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第10話 みんなの力

俺のリュックには調味料と大金が入っている。

本来、俺に支払われるべきだったお金が清算されたのだ。

全額、リュックには詰め込めないので

残りはホテルで管理してもらっている。


 「ねえ。それで、これからどうするの?

  美味しいものを食べ歩くの?」


エレナが俺に聞いてくる。

これからのことについて、4人の巫女様達には話していない。


 「まあ、俺についてきてくれよ。

  お前たちを養う約束は守るから」


俺は、そう言って、ニヤリと笑う。


俺達が歩いているのは、貧困層が集まるエデン集落だ。

住民たちは、4人の巫女様達を見て群がってきている。

巫女様達はメイド服から布切れに戻っており、

そして、歩く姿は巫女様モードだ。


いつまで巫女様モードでいられるかな?

俺が、こいつらの化けの皮を住民たちの前で剥がしてやる。


 「何故、巫女様達がこのような集落に足を運ばれているのですか」


ここの長老らしきお爺さんがエレナに尋ねてきた。

長老の後ろには多くの住民が立っている。


 「えっ?それは・・・・・・・・・」


エレナが言葉に詰まっている。

そりゃあ、俺が目的も何も話していないのだから説明できないであろう。


 「うほん。

  皆さま。巫女様達は今日より、しばらく

  皆様とともに生活がしたいとおっしゃっています。」


俺は、巫女様達の従者のように住民の方々に話した。


 うおー

住民の方々が驚かれているようである。


 「ちょっちょっと、ユウスケ

  どういうことよ」


エレナが小声で話してくる。

横に並ぶ他の3人の巫女様達も不思議そうな顔である。


 「まあ、いいから。

  俺に任せてくれ」


俺はエレナにそう言って笑みを浮かべる。


 「皆さんが、ここで苦労をされていることに

  巫女様達は心を痛めております。

  そのため、皆様とともに、ここで、共に働き

  共に衣食住をしたいとの事なのです」


俺は、住民たちに声高々に説明した。


 うおー

さらに住民たちの驚きの声が。


 「しかし、巫女様達に我々のような貧しい

  生活をさせるなんて。とても、とても」


長老が俺の前に来て、申し訳なさそうに言った。


 「このような生活になったのはあなた方の責任ではありません。

  しかし、何かのせいにして待っているだけでは

  何も変わらないのです。

  未来は、自分達で自ら築くもの。

  その、お手伝いを巫女様達が

  どうしても、やりたいということなのです。

  嫌がられても、蹴られても、殴られても。」


俺は、長老を含め住民の方々に説明した。


ガヤガヤとしている。

自分達で自ら築く?

そんな声が聞こえてくる。


 「どういうことか、よくわかりませぬが、

  我々で、この生活を改善するということ

  ですか?」


長老は、頭が良いらしい。


 「そうです。

  まずは、自給自足。

  からはじめましょう。

  巫女様達が先頭に立ってくれます。

  巫女様達を信じて下さい。

  信じる者は救われます。」


どこかの宗教団体のように俺はなってしまった。

そして、後ろを振り返ると

4人の巫女様達が、顔をポカーンとさせて

唖然としていた。


フフフフフ。この場で、逃げることも

俺を責めることも出来まい。

お前たちは、しばらく貧乏生活をしながら

ここで、奴隷のように働くのだ。

そうすれば、お前たちの正体が絶対にバレるはず。

いつまで巫女様モードでいられるか楽しみだ。


 「ありがとうございます。ありがとうございます。

  そのお気持ちだけでも、もったいないです。

  しかし、自給自足とはどのようなことから

  始めれば、良いのでしょうか?」


長老が俺に聞いてくる。


 「そうですね。

  お金がないと食べ物が買えない。

  ならば、自分達で食料を調達するしか

  ありませんよね。」


俺があたりまえのことを説明する。


 「まあ、そうでございますが。

  ここは、貧弱な土地ですし。

  山には狂暴な動物たちがいて、とても

  食料を調達するなど」


長老が、そんなのは無理だと言いたげだ。


 「まずは、地形に詳しい方と

  若い男性の代表者達を集めて下さい」


俺は、長老にそう言ってお願いした。

そして、俺たちは長老の家に集まることになった。


 「ユウスケ、こ、この展開はいったい?」


エレナが俺に聞いてくる。


 「ま、まさか、貴様、私達をはめたのですか?」


ハニーが鬼の形相だ。


 「これでは、逃げようにも逃げられないだす」


アンが泣きそうな顔。


 「ユウスケごときに、騙されるとは」


ジュリアンが悔しそうな顔である。


 「俺は、騙していないよ。

  ちゃんと、4人とも養うよ。

  大丈夫。ここで贅沢をしたって構わないよ」


俺は、4人の巫女様達に言ってやった。


 「ぐぬぅ。」


4人の巫女は余程悔しいのか、声にも

ならないようだ。

さすがに、巫女様達でも、このエデン集落で贅沢三昧は

できないであろう。


俺たちは、長老の家の前に集まった。

俺、巫女様達4人

長老らしき人が3人、若い男性が5人だ。


 「まず、山に狩りに行きます。

  狩りには、3人の巫女様達と若い男の方々です。

  男の方々は、15名ほど集めて下さい。

  大丈夫です。

  巫女様達が守ってくれますから

 信じて下さい。」


俺は、若い男性たちに説明する。

3人の巫女様とはエレナを覗いた3人である。

エレナが同行しては動物たちが逃げるからだ。


若い男どもは驚いた顔をしているが。


 「大丈夫です。私たちが、あなた方を

  守ります。

  安心して下さい。」


ハニーが、巫女様モードで男どもに語り掛ける。


その言葉で、何故か若い男どもは安心したようです。

普段、山の中の洞窟で生活している巫女様達を

信じたのであろう。

「わかりました」と了解してくれた。


 「このあたりの、地形について伺います。

  海が近くにあるのはわかるのですが、

  川も遠くにあると聞いています。

  どのような感じなのか教えてもらえますか?」


俺は、長老達に問いかけた。


 「そうですね。ここが集落だとすると

  歩いて、半日くらいのところに山から流れる

  川がありまして・・・・・・・」


長老のひとりが、地面に地図のようなものを書きながら

説明してくれる。


 「なるほど。それでは、その川から水を

  ひきましょう。

  エレナ様と私がお手伝いを致します。

  狩りに行かない人たちを集めといて下さい。

  男性も女性も参加できる方は全員です。」


俺は長老たちにお願いした。

集落には、大人が400人程度、住んでいるようだ。

その他、子供や赤ちゃんが100人くらい。

人数的には十分だ。


 「川の水をこちらまでひく?

  どれだけの年数がかかるんですか?」


長老の一人が問いかけた。


 「エレナ様の力をもってすれば、

  それほどの期間はかからないでしょう。」


俺は、自信満々の顔で説明する。

隣では、エレナが偉そうにしている。

うん、こいつは褒めれば、何でもするタイプだ。


そして、それぞれ役割分担を決めて、

仕事に取り掛かるのであった。


まずは、事前準備だ。

俺とエレナはテレポーテーションで広大に広がる

乾燥地帯に来ている。


 「ねえ。何をしようとしているの。」


エレナが俺に疑問を投げつけてくる。


どうせ、説明してもわからないだろうから。


 「うん。とりあえず、見ていて」


俺は、エレナに説明をすることなく、能力を

発動させた。


何故か、俺の能力は格段にレベルアップしている。

特にホテルで修行していたわけではないのだが。

何回か死んで。

毎日、仕事をして、温泉に入って、宴会をしていただけだ。

何故だろう?


俺が能力を発動させると、乾燥地の表土が2mほど削られた。

そう、ここを広大な田んぼにするのである。

あとは、川から水をひくのだが、乾燥地帯では

すぐに、水が浸透してしまう。

なので、近くの草原から黒土を運び1mほど被せた。


水路を作ることも忘れない。

水路は黒土で固めてあるが、さらに石を引く。

そのほうが、微生物が繁殖するのだ。


水路は、集落近くまで作った。

その先は住民たちにやってもらう。

何もかも、やってしまっては住民達のためにならない。

自分達で作り上げ、そして技術を自ら集積してもらうのだ。


 「わかった。田んぼを作るのね。

  与作さんのところと一緒だ。」


エレナは、言葉で説明するより、やって見せた方が

理解できる。


 「よし、エレナ、次は川まで行くぞ。」


俺はそう言って、川までテレポーテーションする。


川から先ほどの乾燥地までの支流を作るのだが

勾配を作らなければならない。

それと、豪雨などの時の対応を色々と考えなければ。


まず、川からの支流は1本だ。

そこから更に2本に分け、更に2本にわける。

分ける方法は山を作る方法だ。

俺の星で言う古墳みたいなものだ。

水の流れを変え、水の勢いを抑える役目もある。

 

俺は、イメージを作ると能力を発動する。

山をいくつも作り、支流をつくった。

土を削ったところは、小さな湖になるであろう。


 「では、開通式をエレナ様お願い致します。

  あそこを、ドカーンと一発派手に。」


俺は、最後の仕上げをエレナに頼んだ。


 「フフフ。任せなさい」


エレナは偉そうに言いながら、

川と支流の間を爆破させた。


ドカーン

川の水は乾燥地の方へ勢いよく流れていく。

 

さてさて、うまくいくだろうか?

俺とエレナは、乾燥地に水が広がっていることを

確認して、集落に戻るのであった。


 「うおー。

  なんていうことだ。

  景色が全く変わってしまった。」


長老たちが、年の割に大げさに驚いている。


 「これも、エレナ様のお力です。

  皆様が、エレナ様を信じたことによる

  力です。

  信じる者は救われるのです。」


俺は、似非宗教団体の幹部になっている。


 「それで、これから私たちは何をすれば

  良いのでしょうか」


長老のひとりがエレナに尋ねる。


 「えーと。・・・・・・」


エレナが答えられるわけがない。


 「うほん。

  エレナ様から聞いた話によると

  湿地帯には、このような植物が多くあると

  聞いております。

  これを女性の方々で集めて下さい」


俺は、イネのような草を長老たちに渡してお願いした。


「はいはい。沢山生えております。

  それを収穫して来れば良いのですね。

  わかりました。」


長老のひとりがイネを、見ながら了承してくれた。


 「男性の方々は、水路を街まで引いてもらいます。

  道具は、エレナ様が用意してくれましたので

  お使いください」


俺はそう言って、スコップを100本程度渡した。

結構、スコップを作るのは苦労した。

鉄など無いので、石を削り研磨して作ったのだ。


水路の土木工事の指示は俺が行った。

エレナは、女性陣が集めてきたイネの脱穀を

指導してもらう。

与作さんのところでエレナも修行したのだ。

これぐらいのことは出来る。


集落まで、水路により水が届いた。

後は、各家庭までさらに支流を作る。

これで、水汲みを川まで行かないで済む。

 

工事のコツは、男性陣はすぐに理解したようで

作業が早かった。

スコップを持ったもの100人は勾配をつけながら掘っていく

持っていないものは、砂利や石を運び敷き詰めていく

 

みんな良く働く。

自分達の生活が変わることを理解しているのだろう。

ほとんど休まず、1日中夜まで作業をしてるのだ。

おかげで、1日で完成してしまった。


水路には魚も泳いでいる。

砂利を敷き詰めたため、水質も透きとおっている。

おそらく、飲んでも大丈夫なくらいだろう。


 「出来ちゃいましたね」


俺は、完成の言葉を長老に言った。


エレナ達の脱穀も完了したようである。

脱穀した米は、広い敷地で天日干しされている。

これで、お米も食べられるようになるだろう。


 「ありがとうございます。ありがとうございます。

  エレナ様」


長老たちや住民達が、座り込んでお礼をしてくれる。

エレナに。


エレナは、未だ巫女様モードである。

手をかざして、何やら言っている。

本当に何なんだろう?

エレナのあの発する淡い光は?


まあ、崇拝されるのも今のうちだが。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ハニ―、アン、ジュリアンは集落の男どもと一緒に

山の中に入った。


 「巫女様方、乗り心地は如何でしょうか?」


狩り部隊隊長のゴンザブロウが巫女様達に伺いをたてる。

巫女様達は、男どもに神輿のような乗り物のうえで、

椅子に座って運ばれている。

 

男どもの狩りの邪魔でしかない。


 「お尻が痛いのですけど、大丈夫ですよ」


ハニーが偉そうに文句を言いながら答える。

別に、ハニーの能力でみんな山の中まで

飛ばせば楽なのであるが、ユウスケから、

男達だけで狩りが出来るようにするように言われているのだ。


癪ではあるが、仕方ない

大金持ちのユウスケには逆らえないのである。

 

 「デビルオオカミが出たぞ。

  逃げろ。

  巫女様をお守りしろ。

  俺が犠牲になって・・・・」


狩り部隊の戦闘のひとりが騒いだ。

デビルオオカミは、巫女様達の顔を見る。

巫女様達もデビルオオカミの顔をみて、ニヤリと笑う。


 ズババババババッ


そう、

必死に逃げていくのは、デビルオオカミの方だった。

大きな体の割に、木と木の間を起用に

すり抜けて逃げていく。

デビルオオカミは賢く、情報を共有し合っているのだ。


 「ま、まさか

  これは、巫女様達のおかげですね

  ありがたや。ありがたや。」


狩り部隊の15人の男は、みんな、巫女様達を崇拝した。

 

山への侵入者は、デビルオオカミが許さない。

自分達の獲物を奪われる可能性があるからだ。

しかし、あまりの強さに、デビルオオカミが増殖

しすぎているのも問題だ。

山の生態系が崩れてしまうからだ。

 

人間がある程度、デビルオオカミを間引きできれば

良いのだが、デビルオオカミの方が強すぎて無理なのだ。


 「ジャンボ猪が出たぞ。

  逃げろ。 

  巫女様をお守りしろ。

  俺が犠牲になっている間に。」


また、狩り部隊の戦闘のひとりが騒いだ。


 「何を言っているのですか。」

 「闘わなければ、意味がないではないだすか」

 「何のために、武器をもっているんだい?」


巫女様達は、逃げそうになる狩り部隊の男を引きとめた。

男どもには、狩りをするための弓矢や斧を渡していた。

危険な時は、巫女様達が助けるというもとで

狩りを行うようにユウスケから言われていた。


ハニー達なら狩りは容易であろうが

それでは駄目なのである。

自分達で出来なければということであった。


ジャンボ猪が、狩り部隊めがけて突進しようとしている。

狩り部隊の男どもが弓矢を放とうとするが

手が震えて、弓を張ることも出来ない。

斧を持っている男達も、足をガクガクさせている。


ハニーは、その様子を見て、ため息をつく。


 「無理じゃないだすか?」


アンも諦めたような言葉を吐く。


 「私達で、やっつけて、

  あいつらが、倒したことにしちゃう?」


ジュリアンが、駄目な提案をしてしまう。


ハニーは、仕方ないとばかりに

フワッと飛んで、部隊を庇うかのように前に降り立った。

そして、ハニーの行動を見て、アンとジュリアンも。


 「巫女様方、何をしているのですか?」

 

その瞬間、ジャンボ猪が巫女様達に突進してきた。


 うおー


狩り部隊の男達が雄たけびをあげながら、

巫女様達の前に出て、ジャンボ猪に突進していく。

斧でジャンボ猪を殴る者、近距離から弓矢を射る者。

ジャンボ猪に吹き飛ばされて、飛んでいく者。


 「巫女様達に、ジャンボ猪を近づけるな。

  命を懸けて守るのだ」


そんな、声があちらこちらで聞こえてくる。

吹き飛ばされた男どもは、ハニーの能力によって

ジャンボ猪のもとに呼び戻される。

 

ジャンボ猪の肉は厚い。

斧で殴っても、矢がぶっ刺さっても中々

倒れない。


狩り部隊の男達も、ジャンボ猪も血だらけだ。


 「急所を狙うだすよ。急所を」


アンが狩り部隊に助言をする。


 「足を折れば、突進できなくなるよ」


ジュリアンも助言をする。

巫女様達は、狩り部隊の応援をするようになった。


男達は、巫女様達の助言を命がけで遂行する。

最後に、狩り部隊リーダーのゴンザブロウが斧で

ジャンボ猪の額を殴って、決着がついた。


 ウオー


狩り部隊の男達が雄たけびをあげる。

 

 ヨッシャー


巫女様達も大喜びのようである。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


3人の巫女様達が帰ってきた。

男どもが、ジャンボ猪を1頭運んで歩いてきている。

 

1頭辺り、200Kgだとして、食べられるのが4割程度

80Kgのお肉にありつける。

集落の人間、全員が思い切り食べられる量だ。


 「うおー。凄いのう。

  おぬしたちが狩ったのか?」


長老が、先頭の若い男性に聞く。


 「はい。道具があれば何とか倒せることが

  わかりました。

  まあ、何度も巫女様達に助けてもらいましたが」


若い男性は照れくさそうに説明した。

3人の巫女様達は、未だに巫女様モードである。


フフフ。巫女様モードも今のうちだ。

化けの皮を住民達に

俺は、住民達の喜ぶ姿を見ながら笑みを浮かべるのであった。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そして、今晩は巫女様達の歓迎会という名のもとに 

宴会が開催された。

ここの集落の名はエデン。

エデン集落の中心地に焚火を燃やして、その周りを踊って

住民たちは楽しんでいる。


この集落独自の打楽器であろうが音色が心地よい。

巫女様達は、4人とも高台に座っており祀られている。


ジャンボ猪や川魚は、俺が女性たちに教えながら料理した。

カーネルさんから教わったのが役に立っている。

味付けは、塩や香辛料などここにある質素なものだ。

俺の調味料を使って舌が贅沢になっても困る。

街の住民達も家から豆や野菜などを持ち出してきている。

 

そして、巫女様達からも酒を没収して寄付させた。

俺の金で大量に買ってきたのだ。

文句は言わせない。

どうせ、こいつらは我慢できずに自分達も飲むだろうから

そして、その時こそ・・・・こいつらの化けの皮が


料理を、みんあ美味しく食べてくれている。

お酒については、巫女様達がほとんど飲んでいる感じだ。

住民達は、ほとんど口にしない。

俺も今日はお酒を我慢だ。


 そろそろか。


 「皆の者、聞くがよい。

  われらが来たはらには、もう大丈夫にゃ。

  男ろもは、われらが下僕となりゃ。」


ジュリアンは酔っぱらって気持ちが大きくなっているようです。

よしっ。出たな下僕ワード。


 「そうれふ。

  この集落を豊かにして、わたしたちに

  贅沢をしゃしぇるのれふ」


アンも酔っています。

贅沢ワードが出ました。

フフフ、やっと本性が出始めましたね。


 「われらの力を見よ」


ハニーがそう言うと、広場にあった大きい岩石が

空高くまで舞い上がった。


 ドカーン

花火のようである。

細かくなった破片がキラキラと振ってくる。


ハニーとエレナの共同作業であろう。


しばらく、広場は静まり返ったが

住民達の一部は座り込んで、巫女様達を崇拝し始めた。


あれっ?

何か、俺が思っていたのと違うような展開。

住民に醜態をさらして軽蔑されるはずだったのに。


なぜか、神様扱いまで格上げしていないか?

いやいや。

どうせ時間の問題だろう。

明日から、またやることは沢山あるのである。

絶対に、ボロが出る。


そして、住民全員がエレナたち巫女様を崇拝している

わけではない。

エレナ達をシカトして、踊っている者たちもいるのだ。


 「私は、アウディと申します。

  ユウスケ様もお休みになったらいかがですか?」


ショートヘアでクリリとした目の可愛い感じの女性が

俺の横に来て、話しかけてきた。

この娘もエレナ達を崇拝しているわけでもなさそうだ。


 「ありがとう。

  でも、すごいですね。

  こんな苦しい生活なのに、みんな楽しそうに」


俺は、目の前で楽しそうに踊っている人たちを見て話した。

 

 「うふっ。おかしなことを言うのですね。

  毎日が苦しいから、少しの楽しさが、凄く楽しいんですよ。」


アウディも祭りの様子を見ながら言った。

なるほど、若いのに良いことを言うな。

喜びや楽しさなんて、人によって違う。

毎日贅沢していたら、喜びや楽しさを見つけるのも大変だろう。

 

この娘の純粋な話を、あそこで足を開いて飲んでいる巫女様達に

聞かせてやりたい。


俺が、そんなことを思っていると、

アウディは、俺の右腕に腕をまわしてきた。

純粋な割には、随分と、積極的な娘だ。


 「ユウスケ様は、彼女とかいないのですか」


アウディが隣から上目遣いで、俺に尋ねてくる。


 「ハハハ。モテるように見えますか。

  いるわけないじゃないですか」


俺は、少し照れながら、そして何かを期待して応えた。


 「えっ?いえいえ、モテそうですよ。

  でも、いないんだったら

  私、立候補しちゃおうかな」


アウディは、体を更に俺にくっ付けて、悪戯っぽい顔で

言ってきた。


これって、もしかして

モテ期が到来したのだろうか

4人の巫女やジョニーさん、そして

ダイス教の人たちと接してきた俺には、

このアウディがとても純情そうで可愛く見えてしまう。

これから、俺の純愛ストーリーが始まるのであろうか?


 「そんな、ジョーダンで、僕をからかわないで下さい。

  ハハハ」


俺は、どう対応して良いかわからず、

左手で頭を書きながら、とりあえず誤魔化した。


 「ジョーダンなんかじゃないですよ。

  とても、ユウスケ様は素敵だと思いますよ。」


アウディはそう言って、俺の体を指でなぞってくる。

こんなに若いのに。

随分テクニシャンですこと。

俺はアウディを見つめてみた。

うん、可愛い。

スタイルは?

 

胸は小さいけど。

あれっ?

何か違和感がある。

下半身が、布切れでは隠し切れないほど

膨らんでいる気が。


 「あ、あのう、

  アウディさん?

  も、もしかしてですけど。

  ダ、ダイス教徒ですかね。

  間違えてたら、ごめんなさい。」


俺は、思わず聞いてしまった。


 「あらっ。どうして、わかったのですか

  そうです。

  私は、ダイス教徒。

  もしかして、ユウスケ様も。

  だったら、話は早いですよね。」


アウディは、大人っぽく微笑みながら言う。

俺はダイス教徒ではありません。

そして話は早くもなんともありません。

 

ダイス教のくそったれ。

こんなところまで侵食していたのか?

チクショウ。

俺の純情を返してくれ。


 「ち、違いますよ。

  私は巫女様達を崇拝する身ですから」


俺は、エレナ達をたてに、ダイス教徒を否定させてもらった。

嘘をついた自分に心が痛む。


 「フン。あんな汚いババアたちを崇拝していると

  心も汚くなりますよ。

  ダイス教に改心することをお薦めしますよ。

  自分の心に正直になれますから。」


アウディは指で俺の体をいじくってくる。

確かに当たっている気もするが。

そうですね。自分の心に正直になります。


 「アウディさん、すみません。

  僕は巫女様達に呼ばれたようなので

  ちょっと行ってきますね。」


俺は、料理をもって、エレナ達の元へ逃げるように

その場を立ち去った。


エレナ達は、酒を飲んで上機嫌である。

股を広げながら飲んでいる姿は、まさにオヤジだ。

こんな姿を見て、よく崇拝できるな。


 「ユウスケ、私達を騙しらわね」


アンが、少し怒っているようである。


 「まあ、今回は、下僕が増えらようらので

  良しとしらしょうよ。アン」


ジュリアンがアンを宥めてくれている。


 「何で、そんなに下僕が欲しいんだ?」


俺は、素朴な疑問をジュリアン達に聞いてみた。


 「下僕が増えればうれしいのよ」


アンが答えてくれた。

うん、答えになっていない。


 「ユウスケは、わらしの下僕でしょ。

  なんれか、わからないのか。

  下僕のくせして。」


エレナが偉そうだ。

とりあえず、ゲンコツをかましてやった。

酔っているからか、効いていない様子。

タンコブは出来ているのだが。


こいつら、口が回っていないから

言っていることが良くわからないが。

というより、全くわかならい。

まあ、なんか喜んでいるようだからいいか。


 「あのー。信者たちが皆さんを見ていますが。

  そのような、恰好でよろしいのですか?」


俺は巫女様たちに問いかけた。

巫女様達は、

椅子にもたれかかり、足を広げてガハハハと飲んでいるのだ。


 「いいろよ。いいの

  隠してたってしょうがない。本心をぶつけて何ぼよ。」


タンコブのついたエレナ様は開き直ったようである。


 「そうよ、そうよ」


他の巫女様3人も、みんなも賛同している。

うーん。

何故だ。

俺の作戦は成功している。

酒を飲んで、巫女様モードは解除されている。

しかし、この醜態を住民達が見ても全然ひいていない。

いまだに、尊敬の念が消えていない。


俺は、巫女様達がいる高台から

広場を見渡す。

楽しそうに打楽器をする者

楽しそうに火の回りを踊る者

楽しそうに食事をする者

楽しそうにイチィチャするカップル


まあ、みんな楽しければ良いだろう

と思っていたのだが。

 

片隅に、赤ちゃんや子供を抱っこする母親の

集団が見えた。

この人たちは、楽しそうではない。

何か、困っているような。

どうしたんだろう?


俺は、高台から歩いて降りていき

その母親たちの元に行く。

赤ちゃんや、子供達は痩せ細り

具合が悪そうだ。

もしかして、エレナ達に何とかしてもらいたいのだろうか?

皆、エレナ達の高台の方を見上げている。


 「どうされたのですか?

  巫女様達に何かご要件でも?」


俺は、母親のひとりに聞いてみた。


 「いえ、巫女様達が楽しそうなので

  邪魔をしてはならないと思ってはいるのですが。

  もし、可能であれば

  子供に祝福を頂けたらと思って・・・・」


母親は、抱える赤ちゃんをあやしながら俺に答えた。

他の母親たちも俺とその母親の会話を不安そうに聞いている。


祝福を頂く?

それ以前の問題だろう。

おそらく、栄養失調。


いや、免疫低下による

なんらかの病気にかかっているかもしれない。

そんな、赤ちゃんや子供がこんなに。

20人以上はいるのでは。


みんなが楽しくしている、

特に巫女様達が楽しんでいる一方で

こんなに困っている人がいる。

俺に何か出来るのか?


 「なるほど、わかりました。

  皆さま、僕についてきてください。

  巫女様の元に案内します。」


俺は、母親たちにそう言って、

また、巫女様達がいる高台まで歩いていく。


 「巫女様がた。

  この者たちが祝福を頂きたいそうなのですが

  よろしいでしょうか?」


俺は、エレナをはじめ巫女様達に伺いを立てる。


 「わかりました。

  よろしいでしょう。

  順番に並んでください。」


エレナが酔っていたのに、不思議と

巫女様モードになった。

他の巫女様達もシャキンとしている。

 

エレナ達も子供達を見て気づいたのであろう。

子供ひとりに4人で手をかざし祝福をしている。

手からは、やはり淡い光が。


俺は、子供の精神エネルギーをみている。

子供の精神エネルギーは体力と比例して落ちているようだ。

恐らくは、栄養失調による免疫低下。

それにより、何かしらの菌やウィルスが体内で繁殖

してしまったのだろう。


人間は、体内で数えきれないほどの菌やウィルスと

共存している。

病気にならないのは、免疫力がバランスをとっているのだ。

免疫力があれば、大した病気にならないが

免疫力が弱まると、体内の菌やウィルスが増加してしまい

バランスが崩れて何らかの病気になってしまう。


栄養と免疫力。

それが出来れば良いのだけど。

そう思って、俺は子供の様子を見ていたのだが

巫女様達が手かざしをすると

子供の精神エネルギーが増えていっている気がする。


やはり。

こいつら、精神エネルギーを奪うだけでなく

与えることも出来るのだ。

ただ、何かそれだけでもないような気もするのだが。

 

精神エネルギーは肉体にも影響を与える。

あとは栄養を与え、腸を活性化させるような食事を

食べれば、徐々に回復するかもしれない。


そうであれば、俺に出来るのは食事の提供。

この祭りにはふさわしくないが

暖かい栄養たっぷりのスープでも作ってみるか。

俺は、そう思って母親たちに巫女様達の祝福が終わったら

俺のもとに来るように伝えた。


出汁は、魚系や椎茸からとる。

野菜や肉ををいっぱい煮込んで、塩などで味付けを

して完成だ。

大きな土器で作るので時間はかかったが

母親たちは、器をもって順番に並んで待ってくれていた。


 「食欲がなくても飲めると思います。

  栄養もたっぷり入っているので、お子さんと一緒に

  召し上がってください。」


俺は、母親たちにそう言って、配膳していった。


しかし、貧困の犠牲はやはり子供に来るのか。

何とかしたいが、すぐに解決できるものではない。

子供がウィルスなどで病気になれば

その子供は、大量にそのウィルスをまき散らし

この集落に多くの病人が増えてしまう。


人間に悪影響を与える菌は、衛生面で何とかなる。

しかし、ウィルスは、動物と共存するから

自分達の免疫力で

何とかするしかないのだ。

この課題を解決しなければ。


祭りは終わった。

俺と巫女様達は、疲れ切って

高台で雑魚寝した。

長老の家で泊ってくれと言われたが

移動するのも面倒くさくなっていたのだ。


うん。

また、巫女様達にエネルギーを奪われた。

子供達全員に祝福をしたあと、

エネルギーが少なくなったとか

騒いでいたから、間違いないだろう。


俺達が集落に来て3ヶ月が経った。

いくらか、食事事情は改善している。

男どもは、巫女様達と山に狩りに行き、

毎日、お肉や山菜を食べられるようになった。


工事部隊の大部分は、職人になっている。

農機具や狩りの道具、鍋や包丁など様々な職人だ。

製鉄技術を習得すると、すさまじい勢いで

そごく性能の良い代物が作れるようになったのだ。

 

女性たちは、エレナと一緒に農業に従事して米や野菜などを

収穫している。


他の女性たちは料理を研究しているので、

今では様々な料理が食べられるようになった。

エレナも満足している。

 

田んぼの他に、畑も作った。

果樹や野菜を栽培している。

ここの星は、温暖化なので育つのも速い。

水路を開くと噴水のように放水する仕組みも作った。

サイフォンの原理である。


豆類なども収穫するのだが保存食として

納豆の作り方も教えた。

納豆のような発酵したものは腸に良いと

聞いたことがあるからだ。

 

いわゆる菌によって腸を改善するのだ。

腸が改善すれば免疫力もあがる。

枯草に茹でた豆を包んで作る。

枯草菌が豆を発酵させてくれるのだ。


醤油や味噌などの発酵食品も作れる。

海が近いので塩は豊富にあるのだ。

大量の貝殻に海水を入れ干して塩をとっている。

薄い土器で海水を煮詰めても塩を確保しているのだが、

マキがもったいないので、あまりやらない。

塩があると料理のレパートリーが増えるのだ。


衛生面で困ったのは、飲料水の確保、そしてトイレとお風呂だ。

つまり、水回り。

俺は、工事部隊に残った男達と土木作業を行っている。


各家庭に水道やトイレ、お風呂を作るのは大変だ。

なので、集落にいくつかの共同井戸、共同トイレ、共同温泉を作った。


まあ、温泉はさすがに掘るのが大変なので俺の能力を使った。

1500mくらいは、掘ったのではないだろうか。

工事部隊は、岩で浴槽をつくり、樹木で周りを囲ったがセンスが良い。

自然に囲まれた感じで温泉に入れそうだ。


問題は温泉の排水だった。

ホウ素やフッ素を垂れ流すわけにはいかない。

地下水にも影響を与えたくない。

なので、地下水脈よりも下までの排水路を俺の能力で作った。


トイレは川の水を利用した。

川から集落に流れる水が常に共同トイレに流れている。

用を足せば、あっという間に勝手に水が外に運んでくれるし、

風通しも良いので、臭い匂いも無いのだ。


人間にとって、臭い匂いが無いということは

人間にとって悪い菌が繁殖していない証拠だ。


行きつく先は、農地の片隅に作った大きな穴だ。

まあ、大きな肥溜めみたいな感じだが石や砂利も

敷き詰めてある。

トイレから流れる水の通路には木材で蓋をした。

さすがに、流れるものを見たくはない。


難しかったのは、この肥溜めから農地に

栄養たっぷりの水をどうやって供給するかだ。

この肥溜めの水位は農地より格段に低いのだ。

農地より高いところまで水を汲み上げなければならない。

そう、有機物を循環させるのだ。

 

ここエデン集落は、元は広大な乾燥地で風通しが良い。

なので風車により水を汲み上げる方法を考えたのだが

木材の加工が難しすぎる。

さすがに、材料は俺の金で街から購入してきた。

 

完成した巨大な風車は、農地のシンボルとなった。

水を汲み上げるだけでなく、種からの搾油にも利用できる。


お金も多少、稼いでいる。

食料などを俺のホテルに売っているのだ。

特に醤油や味噌は良く売れる。


ただ、住民に食料を分け与えて余ったものしか

売ってはならないと集落で取り決めをしている。

つまり、集落内ではお金を使うことがないが、

集落で揃わないものは、そのお金を使って購入してくるのだ。


なんだかんだで、赤ちゃんや子供達も

元気になった。

 

俺のお金で、この貧困な集落を何とかしたいと思っていたが

結局、お金は風車の材料くらいで何とかなってしまった。

しかし、ここまでくると俺の欲望は更に高まってくる。

 

学校や病院、そして娯楽だ。

まあ、娯楽は生活にゆとりが出来れば勝手に生まれるだろう。

病院はないが、薬草に詳しい爺ちゃんや祖母ちゃんはいる。

エレナ達、巫女様も何故か治療みたいのことが出来る。

だから、今は学校だ。

 

 「長老、ここの住民は文字を書いたり計算は苦手だよね」


俺は、長老のサイフォン長老に聞いた。


 「苦手というより、出来ませんね。

  何せ、必要が無かったもので」


サイフォン長老は答えてくれた。


 「だったら、学校を作りませんか?

  文字や計算を勉強するのです。

  まあ、やりたいひとだけ勉強すれば良いのですが」


俺は、サイフォン長老に提案した。


 「ユウスケ様、勉強をして、色々覚えて

  何かに役に立つのですか?」


サイフォン長老は俺に聞いてくる。


 「うん。勉強は覚えることよりも、頭をきたえることが

  重要なんですよ。

  色々と、生きていくうえで役に立つのです」


何か、どこかで聞いたようなセリフを俺は言ってみた。


 「そうなんですか。

  しかし、その勉強を教える人がいないのでは?」


サイフォン長老が当たり前の課題を投げかけてきた。

そうなのだ。

ここには教師になれる人材がいない。

ならば、街から探すしかないだろう。


 「わかりました。

  教える人は、僕が探してきます。

  なので、前向きにご検討ください。」


俺はサイフォン長老にお願いして、街に歩いていくのであった。


 「おーこれはこれは、

  ユウスケ様、どうぞどうぞ、こちらの寝室へ」


俺は、この街の領主カルヴァーン様のお宅にお邪魔した。

なかなかの豪邸である。

メイドさんもいる。


俺はメイドさんに、カルヴァン様のもとへ

案内されたのだが。

何故、俺がいきなり寝室に行かなければならないのだ。


 「いえいえ、ここで結構です。

  実は、教師を探しているのですが

  どなたか、ご紹介していただけないかと

  お願いに伺いました。」


俺は、早く帰りたかったので直球で聞いてみた。


 「ほう、そうでしたか。

  うーん。

  あっ、おります、おります

  紹介状を書いて差し上げますので

  それを持って、尋ねてみて下さい」


カルヴァンさんは親切にそう言ってくれた。

助かった。

俺に、この街の人脈はない。

なので、人脈のある人にお願いしに来たのだが。


 「では、寝室で紹介状を書きますので

  どうぞどうぞ、こちらの寝室へ」


カルヴァンさんが笑顔で、しつこく寝室に誘う。


 「いえ、ここで待ってます。

  おかまいなく」


俺は、カルヴァンさんのせっかくの誘いを断り続けた。

そして、俺は、カルヴァンさんから紹介状と

その方の家までの案内図をもらって、

逃げるように、カルヴァンさんのお宅を出て行ったのである。


 トントン


 「はい、どちら様ですか?」


奇麗な女性が、玄関から出てきた。

茶髪ショートで切れ目、痩せているからか

出るところは、あまり出ていない知的な感じの女性だ。

ま、まさかダイス教徒?


 「ジュナさまのお宅で間違いないでしょうか?

  それと、ダイス教徒ですか?」


俺は、その奇麗な女性に聞いた。


 「はい、私はジュナですけど、

  ダイス教徒では、ありませんよ。

  何ですかいきなり、わけのわからないことを

  聞いてきて。

  押し売りなら結構です。

  あと、別に彼氏も募集していません。

  お金もありません。」


ジュナさんは聞いてもいないことを色々と話してくれる。

良かった。

ダイス教徒ではないらしい。

俺にとって、ダイス教はトラウマでしかない。


 「いえいえ、実は教師を探していまして。

  これ、カルヴァン様からの紹介状です。」


俺は、カルヴァンさんからの紹介状を渡しながら説明した。


 「なるほど。

  ユウスケさんというのですね。

  わかりました。

  中でお話を伺いましょう。

  絶対に、押し倒したりしないで下さい」


ジュナさんは、紹介状を読んで安心したのか

俺を家の中に入れてくれた。


絶対に、押し倒したりしないで下さい?

これは、お約束というやつであろうか?

逆に押し倒せという。


 「エデン集落で、誰も教師が出来るものがいないもので

  もし、よろしければジュナさんにお願いできないかと。

  聞くところによると、非常に優秀な方で

  言語や数学だけでなく、化学まで秀でていると。」


俺はジュナさんにお願いしてみた。


 「いえいえ、それほどでもありますよ。

  まあ、暇ですから引き受けても良いのですが

  条件があります。

  まあ、絶対に無理でしょうけど。」


ジュナさんが、引き受けてくれそうで断っている感じだ。


 「その、条件とは?」


俺は、率直に聞いてみた。


ジュナさんは手でOKサインをしている。

 ?????


あー。お金か。


 「如何ほどですかね?」


俺は恐る恐る聞いてみる。


 「500万。私の借金です。

  ねっ。無理でしょう。

  もう、私には体を売るしか方法が無いんですよ。

  どうせ、誰も助けてくれないんだから。

  まあ、支払ってくれるなら、引き受けますけどね。

  ハハハハハ」


ジュナさんが、諦めたかのように言った。

なんだ、500万か。

安いな。


 「いいでしょう。支払います。」


俺はそう言って、リュックからお金を数えて

ドサッと出した。


 「それでは、これで借金を払ってください。

  それで、集落の教師を引き受けてくれますね」


俺は、ニヤリと笑って聞いてみた。


 「は、はい。よろこんで。

  ユウスケ様」


ジュナさんは、快く教師を引き受けてくれた。


俺は、長老たちとジュナさんと学校についての

打ち合わせをしている。


 「やはり、文字や計算も重要かもしれませんが

  昔から我々が先祖から教わってきたことを

  教えたいのですじゃ。

  今の若者は、お金が大切だと思っているようですけど

  それよりも大切なことは沢山あるのですじゃ。」


教師のひとりとなるサイフォン長老が語っている。

そう、学校ではジュナさんのほか

話し合いで長老たちも教師になってもらうことになったのだ。


 「言語の文字は、複数使用したいんです。

  街では音だけの文字じゃないですか。

  そこに記号のような意味のある文字を作って追加したいのです」


俺も授業の内容に口出しをしている。

別に、自分の集落でもないのに何故か口を出してしまう。


そう、ここでは英語のように音だけの文字である。

漢字のような意味を持った文字はない。

俺の星でも、音だけの文字か意味だけの文字、

どちらか一方だけしか使わない言語が多かったが

俺は、どちらも混ぜ合った言語を教わったのだ。


 「ユウスケさん、なぜ、そんな面倒くさいことを?」


長老のサイフォンさんが聞いてきた。


 「僕は、勉強とは脳を鍛えることだと思っているんです。

  音と意味の文字を組み合わせた言語は

  非常に脳を鍛えるのに役立つんですよ。」


俺は自分の仮説を力説した。


 「なるほど。良いかもしれませんね。

  その意味のある記号のようなものは私が

  作りましょう。

  面白そうです。」


ジュナさんが賛同してくれた。

そんなこんなで、この集落にも

青空学校が開校するのであった。


足りないところは誰かに助けてもらう。

みんなの力で、このエデン集落は前に進むのであった。


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