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気紛れ短編シリーズ

春の雪だるま

作者: 華月 愛

 僕が五歳の頃、隣の家の夫婦に一人の女の子が誕生した。

 名前は紗杳(さくら)。よく笑い、よく泣き、元気でとても可愛い子。

 僕も、紗杳の兄である(とおる)も仲が良く、血が繋がっていない僕でさえ本当の兄妹のように育った。

*

 僕は中学生になり、進路を考えるようになった。その時に頭に思い浮かぶのはいつも紗杳のことだ。たまに怒らせたり怒ったりして、大変だと思うことはあるが、僕は子供が好きだ。紗杳の笑顔が好きだ。だから、将来は子供と関わるような仕事に就きたいと何となく思った。

*

(みお)くん、見て!私、もう中学生だよ!」

 私は中学の制服を着て隣の家に来ていた。少し大人になった私を見てほしかった。でも。

「可愛いよ」

 五歳年上の澪くんはいつも私を子供扱いする。今も普通なら恥ずかしいような台詞を、私の頭を撫でながらさらっと言ってしまう。私ばかりが恥ずかしくなって、そんな私が更に子供っぽく思えて悔しかった。

 澪くん、私は早く大人になりたい。

*

 春の空気が僕達を包み込んだ。高校の門の前、胸に新入生の花飾りを付けた紗杳は、突然の風に乱れた髪をおさえながら困ったように笑う。

 僕が大学に上がってから、紗杳と会う回数は少なくなった。だから、久しぶりにみた紗杳の姿と仕草が何となく大人っぽく見えて、僕の心臓は普段よりも早く鼓動を伝えた。

 紗杳は色白の肌を僕の母校の制服で身を包み、頬を紅潮させている。その様子が綺麗だと感じたのは分かった。でも、この気持ちの正体は分からなかった。

*

「澪くん、澪くん!大ニュース!!」

「どうしたの?」

「お兄ちゃんがね!結婚だって!」

「透くんが!?」

「あとね、私、第一志望の大学受かったよ!」

「おめでとー!!」

 そう言いながらも、澪くんは携帯を出してお兄ちゃんにメッセージを送ろうとしている。

 私のことを見てよ。私だけを見てよ…。

*

 風の噂で紗杳に彼氏ができた、って聞いた。そっか…。紗杳も、もう大学生か。

 何でだろう。透くんの結婚は素直に喜べたのに、何だかもやもやする。応援、できない…。また、知らない感情が僕を支配する。でも、何でこんな気持ちになるのかは分かったんだ。

 僕は紗杳に恋をしているんだ。

*

 今日は私の二十歳の誕生日。

 伝わるかな?私の気持ち。


 「「君に、雪だるまのよう(不格好)な恋をしてるよ」」

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