第18話 絶体絶命
「カーリア国は、しばらく侵略はしてこないと思いますよ。」
俺は長老達3人に話した。
「巫女様達にこっぴどくやられて、
カーリア国が弱体している今、
ダイス軍がカーリア国に攻め込むとかはないのですか?
そうすると、ダイス国とカーリア国の間にあるこの集落も
危険になりませんかね?」
ガイル長老が俺に聞いてくる。
「恐らくないと思いますよ。
カーリア国をダイス国が侵略したら、敵がいなくなりますから。
まあ、ダイス国が別の理由で集落に侵略してくることは、
あるかもしれませんが。」
俺は自分の予想を話した。
ただ、ダイス国もしばらくは攻めてこないと予想している。
しばらくは・・・・・だが。
「いや、敵がいなくなれば安心ということは・・・・・
なおさら、ダイス国がカーリア国に攻め込む可能性があるのでは?」
ガイル長老がごもっともなことを聞いてくる。
「安心な社会を作ったら、武器が売れなくなるじゃないですか。
それに、外に敵がいるから、自分達が正義だと言えるんです。
敵がいなかったら、内部の悪者が見つかっちゃうじゃないですか。」
俺は長老たちに難しい話をする。
まあ、クオンさんから教えてもらった話をしているだけだが。
「わけのわからない話ですじゃ。
しかし、
またしても、巫女様達のおかげということですか。
いつまでも巫女様達に頼っていては
駄目な気がするのですじゃ。」
サイフォン長老が困った顔をして話す。
確かに、今回、住民達は防衛に関わっていない。
監視部隊が、ホフク前進専用通路で待機していたが、
集落の住宅街への侵攻がなかったため、出番が無かった。
「でも、普段は監視部隊が活躍していますよ。
予備部隊も、協力していますし。
最近は集落内に怪しい人たちが入ってこなくなりましたし。」
そうなのだ。
巫女様達の力で集落が守られているわけではない。
結構、監視部隊が命がけで守ってもいるのだ。
「それで、監視部隊は巫女様達の修行に耐えて
強くなっているのですか?」
ガイル長老が俺に聞く。
「そりゃあ、強くなってますよ。
最近では、テレポーテーションを覚えたいという
希望者も増えていまして。」
俺は、正直に答えた。
俺が教えているのだが、
ガルバなどは、もう、テレポーテーションを覚えてしまった。
他の連中もやる気満々である。
目的があれば、強くなれるのである。
というか、もともと、この集落の住民は精神力というか
精神エネルギーが大きい。
俺なんかより、才能がある奴らが多いのである。
「ほう、テレポーテーションまで。
ふむふむ。
デヘヘ
それは、役に立ちそうですな。」
ジャガラ長老もニヤついた顔で頷いている。
テレポーテーションを何に使えるのか理解したのであろう。
監視部隊の合言葉は「バレなければ良い」である。
まあ、簡単にバレてしまうのだが。
この間も、ガルバが下着ドロボーで女性たちに袋たたきにあっていた。
「ということで。
儂ら長老も、修行をしたいと思っていますのじゃ。
若い連中よりも精神力は強いと思っているのですじゃよ。」
なんて恐ろしいことを、巫女様達の修行などしたら
ご老体など、あっという間に、天国いきである。
「それは、さすがに」
俺は3人の長老を止めようとしている。
「大丈夫ですじゃ。
巫女様達が来てから、
あっちも、元気になってきておりますのじゃ。」
何で?
そんなに元気になってくれちゃっているの?
確かに、女性達からスケ長とか呼ばれているけど。
「まあ、仕方ありませんね。
そこまでいうなら、巫女様達に相談してみますよ。」
俺は、ため息を吐きながら3人の長老たちに告げた。
俺が、集落の中心にある広場に向かうと、
監視部隊の予備隊が訓練をしていた。
今日は、週に2日の訓練日なのだ。
パイソンさんが武道の指導をしている。
すると、予備隊の集団の中から、
サヤカが俺の元にかけてくる。
その後ろにはERENAZもいる。
どうやら、一緒に予備隊の訓練に参加していたのだろう。
サヤカは、ERENAZの真似事でもしていたのだろうか。
サヤカは前の集落で
子供達のリーダーだったので、毎日、気を張っていたのだろうが、
ここでは、その必要はない。
これまで、誰にも甘えることが出来なかったからか、
今では、ERENAZにいつも、くっついて甘えている。
「お兄ちゃん、私、頑張っているの。」
サヤカが最高の笑顔で俺に話しかけてくる。
何を頑張っているのか知らないが、可愛い。
「何を頑張っていたんだい?」
俺はサヤカに聞いてあげた。
どうせ、武道の真似事などをしていたのであろう。
「本当に、頑張っていますよ。
サヤカは。
私より、強くなったかもしれません」
「エヘン」
ERENAZがサヤカを褒めると、サヤカは偉そうだ。
ERENAZは子供の扱いが上手なようだ。
因みに、ERENAZも予備隊に入っている。
そのおかげで、男どもの入隊希望も多くなったのだが、
ERENAZは、何故か滅茶苦茶強くなっている。
予備隊どころか、監視部隊の奴等と比べても
ガルバの次くらいには強くなっている。
「そうか、お姉ちゃんよりも強くなったのか。
凄いな。
サヤカは。」
俺は、サヤカの頭を撫でながら褒めてあげた。
「お兄ちゃん。
見てて。」
サヤカがそういうと、俺の前から消えた。
えっ?
嘘?
そして、消えたと思った瞬間、俺の背後から
後頭部に強烈な回し蹴りが・・・・・
俺は、吹き飛んだ。
しばらく、事情が呑み込めなくて顔を地面に埋めたまま動けない。
サヤカがテレポーテーションで俺の背後に移動して蹴り?
「お兄ちゃん、大丈夫?
ガルバさんが、お兄ちゃんなら思い切りやっても
全然、大丈夫だからっていったから。」
大丈夫ではありません。
俺の知らないところで、この集落には
何が起きているんだろう?
俺は、何事も無かったように立ち上がり、
顔面の土を払って、
「ハハハ
全然、大丈夫だよ。
本当に強くなったな。
まあ、お兄ちゃんには、まだまだ追いつけないけどな」
子供相手に負け惜しみをしてしまう俺が情けないが
サヤカにはお兄ちゃんの威厳を保たないといけない。
足が少しプルプルしてしまっているが。
「ねっ。
強くなったでしょ。」
ERENAZが、どうだという感じで俺に言うが
強くなったレベルが想像とまったく違う。
「でも、サヤカ、
強くなっても、絶対に人を傷つけては駄目だよ。
あくまで、自分を守るときだけに使うんだ」
俺はサヤカにお兄ちゃんらしく教えてあげる。
強くなって、周りの子供達を、いや大人も蹴りまくったら大変だ。
「うん。
わかった。
約束する。
お兄ちゃん以外には、やらないよ。」
そうそう。
俺以外にはやってはいけない。
???
まあ、俺が、サヤカの練習相手になってやろう。
可愛い、妹のためだ。
「それで、ERENAZ。
巫女様達が何処に行ったか知らない?」
俺は、長老達に頼まれたので巫女様達を探しているのだ。
「あ~。
ガルバたちが、また、何かやらかしたようで」
ERENAZが呆れた顔で答えてくれた。
本当に懲りない奴等だ。
俺もだけど。
「いや、でも部屋にはいなかったぞ。
どこで、拷問を受けているんだろう?」
俺が、呟くと、ERENAZが空を指さした。
巫女様達4人がバスタオル姿で浮かんでいる。
どうやら、ガルバとロイドは一線を越えてしまったようだ。
俺だって、さすがに巫女様達の風呂場は覗かない。
絶対にバレるのだから。
「お兄ちゃん。
ガルバさん達、すごい修行しているね。
あんな高速でぶつかりあったり、雷にうたれたり、
グルグル回ったり。」
あの光景は、サヤカの教育上よろしくない。
修行ではなくて、拷問なのだから。
今日こそは、死んだんじゃないか?
「あれはね、修行じゃなくて
巫女様達がバチを与えているの。」
ERENAZ、余計なことを言うんじゃない。
こいつは、可愛いからって最近、調子にのっている。
巫女様達と一緒になって、俺をからかうのである。
もう、巫女様達と同類にしか俺は見ていない。
昔の可愛かったERENAZは、もういないのだ。
どうせ、この流れの展開は。
「ふーん。
あっ。わかった。
修行じゃなくて、
スケベなことして、
巫女様達にやられているだけなんだ。
あっ、ガルバさん達が落っこちた。」
サヤカは理解が速い。
「お兄ちゃんなんか、もっと凄いバチをいっぱい
いつも与えられているけどね。
お兄ちゃんはスケベだけでなくて変態もすごいからね。
アハハハハ」
やっぱり、この流れだ。
ERENAZ、どうやら、一線を越えてしまったようだな。
何でも、可愛いからって許されると思うなよ。
サヤカの前で俺に恥をかかせるなんて。
「ハハハハハ
何を冗談ばかり言っているんだ
あまり、冗談ばかり言っているとバチがあたるぞ。
ERENAZ。」
俺は、ニヤリと笑みを浮かべながらERENAZを見つめ、
ポケットの中で、柔らかく暖かいパンティを握りしめた。
ERENAZ、貴様が悪いのだ。ムフッ
「はっ。
あれっ?
・・・・・・・
そうきましたか。
フフフフフ
ユウスケお兄様も、
とうとう、一線を越えてしまったようですね」
ERENAZも流石に怒っているようである。
顔を赤くしてマジだ。
しかし、俺は、兄として、こいつに教育しなければならない。
「いやいや。
その、おしゃべりな口が閉まってくれれば
大切なものも返ってくるかと。
でないと・・・・・・・・」
俺がERENAZに脅しをかけた瞬間。
あれっ?
俺のパンティが消えた。
俺のじゃないけど。
というか、下半身がスース―する。
「はいはい。
別に、プレゼントしても良かったのですが。
ちゃんと返ってきましたよ。
おまけ付きで。」
ま、まさか。
ERENAZもテレポーテーションを?
何故、俺のズボンまで持っているの?
「お兄ちゃん。
こんなところで恥ずかしいよ。
変態だから仕方ないの?」
サヤカに心配そうに言われてしまった。
この、アマ~。
優しくしていれば、舐め腐りやがって。
ユウスケお兄様が、とことん、お仕置きをしてやる。
「フフフ
この、最強のお兄様とやりあおうというのですね。
公衆の面前で、恥をさらしてやろうじゃないか。
ERENAZ。」
俺は、ニヤリと笑ってERENAZに喧嘩を売る。
俺は、パンツ一丁だが仕方ない。
お前なんか、スッポンポンにしてやる。
倍倍倍かえしだ。
「恥を晒すのは、どちらでしょうかね。
変態お兄さん。
・・・・・・・・・
巫女様方ア―――――」
ERENAZが巫女様達に大声で助けを求めた。
マズイ。
その手があったか。
空中をみるとガルバたちへの拷問が終わって
巫女様達がこちらに向かって降りてくる。
「良い子は、マネしちゃだめだよ。」
俺は、サヤカにそれだけ告げて
「テレポーテーション」
逃げようとしたが、
あれっ?
テレポーテーションが出来ない。
ま、まさか?
ERENAZが俺の顔をみてニヤリと笑った。
テレポーテーション封じまで?
本当に、この街では一体何が起きているんだ?
いやいや、
そんなことを考えている場合ではない。
合体巫女なんかで拷問されたら間違いなく死ぬ。
俺は、ERENAZのテレポーテーション封じを封じて
テレポーテーションして逃げた。
パンツ一丁で。
「お兄ちゃん。がんばれ。」
サヤカの応援が背後に聞こえた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺と、ガルバとロイドは広場で、逆さ吊りにされている。
顔も体もアザだらけ、焦げだらけである。
しかも、パンツ一丁で、
俺はパンティドロボー野郎、
ガルバとロイドは覗き野郎
の張り紙が大切なところに張られている。
いわゆる見せしめである。
男どもは、恐怖で俺達を見ることも出来ないようだ。
それに対して、女性たちは強い。
みんなで、遠くから楽しんで俺達に石を投げてくるのだ。
もう、バリアで防ぐ気力もない。
考えてみたら、巫女様達もテレポーテーション出来るのだ。
俺は、簡単に捕獲されてしまった。
しかも、
案の定、合体巫女で楽しそうに拷問してきやがった。
色々な必殺技を試されたのだ。
あんなの、キメラ統帥でも死ぬんじゃないか?
俺も生き延びるのに必死だったのだ。
多分、死んでも生き返ると思って、
思い切りやってきたのだろう。
それに対して、ガルバとロイドはニヤニヤしている。
どうも、巫女様達のバスタオル姿を拝めたのが
嬉しかったようで、全く反省していない。
「なあ、ガルバ。
巫女様達に復讐をしたいと思わないか?」
俺は、逆さ吊りになりながら、隣のガルバに聞いた。
「そりゃあ、したいっすよ。
でも、卑怯なんすよ。
俺が強くなっても、いつも、
巫女様達が何十倍も強くなっていて。」
ガルバはメチャクチャ腫れた顔で話してくれる。
ロイドもその隣で頷いている。
2人の顔を見ると可哀そうになってくるが
俺も、あんな顔をしているのであろう。
正直、俺もガルバもテレポーテーションでこの場から
いつでも逃げ出せるのだが、巫女様達のお許しが出ないと
また、捕まって拷問されるだけなので、この状態でいるのだ。
「そうだよな。
相当強くなったもんな。
お前たち監視隊は。」
俺は、珍しくしんみりと、ガルバを褒めた。
「そりゃあ、そうっすよ。
俺達だけじゃないですよ。
ロイドとか予備隊も、みんな強くなっているっす」
そうだった。
集落全体の男どもがみんな強くなっているのだ。
成長速度が異常だと思うのだが。
「そうだよな。
なんで、いきなりみんな強くなったんだ?」
俺は疑問をガルバに投げかけた。
「目的があるからじゃないっすか。
あとは、夢を求めてとか。
男のロマンをみんな求めているっす。
やっぱり、目的や夢を求めて生きることは大切っす。
俺は、自分の目的や夢を教えて指導しているっす。」
ガルバがカッコ良いこと言っているが
結局、ガルバの目的とみんなも一緒なのか。
まあ、俺達の今の姿を見たら、
実力を手に入れても実行に移す奴はいないだろう。
「そういえば、
何で、ERENAZやサヤカまで強くなっているんだ。
2人ともテレポーテーションが出来たぞ。」
俺は思い出したようにガルバに聞いた。
今、こうなったのもERENAZが原因なのだ。
「不思議っすよね、あの強さは。
あの2人には、武道くらいしか教えていないっすよ。
巫女様達が教えているんじゃないっすか。」
なるほど。
俺に隠れて、2人に修行させていたのか。
きっと、俺から襲われたときの為にとか言って
教えているのであろう。
最近、俺は被害妄想が激しいのだ。
「ユウスケさん、巫女様達の弱点とかないんですか?」
ロイドが俺に聞いてくる。
ロイドも巫女様達に復讐をしたいのであろう。
弱点か・・・・・・・
いざ、聞かれると、なかなか見つからねえな。
ドラキュラならニンニクや十字架なんだけど。
悪魔なら聖水か。
「そういえば、俺の匂いを嫌がっていたっす。
街で買った香水をつけていたっすけど、
気に喰わなかったのか、
俺、川にぶち込まれて、
高速でグルグルと洗濯されたっす。」
ガルバが思い出したように言う。
なるほど、香水か。
自然天然な野生な娘たちだ。
人工的な匂いが苦手ということも。
あり得ない話ではない。
フフフフフ
「ありがとう。
ガルバ。
試してみる価値はありそうだ。
フフフフフ」
俺達の懺悔タイムは夕食時には終わった。
最後に、「もう二度としません。すみません。」
を必ず言わされるが、約束なんて俺達が守るわけがない。
俺達が何のために頑張っていると思っているんだ。
「お兄ちゃん。これ拾っちゃった。」
サヤカである。
真っ白な子猫みたいな可愛い動物を抱っこしている。
「可愛いね。
サヤカが育てるのかい?」
俺はサヤカに聞くと、サヤカがERENAZの方を見る。
「見たことも無い、珍しい動物なんですよ。
可愛いんですけど。
長老たちが許してくれれば、飼っても良いよって
言ったんです。
まあ、サヤカがお願いすれば、長老たちは許可するでしょうけど。
変態お兄ちゃん。」
無理やり最後に、「変態お兄ちゃん」をつけていないかい?
巫女様達がいるからって、調子にのりやがって。
そう、俺達は夕食中だ。
最近はサヤカも一緒に食事をしている。
巫女様達は、温泉に入っているので、後から来る予定だ。
ガサ集落の子供達は、それぞれ、エデン集落の大人たちの
もとで、自分の子供のように育てられている。
職人、農家、漁師、猟師、
などなど、様々で小さいのに仕事を手伝っている。
サヤカもERENAZと一緒に長老のところに住んで働いている。
「動物を飼うっていうことは、大変なんだぞ。
可愛いだけでは駄目なんだ。
家族だと思って育てられるかい?」
俺は、お兄ちゃんらしく、サヤカに言った。
「うん、私が生んだ赤ちゃんだと思って育てる」
そうか。
サヤカもいつか結婚して赤ちゃんが・・・・・
想像しただけで、悲しい気持ちに。
「サヤカ、可愛い動物だね。
これプレゼント。
もらってくれるかな?」
サヤカと同じくらいの男の子がサヤカに話しかけている。
随分とサヤカと仲が良さそうじゃないか。
確か、職人部隊リーダ、マサムネさんの息子で
ムラマサ君だ。
「ありがとう、ムラマサ君。
でも、悪いよ。
こんな奇麗なネックレス」
確かに、子供がつけるには高価そうなネックレスだ。
「サヤカのことを思って、毎日、頑張って作ったんだ。
俺の気持ちだ。
もらってくれ。」
おいおい、マセガキ。
うちの、サヤカを誑かしているんじゃねえぞ。
小せえくせに、イケメンオーラ出しやがって。
「ごめんなさい。
私は、お兄ちゃんが好きなの。
ムラマサ君。」
「わかっている。
いいだ、それで。
今は・・・・・・・・・」
お前、子供だろ、なんなんだ、そのセリフは?
しかし、
ザマーミロ、お前にサヤカは渡さない。
俺は、2人の会話を聞いていないふりをしているが
顔がニヤついてしまっている。
「ユウスケさん。
僕は、必ず、あなたからサヤカを奪ってみせます。」
いきなり、ムラマサ君は俺を指さして宣戦布告をしてきた。
いい度胸じゃないか。
「ほう、良い度胸だね。
サヤカにつりあう男か見てやろうじゃないか。
ムラマサ君。
どこからでも、かかってきなさい。」
俺は、拳をポキポキとならし、余裕で立ち上がった。
相手が子供だろうが本気で相手をしてやる。
今のうちに、サヤカにたかる虫どもは叩き潰すのみだ。
「ありがとうございます。
では。」
マサムネ君はそう言うと一瞬で消えた。
まさか、こいつも?
ということは、俺の背後に?
俺は股間を押さえて悶絶し、膝をついた。
ま、まさか、又の下にテレポーテーションして
蛙飛びアッパーカットで股間を打ち抜くとは。
なんて、恐ろしい奴。
「お兄ちゃん、しっかり。
そこは、やっぱり弱点だったの?
大丈夫?」
サヤカが心配して、俺の元にやってきた。
大丈夫なわけがない。
巫女様達の拷問を受けた後なのだ・・・・・・
俺が顔を上げるとマサムネ君が手を差し出してくれている。
「今日は、たまたま僕が勝ちましたが、
まだ、サヤカの心はあなたにあるようです。
お互い、サヤカを大切に思う気持ちは一緒です。」
マサムネ君が爽やかな笑顔で言ってくる。
俺は、涙顔で、うんうんと頷くことしか出来なかった。
サヤカも俺の頭を撫でてくれている。
「変態お兄ちゃん、大丈夫ですか?」
ERENAZは、心配などしていない。
ただ単に、「変態お兄ちゃん」を言いたいだけだ。
「あらっ?
どうしたのですかユウスケ?
まさか、こんなところで・・・・・・・・・
そこまで変態に?」
ハニーの声だ。
どうやら、温泉から出てきたようである。
股間を押さえ、倒れこんでいる姿を見られてしまった。
「変態お兄ちゃんが、
男の子に喧嘩を売って、
大事なところをやられる変態プレイをしていたのです。」
ERENAZは、フォローしてくれているのか?
「お兄ちゃんは、わざと負けてあげたんだよ。」
サヤカは優しい。
結構、本気で負けたんだけどね。
「修行が足りないんだよ
ユウスケは。
ここの集落の人たちは頑張っているよ」
ジュリアンが俺を非難してくる。
お前らなんか、俺から能力を奪っているだけじゃないか。
しかし、そんな文句は言えない。
「きゃー。可愛い」
エレナとアンは、サヤカが抱っこしている
真っ白な子猫らしき動物に興味があるようで
俺のことなど、どうでも良いようだ。
「それで、名前は付けたの?」
俺は、先ほどのことなど何もなかったように
サヤカに聞いた。
「名前?うーん、難しい。」
うん。可愛い。
そう、名前を付けるのは難しい。
「ミャーオ」
子猫が可愛らしく鳴いた。
やっぱり猫みたいな鳴き方だ。
「ミャオちゃん。
ミャオちゃんにする。」
サヤカが、名前を決めたようだ。
簡単だったようだ。
まあ、ミャオちゃんが気に入ってくれれば
良いけどね。
「ミャオ―ン」
ミャオは、机の上を歩いてサヤカの顔にスリスリぢている。
どうやら、気に入ったのであろう。
「それにしても、雄と雌どちらなんだろう?」
俺は、そう言ってミャオを両手で持って
大事なところを確認にしようとした。
「フンギャー」
ガリガリガリ
ミャオは俺の手を振りほどき、
顔を思い切り、引っかいてきた。
なんか、子猫のくせに滅茶苦茶、強い感じだぞ。
「変態お兄ちゃん、
ミャオは女の子よ。
そんな、強引にアソコを見ようだなんて」
ERENAZは「変態お兄ちゃん」を、どうしても言いたいだけだ。
「駄目だよ。
お兄ちゃん。
ミャオがお兄ちゃんのことエッチだって
言っているよ。」
サヤカまで、俺に言ってくる。
しかし、可愛いな。
動物の言葉がわかる感じで接しているんだな。
「でも、ユウスケ
今日は、あっちこっちでやられているね。
クスクスクスクス」
エレナが人を馬鹿にしたように言う。
確かに、今日はみんなにやられっぱなしだ。
もしかして、この中で、俺が最弱なのか?
「ユウスケよりも私達の方が強くなったかしら?」
「そうだすな。最近、ユウスケは、だらけ過ぎだすしね。」
「私たちは、まだまだ強くなれるし」
巫女様達が俺を見下していやがる。
まあ、前からだが。
しかし、もう、俺だって、これ以上、強くなるのは難しいのだ。
チクショ――――――!
「お兄ちゃんが本気出したら
凄いよね。
お兄ちゃん。」
「ミャーオ」
サヤカとミャオが俺を励ましてくれている。
そうだ。
サヤカ、お兄ちゃんは、まだ本気を出していなぞ。
俺は単純だ。
「修行に行ってきます。
しばらく、帰りません。
探さないで下さい。」
俺がそう言うと、巫女様達がニヤニヤ笑っている。
ERENAZもだ。
舐めやがって。
まっていろ貴様ら。
全員、スッポンポンにしてやるくらい強くなってきてやる。
せいぜい、パンティーでも洗って待っているがいい。
「テレポーテーション」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
俺は山の中にいる。
エレナ達が住んでいた山だ。
デビルオオカミなど凶暴な野生動物がいる。
宇宙空間とは違う危険があるのだ。
考えてみれば
今日、サヤカやマサムネ君にやられたのは
テレポーテーションで不意打ちにやられたのだ。
人の気配など感じることは出来るが
意識していないと、感じられない。
というより、感じたときにはもう遅いのだ。
ということで、新たな能力を得なければならない。
俺がイメージするのは防御空間能力だ。
宇宙空間で作るバリア空間とは違う。
バリア空間ではテレポーテーションで入られてしまう。
防衛空間は、何人も入れない空間だ。
さて?
そんなことが出来るのか。
勢いで来ちまったが・・・・・・・・・・・
とりあえず、イメージだ。
イメージが出来れば、大体実現できる・・・はず。
とりあえず、座禅して集中だ。
沢山の蟻が俺の体をはっている。
蝶々やトンボも俺の頭や肩にとまっている。
沢山の虫が服の中に入ってくる・・・・・・・
うおー。
何人も入れない空間どころか
いろんな生き物が寄ってきているではないか。
集中も出来ない。
いや。
これを乗り越えればきっと。
こいつらを、俺の空間から追い出す。
念動力ではない別の力で・・・・・・・
別の力って?
イメージが出来ない。
しかし、刺されて痒い、噛まれて痛い。
とりあえず、
俺の体表面にバリアだ。
あれっ?
閃いた。
簡単だった。
防衛空間の中をバリアで満たせばよいのだ。
バリアなんて100重にしても薄いのだが
空間の中で縦横、斜めに張り巡らせれば良いだけだ。
やってみる。
ふむふむ。
出来そうだ。
あとは、どれだけ大きな空間を作れるかだ。
だんだん楽しくなってきた。
集中集中・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ハバナ統帥、
今なら、ユウスケはいないようです。
しばらく、修行に行くと言っていたらしいです。」
「うむ。
ならば、今がチャンスですな。
大将たちを集めて下さい。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
火の見櫓の鐘が6回鳴った。
どうやら緊急事態のようだ。
「ユウスケは、いないので、
私達が代わりに行きましょう。」
ハニーが、そう言うと火の見櫓に巫女様達4人は
テレポーテーションした。
「うぎゃあー
俺は、まだ、何もしていないっす。」
ガルバは、巫女様達がいきなり目の前に現れたので驚いている。
「まだとは、どういうことですか?
何かするつもりなのですか?
まあいいでしょう。
双眼鏡を貸しなさい。」
ハニーが双眼鏡をガルバから奪い取って
草原方面を確認している。
「バリアを張ったっすけど、簡単に破って入ってきたので
鐘を鳴らしたっす。
ユウスケさんは、まだ修行から戻らないっすか?」
ガルバが現状報告をしながら、ユウスケのことを聞く。
ハニーは双眼鏡を覗きながら、コクリと頷く。
どうやら、ダイス国から20人程の軍人が集落に
向かってきているようだ。
「あの程度なら、大丈夫でしょう」
「そうだすな。ユウスケがいなくても」
「私たちの活躍を後で話してあげよう」
「でも、みんな気をつけようね」
4人の巫女様達は双眼鏡を交代交代で現状を理解し
テレポーテーションで草原に移動する。
現在、草原で巫女様達とご対面中という状況だ。
軍人が何万人と来ても意味が無いことがわかったようだ。
きっと、ダイス軍の精鋭軍人だ。
いよいよ、勝負に来たのである。
相手の能力は未知数だ。
しかし、これまでより遥かに強いことは間違いない。
カーリア国との争いで俺達の能力は知っているはずなのだ。
ならば、能力を確実に上回る自信が、あってここにきているのであろう。
しかも
巫女4人 VS 精鋭ダイス軍人20人
「これはこれは巫女様方。
お会いしたかったです。
わざわざ、そちらから来ていただけるとは光栄です
ユウスケさんは、今回は、いないのですか?」
「別に、あなた方に会いたくて来たわけではありませんよ。
あなた方に、帰って欲しくて来ただけです。
それとユウスケは、現在、修行中です。
今頃は、私達に追いつくために頑張っているでしょう。」
「そうですか。
なら、好都合です。
とっとと消えてもらいましょう。
巫女様方」
ダイス国大将のひとりロキア大将であり、黒ひげ軍人である
ロキア大将は、名乗りもせずに、いきなり能力を発動した。
すると、他の軍人たちもテレポーテーションして巫女様達を
囲むように移動してから、能力を発動する。
一気に勝負を決めるのであろう。
ダイス軍の大将たちも、念動力、竜巻、暴風の能力を
もっているようである。
しかし、巫女様達には通じない
「フッ
なるほど」
ロキア大将は笑みを浮かべて、空中にテレポーテーションする
すると、他の軍人達もテレポーテーションした。
空中から巫女様達に向けて強力な熱放射を放ってくる
一瞬で巫女様達がいた場所にはクレーターが出来た。
しかし、巫女様達もテレポーテーションでダイス軍の
大将のひとりの上に4人固まって移動している。
巫女様方4人は、同時に念動力を放ち大将のひとりを
地面に高速で衝突させた。
ダイス軍のひとりが脱落である。
空中に浮かぶ巫女様達に向かって熱放射の
集中攻撃がされるが、
やはり、テレポーテーションで避けられてしまう。
そして、また大将のひとりが地面に激突してリタイア。
「クソッ
この戦術では駄目だ。
とりあえず、こちらもテレポーテーションを
もっと使って、個別に対応するぞ」
そう言って、ロキア大将はテレポーテーションで
巫女様達のすぐ近くに移動した瞬間に熱放射を
放つが、テレポーテーションですぐに逃げられてしまう。
巫女様達4人は互いに背を向き合って、四方八方からの
攻撃に対処したり、テレポーテーションしているのだ。
つまり進化系合体巫女の状態だ。
巫女様達が現われた場所に、また違う大将が
テレポーテーションで現れて熱放射を放つが
今度は、熱放射を放った大将の裏に巫女様達が
現われて、念動力でやられて脱落。
空中では、消えたり現われたりの繰り返しである。
ダイス軍は熱放射を中心に攻撃、
巫女様方は念動力を中心に攻撃しあっている。
「もう、面倒くさいわね
何人倒したっけ?」
ハニーが皆に聞く。
「まだ、5人だす。」
「結構やるよね」
「私の出番はまだかしら?」
その瞬間、集落の方で業火があがった。
「なっ。」
4人の巫女様達が火の柱を見て唖然とする。
私たちは、おびき出されたのか?
罠にはまったのか?
そんな思いが脳裏に浮かぶが、すでに遅かった。
そして、巫女様達が油断した瞬間を
ダイス軍の大将達が見逃すわけがない。
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「集落の方々は、どこに逃げたのでしょうかね?
燃やしたのは、失敗だったのでしょうか?
歩きづらいですね。」
ダイス国のハバナ統帥はひとり言のようにのんびりと言いながら
集落を破壊しながら歩いていく。
ガルバは、4人の巫女様達を見送った後、鐘を鳴らしまくった。
嫌な予感がしたのである。
ユウスケがいないとわかっただけで、凄く不安な気持ちに
なったのだ。
なので、住民達はみんな地下のシエルターに避難している。
監視部隊は、ハバナ統帥の動向を監視していたが、
身動きが取れない。
現われた瞬間に、住宅が轟音とともに業火にさらされたのだ。
能力の差は計り知れない。
これまで、自分達が築いてきたものを破壊された
怒りがこみあげているが、
命を懸けて戦いを挑むことは
命を懸けて集落を守ることとは違うことを
監視部隊は理解している。
地下シェルターでは、外で何が起きているか
わからない。
しかし、これまでに聞いたことの無いような轟音が聞こえた。
集落の男達が入り口付近に固まり、女性や子供は奥の方で
固まっている。
恐怖の原因が、ここに来ないで欲しいという願いは、みんな一緒だ。
しかし、ハバナ統帥は、着実に地下シエルターに近づいている。
集落の能力者全員が戦えば何とかなるのか?
ガルバは、監視しながら冷静に考えている。
いや、無理だ。
犠牲者が多く出るだけだ。
ならば、テレポーテーションで地下シエルターからみんなを
移動させるべきか。
どこに移動させる?
草原では、巫女様達が戦闘をしているであろう。
ダイス国やカリーヌ国に移動したら捕虜にされてしまうのか?
女性や子供だけなら大丈夫じゃないか?
ガルバは考えをまとめた。
そして、地下シェルターにテレポーテーションする。
「とんでもなく、強い奴が、こちらに向かっているっす。
女性や子供達はダイス国にテレポーテーションさせるっす。
俺達は、ここで、敵と戦うっす。」
ガルバは、地下シェルターの住民達に説明する。
「ガルバ、格好つけないで下さい。
私だって戦いますよ。」
ERENAZが立ち上がってガルバに言う。
すると、他の女性達も真剣な顔をして立ち上がった。
ERENAZをはじめ、女性たちの足はガクガク震えている。
入り口を守る男達も不安そうな顔を隠せないでいる。
サヤカは、これから起きることを想像もしたくない。
また、みんなが・・・・・・いなくなっちゃう・・・・
「お兄ちゃん・・助けて・・・お兄ちゃん・・・・」




