第20話 理想郷のために
「ダイス教祖様
各国から精鋭部隊がここに集結しました。
総勢800名
第一大隊 ラクーン星壊滅隊 200名
第二大隊 アクアット星壊滅隊 300名
第三大隊 カヌーン星壊滅隊 300名
です。」
ハバナ統帥は跪きながらダイス教祖に報告する。
「うむ。
過剰戦力ともいえるほどじゃな。
随分と時間がかかったが、みんな相当に強くなったのう。
儂の理想郷まで、もう少しじゃ。
あとは、どうせじゃから、あいつらも仲間してやろう。」
ダイス教祖が満足げに語る。
「はい。
全ては、理想郷のために。
しかし、ダイス教祖様、自ら行かなくとも
我々が、強引にでも連れてまいりますが」
キメラ統帥も跪いてダイス教祖様に言う。
「そうじゃな。
可能じゃろうけど、
儂が話をした方が早い。
作戦の決行は、2日後じゃ。
準備をしておいてくれ。」
ダイス教祖様は、そう言うと一瞬でその場から消えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
部屋での巫女様達は満足げだ。
俺への自慢話が止まらない。
「はいはい。すごいです。」
そんな感じで、ずっと自慢話をされているのだ。
巫女様達のはしゃぎぶりは、止まらない。
あちらこちらの国で
巫女様軍が活躍しているらしいのである。
そして、巫女様達がスパイで潜入しても
すぐに、バレてしまい崇拝されるらしいのだ。
「ユウスケにも見せてあげたかったです。
いくら化粧で変装しても美しいとバレてしまうのです。
美しいとは罪なのですよ。オホホホホ」
金髪のハニーが変装しても、バレてしまうと言っているが、
俺にはわかる。
自己紹介で、巫女だと名乗っているからバレるのである。
「そうだす。
私たちは世界の巫女になってしまっただす。
あちらこちらで崇拝されてしまうのです。
イヤハハハハ」
赤髪のアンが、あちらこちらで崇拝されるとかほざいている。
確かに、勘違いな噂が広がって、
あっという間に、信者が増えているかもしれない。
しかし、エデン集落で、あっという間に信者を失った実績がある。
「ユウスケだけ仲間外れになっちゃって、ごめんね。
所詮、
ユウスケが気軽に話せる相手じゃなかったんだよ。
私達って。アハハハハ」
青髪のジュリアンが俺だけ仲間外れなことを心配してくれる。
大丈夫です。
お馬鹿な巫女様達と、仲間と思われたくありません。
「そうね。
世界征服出来ちゃうかもしれないよ。」
エレナに限っては、突っ込むのも疲れた。
歯に青のりがついているぞ。
こんなのに、世界征服されたくない。
まあ、せっかく喜んでいるのを邪魔しても悪い。
どうせ、ボロが出て信者などいなくなってしまうだろう。
喜んでいるのも今のうちだ。
しかし、随分と国際情勢は変わっているのか?
だとすると・・・・・・・・・・・
「ユウスケさん
お久しぶりです。
それに、巫女様方も」
だよな。
このぐらいのタイミングだと思ったよ。
ダイス教祖は、この部屋にテレポーテーションしてきた。
いつものように、陽気な感じで丁重な挨拶をしてきた。
「お久しぶりです。
ダイス教祖様。
何か雰囲気が変わられたようですが、
胃腸の調子でも悪いのですか?」
俺も丁重な挨拶をする。
「ハハハハハ
冗談はやめて下さい。
アゼット大将が、ユウスケさんの
お土産のおかげで、
仲間内から納豆大将と陰で呼ばれていますよ。」
ダイス教祖様は、色々と信者から情報を集めているらしい。
「そうですか。
それは良かった。
カッコ良い名前がついて。
それで、ご用件は何でしょうか?
ダイス教祖様」
俺は、丁重にダイス教祖様に聞いてみる。
俺の後ろでは巫女様達が身構えているが、
こんなところで、暴れられたら集落が大変だ。
いざとなったら、住民を避難させて、
最新のバリアシステムで重要拠点を守らなければ。
「そんなに警戒しないで下さい。
私は、話しをしに来たのですから。
私が自ら手を汚すことはありませんよ。
それに、
ユウスケさんには、ずっとこの星から
出ていけと念波を送っていたのに
鈍感な方なのですな。」
話し合い?
自ら手を汚す?
しかし、そうか、
「この星から俺に出ていけ」念波の
犯人はダイス教祖様だったのか。
「それは、すみません。
男性の話は右から左に流れてしまうものですから。
それと、
話し合いは、僕は好きです。
いつも、話し合いでこれまで色々と
解決してきましたから」
「ハハハハハ
そうですか。
いや、話し合いではなくて
私の一方的な
巫女様方たちへの命令ですが
よろしいですかな」
そういって、ダイス教祖様は笑いながら
巫女様達を見る。
「巫女様方。
いや、
ハニー、アン、ジュリアン
儂のことや、
遥か昔のことを忘れたのか?」
うん?
いきなり、ダイス教祖様が全く違う人物に
なったような。
3人の巫女様達を鋭い目つきで睨んでいる。
「遥か昔?
何のことをいっているんだ。
ハゲダイス」
いや、ハゲダイスは、ひどすぎるだろう。
ジュリアン。
「お前たちは、昔から未熟者だったからな。
生まれ変わりをするたびに記憶を失ってしまう。
儂の信者だったことも忘れたのだろう?」
えっ、えー?
ダイス教祖様の信者?
いや、そういえば、敵の大将や少将たちと
巫女様達の能力が一緒・・・・・・・・
「そんなわけあるはずがないですわ。
私たちは・・・・・・」
ハニーの言葉が止まった。
思い出せないのか?
何か思い出したのか?
「仕方ないから
ユウスケさんの前で昔話をしてやろう。
この話を聞いて思い出すかもしれないからな。」
「そんな話、聞きたくないだす」
アンが滅茶苦茶、嫌がっているようである。
「黙って、聞きなさい。
ハニー、アン、ジュリアン」
ダイス教祖の静かな命令に3人の巫女様達は
大人しくなった。
「遥か昔、私が神ダイス様から力を頂いたとき
儂は、この星の人間達のことを頼まれた。
しかし、いつも儂の望みどおりにいかない。。
その度に、儂の信者達は人類を破滅に導き、リセットしてきた。」
「人類を破滅・・・・・・」
ジュリアンが呟いて考えているようだ。
ダイス教祖様が言っていることは本当か?
嘘で洗脳をしている可能性は?
「今回は、精神エネルギーの強者が多く育った。
やっと儂らの理想の社会を作れるのじゃ。
言っている意味がわかるな。」
このオッサンは何を言っているんだ?
まったく、意味が解らん。
まるで、この星が自分のもののように・・・・・・
「前回の人類破滅の時は、お前たちも
理想郷の為に、良く働いてくれた。
愚弄な奴らを殺しまくり・・・・・・・・・・」
俺は、ダイス教祖様の口を自分の手で塞いだ。
男の口元など触りたくないが仕方がない。
「すみません。
ちょっと聞きたくない話になりそうだったので。」
俺は、ダイス教祖様の話を止めたつもりだったのだが。
「貴様に私の話を止める権利など無い。
こいつらは、儂の忠実な信者だったのだ
当時、それほどの力はなかった。
名前さえも思い出せないほどに。」
俺のことなど相手にしないかのように、
簡単に俺の手を振り払うと、
ダイス教祖様は話を続けて、3人の巫女様達を見つめる。
それほどの実力が無かった?
本当か?
今では、合体巫女が出来るんだぞ。
最強だぞ。
「それが、
今や、儂の想像を超える力を手に入れた。
この星の愚かな者たちも、
アクアット星やカヌーン星の奴等も皆殺しに出来るほどに。
それも、儂の役に立つため、
儂らの理想郷のためじゃろ。
ハニー、アン、ジュリアン」
何をこのオッサンは言っているんだ。
巫女様達にぶっ飛ばされるぞ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ハニー、アン、ジュリアンが頭を抱えて
座り込んでいる。
「おい、大丈夫か?
お前たち、何か攻撃でも受けているのか?」
俺は、心配になって3人の巫女様達に問いかける。
しばらくすると
3人の巫女様達が顔を両手で覆って泣きはじめた。
こいつらの泣いている姿を初めて見た。
「ダイス、てめえ―。
こいつらを泣かしてるんじゃねえぞ。」
俺は、怒りにまかせてダイスを睨みつけた。
「やめて下さい。
ユウスケ。
良いのです。
思い出したのです」
「そうだす。
ユウスケ
絶対にダイス様に逆らってはいけない」
「そうだね。
ユウスケは関係ないよ。
それで、ダイス様
私たちは何をすれば良いの?」
「ハハハハハ
そうか、思い出したか。
まあ、昔話でもゆっくりしよう。
それでは、
ユウスケさん、ここで失礼いたします」
ダイスが、
テレポーテーションをして、あっというまに
みんな、いなくなってしまった。
さっきまで、賑やかだったこの部屋が
一瞬で静まり返ってしまった。
エレナだけは残っている。
今回、エレナは珍しく存在感が全くなかった。
エレナは珍しく考え事をしているようだ。
「なあ、エレナ知っていることを俺に教えてくれないか?」
俺は、静かな声でエレナに聞いてみた。
「うーん、うーん、ううーん、うううううーん
思い出せない。」
エレナは、どうやら思い出せないようである。
「ねえ、ユウスケ、何で、私だけ仲間外れなの?」
知るか。
まったく、こいつは・・・・・・・・・・
しかし。
「チクショウ。
あいつら・・・・・・・・・・
俺を舐めやがって・・・・・・・・・」
「ユウスケ、怒っても何も解決しないよ」
「怒っているんじゃない。悔しいんだ」
そう、あいつらのことは、俺は良く知っている
馬鹿で、阿保で、自分勝手で・・・・
そして優しくて。
あいつらは、俺を守ったのだ。
きっと、ダイス野郎の強さを思い出したのであろう。
俺では勝てないと。
俺では死んでしまうと。
だから、自分達がダイス野郎のもとへ・・・
チクショウ
あいつらは、俺の実力を知っている。
知っているからこそ・・・
自分達を犠牲にして・・・
舐めるんじゃねえぞ。
チクショウ、チクショウ、チクショウ。
「ユウスケは、
勇者ユウスケ様でしょ。
しっかりしなさいよ。」
エレナが優しく俺に微笑んでくれた。
何が勇者だ。
散々、勇者を馬鹿にしてきたくせに。
勇者の名のもとに飯を作らせてきたくせに・・・・
・・・・・・・・・・・・・
フフフ
エレナの顔を見ていたら馬鹿らしくなってしまった。
歯に青のりがついた顔で、優しく微笑んでくれても
感動しないぞ。
悔しがるのが馬鹿らしくなってきた。
俺は何を悔しがっていたんだろう?
悔しがっていても、何も変わらない。
ハハハハハ
そうだった、俺はあいつらの、勇者ユウスケ様だったな。
ゲームの世界なら最後にドラゴンをやっつけて
ゲームエンド、ハッピーエンドにすれば良いだけだ。
レバルが低ければ、上げれば良いだけ。
「ハハハハハ
ありがとう、エレナ
チョチョイのチョイで救ってやるって」
俺はまだ本気を出していない。
まだまだ余裕だ。
心からそう信じて・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いやはや、
俺も、ここまでくると人間離れしすぎだな。
過酷な修行を求めてきたが究極だ。
放射線や隕石がが半端ない宇宙空間で
あえて、バリアなしで座禅を組んでいる。
一瞬でも気を緩めればお陀仏だ。
神様が相手なら勝てないだろうが
相手が神様から力を貰った人間だったら
勝負はわからねえ。
俺は神様から力はもらっていないが、今では全てのものが
俺に味方をしてくれている気がする。
正義とか悪とかじゃない。
ただ単に、俺は巫女達を救いたいだけだ。
短い時間で、ある程度、理想どおりの能力を手に入れたが
ダイスに負けては意味がない。
完璧に使いこなせるようになるまでは駄目だ。
焦る気持ちを落ち着かせて・・・・・・・・・・・・
どのくらい、宇宙空間に彷徨っていたのだろうか?
本当に、宇宙空間にいると、このまま溶けても良い気が
していしまうから不思議だ。
神というものが存在するかなんて、わからない。
ただ、宇宙という大きな存在は間違いなくあるのだ。
理不尽なほどのエネルギー空間が。
そろそろ空気がなくなってきた。
ここらが修行の限界だ。
最後に巨大な隕石がやってきた。
氷に包まれている隕石だ。
こんな、月ぐらいの大きさの隕石もあるのか?
しかし・・・・・・・・・・・
俺が本気をだせば、こんなもんかな。
さて、これからダイス君とは話し合わなければ。
俺はダイス君より相当な年下だが、
言うべきことは言った方が良い。
そこに対話が始まるのだ。
ラクーンの星では、どれくらい時間は経っているのであろうか?
エレナは、ひとりで大丈夫だっただろうか?
寂しがり屋だから心配である。
俺が帰れば、喜ぶであろう。
そう思って、俺はエレナの元へテレポ―テーションした。
「ユウスケ。
やっぱり変態なの?
ねえ、どうして変態なの?
何でいつもこのタイミングなの?
もしかして、狙っているの?
早く出て行って、
お願いだから、すぐに消えて。」
エレナは、またまた、トイレの最中だったらしい。
何で、俺はタイミングが悪いのであろうか?
「何も見ていません。
外で待っていますから。
本当に、何も見ていないから・・・」
俺はそう言って、慌ててトイレの外にテレポーテーションした。
「見ていないよね?
匂いも嗅いでいないよね?」
エレナが顔を赤くして怒った顔で俺に追及してくる。
俺は、うんうんと頷くことしかできない。
少し、良い匂いがしたが言えるわけがない。
急いではいるのだが、
腹が減っては戦が出来ぬ。
ということで、夕食だ。
「昨日の夜は、エレナ様が一人で寂しそうだったから
私と、サヤカが部屋に泊ったよ。
まあ、ユウスケお兄ちゃんとエレナ様だけだったとしても
泊まったけどね。
エレナ様が危険すぎるもん。」
ERENAZが教えてくれた。
そっか、こっちでは、昨日今日と2日経過していたのか。
「ミャーオ」
ミャオが、私も泊まったよと言っているようである。
「そっか、色々心配かけて、悪かったな。
ERENAZ、サヤカ。」
俺は、ERENAZとサヤカにお礼を言った。
こいつらも、色々心配してくれているようである。
「エレナ様から聞いたけど、
本当に、
巫女様達が、お父さんに連れ去られたの?」
ERENAZが俺に聞いてくる。
「うん、大昔、ダイスさんの信者だったんだって」
デビルオオカミのステーキを食らいつきながら、
俺は、素直に答えた。
「巫女お姉ちゃんたち、帰ってこないの?」
「ミャーオ」
サヤカも心配そうだ。
ミャオは、今日は何故か俺の頭の上に乗っている。
俺の頭をポンポンと叩いて、まるで頑張れよと言われているようだ。
本当に不思議な子猫だこと。
今ならわかる。
この子猫は何かしらの能力をもっている。
「大丈夫だよ。
巫女お姉ちゃんたちは、この集落が大好きだから
きっと戻ってくるよ。」
俺は、サヤカに言いながら、自分にも言い聞かした。
そう、あいつらは、ダイスのところよりも、こっちの方が
絶対に良いに決まっている。
「サヤカ
ユウスケがみんな連れ戻してくれるって。
また、すごく変態になったから大丈夫。」
エレナがサヤカに余計なことを言った。
心配かけたくないから、黙っていたのに。
「そっか。
だったら大丈夫だね。
もし、お兄ちゃんが
連れ帰ってきてくれたら
ホッペにチュウしてあげる」
俺の「初ホッペにチュウ」をサヤカが・・・・・・・・・
滅茶苦茶、やる気が出てきた。
何か、ミャオの頭ポンポンが
頭バンバンに変わった気がするが気にしない。
「ユウスケお兄ちゃん
それは流石に危険じゃない。
あの巫女様達が従うほどだよ。
それに、これまでの精鋭軍人達に
能力を与えていたんでしょ。
強さの想像が出来ないよ。」
ERENAZも珍しく俺を心配してくれる。
確かに、強さの想像は出来ない。
「そうだな。
ダイスさんは俺よりも強いかもしれない。」
「だったら、無理しなくても・・・・」
「でも、俺の方が強いかもしれない。
それに、話し合いで何とかなるかもしれないし」
「絶対に、お父さんには勝てないよ。
行かないでよ、ユウスケお兄ちゃん」
ERENAZが目を赤くして俺に言ってくる。
でも・・・・・・・・
「ERENAZ、ありがとう。
でも、後悔はしたくないんだ。
ありきたりの言葉だけど。
それだけなんだ。
それよりも、集落のことは頼んだよ。
暫くは警戒態勢を張っていてくれ」
俺は、真剣な顔でERENAZに言った。
「あーん、もう。
仕方ないわね。
わかったわよ。
絶対に帰ってきてよね。
無事に帰ってきたら、小便臭くないパンティくらい
あげるから。」
ERENAZも俺への説得を諦めたようだ。
「約束だぞ、脱ぎたてパンティだからな。」
俺は、剥きになってERENAZと約束した。
ミャオが俺の頭を激しく叩いているが気にしない。
「じゃあ、ユウスケ行きますか?」
エレナは、自分がデビルオオカミのステーキを
食べ終えると、すぐにでも行きたそうだ。
こいつも焦っているのであろう。
俺も3枚食べ終えた。
「よしっ
行きますか。
あっ、
ミャオ、みんなを守ってくれよ」
俺は頭の上のミャオを両手で持って降ろすと
ミャオにお願いして、サヤカに渡す。
「ミャオ」
了解してくれたようだ。
「本当に、お前も一緒に行くのか?」
「あら?イクときは一緒でしょ?」
エレナは、どこでそんなくだらない言葉を覚えたのか?
あっ。俺の記憶からか。
まあ、
いざという時は、こいつだけでもテレポーテーションで、
何とかなるだろう。
こいつらだけ守れれば、他は別に構わない。
自分だけが良ければ良いと思っていた俺のくせに、
いつのまにか、随分、変わったものだ。
「じゃあ、行くぞ。テレポーテーション」
俺は、ハニーのイメージをしてテレポーテーションした。
どうやら、ここは、ダイス教会のようである。
前にガルバが教えてくれた教会だ。
大きい鏡がある。
間に合ったようだ。
まだ巫女様達は、何もやらかしていないようだ。
大きな鏡の前で、3人は跪いている。
「な、なんで、ユウスケ?・・・・・
あんたが、こんなところにいるのですか?」
ハニーが、いきなり現れた俺をみて驚いている。
「お前たちに会いたかったからに
決まっているだろ。」
俺は何でもないように、言ってやった。
あきらかに、階段の下には凄い人数の軍人が集まっている。
見たことのある元ダイス国軍や元カーリア国軍の
大将や少将たちが整列しているから精鋭部隊であろう。
ハバナ統帥が一番前で偉そうに立っていた。
これから、どこかに攻めにでも行くところだったのだろうか。
だったら、間に合ったようだ。
「ユウスケさん、やはり来ましたか。
ダイス様の予想通りでしたね。
しかし、3人の入信の儀式を邪魔しないで下さい。
やっと、説得したのですから。」
階段の下から、
ハバナ統帥が俺に文句を言っているようだ。
ここが、50段くらいの階段だから、あまり聞こえないのだが。
そうか、この大きな鏡の前で3人の入信の儀式を。
「いや、すみません。
3人を連れ戻しにきただけです。
すぐに済むので、3人と少し話をさせて下さい。」
俺は、丁重にハバナ統帥にお願いをした。
軍人達は俺とエレナを今にでも攻撃してきそうだが
ハバナ統帥が、左手を水平にあげて、止めてくれている。
ハバナ統帥は、3人の巫女様達が、
ダイスを裏切るはずが無いと信じているのであろう。
俺達とここで戦闘するよりも、とっとと諦めて
俺達に帰ってもらった方が良いという冷静な判断かもしれない。
「駄目だすよ。
ユウスケ
力ずくでも、あなたを関わらせるわけには
いかないだす。」
「そうだよ。
ユウスケ
お前は、早く自分の星に帰れ
お前には、関係ないんだよ」
ひどい仕打ちだ。
そんなに俺をイジメなくても良いだろうに。
まあ、仕方ない。
「何で、私はシカトなのよ?
感動の再会でしょ。
何で?
何でなのよ?」
無理やりついてきたエレナがうるさい。
「自惚れるなよ。
お前たちとは一度、白黒つけたかったんだよ。
俺を、帰したかったら、力づくでやってみな。
このブス巫女ども」
俺は3人の巫女様達を挑発してやった。
「そんな、私達を挑発しようとしても無理ですよ。
しかし、そうですね。
フフフッ
最後に、本気のあなたと白黒つけてあげましょう。
ハバナ全統帥、ここは私達にお任せください。」
「そうだす。
私たちの力を知って、とっとと星に帰させるだす」
「死なない程度に、手加減はしてあげるよ。
自分の力を知ったら、とっとと帰りなよ」
3人の巫女達は悲しそうであり嬉しそうだ。
しかし、
この3人の巫女様達の優しい言葉なんて俺には関係ない。
ハバナ統帥が全統帥ということは、一番偉くなったのか。
ハバナ全統帥が部下たちを押さえつけてくれているようだ。
ハバナ全統帥をはじめ、他の軍人達も手出しはしない。
良い判断だ。
手を出して来たら、一瞬で全滅させてやる。
「男にモテない
ブスの戯言に付き合ってられねえから
とっとと、やれるもんなら、やってみろ。
馬鹿で、アホで、自分勝手な巫女様達よ―。」
俺は叫んで更に挑発してやった・
3人の巫女様達もさすがに怒ったようだ。
ある程度、本気でいつものように俺に能力を発動してきた
シーン
何も起こらなかった。
起こるはずがない。
俺が全ての能力を封じてやったのだから・
「ユウスケ
お前、何をしたんだ?」
ハニーが呆気にとられている。
どうやら現状が理解できていないようだ。
アンとジュリアンも一緒だ。
「お前ら、俺を舐めるなよ。
ダイスのハゲに俺が負けるわけないだろ。
俺を誰だと思っているんだ。
エレナが探し回って連れてきた
勇者ユウスケ様だぞ。」
俺は、偉そうに巫女様達に言ってやった。
しばらく、巫女様達は呆気にとられていたが・・・
巫女様達は膝が崩れたように座り込み泣き崩れている。
よっぽど、辛かったのであろう。
自分体がやりたくないことを、やろうとしていたのだ。
自分勝手なこいつらが耐えられるわけがない。
「だけど、ユウスケ
ダイス様は本当に強いんだ。
私達が理解できないくらいに、
お前は、別に関わる必要なんて・・・・・・
何で、何で・・・・・・
ふざけるなっ。」
ハニーが俺に怒っているようだが、俺には関係ない。
「そうだす。
お前が強くなったのはわかるだすが
お前が関わる必要はないだす。
平和にお前だけでも暮らせば良いじゃないだすか」
アン、そうだね。そのとおりだけど、俺には関係ない。
「馬鹿野郎、馬鹿野郎。
もういいよ。
もういいよ。
帰れよ。帰ってくれよ。馬鹿野郎」
ジュリアン、そう、俺は馬鹿なのです。
「ということで、ここの全員を倒して
ダイスの野郎に説教してきます。
お前たちは、集落でラーメーンでも食べて待っていろ。
それに、お前たちがいないと
ガルバのやりたい放題になっちまうぞ。」
俺は3人の巫女様達に最高の笑顔で言ってやった。
「まったく、まったくですね。
あなたは、どれだけ私達に愛されたいのですか?
馬鹿で、スケベで、直ぐ騙されるくせに・・・
仕方ありません。
私たちも、一緒に戦いますよ。
イクときは、一緒ですよ。
勇者ユウスケ様。」
アンもジュリアンもハニーの意見に同意してくれているようだ。
いつのまにか、泣きっ面の巫女様達は笑みがこぼれていた。
このまま集落に帰ってくれても良かったのに、仕方ない。
どうせ、こいつらは俺の言うことなど聞かないのだ。
よしっ。
力が湧いてきた。
「では、行きますか、勇者ユウスケ様、ププッ、プッ」
エレナが馬鹿にしたように笑って言うと、3人の巫女達の
もとに走っていった。
美人戦隊巫女レンジャ―がそろったようだ。
「ダイス様を愚弄するとは、死んでも償いきれませんよ。
しかし、私達も随分と舐められたものですね。
アン、ジュリアン、ハニー大将も逆らうというのですね。
仕方ありません。
ダイス様には後で私が謝りましょう。」
巫女様達は大将クラスまで認められていたのか。
ということは、ハバナ全統帥の方が力は上か。
「第一大隊は、予定どおり行動しろ。
ここに、ユウスケや巫女達がいるのだ。
問題ない。
残った者たちは、こ奴等を始末しろ」
ハバナ全統帥の言葉とともに、
アゼット大将こと納豆大将の一軍200名程度が
テレポーテーションで消えた。
「ユウスケ。
もしかして。」
ハニーが心配そうな顔をして叫ぶが、
ここは、集落の奴等を信用するしかない。
テレポーテーションを封じていれば良かった。
カッコつけてて失敗したのだ。
今更、後悔しても仕方ない。
「大丈夫だ。
集落の奴等を信じろ。」
俺には、それしか言えない。
恐らく、消えた200人のうち、
何名かはエデン集落へ向かった可能性は高い。
巫女達にエデン集落へ向かってもらうことを考えたが
今は、俺と一緒にいた方が、こいつらは安全だ。
それに、ここに残った軍人達を足止めしたい。
あちらこちらに、移動されたら面倒だ。
ダイスの言葉を借りるなら、愚弄な奴等を殺しに
世界中、いや、アルゼット星やカヌーン星まで
散らばる予定なのであろう。
今更ながら、俺は下にいる軍人達のテレポーテーションを
封じている。
これだけの軍人達を相手だと、
結構な能力とエネルギーを使っている。
階段の下にいる残った軍人達が一斉に攻撃が襲ってくる。
600名くらいいる。
いつもと違って、今回は、戦場がダイス協会だ。
思い切り暴れられるのだが、テレポーテーション封じで
俺の能力が制限されている状態だ。
「巫女レンジャー、合体して攻撃しろ」
「敵の攻撃は全て俺が防御する」
俺はそう言うと、防御空間を作る。
これを破られない限り、攻撃は一切、無意味だ。
「赤い情熱であなたを下僕 アン・レッド」
「青い純情であなたを下僕 ジュリアン・ブルー」
「透きとおった体であなたを下僕 ハニー・ホワイト」
「食いしん坊であなたを下僕 エレナ・イエロー」
『4人揃って、
美人戦隊 巫女レンジャー』
ドカーン
こんな時に、これやらないと始まらないのか?
俺が、防御していなかったら、もうやられて終わっていたぞ。
「何故、効かぬ?」
相手は混乱しているようだ。
そんな中、流石にキメラ統帥とハバナ全統帥は冷静に
俺の能力を分析しているようである。
「フフフ
凄いですね。
しかし、タネがわかれば何てことはなさそうですね」
「そうですね。他の者たちでは無理でしょうが。」
ハバナ全統帥とキメラ統帥は、
俺の防御空間の仕組みをわかったようだ。
流石である。
バリア解除の要領で、2人は、少しずつ防御空間が崩壊していく。
間に合うのだろうか?
『合体巫女 必殺 巫女が怒っちゃったよ』
だから、何なんだ、そのネーミングセンスは?
しかし、そのネーミングとは異なって教会の中が
恐ろしい状態になっている。
グォー
ギャー
叫び声が、あちらこちらから聞こえてくる。
雷鳴、竜巻、巨大な氷、爆発・・・・・・・・・
人がゴミのように、吹き飛んだり、叩きつけられたり
地獄絵図のようだ。
しかし、ハバナ全統帥とキメラ統帥は、
強力な自己防衛で全く動じていない。
全ての攻撃を自分の周りだけ消している。
この2人だけは、規格外の強さなのだろう。
俺の防御空間を着々と崩壊させながら
自己防衛しているのだから。
『必殺 巫女が怒っちゃったよ』の攻撃は止んだ。
俺の防御空間も崩壊したのだが。
「随分と予想外ですが
仕方ありません。
これから、本気であなた方を殺します」
ハバナ全統帥は、俺の防御空間を破ったからか
自信満々のようである。
なので、
俺は、もう一度、防御空間を張ってやった。
ハバナ全統帥とキメラ統帥は、呆気に取られている。
せっかく、苦労して崩壊させたのに
先ほどよりも大きな防御空間が現われたのだ。
先ほどよりも、大きなものを。
どんどんと、広げていくと、倒れた軍人達が
教会の端の方に押し出されていく
ハバナ全統帥とキメラ統帥も例外ではない。
「ふざけるな。」
冷静なハバナ全統帥とキメラ統帥が押し出されながら騒いでいる。
すみません。多少ふざけています。
『合体巫女 必殺 ごちゃ混ぜ』
だから、ネーミングセンス。
こいつらの方が、俺より、ふざけている気がする。
今度は、ハバナ全統帥とキメラ統帥の周りの空気を
圧縮しているようである。
2人を凍らせるつもりであろうか?
と思ったら、床を爆発させて
と思ったら、雷が落ちてきて
と思ったら、近くで倒れた軍人達が2人に
高速で飛んできて・・・・・・・・
つまり、本当にごちゃ混ぜな攻撃だ。
単に今、思いついた必殺技なのであろう。
名前のとおり、大した必殺技ではなかった。
ハバナ全統帥もキメラ統帥も全然、平気である。
「所詮、貴様たちが我々の力になると言っていても
貴様たちの力はその程度だ。
ダイス様がここに来られればあっという間に・・・・・」
俺の防御空間で教会の端に追いやられている状態で、
キメラ統帥が何かを言おうとしていたが
確かに、ダイスがここに来たら面倒なので
キュイ――ン
ドカン
ドカン
俺は、圧倒的な念動力で2人を高い天井にぶっ刺した。
つもりだったが、この教会は非常に頑丈らしく
天井に強打しただけで、そのまま落下していった。
ドサッ
ドサッ
何か落ち方がヤバかったが、大丈夫・・・・
であろう。
死んではいないと思う。
「さて、あとはダイス教祖様だけだな。
お前たちは、エデン集落に行ってくれ。
大丈夫だとは思うけど、心配なんだ。」
俺がそう言うと、巫女様達4人が俺の元にかけてきた。
「ユウスケ
調子にのらないで下さいね。
ダイス様は、本当に実力が計り知れないのです。
貴方だけで何とかなると思っているの?」
ハニーが注意してくれた。
確かに、調子にのってしまうところであった。
しかし、俺より集落の心配をして欲しい。
「そうだす。
きっと、この状況も把握しているだす。
油断したら、あっというまだす。」
アンが忠告してくれる
なるほど、確かにその可能性はあるのか
「みんな
気を付けてね。
神に喧嘩を売るようなものだからね。」
ジュリアンが真剣な顔で皆に言う。
「そんな相手に勝てたら
私達が神様ね」
エレナは、一体、何になりたいんだ?
世界征服だの神様だの・・・・・
「因みにあの大きな鏡は何なんだ?」
俺は、気になったので聞いてみた。
「常に自分の姿を見つめなさいという教えらしいよ」
ジュリアンが教えてくれた。
なるほど、自分の姿をね・・・・・
ダイスのほうこそ、毎日、鏡を見た方が良いのでは
ないだろうか?
まあ、俺が言えたセリフではないが
3人の巫女様達は、鏡を見ながらポーズを決めている。
自分達の姿にうっとりしているようだ。
油断したら駄目なんじゃなかったのか?
さきほどまでの緊張感はどこにいったんだ。
どこかで、監視されているかもしれないのに。
しかし、ダイスは本当にヤバい奴かもしれない。
さっきから、ダイスの顔をイメージして
俺だけテレポーテーションしようとしているのだが
まったく、テレポーテーションが出来ない。
どういうことなんだ?
「とりあえず、お前たちは、
エデン集落に行ってくれ。
俺は、大丈夫・・・・・・・・・・
だと思う。」
確かに俺だけでは心細いが、
もしかしたら、こいつらが邪魔になるかもしれない。
「ねえ、ダイスのところに行かないの?
パッとやっつけて、パッと帰ろうよ。」
エレナが俺の裾を掴みながらおねだりをしている。
そんな簡単にいくか。
しかし、どうしたらダイスの元へ・・・・・・
俺が悩んでいると
どうやら
ダイス教祖様の方から俺を招待してくれたようだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
エデン集落の火の見櫓から鐘が鳴りまくった。
緊急事態の住民避難命令だ。
「随分と、大軍だな。
周辺のバリアと
需要拠点の防衛バリアシステムは発動した。」
監視部隊リーダーのパイソンはガルバに告げた。
「そうっすね。
ただ、男どもが非難しないっす。
草原の方に集結していくっす。
どうやら、戦う気らしいっすね。」
ガルバが、火の見櫓から集落の状況を見てパイソンに報告する。
「そうだな。
今回は、巫女様達もユウスケもいない。
みんな、わかっているんだろう。
俺達も行くぞ。」
パイソンが真剣な顔をして言うと、ガルバもコクリと頷き
2人ともテレポーテーションで、その場から消えた。
敵は、ダイス国軍であった。
総勢、2000人といったところだ。
大げさに、戦車も10両ほど進軍してきている。
「ダイス国の皆さん
今日は、どのような御用でございますか?」
サイフォン長老だ。
長老達3人もテレポーテーションでバリアの外に
移動してきた。
長老たちの後ろには、エデン集落の男達50名程度が
集まっている。
皆、テレポーテーション能力者だ。
「私は、ダイス国統帥ラーガンです。
いや、エデン集落でダイス国への攻撃が予定されている
という確かな情報が入りましてな。
トロイ大統領の命令です。
条約違反ということで、侵攻させていただきますよ。」
ラーガン統帥は、そう言うと先頭を歩き始めた。
当然、エデン集落がダイス国を攻撃する予定などない。
しかし、強国が言うことは嘘でも本当になってしまうのである。
長老たちは、それを理解していた。
「仕方ないですじゃ。
無理やり帰ってもらうしかないようですじゃのう」
ジャガラ長老が、珍しく言葉を吐く。
その言葉で、エデン集落の男どもは戦闘態勢に入った。
エデン集落50人 VS ダイス国軍2000人
ダイス国軍の全員が能力者なら圧倒的な戦力差だ。
しかし、精鋭軍人は全てダイス教防衛軍に移籍してしまった。
残っているのは、念動力など多少、能力が使える者だけだ。
ダイス教祖が、嘘の情報を流し、トロイ大統領に銘じて、
エデン集落を襲わせているのだが・・・・
単にダイス教祖がエデン集落の住民の実力を知るためだけに
遠征させた軍である。
生き残りの住民がいれば、自分の信者にする予定だ。
ダイス教祖は、この星で、優秀な能力者を集めている。
自分の理想郷を作るために。
ユウスケとエレナは対象外である。
ダイス教祖は、絶対にこの2人は自分の言うことを
聞かないと直感で理解している。
他の連中は、自分が気に入れば、自分を崇拝してくるのに、
こいつらは、全く、その気配がないのだ。
それに、ユウスケや巫女達は、自分の信者たちを強くするのに
これまで随分と役立った。
殺さずに生きて返してくれるのだから。
ダイス教の信者軍人たちを強くした立役者ともいえる。
ユウスケと巫女達が全員、殺していればこのような事態も
なかったのだ。
ダイス国軍の戦車からはバリア崩壊砲が撃ち込まれた。
ダイス国軍は最先端の技術をもっているのである。
バリアはどんどん崩壊していく。
ダイス国軍は、レーザー銃を集落の住民に放ちながら
ゆっくりと進軍してくる。




