「カーネルさんが、好きなだけ持って行けというから
好きなだけ持ってきた。」
好きなだけって
どんだけ、持ってきたんだ
この人数で飲める量ではない・・・・はず
あー。酔っぱらいは嫌だ。
数時間後
「3番、エレナ、爆発料理を作ります。料理は爆発だー」
ドン。ドカーン
「4番、ハニー、ユウスケがいやらしい目で見るので
ユウスケを飛ばします。」
ヒュー、ドン。天井にユウスケが刺さった。
「5番、アン、ユウスケが能力で胸を揉んでくるので
ユウスケに雷を落とします。。」
ガラガラ、ビリビリ。ユウスケは感電している
「7番、ジュリアン、ユウスケがさりげなく肩を組むので
ユウスケをどかします。」
ドヒュー。ドン。ユウスケが今度は壁に刺さった。
「8番、ユウスケ、テレポーテーションします。」
「おーいいぞー。つまみもってこい。うさぎの肉だ」
宴会は続くのであった。
朝、俺は一番に起きた。
あれから酒を飲まされて
記憶がない。
頭も痛いし、体中が痛いし。
部屋を見ると何故か、ジャングルのようになっていた。
うさぎ、リスやネズミ、蛇などの小動物のほか
果物の木が何本か床に刺さっている。
何故か、料理が木っ端微塵になったようなものも。
壁や天井にはいくつも穴も開いている。
誰が、こんなことをしたんだ?
「みんな、起きてくれ。大変な状況だ。」
俺は、4人の巫女様たちに声をかけて起こした。
みんな、眠そうな顔だが目を覚ました。
そして、部屋の状況を見て驚いている。
「誰が、こんなことを」
ハニーが呟いた。
「そうだろ。起きたらこんなことになっていたんだ」
俺は説明する。
「新たな、敵が現われたのかもしれないわ」
エレナがみんなに真剣な顔で言う。
「そうね。こんな嫌がらせ、普通じゃないな。」
ジュリアンも、考え込むように言う。
「でも、何か、ユウスケが色々、この部屋に
持ってきていた記憶が少し・・・・・」
アンが俺に濡れ衣を着せようとしている。
「あれっ?そういえば
ユウスケがつまみ持ってきたぞーとか
偉そうにしていた気が・・・・・」
ハニーも俺に濡れ衣を。
あれっ・
そういえば、何か
そんな記憶があるような無いような。
うん。二日酔いだけど、今日も一日頑張ろう。
俺は部屋を片付け仕事に向かう。
「おはようございます。カーネルさん」
カーネルさんは俺よりも早く厨房に入っている。
「おう。ユウスケ、ありがとな。
すごく綺麗になっているし、準備もしてあるなんて」
カーネルさんから「ありがとう」の言葉を貰った。
「ありがとう」は魔法の言葉だ。
何か嬉しい気持ちになるし、やる気が出てくる。
「勝手に準備してしまいましたが、大丈夫でしたか?」
俺はカーネルさんに聞いてみた。
「おう、足りねえものはいくつかあったが、
助かったよ。
とりあえず、そこの鍋と皿を洗ってくれ。」
カーネルさんは、口が悪いが根はやさしい感じだ。
俺は、皿と鍋を能力を使いながらササッと洗う。
「終わりました。」
「相変わらず、早いな。料理でも手伝うか?」
カーネルさんが俺に料理を教えてくれるらしい。
俺は、皿や鍋を洗いながら、カーネルさんの料理を常に
見ていた。
与作さんから、教わるだけでなく見て覚えろと言われていたからだ。
「はい。やってみます。」
俺は返事をして料理をおそわるのであった。
「カーネルさん、僕の星では出汁というものを
使うんですよ。」
料理をしながら、俺は生意気にも俺の星の料理を語った。
「ほう、興味深いな。
出汁っていうのは、どういうものなんだ。」
カーネルさんは、嫌な顔することなく俺に聞いてきた。
「えーと、シイタケとか昆布とかから旨味をとって
料理に生かすんです。他にも魚を燻製にしたものとか
動物の骨とかですね。この焼いた魚や干した魚なんかも」
俺は、魚を焼きながら知っている感じのことを話した。
「ほう、料理が終わったら教えてくれ
面白そうだな。」
カーネルさんは向上心がいっぱいだ。
料理を終えると、4人の巫女様達が料理を取りに来る。
しかし、巫女様達は2日酔いというのがないのか?
きちんと巫女様モードで、食事をとりに来る。
朝に賄い飯を食べたから、昨日の夜のような
つまみ食いはなさそうだ。
俺は、巫女様達に料理を渡しているのだが
壁の向こうからの視線が怖い。
壁から顔だけを半分出したジョニーさんだ。
配膳が終わったら、そのジョニーさんと一緒に
シーツなどの洗濯だ。
たまに、シーツにシミなどがあると
ジョニーさんは匂いを嗅いだりしている。
夜な夜な、女性を呼んでいるお客さんが多いらしいのだ。
「街の女性が買われているんですか?」
俺はジョニーさんに聞いてみた。
「そうです。安いですからね。
私達も見て見ぬふりをしています。
若い男も安いんですよ。
そんなことより、
ここでは、2人きりですね。ユウスケ君」
聞いてもいないことをジョニーさんは話してくれる。
「仕事中です。仕事中」
俺は、ジョニーさんの視線から目をそらして
シーツをゴシゴシと洗う。
「では、仕事中以外で。
ウフッ」
ウフッではない。
完全にジョニーさんのイメージが変わってしまった。
全てはダイス教のせいだ。
話に聞くと何でもありというか、
言っていることは正しい感じなのだが、
周りに迷惑でしかないような。
俺達が働き始めて、1ヶ月近くが経った
エレナ達は、随分、貯金が出来たようだ。
俺は、給料日までお金がない。
まあ、ここではお金を使うことは無いのだが。
それよりも、毎晩の宴会で体が限界にきている。
「おはようございます。
ユウスケ君
今日は、ダイス様達が宿泊ですので
丁重にお願い致しますね。」
ジョニーさんは笑顔で俺に言ってきた。
ジョニーさんからの仕事の指導は終わったのだが、
仕事中に、あいかわらず、あちらこちらを指でなぞる。
部屋の壁とかではなく、俺の体だ。
正直、仕事の邪魔だ。
そして、俺は、ジョニーさんの隙を見て温泉に入るのだが
何故か、すかさず、ジョニーさんも温泉に入ってくる。
おかげで、随分と肉体のスキンシップが出来るようになった。
逃げるように、俺が温泉から出るのが定番だ。
「わかりました。予約名簿を確認して
準備をしておきます」
俺は、段取りなど、今ではジョニーさんの片腕として働けるように
なっている。
そっか。
今日は、噂のダイス様か。
どうやらこの街のお偉いさんたちの
宿泊らしい。
ダイス教の教祖で防衛軍大将のダイス様
この街の領主カルヴァン様
ジョニーさんの父親で、この街の大商人ネイル様
俺は部屋の掃除や色々と雑用を済ませてカウンターに立っている。
すると、しばらくして、
その3人らしき人たちがホテルの玄関からカウンターに向かって
歩いてきた
ハゲ頭が一人いるので、多分そうだろう。
タイス様達だ。
「いらっしゃいませ。お荷物がありましたら
私が全てお持ちいたします」
俺は、禿げ頭のダイス様に伺った。
ダイス様はハゲ頭で中年太りな感じの
笑顔の似合うおっさんだ。
教祖様って、こんな感じなんだ。
「あー。良いですよ。
荷物くらい自分達で持ちます。
それより、あなたがユウスケ様ですかな?」
ダイス様が俺に笑顔で聞いてきた。
荷物には、人に預けたくないような大切なものが
入っているのかもしれない。
「はい、そうですけど」
俺は、嘘をつく必要も無いので正直に返事した。
「いや、大変申し訳ありませんでした。
先日は、アクアット星のハイド様よりあなた様を
何とかしてくれと頼まれましてな。
大軍を率いてしまったのですが、ハニー様に
お叱りを受けまして、ハハハハハ」
ダイス様が、どうやら俺に謝罪をしているようである。
「いえいえ、何もされていおりませんので
気にしないで下さい。
それでは、お荷物は各自お持ちになってください。
これから、お部屋に案内いたします。」
俺は、そう言って案内をしようとするのだが。
「ほう、あなた様がユウスケ様ですか
息子より、よく聞いております。」
スラッとした感じで長いひげを蓄えた
やはり中年のおっさんだ。
ジョニーのお父さんだろう。
「ふむふむ。なるほど。
息子が気に入るのもわかりますな。
モテるでしょう。」
ジョニーのお父さんの大商人ネイル様は俺を買い被りだ。
俺がモテる?
男に?女に?どちらに?
「いえいえ、そんな。
全然、モテませんよ。」
俺はすかさず、否定した。
「いやいや、素敵な方ですよ。
ユウスケ様は。
アクアット星のゼルダ様からも色々伺っていますし
後で、お話があるので、時間のある時に
我々の部屋まで来てください。」
領主のカルヴァン様であろう。
ダイス様と似たような中年太りのおっさんだが、
髪の毛は白髪交じりでダンディな感じの顔である。
「わかりました。恐らく夕食時になってしまうと
思いますがお伺いさせていただきます」
俺は、お辞儀をしながらカルヴァン様に返事した。
俺は、ダイス様達を部屋に案内した後に
すぐに厨房で夕食の準備をする。
「ユウスケ、味見をしてくれ」
カーネルさんが俺に料理の味見を頼んでくる。
ゴクリッ
旨い。
味に奥があって、いくらでも飲めそうだ
「旨いです。旨すぎです。流石ですね。カーネルさん」
俺はカーネルさんを褒めたたえた。
「ありがとうよ。やっぱり旨いよな。
色々な出汁を合わせて作ったスープだ。
いや、本当に出汁っていう奴に出会って
料理の無限さを感じているよ。
これも、ユウスケのおかげだ」
カーネルさんは俺に感謝をしてくれるが
俺の方こそ色々教わって感謝している。
そんなこんなで、このホテルの料理は
アクアット星のお客様にも好評だ。
食事だけのために宿泊するお客様も増えている。
カーネルさんの努力が認められているのである。
俺達が毎晩、宴会をしている時も
俺達が朝、まだ寝ている時も
ずっと、試行錯誤して毎日研究していることを
俺は、知っている。
「カーネルさんは、本当に努力家ですね。」
俺はカーネルさんに話しかけた。
「努力?努力なんてしてねえさ。
好きでな。料理がただ好きなだけなんだよ。
それで、美味しいって言われるのが最高に幸せなんだよ」
カーネルさんは笑顔で俺に語ってくれた。
人の幸せなんて本当に千差万別だ。
カーネルさんみたいに、
単に人に喜んでもらえることが幸せという人が
多かったら、世の中、平和になりそうだけど。
夕食の準備は出来た。
いつものとおり、エレナ達、巫女どもが厨房にやってくる。
「いいか、今日の客はダイス様たち、この街の
お偉い人たちだ。
アクアット星のお客様とは違うので、
気をつけろよ」
ダイス様達の部屋を担当するハニーに俺は言った。
「大丈夫ですよ。いつも以上に色気を振りまいて
頑張ってきます。」
ハニーはメイドの仕事を勘違いしているようだ。
不安しかないが
まあ、なるようになるだろう。
さすがに、お客様を飛ばしたりはしないだろうから。
数分後
「何で、あの親父ども、私の魅力に何も感じないの
負けた感じが半端でないのですけど。
お酒も一杯ももらえず、
シッシッと追い出されたんですけど」
メイド服をはだけた姿でハニーが帰ってきた。
半分泣きそうである。
いや、俺はとても魅力を感じるのだが。
今から、ダイス様の部屋に伺う俺としては
嫌な予感しかない。
まさか、3人ともダイス教なんてないよな。
「失礼いたします」
俺は部屋をノックしてダイス様の部屋に失礼する。
「おー。待っておりましたよ。
ユウスケ様
こちらにどうそ、お座りください。」
少し酔った感じのダイス様が俺を呼んでいる。
そして、俺は何故か、カルヴァン様とネイル様の間
そして、正面にはダイス様という位置に
座らされている。
「それで、お話というのは?」
俺は、カルヴァン領主に聞いてみた。
「いやいや。
ユウスケ様は、
ゼルダ様と仲が良いのでございますか?」
カルヴァン様が俺に聞いてくる
「そうですね。
色々とありましたが、自分としては懇意に
させていただいているつもりです。」
俺は正直に答えた。
因みに、ゼルダさんには、俺達がアクアット星の工場や軍隊を
全滅させたことは内緒にしてもらっている
そんなの、この街の人たちを怖がらせるだけだからだ。
「いや、ゼルダ様が置いて行かれた基地のことなんですが、
私どもではなく、ユウスケさんに
全て譲るということでしてね。」
カルヴァン様は少し困った様子で俺に話す。
ゼルダさんが俺に全て譲る?
そんなものもらっても、どうしようもないのだが。
「私どもとしても、別にアクアット星の物でしたから
特に異論はないのですが、一時は殺しの依頼のあった
ユウスケ様に何故、そんな権利を譲るのか不思議でして。」
カルヴァン様はお酒を飲みながら俺に話してくれた。
「いや、私も初耳です。そんなものもらっても
わたしとしても困るのですが」
俺は正直な気持ちを答えた。
「ゼルダさんが言うには、われわれでは
どうせ扱えないが、ユウスケ様なら
何とか良い方向に扱ってくれるという
ことなんですよ。」
カルヴァン様が教えてくれた。
そうか。
アクアットの敵国カムーンが
この星に万が一、侵略しに来た時に
ダイス様達ではどうしようもないということか。
いや、俺だってどうしようもないと思うのだが
しかし、
原因を作ったのは俺だし。
「なるほど、詳しい事情はお話しできませんが
わかりました。
きっと、ゼルダ様は私のことが好きだったんでしょう」
俺は、カムーンの話が出来ないので、仕方なく冗談で誤魔化した。
「ゼルダ様もユウスケ様のことを。
なるほど。それなら納得しました。」
何故か冗談なのに、カルヴァン様をはじめ、他の2人とも納得したようだ。
絶対に、勘違いしている。
「まあまあ、ユウスケ様、お酒でも飲んで」
となりのネイル様が俺にお酒を勧めてくれる。
「いや、まだ仕事中ですから」
俺は、まだやることがあるのだ。
「大丈夫ですよ。息子のジョニーには言ってありますから」
そうだった。このネイル様はジョニーさんの父親。
きっと、このホテルのオーナーだろう。
「そうですか。では少しだけ。
しかし、ネイル様はここのホテルの
オーナーなんですか?」
俺は、気軽な感じでネイル様に聞いてみた。
「アレッ?
息子から聞いていませんか。
ここのホテルもゼルダ様がユウスケ様に
譲ると言っていましたので、
ここのホテルはユウスケ様のものですよ。
私たちは管理運営だけをしております。
利益はユウスケ様のものですよ。
ハハハハハ」
ネイル様が言っていることがよくわからない。
つまり、俺がこのホテルのオーナーで
そのホテルで宿代が払えず、
俺は、このホテルで働いている?
「ハハ。そうなんですか。
すごいですね俺って」
そんな言葉を漏らす俺。
3人としばらく飲んでいたのだが
両脇のおっさんたちが、何故か俺の太ももを
触ってくる。
鳥肌が立ちそうなのだが、相手はお客様。
地獄のような時間だ。
接待の女性はこんな感じで耐えているのであろうか?
しかし、そこに助け舟がやってきた。
トンットンッ
「失礼いたします」
エレナ、アン、ジュリアンの3人だ
3人とも正座をしてお辞儀をしている。
ハニーから話を聞いてやってきたのであろう。
3人ともわざと胸元を空けて、肌けた感じだ。。
やるじゃねえか。
これで、動揺しない男なんていない。
いないはず。
「帰ってください。巫女さん。」
「胸元が汚らしいです。巫女さん」
「床だけ見ていて下さい、巫女さん」
瞬殺された。
3人とも何も話すことなく
顔を上げることも許されず、お辞儀をしたまま
正座の形で後ろにスリスリと
静かに部屋から出て行った。
何か、さまーみろみたいな感じで
すっきりした。
いや、違う。
待ってくれ。俺を置いていかないでくれ。
助け舟どころか、単なる泥船じゃねえか。
「さあさ。夜は長いですから」
カルヴァン様がお酒を勧めてくる。
「あら嫌だ。長いだなんて。
いやらしい。カルヴァン様」
ネイル様?
段々、口調が変わってきているような。
「そうですよ。ユウスケ様
もっと、自分に正直に。
男も女も関係ないでしょう。
私の目を見て下さい。
もっと楽な生き方をしてください。」
ダイス様も俺に話しかけてきた。
俺は、ダイス様の目を見つめながら話を聞いたのだが。
あれっ
何か、男でも良いんじゃねえか。
何で、男とか女とかこだわっていたんだろう
気持ち良ければどっちだって。
俺は何故かそんな思いに。
しかし、俺の精神がその気持ちを嫌がるかのように
跳ね返す。
いやいや違う。
俺は女が好きなのだ。
貶されようが、イジメられようが、
飛ばされようが、電撃を喰らわされても
女が好きなのだ。
「楽しい時間で、お時間が経ちすぎたようです。
申し訳ありませんが、私はここで
失礼させていただきます。
スープは絶品ですので温かいうちにお飲みください。」
俺はそう言って、部屋から逃げるように退出した。
厨房に戻ると、
4人の肌けた巫女が、抜け殻のようになっていた。
「どうしたんだい、お客様から相手にされない巫女様」
俺はからかってやった。
「ハハハ。そうです。私は魅力のかけらもない女です。」
ハニーの自信は木っ端微塵のようである。
「すみません。男は下僕とか、自惚れていますた」
アンも男をしてに見ていたのを反省している様子。
「どうせ彼氏がいつまでも出来ない女です」
エレナは、やっと自分を理解できたようである。
「みんな、大丈夫だよ。きっとどこかに、多分」
ジュリアンは何か希望をもちたい希望をもっている。
うんうん。
たまには良い薬だ。
いつも、男を誑かして
金を巻き上げている女たちだ。
たまに、あんな客が来る方が良い。
俺は絶対に相手はしたくないが。
しかし、ダイス様については
違和感がある。
何か言われると、信じ込んでしまうような。
あれが教祖様の力なのか。
「それじゃあ、賄い飯でも食べるか?
今日は俺が作るよ。」
そういうと、抜け殻だった巫女様達は
いきなり、抜け殻から脱皮したような
生き物になって元気になっていた。
「もうそろそろ、このホテルを出たいと
思っているんだけど」
俺は食事をしながら皆に言ってみた。
「何言っているのよ。貧乏人が。
私たちは、まだ稼ぎ足らないわ。
みんなで合わせてもまだ、500万
くらいなのよ。」
エレナが文句を言ってくる。
「そうですよ。
まだまだ、私たちはいけます。
1憶くらいためないと」
ハニーさん、どんだけ、働くんだよ。
「このホテルを買い取って
あとは、悠々自適に暮らすんだよ。」
ジュリアンが言う。
「そうだすよ。
高級な美容品や服なんかも買いたいし。
高級な料理も毎日食べたいだす。」
アンには、そんな欲求があったのか。
「いや、なんか、俺、このホテルの
オーナーだったらしくてさ。」
俺は言ってみた。
「オーナーって何よ」
エレナが聞いてくる。
「つまり、このホテル、俺のものらしいんだよ」
俺は頭を掻いて、照れながら言った。
シーン
「どういうことよ、アンタ。
アンタ自分のホテルに借金して
自分で働いて返そうとして
私たちまで働かせていたっていうこと」
エレナが俺の首を絞めながら責めたてる。
「まあ、そうなんだけど。
俺もさっき知ったんだよ。
ゼルダさんが俺にくれたみたいなんだ。
苦しいです。エレナさん。」
俺はエレナに首を絞められながら言い訳をした。
「なるほど。それで、ユウスケ様。
ここのホテルの収入はどのくらいなんですかね」
ハニーが俺に聞いてくる。
エレナも興味があるのか俺の首をしめるのをやめてくれた。
「だいたい、経費を引いても年に5憶くらいとか」
「私は、ずっとユウスケ様はやれる男だと信じていますた」
アンが褒めてくれている。
「そうだよね。ユウスケ様は素敵な方だよね」
ジュリアンまで。
褒める言葉がなかったのか、素敵どいう言葉で
誤魔化しやがった。
というか
「ユウスケ」という呼び捨てから
「ユウスケ様」まで格上げしたぞ。
そうなのだ。
従業員の給与が安いのもあって
利益は大きいのだ。
ネイルさん曰く、従業員など変わりがいくらでも
いるので、給料など安くても良いらしい。
俺的には、給料を上げてあげたいのだが
給料を上げると、この街の物価も上がってしまうだろう
今の安い給与水準でさえ、物価を上げてしまっているのだから。
このホテルの従業員だけなら大丈夫かもしれないが
俺的には、利益を地域住民の貧困層に何かしたい感じだ。
「ちょっと待ってくれ。
俺としては、その利益を貧困層のために
何かをしたいんだよ。
だから、俺なんて生活できれば良い程度しか
残さないつもりだよ。」
「何を言っているのよ。
ユウスケ。
美味しい物を毎日食べられるのよ。
贅沢放題なのよ」
エレナは食い意地が凄い。
毎日、豪華なもの食べていたら飽きるだろう。
「そうだすよ。
ユウスケ
私の美容はどうなるんだすか?」
アンはそどんだけ美容に目覚めたのだろうか?
美容なんて、日々の努力だ。
簡単に綺麗になれるのはすぐに駄目になるぞ。
「まさか、私達がホテルに泊まっても
宿代をとるとか考えていないよね。
ユウスケ。」
ジュリアンが怖い目つきで睨んでくる。
しかし、あっという間の
「ユウスケ様」から
「ユウスケ」への格下げ。
「そりゃ、お金は取るでしょ。
経営とはそういうものなのです。
そういう杜撰なことが経営を駄目にするんだよ。」
俺は睨まれても怯まずにジュリアンに言い返した。
「なるほど。ユウスケの言いたいことも分かります。
では、こうしましょう。
ここのホテルを出るのは了承します。
メイドさんごっこもやめましょう。
そのかわり、ユウスケが私達4人を養ってください」
ハニーが俺にすごい提案をしてきた。
結婚もしていないのに養う。
しかも、贅沢怪獣の巫女を4人も。
いかれすぎた提案だ。
「絶対に嫌です。」
俺は、断固反対だ。
・・・・・・・
「はい、それではハニーの提案が
多数決で決定しました。
パチパチパチパチ。」
エレナ議長が裁決してくれた。
これを多数決で決めるのか?
俺の意思はどこにあるんんだ?
少数意見は、すごく大切なんだぞ。
しかし・・・・仕方ない・・・・
まあ、俺がお金を管理すれば大丈夫だろう。
「わかったよ。
贅沢でも何でもでもするが良いよ。
ただし、お前たちを崇拝している人々に
どういう顔が出来る?」
決まった。このセリフにはこいつらも効くだろう。
「そんなの、わかっているわよ。
私たちの贅沢三昧を見せつけてやるわ」
エレナの感覚が違う。
「そうね。私たちの贅沢が、どれだけ凄いか
思い知らせてやりますわ。」
ハニーさん。
だから違いますよ、僕が言いたいのは。
こいつら洞窟生活からホテル暮らしになって
贅沢というものを覚えてしまったようだ。
貧しい人たちの心の支えになるべき者たちが
これではマズイ。
「ちがーう」
俺は、頭を抱えて嘆いた。
どうしたら、こいつらを改心させられるんだ。
こいつらには、貧困層の気持ちがわからないのか?
いや?
ふふふ
俺は、良いアイディアを思いついた。
「それでは、
俺が、お前たちを養うのは良しとしよう。
そして、ここのホテルは出て行く。
異論はあるか?」
「ないない。
働かないで贅沢放題だもん」
エレナが賛同してくれた。
他の3人も頷いている。
よしっ。
これからの生活が楽しみだ。
俺は、現在、湯船に浸かっている。
仕事終わりの温泉は最高だ。
そして、俺の膝の上にはジョニーさんが座っている。
密着状態だ。
毎日毎日、距離を縮められ、
ついにこの距離になった。
「ジョニーさん。
このホテル、俺のものらしいのですが」
俺は、ジョニーさんの後ろから聞いてみた。
ジョニーさんの首元に俺の息が。
「あふっ。
いやらしいですわね。ユウスケさん。」
ジョニーさんは答えてくれない。
「いや、何か、ネイル様が
息子から聞いてませんかとか
言っていたので」
俺は、ジョニーさんを更に問い詰めた。
「だって。
そんなこと言ったら。
ユウスケさんと離れ離れになるではないですか?
それに、ちょうどメイドもいなかったので。」
指で俺の膝をなぞりながら、
悪びれることもなくジョニーさんは答えた。
「なるほど。
ですが、私もやることがあるので、
新しい従業員に引継ぎをしたら
このホテルから出ますね。」
俺は、ジョニーさんに言った。
「そんな勝手なこと許せませんね。
私はこのホテルの管理者ですよ。
オーナーとどちらが偉いと思っているのですか」
ジョニーさんが顔だけ俺の方に振り返り、
悲しそうな顔で反抗してきた。
いやいや。
オーナーの方が偉いだろう。
しかし、顔だけ見れば女性に見えてくるから不思議だ。
「まあ、オーナーとして
このホテルにはチョクチョク、顔を出しますし。
お手伝いもしますから。
それに、新しい従業員はイケメンですよ。」
俺は、ジョニーさんを説得する。
「確かに、私好みではあるのですが。
すぐに飽きてしまいそうです。
男はやはり生命力です。
何度、殺されても生き返るような。
どれだけプレイをしても、すぐに復活するような」
ジョニーさんは、自分のお尻を俺の股間に押し付けてくる。
何度も殺されても生き返る男?
なるほど、それで俺が。
「大丈夫です。
きっと、新人君もそんな生命力をもっていますよ。
あんなの誰でも出来ますから。」
俺は、適当なことを言った。
早く湯船から出たいのである。
先ほどから、俺の股間にグイグイお尻を押し付けられているせいで
なんか、まずいことになりそうだからだ。
「はあー。
仕方ないですね。
短い期間でしたが私としても
楽しめましたし。
最後に・・・・・・」
ジョニーさんはそう言って、俺の大切なものを
触ろうとしてきた。
ザバッ
「それでは、
のぼせてしまうので、
先に出ますね」
俺は、強引に立ち上がって
ジョニーさんを突き放す。
そして、いつものように逃げるように温泉から
出たのである。
2週間後
俺たちは、新人達に仕事を引き継いで
ホテルを出ることになった。
宿代は、俺が全額支払った。
あと、俺たちの部屋の修理代も。
巫女様達の金は巫女様達のもの
俺のものは巫女様達のものなのである。
「ユウスケ、残念だが仕方ねえな。
たまには、俺の料理食べに来てくれよ」
カーネルさんが、ホテルの玄関先で俺に言ってくれた。
「ありがとうございます。
もちろんですよ。
色々と、お世話になりありがとうございました。」
俺は、カーネルさんに頭を下げる。
「いや。俺の方こそ
色々と、ありがとうな」
カーネルさんが俺に感謝してくれた。
「それでは、ユウスケ君、巫女様方
お疲れさまでした。
いつでも、遊びに来てくださいね」
ジョニーさんはみんなの前では、きちんとしている。
ホテルのことを本当に良く考え、真面目に働いている。
俺たちは、他の従業員たちとも挨拶をして
ホテルを後にした。
そして、
これから俺の巫女様達への復讐が始まるのである。




