自作品ゲーム書き出しまとめ
【断罪オペラ】
「ねぇ、執事さん」
ある国の大きくて広いお屋敷に、お嬢様が住んでいました。
「……何でしょうか? お嬢様」
そして、そのお嬢様に仕える執事が一人。
恭しく跪いて、頭を垂れています。
「今日も、私と遊んでくれる?」
【冷たい夏の日】
――――姉は十八で死んだ。僕が殺してしまったから。
夏だと言うのに何処か渇いた、冷えた日の事だった。
【ゾンビ彼氏!】
「――――いろは姉ちゃん、久し振りっ! オレだよ、千早。覚えてる?」
やたら、キラキラとした笑顔を向けられて戸惑った。
確かに千早という知り合いは居た。
そう「居た」のだ。
何故過去形なのかといえば、その千早は死んでいる筈なのだ。
【青い鳥は籠の中】
「ぁの……」
耳障りな音が鳴る。
「ん? どうした?」
目の前にいる男は笑う。
「外して……下さい……っ……」
私の足首から伸びる、鎖の音を気にもしないで。
「駄目だよ。お前は、俺が守ってやるんだから、な?」
男は、笑う。
私の兄だった筈の男は、笑う。
【恋の糧】
ぺちゃぺちゃと、猫がミルクを舐める様な可愛らしい音がする。
食べている物は、可愛らしくも何とも無いのだが。
其れは、肉だった。
まだらに毛が生えていて、骨と皮ばかりで、到底美味しそうには見えない。
其れでも、彼女は美味しそうに其れを食べていた。
俺の足を、食べていた。
【オティリーの世界】
兄様は、泣かない子供だった。
文句を言わない子供だった。大人の言う事を良く聞いて、誰にでも優しい、子供だった。
【君の心臓は誰のもの】
太陽が眩しい。
風が気持ち良い。
空が青くて綺麗だ。
ぁあ、今、俺は満たされている。
生涯で一番と言っていい。
あと一秒で俺の一生は終わるのだから。
さよなら、弥生。愛しているよ。
ずっとずっと。
――――あなたの心に、常に地獄がありますように。
【メモリーロスト・ネバーランド】
彼女は死ぬ寸前の虫の様に、痙攣を繰り返していた。
内側から内臓を抉られているのだから、当然の反応だった。
涙と涎と血と苦痛に塗れた身体は、濁った液体で汚れていった。
何処か他人事の様に、私はそれを眺めていた。
彼女を汚したのは、紛れもない私自身だったというのに。
【落下心中】
ある男が殺された。
犯人は殴打の痕からして一人。
けれど。
犯人だと名乗り出て来たのは三人。
――――貴方は、誰が犯人だと思いますか?
【罪咎オペレッタ】
「人は生まれながらにして自由かつ平等の権利を有する」
彼は、そんな言葉が世界に有る事を知りませんでした。
そもそも、言葉なんて言葉が有る事も知りませんでした。
周りには死体と、死体を食べる野犬と、
もうすぐ死体になる肉の塊【食べ物】くらいしか無かったのですから。
【カフカの世界】
――――僕は誰の事も好きじゃ無かった。
だって、僕の中身を好きな人何て居ないから。
僕が周りの人に好かれているのは当然だった。
好かれる為に、演じているのだから。
【手のひらの蝶】
昔から蝶の翅を良くむしっていた。
誰にだって、憶えは有るだろう?
けれど、誤解しないで欲しい。
蝶で遊んでいた訳じゃない。
愛していたんだ。
【電波男はお呼びじゃない!】
――――遠い昔、まだ私が小さかった時、そのお兄さんは言った。
「思った事が有るなら、口に出して言わないと伝わらないよ」
その頃の私はとても内気で、言いたい事を我慢して溜め込んで、突然泣き出してしまう様な子供だったから、その言葉にびっくりした事を憶えている。
【10月32日のハロウィン】
まるで星の欠片が地上に落ちて来る様に
その日の雪はきらきらと輝いていました。
その光景に、ぼうっと見惚れる子供が一人。
がやがやと騒がしい大通りなのに、その子供にぶつかる人は居ませんでした。
【毎日地獄の底に居る】
世界は美しいとか、人間は素晴らしいとか
どれだけ恵まれた産まれと生活をしていたら
そんな考えを持てるのだろう?
【茨の棘 籠の蝶】
少女はあの日から急に一人になった。
判り易く言うと、親に死なれてしまったのだ。
既に財産家でも何でも無かったので、彼女は働く事になった。
【二人はファミレスの中にいる】
「なんでテメェがここに居んだよ?」
「何でって……お昼ご飯を食べに来たんだけれど。
僕がご飯を食べるのが、そんなに不思議かな?」
「は? ちげぇよ馬鹿。脳みそにクソでも詰まってやがるのか馬鹿。
あーお前の場合はセーエキかもなァ?」
「あはは! 相席になったくらいで、そこまで言われるとは思わなかったよ」
【尾の無い猫は夜に哭く】
(あぁ、また猫が鳴いている)
真っ黒に染まった窓の外に目を向けながら、伊皆は眉を顰めた。
此の所、毎晩猫の鳴き声が聞こえる。
【物語れ、哀れな狂人達の為に】
あぁ、此れこそが緋色なのだと思った。
夜に慣れた目に、強く焼き付く其の色。
夜桜の花弁ですら、其の出で立ちの前には舞台背景にしか為らない。
余りにも美しい。ぁあ、多分此れは人では無い。
【狐の窓】
「けしやうのものか、ましやうのものか正体をあらわせ」
学校からの帰り道。指で窓を作り、呪文を呟く。
そうすると、人では無いものの正体が判るのだという。
他愛のない、子供の遊びだ。
「――――止めた方が、いいよ」
【朝、起きたらショタでした!】
ある朝、僕が
気がかりな夢から目覚めた時、
自分がベットの上で一人の小柄な少年に変わってしまっているのに気付いた。
「――――いや、何で‼‼??」
【誰が殺した小夜啼鳥を】
薄ぼんやりとした暗闇が広がっている。
周りの景色に見覚えは無い。
無い、というより、見えない。周りは深い霧に覆われてしまっている。
何故、自分はこんな所に居るのだろうか? 何故、なぜ……?
そこまで考えた辺りで、意識は途切れた。
【失楽園で朝食を】(ディープ)
男女が向かい合って食事をしている。
テーブルは二人で使うにはやや小さく、手を伸ばせば顔に振れる程だ。けれど、お互いに其れを気にする様子は見られない。
それ所か、男の方はわざわざ女に口を開けさせ、
小さな子供にする様に、食べさせている。
新婚の夫婦でもやらないだろう、甘ったるい行為の筈なのに、男の顔に笑みは無かった。
【失落園で朝食を】(ライト)
男女が向かい合って食事をしている。
「ほら、口を開けて」
「ふふふ、あーーん……」
けれど、男の顔に笑みは無かった。
ただ、苦痛に歪められた表情ばかりが浮かんでいる。
――――どうして僕は、こんなことをしているんだろう。
それに相反する様に、女は幸せそうに、
フォークで突き刺され差し出された食べ物を、
美味しそうに頬張っていた。
女には。
手首から先と、足首から先が、無かった。
【私は貴方の神様です】
私はただ、神様になりたかった。其れだけなのです。
貴方は、神様を信じていますか?
そうですか……。良いですね。信じられる物が有って。
いえ、馬鹿にしている訳ではないのです。
ただ、私には其れが無かった、というだけの話なのです。
だから、欲しくなりました。貴方が神を信じる様に。
私を絶対的に信じてくれる存在が。
其れだけの事ですのに……何が、罪だと言うのでしょう?
【彼岸の花は夜に咲く】
「――――皆、好きなだけ飲んで行ってよ! 今日は俺の奢りだからさ〜!」
軽快な声が、店の中に響く。
酒を飲む前から酔っている様な男の手には、札束が握られていた。
「流石、財閥の坊ちゃん!」
「おいおい、もう解体されてるっつーの!」
お決まりの、やり取りなのだろう。
周囲の人々も慣れた様に笑って、男の手に酒を注ぐ。
其の時。