第14話 男のロマン
巫女様達は、早速、次の日の朝に
他の集落まで飛んで行った。
ハニーの能力を使っているので、あっという間に到着するだろう。
俺は、工事部隊の奴等と大事な仕事があるので断った。
そう、新たに男のロマン街道を作らなくてはならないのだ。
巫女様達がいないのも都合が良い。
「目的があると、仕事にやりがいが出るっすね。
しかし、さすがユウスケさん。
よく、拷問に耐えましたね。」
昨日、イッテしまったガルバが頑張って、
新たなホフク前進用の通路を掘っている。
「ふむ。さすがの俺もやばかったけど。
俺達の掟は絶対だ。
絶対に死んでも秘密は守らないといけなかったからな」
俺もそんなことを言いながら、いつも以上に
ペースを上げて、ホフク前進用の通路を掘っている。
他の工事部隊の奴等も必死だ。
昨日の反省を込めて、ホフク前進用通路には蓋をすることになった。
覗き穴の前には囲いも作る。
完璧だ。
絶対に、これなら見つからない。
午前中に工事は完了した。
みんな満足そうな笑顔だ。
あとは、女性たちが温泉に入るのを待つだけだ。
俺達、工事部隊10人は仕事を終えると
昼食をとることにした。
「やばいっす。
このラーメンうまいっす。」
ガルバが早速、ラーメンを食べている。
「おう、旨いな
ニンニクと唐辛子を入れると、味変が・・・・」
パイソンさんは、大盛ラーメンだ。
とても満足そうである。
俺は、野菜炒め定食。
最近、ラーメンばかり食べて飽きたのだ。
しかし、他の集落の食事事情はどうなんだろう?
ここは、自給自足が十分すぎるほどあるから
食事に関しては贅沢が出来るが
残飯などはほとんど出ない。
自然を崇拝しているからか、
食材の無駄が罪のような感覚なのだ。
なので、山での狩りや漁も最小限しか行わないのである。
「他の集落ってどんな感じなんですか?」
俺は、一番年長のパイソンさんに聞いてみた。
「他の集落か。
前までは交流があったから
情報も交換しあっていたんだがな。
向こうは野菜、こっちは塩とか物々交換
とかしながらな・・・・・
しかし、そういえば、
最近はどこの集落もここに来ねえな。」
なるほど、
前までは物々交換で交流があったんだ。
他の集落に何か良いものがあれば
今でも物々交換したいけど・・・・・・・
来なくなっちゃたんだ。
「街で出会った娘から聞いたんですけど、
最近、他の集落から街に
女性や子供が売られているって聞きましたよ。」
ガルバが会話に入ってきた。
人身売買か。
あまり良い話ではないな。
「いくらで、女性は買えるんだ?」
パイソンさんがガルバの話に喰いついた。
安かったら買いたいのかしら?
「そこまで、知らないっすよ。
パイソンさん、女性は買うものではないっすよ。
心を掴むものっす。
体より心っすよ。」
パイソンさんは、若いガルバに説教されている。
覗きに必死なガルバに言われたくないだろう。
「街で、風俗遊びばかりしているお前に言われたくねえ。
俺も良い年だからよ。
そんな売られるくらいなら・・・
俺のよ、嫁に・・・・・・・・・」
恥ずかしいなら言わなきゃよいのに。
パイソンさんは見かけによらずに純情なのかもしれない。
そんな俺達が食事をしながら話をしていると
巫女様達が歩いてこちらにやってくる。
食事の時間には、ちゃんと帰ってくるのだ。
うん?
様子がおかしい。
泥だらけの姿で、
巫女様達がみんな泣いている。
「何かあったのか?他所の集落で。」
俺は巫女様達に聞いてみた。
「ひどいのです。
集落に到着して、
私達がエデン集落から来た巫女だと名乗ったら
その瞬間に、囲まれて泥を投げつけられました。」
「ダイス教以外は邪教だとか言われたよ。
汚いだの
ブスだの・・・・・・・・・」
「怖かっただす。
ダイス教、滅茶苦茶、怖いだす。」
「私なんて、泥の中に石が入っていたわよ。
というより、泥がついた単なる石だったわよ。」
可哀そうに。
こいつらも、ダイス教の恐ろしさがわかっただろう。
「ひどいっすね。
俺達の巫女様達に、そんなことを。
許せないっす。」
俺達の巫女様?
ガルバが怒っているようだが・・・
「そうだな。
俺達の女神なのに許せねえ。」
俺達の女神?
パイソンさんをはじめ、他の奴等も話を聞いて
怒っている。
後から聞いたのだが、
どうやら巫女様達はモテないわけでなく
男どもの協定で、手をだしてはならない
神聖な女性扱いなのだそうだ。
まあ、結局、そうなると彼氏ができないのだが。
「みんな、私たちのために、そんなに怒らないで
争いでは何も生まれないのよ。
私たちが、我慢すればすむことなの」
エレナが皆の怒りを鎮めようとしている。
お前が言うか?という感じだが。
男どもは、エレナの言葉に感動しているようだ。
「そういえば、ユウスケ
ここに来る途中、温泉の外に囲いがあったけど。
なんで、あんなの作ったの?」
「いや、単なる飾りだよ。
アハハハハ」
俺は、何とか誤魔化した。
他の男どもの視線が熱い。
よく、誤魔化したと言わんばかりの視線である。
「そっか、単なる飾りだったんだ。
むしゃくしゃしていたし、
邪魔だったから、破壊しといたよ。
問題ないでしょ。」
一斉に、男どもがエレナ達を睨みつけた。
壊しただと?
俺達が汗水垂らして作ったものを。
チクショウ
こいつら、わかって、破壊しやがったな。
俺達、男のロマンをまたしても邪魔しやがって。
こいつら、間違いなく、女神さまから降格したな。
「そうだな。邪魔だったら仕方ない。
アハハハハ」
俺は、エレナ達を睨みながら笑った。
仕方ない。
ホフク前進作戦は、しばらく中止だ。
今度は、双眼鏡づくりだ。
そして、火の見櫓も作らないといけない。
俺達は絶対に諦めない。
「それで、結局、
他の集落の様子はわからなかったのか?」
俺は、話をすり替えた。
「いえ、何となくですけど、随分と雰囲気が変わっていました。
街が出来ていましたね。
工場のような建物もあったりしたりして。」
ハニーが泥だらけの顔で教えてくれた。
うーん。やっぱり文明の進化が早すぎる。
おそらく、集落のほとんどの人がついていけないだろう。
「多分、ユウスケの推測はあたっているだす。
集落の雰囲気が暗かっただすから。」
アンが補足する。
「そうだね。前とは全然違う雰囲気になっていた
前は、もっと、集団で何かをやっていたのに、
何か、みんな、個人プレイなんだよ。」
ジュリアンも。
そうか、俺の推測は当たっているかもしれないのか。
はて、どうしたものか。
ここの集落に影響がなければ良いのだけど。
そうもいかない気がする。
「まあ、良いんじゃない。
自分達で選んだ道なんでしょうから。
私たちが心配しても仕方ないよ。
というか、私、もう石投げられたくないし」
エレナがまともな感じのことを言っている。
確かにそうかもしれない。
正義感ぶって何かしようとするのも違う気がする。
そこの集落にとっては迷惑でしかないかもしれない。
この世の中、主観で変わる正義しかないのだから。
逆に、他所が介入すると余計に住民を苦しめることが
多いのだ。
俺の星でもそうだったことは、
クオンさんから聞いて知っている。
「うん、そうかもしれないな。
ただ、周りの情報を知っておくことは大切かも。
この集落を守るためにも
ということで・・・・・・・
スパイ活動をやらないか?」
俺は巫女様達に提案してみた。
そう、情報は大切なのだ。
アクアットのゼルダ将軍が教えてくれた。
「はいはーい。やるやる。
やりたいです。」
エレナが真っ先にのってきた。
そして、他の巫女様達もやる気のようだ。
フフフ。俺の作戦にひっかかったな。
そう、俺はこの集落から巫女様達を離したいのだ。
男のロマンの為に・・・・・
こいつら邪魔者を・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日も工事部隊は集落の為に汗水垂らして働く。
そう、火の見櫓を建造するのだ。
木材を加工する技術も、獲得済みだ。
今日中に完成することは可能であろう。
女性の温泉から、程よく遠い場所に
高い建造物、火の見櫓をたてて、双眼鏡で覗くのである。
長老たちには、万が一、火事になったり、
どこかが攻めてきたときにも、役に立つからと言い訳をしてある。
なので、櫓には、鐘もつけて、それらしくする。
問題は、双眼鏡だ。
最低4個くらいは欲しい。
しかし、結構、作るのが難しいのだ。
ぼやけて見えるのでは意味がない。
仕方ないので、職人部隊リーダーのマサムネさんに
協力をお願いした。
忙しいだろうに快く、了承をしてくれたのだ。
職人部隊もたまに参加するという条件で・・・・・
そして、完成したのだ。
遠距離まで、しっかりと覗ける・・
いや、見える双眼鏡を。
ウオー
火の見櫓と双眼鏡の完成により、
男どもの歓喜の声が響き渡る。
巫女様達でも、さすがに、この火の見櫓を破壊することは
ないであろう。
火事や危険から集落を守るためという大義名分があるのだ。
俺達は、さっそく長老たちに火の見櫓の完成を報告しに行った。
「長老、火の見櫓が完成しました。
これで、火事が起こってもすぐに
みんなに知らせることが出来ます。
それに、毎日、高いところから外を監視すれば集落も
より安心になります。
まあ、私たちが交代交代で監視しますので
ご安心ください。
ハハハハハ」
パイソンさんが長老たちに報告する。
そう、俺達が交代交代で監視するというのが
需要なのだ。
「ほうほう。ご苦労様。
それで
監視する時間帯とかは、どうするんじゃ?
四六時中、監視するのも大変じゃろう。」
長老が的確な質問をしてくる。
だてに、年取ってねえな。
「はい。
それは、決まっていまして
夕方6時から7時くらいにしようかと
考えております」
パイソンさんが堂々と答える。
そう、この時間帯以外では意味がないのだ。
女性たちが温泉に最も多く入る時間帯
「なぬほどのう。
お前たちだけで・・・・・
駄目じゃ。却下じゃ」
長老から、いきなりの駄目だし。
何で駄目なの?
「いや、その時間がもっとも良いのです。
それ以外では意味がありません。」
パイソンさんも引かない
言っている意味は良くわからないが。
そうだ。頑張れ、パイソンさん。
「お前たちだけに、そんなに負担をかけられぬ。
その時間帯は、儂らに任せろ」
クソッ。このエロ長老ども。
俺達の企みを、わかっていやがったな。
ニヤついていやがる。
「ぐぬぅ。仕方ないです。
では、こうしましょう。
我々と長老たちで、交代交代ということで・・・
如何ですか?」
パイソンさんが提案している。
パイソンさんも気づいたのであろう。
「ふむ。
よろしいじゃろう。
儂らも仲間に入れるなら。
では、みなで交代交代じゃ。
フォフォフォフォ」
エロ長老どもが、
まあ、仕方があるまい。
覗ける回数が若干減るだけだ。
数時間後、
何故か、俺達は急遽、
女性専用の温泉で工事をさせられている。
高い壁を作らされているのだ。
こんなに、やる気の出ない仕事はない。
長老との話し合いの時、
あの長老の屋敷にはスパイがいたのだ。
女性たちのスパイだ。
長老たちと一緒に暮らしている女、
スパイERENAZだ。
長老たちも、
女性たちの要求を必死に断っていたのだが負けてしまった。
温泉で火事になったらどうすると言い放ったらしいが
水があるから大丈夫と一蹴されたとか。
今では、長老様と呼ばれずに、エロ長と呼ばれている。
そして、、
俺達は、火の見櫓方面に高い壁をつくらされているのだ。
チクショウ
しかし、俺達は諦めない。
ホフク前進通路を何度も試みて見つかり拷問を受ける者
火の見櫓の上に梯子をかけて上がった瞬間に落ちる者
色々と、頑張っている。
未だに成功者はいないのだが。
男は夢を諦めないのである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
巫女様達が帰ってきた。
そう、夕食の時間なのだ。
普段の布切れ姿ではなく、服を着ている。
そう、スパイ活動をしてきたのだ。
「今日の報告よ。
各自、お願い。先ずはアンから」
ハニーが巫女様達に報告を求めている。
俺とERENAZも同席している。
「はいだす。
わたしは、アズリ集落に行ってきただす。
やはり、貧富の格差がひどかっただす。
お金持ちが、異民族の貧乏人を使っていたり、
貧困層の集落もあっただす。」
アンが報告している。
しかし、化粧でこんなに変わるものなのか?
滅茶苦茶、ブスになっている。
これなら、潜入してもバレないであろう。
「次は、私ね。
私は、タルコ集落に行ってきたよ。
驚いたのは、武器の製造工場があったんだ。
それで、何でこんな工場があるのか聞いたら
隣の集落と戦争状態だっていうんだよ。
まさか、集落同士で戦争が起こっているなんて
知らなかったよ」
ジュリアンも化粧をしているが
やはり、ブスになっている。
「次は、私よ。
わたしは、街にスパイに行ったの。
たいして、美味しいものはなかったわ。
ラーメン屋もあったけど、行列も出来ていなかったし
私たちの勝ちって感じだったわ」
エレナは何をスパイしに行ったんだ。
しかし、こいつが一番化粧でブスになっているな。
何なんだ?
ほっぺのグルグルは?
「なるほど、最後は私ね。
私は、街のダイス教の教会に潜入したわ。
興味があったのは、お布施というやつね。
信者が協会にお金を寄付するのよ。
それに、教会なのに軍隊もあった。
アクアットやカヌーンから色々と購入している
のかもしれないわ。
レーザー銃をいくつも持っていた感じだもの。」
最後にハニーが、サングラスを外しながら報告した。
うん。やっぱりブスだ。
こいつらのは、変装というよりは仮装だ。
ERENAZは、笑いを必死にこらえている。
しかし、それなりに情報を集めてきたようだ。
何となく、外の情勢を推測することが出来そうだ。
「これらの情報で、何かわかるか?
ユウスケ。」
ハニーが俺に聞いてくる。
「そうだな。あくまで推測だけど。
この星は、急激に文明が進歩している。
恐らく、アクアットやカヌーンの星の影響は
大きいであろう。
しかし、もっと大きいものは、お金の流れだ。」
俺は、巫女様達に俺の推測を話してみた・・・・
しかし、反応が無い。
うん、理解できないであろう。
「お金の流れというと、ネイルさん達が発行するお金が、
大きな影響を与えているということですか?」
ERENAZは理解できているようで、俺に聞いてきた。
なので、俺はERENAZに話すことにした。
「そうだね。
物々交換の時代なら、人々は協力し合って生きていく。
どちらかと言えば、毎日、生活するだけで一杯だ。
でも、文明が急激に発達すると、働けない人が増えるんだ。
あと、何故か人口も急激に増えたりすることがある。
急激に発達すれば、するほどね。」
「あまり、よくわからないですね。」
「そうだよね。
たとえば、農業もそうなんだ。
今まで、山や草原から採取するには多くの労働力が
必要だったけど、農業が出来ると、それほど
労働力、つまり働く人は少なくて良くなるんだ。
酪農も同じだよね。」
「なるほど。なんとなくわかるかも、
でも、ここの集落も農業や酪農をやっていますけど
働けない人は増えていませんよ。」
「そう、ここでは、
みんなの物は俺のもの、俺のものは、みんなの物だからね。
農業や、狩りで働かなくなった人は、
料理を作ったり、器を作ったり、娯楽を作ったり、何かしら
他の仕事を自ら行っている。
それに、働かなくても、此処では生きていけるし、
人口も急激に増えたりしないから
問題は出てこない。」
「だったら、他の集落でも同じようなことをすれば
良いのではないでしょうか?」
「そうなんだけど。
お金が邪魔してしまうんだ。
外の社会では、
働けなくてお金がない人は貧困になるしかない。」
「確かにそうですね。」
「米なんかは貯めこんでも腐っていくから減っていくけど
お金は利息というのがあると、貯めれば増えていくんだ。
つまり、本来、お金という価値のないものが
一番価値があるものとして、どんどん増えていく。」
「言われてみれば、勝手に増えるのはお金だけかも。」
「単に便利な道具としてのお金なら良いのだけど・・・・
お金なんて本当は価値が無い。
価値が無いお金に信用というものをつけて価値が出てしまうと、
当然に世の中を変えてしまうんだ。
人間の欲っていうやつでね。」
「うーん。また、わからなくなってきました。」
「うん。俺も説明していてわからなくなってきた。
例えば、エネルギー効率で言えば
地元でとれた食材を食べた方が、
遠くの同じ食材を食べるより効率が良いし、環境に負荷がかからない。
けど、お金が絡むと、
地元の食材を食べるより、
遠くの安い労働力でとれた食材を食べる方が良くなるんだよ。
つまり、矛盾するものをお金で無理やり社会を形成させるから
社会に歪が生じるんだ。」
「もう駄目、そのとおりかもしれませんけど、
頭が追い付かないです。」
「俺だって、人から聞いた話だし、
正しいかもさえもわからないよ。
簡単に言えば、お金のために戦争がおきたり、貧困層が
増えてきているということかな。
逆に言うと世界を支配するにはお金を支配すれば良い
みたいな感じかも。
つまり、お金が最強の力になるみたいな。」
「であれば、この世からお金を無くしてしまえば
問題は解決するのですね。」
ハニーが俺とERENAZの会話に入ってきた。
理解はしていないだろうが、最後の俺の言葉だけは
理解できたのであろう。
「そんな簡単な問題じゃないよ。
もう、外では、お金の社会になって、私有財産や
色々な仕組みが出来上がっていると思うよ。
それこそ、世界大戦でも起きない限り無理でしょ。」
「じゃあさ、世界大戦すればよいじゃん。
直すより、全部破壊して作り直した方が
簡単じゃん。」
ジュリアンが簡単に言う。
「戦争ほど、悲惨なものは無いよ。
常に泣くのは弱者なんだから。
戦争は絶対に駄目」
「じゃあ。どうしたら良いだすか?」
アンも俺に聞いてくる。
俺が正解なんて持っている訳ないだろう。
「うーん。
まあ、この集落が巻き込まれないように
防衛力だけでも強くしといた方が良いかもね。
多分、巻き込まれると思うけど」
俺は諦めたかのように言って静かになったエレナを見た。
こいつ、寝ていやがる。
まあ、こんなこと俺達が
心配していても、どうしようもないのだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「本当に助かりました。
お礼を申し上げます」
街の領主カルヴァンさんだ。
「いやあ、良かったですよ。
何事も無くて。
お礼は、
この、ガルバ君に言ってあげて下さい。」
俺はそういって、ガルバをカルヴァンさんに紹介した。
「いやはや、本当にありがとうございます。
ガルバ君
街に来たときは、是非とも家の屋敷に来てください」
カルヴァンさんは、そう言ってガルバの手を両手で握りしめた。
カルヴァンさんは、長老たちと話し合いのために
この集落に来たのだが、
危うく、この集落の人間に殺されそうになってしまった。
後ろからナイフを持った人間がカルヴァンさんに向かって
走り出して来たのだが、ガルバが身を挺して助けたのだ。
「それで、私を襲った人は、どうなりましたか?」
カルヴァンさんが俺に聞いてきた。
「どうも催眠のような術にかけられていたようで、
襲った記憶がないようなのです。
催眠にかかっていたという証拠は難しいのですが
ここは、私達に任せてもらえませんか?」
「そうですな。大事にしても互いにメリットは
ありませんし。
別に構いませんよ。
お前たちも他言をしてはならぬぞ。」
カルヴァンさんは心がひろいようだ。
俺の提案を受け入れてくれた。
護衛の人たちにも口止めもしてくれているが
護衛は納得をしていない感じだ。
「今後来るときは、御連絡を下さい。
カルヴァンさんも護衛をつけていますが、
こちらでも、今後、このようなことが無いように
対応いたしますのじゃ」
長老も心配してカルヴァンさんにお願いしている。
そう、対応策が大切なのである。
「しかし、よく助けてくれたよ、ガルバ
さすがホフク前進のエースだな。」
俺はカルヴァンさんを助けたガルバを褒めたたえた。
ガルバはホフク前進のエースで、今ではゴキブリのように
素早くホフク前進が出来る。
このガルバのスピードには誰にも勝てない。
しかも、バックも同じスピードで出来るのだ。
最近は、巫女様達から逃げ切ったというのだから驚きだ。
覗きという目標に向かって日々努力していた成果だ。
「まあ、なんてことないっすよ。
カサカサッとホフク前進通路から
カルヴァンさんと周囲を常に監視していましたから。
あとは、ユウスケさんから教わった極道流で・・・・・
ロイドをコテッと・・・・・
しかし、ユウスケさんの予想どおり、本当に
カルヴァンさんが襲われましたね」
こうなったのにも理由がある。
俺達、工事部隊は、今現在、暇なのである。
インフラもある程度、整備されてきたので、
たまに修理ぐらいしか仕事がない。
そのため、
何故か、覗きのためのインフラ整備が始まってしまったのだ。
しかし、その覗きも女性たちに警戒されてうまくいかない
なので、長老達と相談をして、
暇なときは集落の警備を行うことになったのだ。
一応、俺は、ゴウゾウさんから教わった極道流をみんなに
前から教えていたので、工事部隊は武術が達者である。
そして、工事部隊は暇なときには監視役として
ホフク前進用通路で隠れながら監視したり
火の見櫓で、双眼鏡によって監視したりしているのだ。
10人程度だが、この集落の大きさには十分。
何が役に立つかわからないものだ。
今回はカルヴァンさんという重要な客人が集落に
来たのを火の見櫓で確認したので、
ガルバに監視させていたのだ。
ガルバが、さぼらないように、脅かしていたのだが
本当になってしまった。
「本当に何も思い出せないのか?」
長老が、カルヴァンさんを襲ったロイドに聞いている。
「すみません。
街で遊んで、帰り道に誰かと話した後から
記憶が無くなってしまっているんです。
本当なんです。」
ロイドは、長老に必死になって説明している。
俺もロイドのことは知っている。
一生懸命、酪農を頑張っているのだ。
ガルバと風俗遊びの仲間でもある。
「その、誰かって、顔を思い出せる?」
俺は気になって聞いてみた。
「いや、それが男なのか女なのかも
話した内容も思い出せないのです」
ありゃ。不思議なことがあるもんだ。
嘘は言っていない気がする。
でも催眠術みたいなものにやられたといっても
証拠がなければ・・・・・・・・
「あらっ?何しているのユウスケ」
エレナ達が街の買い物から帰ってきたようだ。
お小遣いをあげて俺が頼んだのだ。
「いや、ロイドが催眠術みないのものを
かけられたかもしれないんだけど。
記憶自体が無いらしくてさ。」
俺は、エレナ達に説明をしてみた。
どうせ、こいつらに説明してもどうしようもないのだが。
「ふーん。記憶がなくなっちゃたんだ。
どれどれ?」
エレナが、そんなことを言って、ロイドの頭に手をかざす。
「ふむふむ。
なるほど、
ロイドちゃんは、風俗でナツミちゃんを指名して
プレイの内容は・・・・・・・」
「ちょっと、待ってください。
すみません。すみません。
言わないで下さい。お願いします。」
必死になってロイドがエレナの口をふさぎながら
エレナの説明を遮っている。
というか、エレナは消えた記憶をもしかして・・・・
「わ、わかったわよ。
私だって、ロイドちゃんの変態プレイまで見たくないわよ。
まったく。
ふむふむ・・・・・・
変な男がロイドちゃんに、カルヴァンさんを
殺せって命令をしたのね。
それで、うん。うん。
なるほど。」
エレナが納得しているようである。
「ユウスケ、ロイドちゃんは、やっぱり、
街で黒ひげの男に催眠術みたいなのを
かけられたみたい。」
うん。本当にコイツすごい。
なんでも、ありになってきていないか?
絶対に、俺では出来ないぞ。
「そうなんだ、
どういう顔か教えてくれないか」
そう、俺はエレナから情報を貰えることが出来るのだ。
というより、エレナが俺に情報を与えることが出来るのだ。
「うんとね。こんな感じの顔だよ」
エレナが、枝を使って地面に、男の似顔絵を書きだした。
俺に能力を使って情報をくれれば済むだけなのだが。
いや、何でもありのエレナなら、
もしかして、とんでもなく、そっくりな似顔絵が・・・・・
「エレナ画伯、とても絵が上手ですね。
犯人の黒ひげは、鼻毛の長いタコなんですか?」
そう、エレナの画力は最悪だった。
「こんな感じの顔よ。
間違いないわ。
みんな顔を覚えて、指名手配よ。」
こんな顔の人間がいるはずがない。
「とりあえず、エレナ先生
情報を俺に下さい。
お願いします。」
俺はそういって、自分の額をエレナに差し出す。
エレナは嫌々そうだが、自分の額を俺の額に当てて
俺に情報を与えてくれた。
なるほど。コイツがロイドに催眠術みたいなのを
かけた犯人か。
エレナが書いた似顔絵とは全然違う。
「ありがとうエレナ。
因みに、この男は街で会ったことないのか?」
俺はエレナに聞いてみた。
「私は、ないわよ。」
エレナが答える。
「あら、この顔にそっくりなのが
ダイス教の軍隊に偉そうにいましたよ。」
ハニーが、エレナの書いた似顔絵を見ながら
教えてくれる。
嘘だろ?
そんな顔の人間は絶対にいないし、
というより人間の顔じゃないし、
犯人の顔とは全然違うのだぞ。
本当にコイツ等にはついていけない。
まあ、俺には犯人の顔はわかった。
俺が、何とか、この事件の真相を暴いてやろう、
フフフ
こいつらばかり、楽しそうにスパイごっこしやがって。
俺だってスパイに憧れているのだ。
なので、
俺は、変装グッズを巫女様達にお願いして
買ってきてもらっていたのだ。
さすがに、俺の顔は街ではバレてしまう。
「ウフッ 」
俺は、鏡を見ながらウィンクしている。
我ながら可愛いかもしれない。
何かに目覚めてしまいそうだ。
「ギャーハッハッハ
気持ち悪い。
腹が痛い」
俺の美貌に嫉妬している巫女様達が笑い転げている。
メイクは自分でやった。
こいつらに任せたら絶対にブスになるからだ。
そして、エレナ達に買ってきてもらった
長い髪のカツラと、ヒラヒラの可愛いお洋服だ。
胸には大きめのパットも。
「それでは。
コードネーム、ユウコ
街への潜入作戦を開始しますね 」
「ヒーアッハッハ」
俺は、笑い転げている巫女様達を無視して
作戦を開始した。
「テレポーテーション」
俺は、街の繁華街を女装して歩いている。
なんか、恥ずかしい様な、変な気持ちに目覚めそうな
不思議な気持ちである。
「お姉さん。お綺麗ですね。
もし、お時間があれば、僕と一緒にお茶でも」
あら、いやだ
いきなり、ナンパされてしまった。
俺は、心をトキメカセて、後ろを振り返った。
「いかがですか?」
いかがですかじゃねえよ。
ガルバじゃねえか。
なに、格好つけているんだよ。
こいつ、時間があれば街に繰り出しやがって。
さては、風俗でお金使いきって。
仕方ないからナンパ作戦になった感じだな。
いや、しかし、今日は殊勲賞だったし
すこしくらい、付き合ってやるか。
「ホーホッホッホ
わたし、この街、はじめてですの。
よろしければ、ダイス教とやらを
案内してくださらないかしら 」
俺は、声を変えてガルバに話してみた。
「いいっすよ。
この街は、俺の庭みたいなもんですから
任せて下さい」
そういって、ガルバは俺の手を握ってきた。
あらっ、なんて積極的な人なの。
ガルバにバレないのだから、
俺の変装は完璧なのであろう。
ガルバは、とてもお話が上手である。
「それでね、そのユウスケさんって人が
馬鹿でさ。
バレなきゃ大丈夫とか言って、いつも
バレるから大丈夫じゃないんだよ。」
ほー。俺をそんな目で見ていたのだね。
ガルバ君
「その、ユウスケさんって
凄く、素敵で、格好良くて、優しい方なのですね。
「ハハハハハ
ユウコさんは、本当に冗談が好きですね。
全部、逆ですよ。正反対。
ハハハハハ」
うん。こいつを懲らしめてやりたい。
「ここがダイス教の本部っすよ。」
本当にガルバは街に詳しかった。
ここに来るまで街の詳細を説明してもらいながら
案内をしてもらった。
巫女様達でなく、最初から
こいつに色々聞けば、良かった気がする。
「ダイス教には軍隊もあるっすよ。
ほらっ。
レーザー銃ってやつを、みんな持っているっす。」
ガルバが俺に
ダイス教の建物の前で警備している門番を指さして教えてくれる。
2人の門番は、軍人らしい恰好をして直立して立っている。
門番がビシッと立っていると、建物に威厳があるように見えるから
不思議だ。
そして、
なるほど、ハニーの言っていたとおりだ。
腰にレーザー銃をもっているようだ。
しかし、この星でレーザー銃は過剰な武器ではないか?
「レーザー銃?
それって、まんじゅう、みたいに美味しいのですか?」
フフフ
この高度なギャグについてこられるかな?
ガルバ君よ。
「そう、そう。
味噌をつけて炒めれば最高に美味しいんですよ。
って、食べられるかいっ。」
くそっ。ノリツッコミをしてくるとは
なかなかやるな、ガルバ君。
「でも、あの銃には嫌な匂いがするっす。
理由はわからないっすけど・・・・
この社会にはいらねえ武器のような・・・・・」
なんだ?
ガルバは真剣な顔をしているが
格好つけているつもりなのか?
俺に好かれたいのか?
「このガルバ教の本部には入れないのですか?」
「誰でも入れるっすよ。
行きましょう」
ガルバが俺の手を引いてエスコートしてくれる。
滅茶苦茶、気持ち悪いのだが仕方ない。
正体をバラすタイミングを外してしまったのだ。
俺達は、堂々と門から入るが、門番は微動だにしない。
「正面の大きな鏡が、神ダイス様を祀る道具らしいっす。」
造形した金色の枠の中に大きな丸い鏡が祀られている。
直径3mくらいあるのではないか?
「神ダイス様?
ダイス教祖様は、神様扱いされているですか?」
「違うっすよ。
ダイス教祖様は、神ダイス様の言葉を伝える伝道師っす。
神様から、ダイスという名前を名乗ることを許されたとか」
本当にガルバは、色々と詳しい。
なるほど、ERENAZも、ダイスさんは
神様から力をもらったとか言っていたな。
「あの軍人さんは、きっと偉い人っす。
何か、飾りがいっぱい、ついているっすから」
馬鹿みたいな説明だな、ガルバ君
というより、あの軍人は・・・・
見つけた。
ロイドに催眠術みたいなのをかけた犯人。
ハニーの言ったとおり、
本当にダイス教の軍人だったよ。
俺は、しばらく軍人を観察していた。
がっしりとした体格に、黒いひげ。
貫禄があり威厳がありそうだ。
何やら、鏡を守る軍人たちに、制服の乱れなどを注意しているようだ。
「どうしたっすか?
ユウコさん。
軍人が好きなら、おれも軍人になりますけど」
ガルバがアホなことを言っていると、
俺達の方に、その黒ひげ軍人、つまり、
ロイドに催眠術をかけた犯人が歩いてやってくる。
俺達が集落の人間だとバレたのか?
俺は、すこし緊張していたのだが、
可愛い私のことなど無視して、
その軍人は、ガルバに近づいて行った。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
そして、ガルバとすれ違う瞬間、
その黒ひげ軍人は、ガルバに近づき何か耳元で囁いた。
ヤバイ、
そんなに簡単に催眠をかけられるのか?
「嫌ですよ。
何で、俺が巫女様達を殺さなくちゃいけないんですか
冗談でも、やめて下さい」
ガルバが軍人さんに文句を言っている。
黒ひげ軍人さんも、驚いた顔をしているが、
失敗したのであろうか?
「いや、冗談ですよ。
私はダイス教なものですから、
経典に反する巫女様方を何とかしたいのですよ。
ハハハ。冗談ですから気にしないで下さい。」
笑いながらも目は笑っていない。
巫女様達がダイス教の経典に反する?
俺は観察している。
なるほど、ガルバの脳に攻撃しているようだ。
何も見えないが、
ものすごく強いエネルギーが感じられる。
「冗談でも駄目っす。
別にあんな巫女様達を崇拝もしていないっすけど。
というか、恐怖でしかないっすけど。」
これは、攻撃されて言っているセリフではないな。
きっと本心であろう。
「あれっ?なんか、頭が痛くなってきたっす」
ヤバイ。ガルバが危険だ。
黒ひげ軍人の能力に逆らって、脳に異変が?
ただでさえ馬鹿なのに、これ以上・・・・・
「あらっ、もうこんな時間、
帰りましょう。ガルバさん 」
俺はそう言って、ガルバの手を握ってソソクサと
教会から出て行ったのである。
「今日は、楽しかったっす。
ユウコさん。
また、会ってくれますか
俺、あなたのことが好きになってしまったっす。」
あらっ、なんてストレートに告白する方なんでしょう
「そうね。もし運命というものがあったら
また、会えるかもしれませんね」
「運命。
そうっすね。
俺は運命を信じるっす。
今度は、俺の住むエデン集落で・・・・
きっと。」
ガルバは単純な奴だ。
そんな、ガルバに呆れて、
俺は、街でガルバと別れたのだが・・・・・・・・
しかし、あの軍人ヤバいな。
ダイスさんは、あれよりもっと凄いのか?
というより、ガルバは何なんだ?
精神攻撃が効かなかったようだが。
「テレポーテーション」
俺は集落の部屋に戻った。
そして、化粧を落とし、
ユウコから、ユウスケに戻ったのだ。
少し、戻るのが惜しかったが、
よくよく考えたらガルバを喜ばしただけだった。
「どうだったユウスケ?」
エレナが俺に尋ねてくる。
「うん。ガルバのおかげで
色々と偵察が出来たよ。
あと、ロイドに催眠をかけた犯人にも出会えた。
あれは、ヤバいね」
「ダイスみたいな感じだったのか?」
ジュリアンが俺に聞いてきた。
「うん。
ダイスさんの実力はわからないけど、
犯人は、間違いなく相手の脳に影響を与えられる感じだね。」
俺は、ジュリアンの質問に答えた。
「ふーん。
私達も多分出来るけど、御法度だって
昔、教わった気がするんだよね。
だから、あれをやるダイスや犯人はヤバいよ。」
ジュリアンが何でもないように答える。
誰かに教わった?
「そうですわね。
まあ、そんなことして、人々を思いどおりりにしても
面白くありませんしね。」
ハニーも何でもないように話す。
確かに、面白かったら、
こいつら、みんな下僕にしてしまうだろうからな。
「そうなんだ。
俺には絶対に出来ないけど
あの催眠術みたいなのは、どうやったら
防げると思う?」
俺は、何てことないという感じの巫女様達に聞いてみた。
「ダイスのときには、私も仕事に夢中だったから
あいつの能力にかかっちまったけど、
意識していれば、絶対に大丈夫だよ。」
「そうだすな。
私たちは、意識していれば問題ないだす。
でも、他の人たちは防ぎようがないかもしれないだすよ」
「そうなんだ。
でも、今日、ガルバは抵抗して大丈夫だったぞ」
俺は今日の出来事を巫女様達に話した。
「そ、そうですか
ガ、ガルバがね。
何で、抵抗できたのでしょうかね?」
ハニーがオドオドしながら話している。
うん?
驚いているというよりは、何か隠している感じだ。
「何か、俺に隠し事がありませんか?
巫女様方。
ガルバに何をしてくれたんですか?」
俺は、巫女様達に聞いてみた。
尋問タイムだ。
「いや、別に、
何度も何度も、覗きをしようとしたから
何度も何度も、修行をさせただけだよ」
ジュリアンが自白した。
「どのような尋問をしたのですか?
男には限界というものがあるのですよ。
女性とは違って、かよわいんですよ。
特にガルバは・・・・」
「い、いや、その、
ガルバをイジメると何故か楽しくて、ついだす。
まあ、最後のころは耐えきったり、
私達から逃げ切ったりしてただすが・・・・・」
アンも自白した。
なるほど、俺が知らないところでガルバも辛い日々を・・・・・
それで、強い精神力が鍛えられたのか?
「そうすると、
強い精神力があれば、防御はできるということか」
「そうですね。
どの程度強ければ良いかわかりませんし、
相手の能力の強さにもよるでしょうから」
ハニーがまとめてくれた。
うーん。
これまでの出来事をまとめてみると、
街の領主カルヴァンさんを、エデン集落の人間であるロイドに襲わせた。
もし、ロイドがカルヴァンさんを殺していたら
街の人たちはエデン集落に憎悪感を抱くかもしれない。
そして、黒ひげ軍人は巫女様達の殺人をガルバに
命令した。
つまり、相手にとって巫女様達が邪魔ということ。
そして、可能性として巫女様達が生き返りを出来ることや
能力を知らないのかもしれない。
結論からすると、
相手の目的は、
街とエデン集落の関係を悪化させるとともに、
邪魔な巫女様達を消すこと。
しかし、
全て失敗してしまったということか。
あれっ?
相手の作戦を未然に止めたの全部、
ガルバじゃねえか。
「そういえば、黒ひげ軍人は、お前たちの命を
狙っていたようだから、気を付けた方が
良いぞ」
俺は、どうせ、こいつらは大丈夫だと思ったが
一応、忠告しておいてやった。
「へえ。来るなら来いって感じだね」
ジュリアンが強気の発言をしている。
他の巫女様達も頷いているから同じ思いなのであろう。
トントン
誰かが俺達の部屋に来たようだ。
俺は、部屋の扉を開ける。
「ユウスケ、大変だ。
こちらに、街の軍人たちが向かっている。
200人はいると思うぞ」
火の見櫓監視部隊のオルガさんが俺に報告してきた。
工事部隊、いや監視部隊全員に声を駆け回っているのだろう。
何で、いきなり?
目的はなんなんだろう?
もしかして、集落の秘密兵器ガルバを
消しに来たのだろうか?
「わかりました。僕は集落に来る前に
相手からお話を聞いてきます。」
「頼む。俺達は、隠密に監視しながら
住民を守ってみせる。」
オルガさん、カッコ良い。
というか、この「隠密」という言葉が
工事部隊、もとい監視部隊の男達の心をくすぶっている。
陰に隠れて集落を守るみたいでカッコ良いのだ。
「私達も行きましょうか?」
ハニーが俺に声をかけてくれるが
絶対に断る。
何かやらかすに決まっているからだ
「大丈夫。俺だけで。
は・な・し・あ・い
だから」
「テレポーテーション」
俺は、巫女様達の返事も聞くことなく
急いでテレポーテーションした。
俺がテレポーテーションした場所は
街と集落の間にある広い草原だ。
ここでは、いろいろな野草などが生えており
集落に人間が取りに来ている。
たしかに、200人くらいの軍隊が街からやってきている。
先頭は、あの黒ひげ軍人で、ロバみたいな馬に乗っている。
馬に乗っているのが10人程度か?
俺は、黒ひげ軍人に向かって歩いていく。
俺に気づいた黒ひげ軍人は、軍隊を止めて
後ろの軍人たちに何か命令をしてから
下馬してくれた。
「私は、エデン集落のユウスケという者です。
この軍隊はエデン集落に何か用事があるのでしょうか?」
「おお。あなたがユウスケさんですか。
ダイス教祖様から話には伺っておりますよ。
私はダイス教防衛軍、少将のガルバットと申します。
別にエデン集落に目的があるわけではないですよ。
ここの草原で軍事演習をするだけです。
安心して下さい。」
黒ひげ軍人、ガルバットさんが説明をしてくれた。
なるほど。
軍事演習をするには、この草原は適しているかもしれない。
しかし・・・・・・
「いや、でも、ここの草原はエデン集落の領地で
長老たちには、説明をされているのですか?」
俺はガルバットさんに聞いてみた。
長老たちが許可をするならば、集落のみんなに
事前相談しているはずだからである。
「いえいえ。
ユウスケさん、ここは街の領地ですよ。
昔から。
エデン集落の人々に自由に使わせていただけです。」
あらっ。そうだったの?
それなら仕方ないな。
「いや、すみません。
知らなかったものですから。
それは、大変失礼いたしました。」
俺は、丁重に謝った。
「いえいえ、わかっていただければ
構いません。
では、私はこれで失礼いたします。」
ガルバットさんは苦笑しながら軍隊に戻っていった。
しかし、なるほど意識していれば精神攻撃は
なんともない。
ガルバットさんは、ずっと俺の脳に攻撃をしてきていた。
さらに、後ろで横に広がっていた軍隊からは、
隠れながらレーザー銃で俺に攻撃していた奴が
10人ほどいた。
うん。
俺に対する宣戦布告のようだが、気にしないでおこう。
今回こそは俺は何もしない。
ただ、レーザー銃を使えなくしただけだ。
バレなければ問題ない。
そう、思いながら俺は集落に戻っていった。
「ユウスケさん。お疲れ様です。
どうでしたか?」
おう、ガルバ君、運命の再会がこんなにも早く。
ホフク前進用通路から、シュンと忍者のように
ガルバが飛び出してきた。
「ガルバ。
こんな時に、随分、うれしそうな感じだな」
なんか、ガルバがニヤついているのである。
「テヘッ。
今日、街で滅茶苦茶、可愛い女性とデートしたっすよ。
あれは、マジで俺に惚れていたっす。」
一瞬、背筋にものすごい寒気が・・・・・
ブルブルブル
「ハハハ
そうだったんだ、良かったね。
軍隊は、草原で軍事演習をするだけだったみたい。
何でも、あの草原は街の領地だからって言ってた」
俺は、ガルバに説明した。
「マジっすか?
あそこの領地は集落のものだと俺は思っていたっす」
ガルバも俺と同じに考えていたようだ。
俺が聞いた話によると、街を建設するときに
境界線を作ったと聞いていたのだ。
何でも、今の街の領地はこの集落のものだったが
街の開発区域を定めて集落から独立したとか。
そりゃあ、違う社会の制度が一緒では混乱してしまうから
当然と言えば当然だ。
「長老たちに確認しましょうよ。ユウスケさん」
ガルバが俺に言ってくるが、
俺はまさに、今、長老のところへ行こうと思っていたのだ。
なんか、ガルバに言われていくみたいになって嫌な感じ。
「そうだな。一緒に行って聞いてみよう」
俺はガルバにそう言って、一緒に長老たちのもとに
向かった。
「ふむ。
困ったものじゃ。
集落を襲われるより、軍事演習の方が良いが
あそこの草原は、間違いなく集落の領地じゃ。」
長老達が困った様子だ。
「何か、証明になるような書類などはないのですか?」
俺は聞いてみた。
「口約束じゃよ。
当時は、この集落に文字も何もなかったからのう。
信頼しかないのじゃ」
そりゃそうか。
「では、街だけではなく、他の集落との領地の境界も
口約束だけですよね」
「そうじゃ。
前まで、ここは不毛な土地しかなかったしのう。
周りの集落では、色々と領地を巡って
争っているようじゃが、ここもどうなることやら」
長老たちも心配そうだ。
「こちらも、街から武器でも買っておいた方が
良いのかもしれんぞ。」
長老のひとり、ガイルさんが提案する。
街から武器を買ったら、余計相手の思うつぼだと
思うのだが・・・・・・・・
「うむ。確かに。
住民の命には代えられぬからのう。
武器をもっていれば、他の集落も襲っては来ぬかもしれぬ。」
長老のもうひとり、ジャガラさんは同意のようだ。
決して、武装をすれば襲ってこないとはならないのだが。
時には、それが互いに緊張感を高め、
自分達の首を絞める可能性もあるのだ。
「慎重にいかねばならぬだろうよ。
儂らだけでは、決められぬ。
各リーダたちと話し合ってみるか?」
長老のサイフォンさんだ。
長老は3人いるのだ。
ガイルさん、ジャガラさん、サイフォンさんだ。
今のところ、長老たちの意見は、
武器を購入するという方向性になりそうだ。
「駄目っすよ。
武器なんて買ったって。
あんな人を殺すだけの武器なんて、
俺達には必要ないっす。」
ガルバが長老たちに反抗している。
あらっ、素敵、ガルバ君
「うむ。
しかしのう、理想と現実は違うのじゃ。
ガルバよ。
強い意思や理想だけでは、どうしようもないことも
あるのじゃよ。
どちらにしろ、皆で話し合って決めようじゃないか」
長老ガイルさんが、興奮しているガルバを落ち着かせようと
している。
うーん。
この集落の平和も短いのか?
エレナやERENAZと同じように
俺も何か不安な気持ちになってきた。
とりあえず、俺に出来ることを、やってみるか。
この集落の方向性について、俺がどうこう言う立場ではない。
俺はそう思って、行動に移した。
「どうぞ、旦那様が寝室でお待ちになっております」
領主カルヴァンさんのメイドさんが俺を案内してくれる。
いつもいつも、何で寝室なんだ?
「ようこそ、ユウスケさん。
今日は、どのようなご用件ですかな?」
「すみません。
近頃、集落の外の様子が騒がしいようで、
領主のカルヴァン様なら、色々と情報を
知っているかと思いまして。」
俺は、率直にカルヴァンさんに聞いてみた。
一応、最終手段だったのだ。
なんせ、カルヴァンさんは、
ダイス教祖様や大商人のネイルさんの仲間なのだから。
「いやいや、私はもはや領主ではありませんよ。
私なんて、所詮、アクアットのゼルダさんから
指名されて領主をしていただけですから。」
あれっ?
カルヴァンさんが、もう、領主じゃない?
集落での殺人未遂事件から、1週間くらいしか
経っていないぞ。
「なにがあったんですか?
そんな、簡単に領主が変わるんですか?」
「まあ、私も街の人々のために頑張ったつもりでしたが、
貧困層が増える一方でしてね。
公共事業をふやしたり、他の集落などと
交渉して、貿易を活性化させたり頑張ったのですが
幹部たちに追いだされましたわ。
ハハハハハ」
笑い事ではない気がするが。
そうか、街は領主だけで運営していたわけではないのか。
そりゃそうだ。
「でも、話を聞くと追い出されるような理由はないような
気がしますが」
「いや、幹部たちによって、
民主主義という制度に変わったのですよ。
選挙というもので、街の代表を決めるのです。
住民から人気のあったトロイという者が、
今の代表ですよ。
私なんて、いつのまにか賄賂野郎として石を投げられる
くらい、人気がなくなってしまって。
ハハハハッハ」
だから、笑い事ではない気がするのだが。
「ダイス教祖様やネイルさんは応援してくれなかったのですか?
街では力がありそうですが」
俺は、気になって聞いてみた。
「手のひら返しですよ。
多分、私が邪魔になったのではないでしょうか。
トロイを一生懸命、応援していましたから。
追い出した幹部たちの裏には、彼らがいる気がしますよ。」
「邪魔になったというのは?」
「彼らには、ついていけなくなりましてな。
街の領土拡大や、他の集落の間接的な侵略、
などなど、私もそんな意図がなかったのに、いつの間にか
協力者になってしまいました。」
「それは、街がネイルさんからお金を借りていたり、
ダイス教徒の影響が大きいので、仕方がないのでは?」
「そうなのです。
私もそう思って、政教分離と街が独自に通貨を発行することを
幹部連中に相談しました。
そしたら、
あっというまに民主主義制度がつくられたということです。
ハハハハハ」
だから、だから、笑い事ではない気がするのだが。
「まあ、頑張っても殺されるだけですし
この間の集落の事件も、きっとそうだったんでしょう。
ある程度、貯金がありますから
これからは、彼らに関わらないように生きていこうと
思っていますよ」
なるほど。
俺には全然関係の無いことだが・・・・・・・
「そうですか。
そんな大変な時に、伺ってしまい、すみませんでした。
何かありましたら、いつでも集落に来てください。
長老たちも相談にくれると思いますよ。」
俺は、そう言って部屋から出ようとしたのだが。
「あー、そういえば、ユウスケさん、気を付けて下さいね。
幹部たちは、ユウスケさんから税金を取ると、騒いでいましたから。
私が領主だったときは、免除していたのですが・・・」
「俺から税金?」
「はい。基地の固定資産税と不動産の取得税というやつです。
ゼルダさんたちから取らなかったのに、ユウスケさんからは
とるなんて反対はしていたのですが・・・・
今度の代表トロイは、おそらく・・・・・・・」
領主の交代。
俺に全然関係あるじゃん。
「いくらくらい、払えば良いのですかね?」
「100憶くらいだと思いますよ。
ハハハハハ」
だから、笑い事ではない。
あっ、俺のことか。
ハハハハハハ
俺の星に帰ろうかな?




